7 / 96
第1章 ヘッドギア。
第6話 黄金色の夕焼け。
しおりを挟む
その後、3人は覚悟を決めて、見渡して確認出来た20軒ほどの家を捜索した。
お年寄り、生後間もない赤ちゃん。小学生の低学年の遺体など、ほぼ10人ほどの傷ましい遺体を見つけた。そして、小さな漁港の船は全て燃やされていた。8名ほどの男性と思われる焼死体があった。
全てのご遺体の放置された状態と、極力ご遺体の顔をヘッドギアに撮影して保存した。平時に戻った時の検死の為だった。
その役目をきよしが行った。
きよしと美紀はご遺体を若い女性の遺体があった民家に集めた。
布村はエイモスの指示で、上空のモルガン1の衛星解析映像を元に、遺体や生き残っている人の捜索した。
捜索した後、今度は布村が、吉田美紀が行くであろう豊砲台跡の基地工事現場で負傷した作業員の為に、空き家にお邪魔して、きよしから貰ったお金とメモを置いてから薬や飲料水、インスタント食品、トイレットペーパーなど生活必需品を集めていた。
きよしと美紀は港の漁協事務所で見つけた魚を入れるビニール袋へ、丁寧にご遺体を一体ごとに入れて、供養したのだ。
民家ごと火葬と思ったが、この有事が早く終わる可能性もある為、民家に収容するのみとなった。
AXISの兵士の遺体は、ショベルの免許のある美紀が土を掘り、41人を埋めた。
疲れ果てた3人。
どの家もソーラパネルをしていたため電源が確保できていた。
3Dテレビを付けて、情報を取ろうとしたが、昼間は日本の国営放送を含め、民間地上波TVも対馬のニュースが一切されていなかった。
3人はしかたなく、シャワーを浴びて、ご遺体からの汚れを落とした。
エアコンを付けて、冷蔵庫の残りでおかずを頂いて、遅い昼食を採ってソファーで少し横になった。
AXIS侵攻3日目の日も暮れようとしている。
民家の玄関の戸を閉めるきよし。
戸には(御遺体安置してあります。8月7日 椎葉清 吉田美紀 布村愛子)と大きく紙に書いて、張り付けてある。
そして、線香をあげてから、3人は手を合わせたのだ。
ミカン色に変わり始めた陽の光が、玄関で手を合わせる3人を照らした。
ゆっくり目を開ける3人。
何故か、心が晴れ始めた3人だった。
黄金に輝く太陽の光が3人の心を浄化したのかも知れなかった。
美紀は、きよしから吉田の生存を聞いていたため、AXISの兵員輸送トラックに、布村が集めた医薬品や生活必需品を積んでいた。
◇ ◇
別れの時。
いよいよ日が傾き始めた。
ガラガラガラっとディーゼル音を鳴らして、見送りのきよしと布村の前にトラックが来た。
きよしと愛子の陽が傾いた長い影を踏んで止まるトラック。
左の運転席の窓が下がり、スッキリした美人の顔が微笑んだ。
「きよしちゃん。布村さん。本当に有難うございました。きよしちゃん、独身だったらご一緒したかったわ!うふふっ。愛ちゃんも。またどこかで逢いましょうね。」
突然、窓から身を乗り出して、両手できよしの顔を挟み、きよしにキスをする美紀。
( あっ! )
開いた口に手を当てて驚く布村。
美紀は、妖艶な笑顔をして椅子に座り、トラックのギアを入れた。
( ギャギャ。ガラガラガラガラ……。 )
「じゃね。わたしのきよし。うふふっ。」
投げキッスをきよしにして大きく手を振りながら運転していく美紀だった。
驚いたままの布村。
ビックリして、直立不動で突っ立たまま動かないきよし。
愛子は、そのきよしをギロッとにらんだ。
「今度は人妻か!それもお父様の親友の奥さん!何考えてるのぉ~!な~にが、わたしのきよしって!お子ちゃまきよしめが!ふんっ!プンプンっ。プンプンっ。」
鼻頭を上にあげて、怒りながら大手を振って自分たちが乗るトラックに向かう布村。
腰に手を当てて、トラックが見えなくなるまで大きく手を振るきよし。
また手をあげて答える美紀。
そんなきよしを横目で見てトラックの助手席に座る布村。
身を乗り出して、ハンドルのクラクションを鳴らす。
( プップー!プップー! )
「こらー!色ボケきよし!パンダきよしー行くよ!ドンくさいパンダ野郎。プンプンッ。」
あっと、気が付いて走って運転席に座るきよし。
横目で布村をチラッとみて、室内のバックミラーで右目の青タンを見るきよし。
「このパンダ、あはははっ!ほんとパンダですね~。あははっ。」
青アザが治り始め、少し下に落ちてきている。
チベットパンダの跡そっくりだった。
「もう、いつまでも手を振って。いやらしい、もぅ!私に運転させる気?私運転できないからね!聞いてる?」
「ごめんなさい。解ってます解ってます。行きます行きますぅ。」
「解ればよろしい。」
腕を組んで、プンプン怒っている布村。
布村を見ながら、唇をへの字にしたままエンジンを掛けるきよし。
( ギュイギュイギュイーガラガラブーン、ブーン……ガラガラガラ。 )
そして、トラックはエンジンを吹かして、夕日に照らされる国道を南下していった。
お年寄り、生後間もない赤ちゃん。小学生の低学年の遺体など、ほぼ10人ほどの傷ましい遺体を見つけた。そして、小さな漁港の船は全て燃やされていた。8名ほどの男性と思われる焼死体があった。
全てのご遺体の放置された状態と、極力ご遺体の顔をヘッドギアに撮影して保存した。平時に戻った時の検死の為だった。
その役目をきよしが行った。
きよしと美紀はご遺体を若い女性の遺体があった民家に集めた。
布村はエイモスの指示で、上空のモルガン1の衛星解析映像を元に、遺体や生き残っている人の捜索した。
捜索した後、今度は布村が、吉田美紀が行くであろう豊砲台跡の基地工事現場で負傷した作業員の為に、空き家にお邪魔して、きよしから貰ったお金とメモを置いてから薬や飲料水、インスタント食品、トイレットペーパーなど生活必需品を集めていた。
きよしと美紀は港の漁協事務所で見つけた魚を入れるビニール袋へ、丁寧にご遺体を一体ごとに入れて、供養したのだ。
民家ごと火葬と思ったが、この有事が早く終わる可能性もある為、民家に収容するのみとなった。
AXISの兵士の遺体は、ショベルの免許のある美紀が土を掘り、41人を埋めた。
疲れ果てた3人。
どの家もソーラパネルをしていたため電源が確保できていた。
3Dテレビを付けて、情報を取ろうとしたが、昼間は日本の国営放送を含め、民間地上波TVも対馬のニュースが一切されていなかった。
3人はしかたなく、シャワーを浴びて、ご遺体からの汚れを落とした。
エアコンを付けて、冷蔵庫の残りでおかずを頂いて、遅い昼食を採ってソファーで少し横になった。
AXIS侵攻3日目の日も暮れようとしている。
民家の玄関の戸を閉めるきよし。
戸には(御遺体安置してあります。8月7日 椎葉清 吉田美紀 布村愛子)と大きく紙に書いて、張り付けてある。
そして、線香をあげてから、3人は手を合わせたのだ。
ミカン色に変わり始めた陽の光が、玄関で手を合わせる3人を照らした。
ゆっくり目を開ける3人。
何故か、心が晴れ始めた3人だった。
黄金に輝く太陽の光が3人の心を浄化したのかも知れなかった。
美紀は、きよしから吉田の生存を聞いていたため、AXISの兵員輸送トラックに、布村が集めた医薬品や生活必需品を積んでいた。
◇ ◇
別れの時。
いよいよ日が傾き始めた。
ガラガラガラっとディーゼル音を鳴らして、見送りのきよしと布村の前にトラックが来た。
きよしと愛子の陽が傾いた長い影を踏んで止まるトラック。
左の運転席の窓が下がり、スッキリした美人の顔が微笑んだ。
「きよしちゃん。布村さん。本当に有難うございました。きよしちゃん、独身だったらご一緒したかったわ!うふふっ。愛ちゃんも。またどこかで逢いましょうね。」
突然、窓から身を乗り出して、両手できよしの顔を挟み、きよしにキスをする美紀。
( あっ! )
開いた口に手を当てて驚く布村。
美紀は、妖艶な笑顔をして椅子に座り、トラックのギアを入れた。
( ギャギャ。ガラガラガラガラ……。 )
「じゃね。わたしのきよし。うふふっ。」
投げキッスをきよしにして大きく手を振りながら運転していく美紀だった。
驚いたままの布村。
ビックリして、直立不動で突っ立たまま動かないきよし。
愛子は、そのきよしをギロッとにらんだ。
「今度は人妻か!それもお父様の親友の奥さん!何考えてるのぉ~!な~にが、わたしのきよしって!お子ちゃまきよしめが!ふんっ!プンプンっ。プンプンっ。」
鼻頭を上にあげて、怒りながら大手を振って自分たちが乗るトラックに向かう布村。
腰に手を当てて、トラックが見えなくなるまで大きく手を振るきよし。
また手をあげて答える美紀。
そんなきよしを横目で見てトラックの助手席に座る布村。
身を乗り出して、ハンドルのクラクションを鳴らす。
( プップー!プップー! )
「こらー!色ボケきよし!パンダきよしー行くよ!ドンくさいパンダ野郎。プンプンッ。」
あっと、気が付いて走って運転席に座るきよし。
横目で布村をチラッとみて、室内のバックミラーで右目の青タンを見るきよし。
「このパンダ、あはははっ!ほんとパンダですね~。あははっ。」
青アザが治り始め、少し下に落ちてきている。
チベットパンダの跡そっくりだった。
「もう、いつまでも手を振って。いやらしい、もぅ!私に運転させる気?私運転できないからね!聞いてる?」
「ごめんなさい。解ってます解ってます。行きます行きますぅ。」
「解ればよろしい。」
腕を組んで、プンプン怒っている布村。
布村を見ながら、唇をへの字にしたままエンジンを掛けるきよし。
( ギュイギュイギュイーガラガラブーン、ブーン……ガラガラガラ。 )
そして、トラックはエンジンを吹かして、夕日に照らされる国道を南下していった。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
「メジャー・インフラトン」序章2/7(僕のグランドゼロ〜マズルカの調べに乗って。少年兵の季節FIRE!FIRE!FIRE! No1. )
あおっち
SF
敵の帝国、AXISがいよいよ日本へ攻めて来たのだ。その島嶼攻撃、すなわち敵の第1次目標は対馬だった。
この序章2/7は主人公、椎葉きよしの少年時代の物語です。女子高校の修学旅行中にAXIS兵士に襲われる女子高生達。かろうじて逃げ出した少女が1人。そこで出会った少年、椎葉きよしと布村愛子、そして少女達との出会い。
パンダ隊長と少女達に名付けられたきよしの活躍はいかに!少女達の運命は!
ジャンプ血清保持者(ゼロ・スターター)椎葉きよしを助ける人々。そして、初めての恋人ジェシカ。札幌、定山渓温泉に集まった対馬島嶼防衛戦で関係を持った家族との絆のストーリー。
彼らに関連する人々の生き様を、笑いと涙で送る物語。疲れたあなたに贈る微妙なSF物語です。
是非、ご覧あれ。
※加筆や修正が予告なしにあります。
静寂の星
naomikoryo
SF
【★★★全7話+エピローグですので軽くお読みいただけます(^^)★★★】
深宇宙探査船《プロメテウス》は、未知の惑星へと不時着した。
そこは、異常なほど静寂に包まれた世界── 風もなく、虫の羽音すら聞こえない、完璧な沈黙の星 だった。
漂流した5人の宇宙飛行士たちは、救助を待ちながら惑星を探索する。
だが、次第に彼らは 「見えない何か」に監視されている という不気味な感覚に襲われる。
そしてある日、クルーのひとりが 跡形もなく消えた。
足跡も争った形跡もない。
ただ静かに、まるで 存在そのものが消されたかのように──。
「この星は“沈黙を守る”ために、我々を排除しているのか?」
音を発する者が次々と消えていく中、残されたクルーたちは 沈黙の星の正体 に迫る。
この惑星の静寂は、ただの自然現象ではなかった。
それは、惑星そのものの意志 だったのだ。
音を立てれば、存在を奪われる。
完全な沈黙の中で、彼らは生き延びることができるのか?
そして、最後に待ち受けるのは── 沈黙を破るか、沈黙に飲まれるかの選択 だった。
極限の静寂と恐怖が支配するSFサスペンス、開幕。

「メジャー・インフラトン」序章5/7(僕のグランドゼロ〜マズルカの調べに乗って。少年兵の季節 JUMP! JUMP! JUMP! No2.
あおっち
SF
海を埋め尽くすAXISの艦隊。
飽和攻撃が始まる台湾、金門県。
海岸の空を埋め尽くすAXISの巨大なロボ、HARMARの大群。
同時に始まる苫小牧市へ着上陸作戦。
苫小牧市を守るシーラス防衛軍。
そこで、先に上陸した砲撃部隊の砲弾が千歳市を襲った!
SF大河小説の前章譚、第5部作。
是非ご覧ください。
※加筆や修正が予告なしにあります。
「メジャー・インフラトン」序章1/ 7(太陽の季節 DIVE!DIVE!DIVE!ダイブ!ダイブ!ダイブ!)
あおっち
SF
脈々と続く宇宙の無数の文明。その中でより高度に発展した高高度文明があった。その文明の流通、移動を支え光速を超えて遥か彼方の銀河や銀河内を瞬時に移動できるジャンプ技術。それを可能にしたジャンプ血清。
その血清は生体(人間)へのダメージをコントロールする血清、ワクチンなのだ。そのジャンプ血清をめぐり遥か大昔、大銀河戦争が起こり多くの高高度文明が滅びた。
その生き残りの文明が新たに見つけた地、ネイジェア星域。私達、天の川銀河の反対の宙域だった。そこで再び高高度文明が栄えたが、再びジャンプ血清供給に陰りが。天の川銀河レベルで再び紛争が勃発しかけていた。
そして紛争の火種は地球へ。
その地球では強大な軍事組織、中華帝国連邦、通称「AXIS」とそれに対抗する為、日本を中心とした加盟国軍組織「シーラス」が対峙していたのだ。
近未来の地球と太古から続くネイジェア星域皇国との交流、天然ジャンプ血清保持者の椎葉清らが居る日本と、高高度文明異星人(シーラス皇国)の末裔、マズル家のポーランド家族を描いたSF大河小説「メジャー・インフラトン」の前章譚、7部作。
第1部「太陽の季節 DIVE!DIVE!DIVE!ダイブ!ダイブ!ダイブ!」。
ジャンプ血清は保持者の傷ついた体を異例のスピードで回復させた。また血清のオリジナル保持者(ゼロ・スターター)は、独自の能力を飛躍的に引き上げる事が出来たのだ。
第2次大戦時、無敵兵士と言われた舩坂弘氏をモデルに御舩大(ミフネヒロシ)の無敵ふりと、近代世界のジャンプ血清保持者、椎葉きよし(通称:お子ちゃまきよし)の現在と過去。
ジャンプ血清の力、そして人類の未来をかけた壮大な戦いが、いま、始まる――。
彼らに関連する人々の生き様を、笑いと涙で送る物語。疲れたあなたに贈る微妙なSF物語です。
本格的な戦闘シーンもあり、面白い場面も増えます。
是非、ご覧あれ。
※加筆や修正が予告なしにあります。
「メジャー・インフラトン」序章4/7(僕のグランドゼロ〜マズルカの調べに乗って。少年兵の季節JUMP! JUMP! JUMP! No1)
あおっち
SF
港に立ち上がる敵AXISの巨大ロボHARMOR。
遂に、AXIS本隊が北海道に攻めて来たのだ。
その第1次上陸先が苫小牧市だった。
これは、現実なのだ!
その発見者の苫小牧市民たちは、戦渦から脱出できるのか。
それを助ける千歳シーラスワンの御舩たち。
同時進行で圧力をかけるAXISの陽動作戦。
台湾金門県の侵略に対し、真向から立ち向かうシーラス・台湾、そしてきよしの師範のゾフィアとヴィクトリアの機動艦隊。
新たに戦いに加わった衛星シーラス2ボーチャン。
目の離せない戦略・戦術ストーリーなのだ。
昨年、椎葉きよしと共に戦かった女子高生グループ「エイモス5」からも目が離せない。
そして、遂に最強の敵「エキドナ」が目を覚ましたのだ……。
SF大河小説の前章譚、第4部作。
是非ご覧ください。
※加筆や修正が予告なしにあります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる