「メジャー・インフラトン」序章3/7(僕のグランドゼロ〜マズルカの調べに乗って。少年兵の季節 FIRE!FIRE!FIRE!No2. )

あおっち

文字の大きさ
上 下
15 / 96
第3章 ジェシカ・スミス中佐と佐藤結衣。

第5話 須崎2等陸尉の、いのちの発見。

しおりを挟む
 千歳シーラスワンのシーラス極東参謀司令本部オペレーションルーム、ウーラノスCDCにある奥の会議室。
 
「ん?そうか、メリー。ありがとう、よし。それで、次は……」
 
 御舩はいつの間にか横に立つ、白いアーマースーツを着た女性秘書官に何やら、小声で伝えた。
 敬礼をして再び会議室を出る女性秘書官。
 そして、御舩の正面に細い管の様なカメラがテーブルから出てきた。
 
「それでは、マザー頼む。」
 
( 了解致しました。これから全加盟国軍へ単独放送を行います。 )
 
 AXISに買収された親中派の閣僚が多く、直ぐに動けない日本政府。そして、報道をしない自由を行使し、対馬の情報を報道しない地上波マスコミ。
 そこで、御舩少将が対馬防衛と市民の救助救援の訴えを世界各国の官邸、シラス加盟国軍の機動艦隊、機動部隊へ事実を元に、SNSを通して直接話し掛けるのだった。
 
「私は、千歳第1宙域打撃群作戦本部、司令長官を拝命しております、御舩弘です。先ほどの映像は我がシーラスの偵察衛星の映像です。そして、音声は敵の最前線に潜入した若い2人の日本人から届いた音声です。これは事実なのです。真実の映像なのです。いま、我が日本国の島根県対馬が敵、AXISの南北朝鮮軍の機甲部隊より侵略を受けているのです。すでに今日で3日も経っているのです。3日前より、対馬北方および南西から戦術潜水空母、空より侵入したAXISの南北朝鮮軍が対馬市民に対して、無差別攻撃を行っています。とうとう、対馬市まで追い詰められた市民の方々。日本国軍および自衛隊が、少ない弾薬、人員で、最後の抵抗をしているのです。そんな時、約200名の日本人女性を盾に使い、降伏を勧告している場面が先ほどの映像なのです。どうか日本政府、ならび各国政府の方々。直ちに、良識な判断をして頂きますようお願い致します。ちなみに、3日間の偵察衛星並び、監視衛星での死亡者数カウントでは、先ほどの映像に映っていました、いたましい犠牲になった女性を含め10,287人となっております。全て一般市民です。日本国軍、自衛隊の戦闘による死傷者は151名に及んでいます。繰り返します。皆様には良識な判断を頂きますようお願い致します。以上、私からのお願いを兼ねて、真実のご報告まで。」
 
( ふう……。 )
 
 と、息を吐いて深々と椅子に座る御舩だった。目の前のカメラが収納される。5人を見つめる御舩。
 
「閣下!」
 
 立ち上がるローマンを手で押さえる御舩。
 ローマンの腕を持って座らせる椎葉繁。
 
「後は、待つだけだ、……我々の出来ることをしよう。」
 
 対馬市、北部の前線では、裸の女性がいまだ数珠つなぎで立たされていた。
 その女性達の正面では、絶望感で、自衛隊員や日本国軍の兵士達がうなだれている。
 裸の女性の捕虜なので、男性兵士達は背中を向けていた。
 その前線の一番近い所で、1人の自衛隊の女性医官、須崎2等陸尉が、名前の解らない彼女達の体の状況を一人一人、診断書に記入していた。
 
 顔や乳房、腕、脛などの小さなアザ、膝の擦り傷など、詳細に観察していた。それは日本女性の意地でもあった。
 
 彼女は個体確認の為、三脚を立ててスコープで診断していたのだった。
 スコープの横を泣きながら横切る自衛隊員。
 三脚の脚に、長靴をぶつけて転んだ。
 そして、三脚の位置もズレた。
 
「う~っ。あ~御免なさい。御免なさい。」
 
「えっ、あ~いいの、いいの。あなたはそこにいなさい。用の無いのに動かないで。あなた、射撃待機中でしょう。」
 
 三脚を直して、スコープをのぞいた。
 そこには、たまたま映った女性が沈んだ顔どころか、少しニコニコしている。
 目の錯覚と思い一瞬、目を離したが、もう1回スコープをのぞいた。
 
「えっ?気がふれたの?」
 
 隣の女性も、その隣もフラフラせずに少し笑顔で、画面右下をゆっくり目で追っていた。
 
「えっ何、何っ?」
 
 横もその横の女性も順番に、だんだん笑顔になっていく。
 スコープの倍率を下げてみると、なんと、黒ずくめの大男が、彼女たちの手首のロープを切りながら小走りに移動していた。
 
( よっしゃー! )
 
 須崎2等陸尉の後ろに居る、三脚に足を引っかけた日本国陸軍兵士。
 その背中をピシッピシッ叩いた。
 
「う、うぅ、な、なんですかぁ。」
 
「何、ボケてんの!泣いてる場合じゃない!日本男児っ、男はしっかりしなさい。ほらっ!覗いて!早くっ。」
 
「え~。女性の裸を見るのは~。」
 
「馬鹿ッ!早く見ろっ!」
 
 背中をバシッと握られて、無理矢理見る男性兵士。
 その日本国陸軍兵士は、運よく手信号に通じている兵士だった。
 誰が見ているか解らないが、きよしは1分毎に自衛隊、日本国軍兵士に向かって手信号で止まって知らせていた。あいにく早い段階で知らせることが出来た。
 
「ん、ん!8分後、爆破、合図、解放、保護、頼む~だと~!何、何っ~!」
 
「あなたも、あなたも前線の皆に知らせて~!お願い~早く!」
 
 背中を丸めて、小走りに堡塁で待機している自衛隊や日本国陸軍の兵士に声を掛けながら走って行く兵士だった。その背中を丸めた兵士の報告を受けて専用極所無線で、須崎の方を向きながら即座に報告する自衛隊幹部もいた。
 その様子を確認して、スコープをのぞいている須崎2等陸尉だった。
 須崎はテキパキとロープを切断していくきよしを引き続き追っている。
 
「次来た~、ハイあなた見て!」
 
 先ほどの兵士と2人はきよしを追いかけてスコープで見ていた。
 
「5分後、爆破、合図、解放、保護、頼む。」
 
「はい!伝令~!はい、走って走って。」
 
 各前線に走って行く10名ほどの日本国陸軍兵士と自衛官。
 そこへ対馬基地、日本国軍と自衛隊を指揮する防衛庁の田中共同基地司令と、2人の将官、合計3人が背中を丸めて小走りに来た。
 敬礼する基地司たちと須崎2等陸尉。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

「メジャー・インフラトン」序章2/7(僕のグランドゼロ〜マズルカの調べに乗って。少年兵の季節FIRE!FIRE!FIRE! No1. ) 

あおっち
SF
敵の帝国、AXISがいよいよ日本へ攻めて来たのだ。その島嶼攻撃、すなわち敵の第1次目標は対馬だった。  この序章2/7は主人公、椎葉きよしの少年時代の物語です。女子高校の修学旅行中にAXIS兵士に襲われる女子高生達。かろうじて逃げ出した少女が1人。そこで出会った少年、椎葉きよしと布村愛子、そして少女達との出会い。  パンダ隊長と少女達に名付けられたきよしの活躍はいかに!少女達の運命は!  ジャンプ血清保持者(ゼロ・スターター)椎葉きよしを助ける人々。そして、初めての恋人ジェシカ。札幌、定山渓温泉に集まった対馬島嶼防衛戦で関係を持った家族との絆のストーリー。  彼らに関連する人々の生き様を、笑いと涙で送る物語。疲れたあなたに贈る微妙なSF物語です。  是非、ご覧あれ。 ※加筆や修正が予告なしにあります。

静寂の星

naomikoryo
SF
【★★★全7話+エピローグですので軽くお読みいただけます(^^)★★★】 深宇宙探査船《プロメテウス》は、未知の惑星へと不時着した。 そこは、異常なほど静寂に包まれた世界── 風もなく、虫の羽音すら聞こえない、完璧な沈黙の星 だった。 漂流した5人の宇宙飛行士たちは、救助を待ちながら惑星を探索する。 だが、次第に彼らは 「見えない何か」に監視されている という不気味な感覚に襲われる。 そしてある日、クルーのひとりが 跡形もなく消えた。 足跡も争った形跡もない。 ただ静かに、まるで 存在そのものが消されたかのように──。 「この星は“沈黙を守る”ために、我々を排除しているのか?」 音を発する者が次々と消えていく中、残されたクルーたちは 沈黙の星の正体 に迫る。 この惑星の静寂は、ただの自然現象ではなかった。 それは、惑星そのものの意志 だったのだ。 音を立てれば、存在を奪われる。 完全な沈黙の中で、彼らは生き延びることができるのか? そして、最後に待ち受けるのは── 沈黙を破るか、沈黙に飲まれるかの選択 だった。 極限の静寂と恐怖が支配するSFサスペンス、開幕。

「メジャー・インフラトン」序章1/ 7(太陽の季節 DIVE!DIVE!DIVE!ダイブ!ダイブ!ダイブ!)

あおっち
SF
  脈々と続く宇宙の無数の文明。その中でより高度に発展した高高度文明があった。その文明の流通、移動を支え光速を超えて遥か彼方の銀河や銀河内を瞬時に移動できるジャンプ技術。それを可能にしたジャンプ血清。  その血清は生体(人間)へのダメージをコントロールする血清、ワクチンなのだ。そのジャンプ血清をめぐり遥か大昔、大銀河戦争が起こり多くの高高度文明が滅びた。  その生き残りの文明が新たに見つけた地、ネイジェア星域。私達、天の川銀河の反対の宙域だった。そこで再び高高度文明が栄えたが、再びジャンプ血清供給に陰りが。天の川銀河レベルで再び紛争が勃発しかけていた。  そして紛争の火種は地球へ。  その地球では強大な軍事組織、中華帝国連邦、通称「AXIS」とそれに対抗する為、日本を中心とした加盟国軍組織「シーラス」が対峙していたのだ。  近未来の地球と太古から続くネイジェア星域皇国との交流、天然ジャンプ血清保持者の椎葉清らが居る日本と、高高度文明異星人(シーラス皇国)の末裔、マズル家のポーランド家族を描いたSF大河小説「メジャー・インフラトン」の前章譚、7部作。  第1部「太陽の季節 DIVE!DIVE!DIVE!ダイブ!ダイブ!ダイブ!」。  ジャンプ血清は保持者の傷ついた体を異例のスピードで回復させた。また血清のオリジナル保持者(ゼロ・スターター)は、独自の能力を飛躍的に引き上げる事が出来たのだ。  第2次大戦時、無敵兵士と言われた舩坂弘氏をモデルに御舩大(ミフネヒロシ)の無敵ふりと、近代世界のジャンプ血清保持者、椎葉きよし(通称:お子ちゃまきよし)の現在と過去。  ジャンプ血清の力、そして人類の未来をかけた壮大な戦いが、いま、始まる――。  彼らに関連する人々の生き様を、笑いと涙で送る物語。疲れたあなたに贈る微妙なSF物語です。  本格的な戦闘シーンもあり、面白い場面も増えます。  是非、ご覧あれ。 ※加筆や修正が予告なしにあります。

「メジャー・インフラトン」序章4/7(僕のグランドゼロ〜マズルカの調べに乗って。少年兵の季節JUMP! JUMP! JUMP! No1)

あおっち
SF
 港に立ち上がる敵AXISの巨大ロボHARMOR。  遂に、AXIS本隊が北海道に攻めて来たのだ。  その第1次上陸先が苫小牧市だった。  これは、現実なのだ!  その発見者の苫小牧市民たちは、戦渦から脱出できるのか。  それを助ける千歳シーラスワンの御舩たち。  同時進行で圧力をかけるAXISの陽動作戦。  台湾金門県の侵略に対し、真向から立ち向かうシーラス・台湾、そしてきよしの師範のゾフィアとヴィクトリアの機動艦隊。  新たに戦いに加わった衛星シーラス2ボーチャン。  目の離せない戦略・戦術ストーリーなのだ。  昨年、椎葉きよしと共に戦かった女子高生グループ「エイモス5」からも目が離せない。  そして、遂に最強の敵「エキドナ」が目を覚ましたのだ……。  SF大河小説の前章譚、第4部作。  是非ご覧ください。 ※加筆や修正が予告なしにあります。

「メジャー・インフラトン」序章5/7(僕のグランドゼロ〜マズルカの調べに乗って。少年兵の季節 JUMP! JUMP! JUMP! No2.

あおっち
SF
 海を埋め尽くすAXISの艦隊。 飽和攻撃が始まる台湾、金門県。  海岸の空を埋め尽くすAXISの巨大なロボ、HARMARの大群。 同時に始まる苫小牧市へ着上陸作戦。 苫小牧市を守るシーラス防衛軍。 そこで、先に上陸した砲撃部隊の砲弾が千歳市を襲った! SF大河小説の前章譚、第5部作。 是非ご覧ください。 ※加筆や修正が予告なしにあります。

【完結】バグった俺と、依存的な引きこもり少女。 ~幼馴染は俺以外のセカイを知りたがらない~

山須ぶじん
SF
 異性に関心はありながらも初恋がまだという高校二年生の少年、赤土正人(あかつちまさと)。  彼は毎日放課後に、一つ年下の引きこもりな幼馴染、伊武翠華(いぶすいか)という名の少女の家に通っていた。毎日訪れた正人のニオイを、密着し顔を埋めてくんくん嗅ぐという変わったクセのある女の子である。  そんな彼女は中学時代イジメを受けて引きこもりになり、さらには両親にも見捨てられて、今や正人だけが世界のすべて。彼に見捨てられないためなら、「なんでもする」と言ってしまうほどだった。  ある日、正人は来栖(くるす)という名のクラスメイトの女子に、愛の告白をされる。しかし告白するだけして彼女は逃げるように去ってしまい、正人は仕方なく返事を明日にしようと思うのだった。  だが翌日――。来栖は姿を消してしまう。しかも誰も彼女のことを覚えていないのだ。  それはまるで、最初から存在しなかったかのように――。 ※第18回講談社ラノベ文庫新人賞の第2次選考通過、最終選考落選作品。 ※『小説家になろう』『カクヨム』でも掲載しています。

アーク・エモーション:デジタルヒーロー

夕闇ポルカ
SF
未来都市オメガ・ゼロで孤独な生活を送る16歳の少女、レイナ。彼女の退屈な日常が一変するのは、ある日ネットカフェで見つけた謎のアプリ「アーク・エモーション」を起動した時から。画面から現れたのは、実は都市の安全を守るために設計されたAIヒーロー、アークだった。 レイナとアークは、最初はただのデジタルと人間の奇妙なコンビに過ぎなかったが、次第に深い絆を育んでいく。しかし、都市には影で操る謎の敵ヴァニタスが潜んでおり、アークの力を狙っていた。

借金した女(SМ小説です)

浅野浩二
現代文学
ヤミ金融に借金した女のSМ小説です。

処理中です...