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第1章 ヘッドギア。
第6話 黄金色の夕焼け。
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その後、3人は覚悟を決めて、見渡して確認出来た20軒ほどの家を捜索した。
お年寄り、生後間もない赤ちゃん。小学生の低学年の遺体など、ほぼ10人ほどの傷ましい遺体を見つけた。そして、小さな漁港の船は全て燃やされていた。8名ほどの男性と思われる焼死体があった。
全てのご遺体の放置された状態と、極力ご遺体の顔をヘッドギアに撮影して保存した。平時に戻った時の検死の為だった。
その役目をきよしが行った。
きよしと美紀はご遺体を若い女性の遺体があった民家に集めた。
布村はエイモスの指示で、上空のモルガン1の衛星解析映像を元に、遺体や生き残っている人の捜索した。
捜索した後、今度は布村が、吉田美紀が行くであろう豊砲台跡の基地工事現場で負傷した作業員の為に、空き家にお邪魔して、きよしから貰ったお金とメモを置いてから薬や飲料水、インスタント食品、トイレットペーパーなど生活必需品を集めていた。
きよしと美紀は港の漁協事務所で見つけた魚を入れるビニール袋へ、丁寧にご遺体を一体ごとに入れて、供養したのだ。
民家ごと火葬と思ったが、この有事が早く終わる可能性もある為、民家に収容するのみとなった。
AXISの兵士の遺体は、ショベルの免許のある美紀が土を掘り、41人を埋めた。
疲れ果てた3人。
どの家もソーラパネルをしていたため電源が確保できていた。
3Dテレビを付けて、情報を取ろうとしたが、昼間は日本の国営放送を含め、民間地上波TVも対馬のニュースが一切されていなかった。
3人はしかたなく、シャワーを浴びて、ご遺体からの汚れを落とした。
エアコンを付けて、冷蔵庫の残りでおかずを頂いて、遅い昼食を採ってソファーで少し横になった。
AXIS侵攻3日目の日も暮れようとしている。
民家の玄関の戸を閉めるきよし。
戸には(御遺体安置してあります。8月7日 椎葉清 吉田美紀 布村愛子)と大きく紙に書いて、張り付けてある。
そして、線香をあげてから、3人は手を合わせたのだ。
ミカン色に変わり始めた陽の光が、玄関で手を合わせる3人を照らした。
ゆっくり目を開ける3人。
何故か、心が晴れ始めた3人だった。
黄金に輝く太陽の光が3人の心を浄化したのかも知れなかった。
美紀は、きよしから吉田の生存を聞いていたため、AXISの兵員輸送トラックに、布村が集めた医薬品や生活必需品を積んでいた。
◇ ◇
別れの時。
いよいよ日が傾き始めた。
ガラガラガラっとディーゼル音を鳴らして、見送りのきよしと布村の前にトラックが来た。
きよしと愛子の陽が傾いた長い影を踏んで止まるトラック。
左の運転席の窓が下がり、スッキリした美人の顔が微笑んだ。
「きよしちゃん。布村さん。本当に有難うございました。きよしちゃん、独身だったらご一緒したかったわ!うふふっ。愛ちゃんも。またどこかで逢いましょうね。」
突然、窓から身を乗り出して、両手できよしの顔を挟み、きよしにキスをする美紀。
( あっ! )
開いた口に手を当てて驚く布村。
美紀は、妖艶な笑顔をして椅子に座り、トラックのギアを入れた。
( ギャギャ。ガラガラガラガラ……。 )
「じゃね。わたしのきよし。うふふっ。」
投げキッスをきよしにして大きく手を振りながら運転していく美紀だった。
驚いたままの布村。
ビックリして、直立不動で突っ立たまま動かないきよし。
愛子は、そのきよしをギロッとにらんだ。
「今度は人妻か!それもお父様の親友の奥さん!何考えてるのぉ~!な~にが、わたしのきよしって!お子ちゃまきよしめが!ふんっ!プンプンっ。プンプンっ。」
鼻頭を上にあげて、怒りながら大手を振って自分たちが乗るトラックに向かう布村。
腰に手を当てて、トラックが見えなくなるまで大きく手を振るきよし。
また手をあげて答える美紀。
そんなきよしを横目で見てトラックの助手席に座る布村。
身を乗り出して、ハンドルのクラクションを鳴らす。
( プップー!プップー! )
「こらー!色ボケきよし!パンダきよしー行くよ!ドンくさいパンダ野郎。プンプンッ。」
あっと、気が付いて走って運転席に座るきよし。
横目で布村をチラッとみて、室内のバックミラーで右目の青タンを見るきよし。
「このパンダ、あはははっ!ほんとパンダですね~。あははっ。」
青アザが治り始め、少し下に落ちてきている。
チベットパンダの跡そっくりだった。
「もう、いつまでも手を振って。いやらしい、もぅ!私に運転させる気?私運転できないからね!聞いてる?」
「ごめんなさい。解ってます解ってます。行きます行きますぅ。」
「解ればよろしい。」
腕を組んで、プンプン怒っている布村。
布村を見ながら、唇をへの字にしたままエンジンを掛けるきよし。
( ギュイギュイギュイーガラガラブーン、ブーン……ガラガラガラ。 )
そして、トラックはエンジンを吹かして、夕日に照らされる国道を南下していった。
お年寄り、生後間もない赤ちゃん。小学生の低学年の遺体など、ほぼ10人ほどの傷ましい遺体を見つけた。そして、小さな漁港の船は全て燃やされていた。8名ほどの男性と思われる焼死体があった。
全てのご遺体の放置された状態と、極力ご遺体の顔をヘッドギアに撮影して保存した。平時に戻った時の検死の為だった。
その役目をきよしが行った。
きよしと美紀はご遺体を若い女性の遺体があった民家に集めた。
布村はエイモスの指示で、上空のモルガン1の衛星解析映像を元に、遺体や生き残っている人の捜索した。
捜索した後、今度は布村が、吉田美紀が行くであろう豊砲台跡の基地工事現場で負傷した作業員の為に、空き家にお邪魔して、きよしから貰ったお金とメモを置いてから薬や飲料水、インスタント食品、トイレットペーパーなど生活必需品を集めていた。
きよしと美紀は港の漁協事務所で見つけた魚を入れるビニール袋へ、丁寧にご遺体を一体ごとに入れて、供養したのだ。
民家ごと火葬と思ったが、この有事が早く終わる可能性もある為、民家に収容するのみとなった。
AXISの兵士の遺体は、ショベルの免許のある美紀が土を掘り、41人を埋めた。
疲れ果てた3人。
どの家もソーラパネルをしていたため電源が確保できていた。
3Dテレビを付けて、情報を取ろうとしたが、昼間は日本の国営放送を含め、民間地上波TVも対馬のニュースが一切されていなかった。
3人はしかたなく、シャワーを浴びて、ご遺体からの汚れを落とした。
エアコンを付けて、冷蔵庫の残りでおかずを頂いて、遅い昼食を採ってソファーで少し横になった。
AXIS侵攻3日目の日も暮れようとしている。
民家の玄関の戸を閉めるきよし。
戸には(御遺体安置してあります。8月7日 椎葉清 吉田美紀 布村愛子)と大きく紙に書いて、張り付けてある。
そして、線香をあげてから、3人は手を合わせたのだ。
ミカン色に変わり始めた陽の光が、玄関で手を合わせる3人を照らした。
ゆっくり目を開ける3人。
何故か、心が晴れ始めた3人だった。
黄金に輝く太陽の光が3人の心を浄化したのかも知れなかった。
美紀は、きよしから吉田の生存を聞いていたため、AXISの兵員輸送トラックに、布村が集めた医薬品や生活必需品を積んでいた。
◇ ◇
別れの時。
いよいよ日が傾き始めた。
ガラガラガラっとディーゼル音を鳴らして、見送りのきよしと布村の前にトラックが来た。
きよしと愛子の陽が傾いた長い影を踏んで止まるトラック。
左の運転席の窓が下がり、スッキリした美人の顔が微笑んだ。
「きよしちゃん。布村さん。本当に有難うございました。きよしちゃん、独身だったらご一緒したかったわ!うふふっ。愛ちゃんも。またどこかで逢いましょうね。」
突然、窓から身を乗り出して、両手できよしの顔を挟み、きよしにキスをする美紀。
( あっ! )
開いた口に手を当てて驚く布村。
美紀は、妖艶な笑顔をして椅子に座り、トラックのギアを入れた。
( ギャギャ。ガラガラガラガラ……。 )
「じゃね。わたしのきよし。うふふっ。」
投げキッスをきよしにして大きく手を振りながら運転していく美紀だった。
驚いたままの布村。
ビックリして、直立不動で突っ立たまま動かないきよし。
愛子は、そのきよしをギロッとにらんだ。
「今度は人妻か!それもお父様の親友の奥さん!何考えてるのぉ~!な~にが、わたしのきよしって!お子ちゃまきよしめが!ふんっ!プンプンっ。プンプンっ。」
鼻頭を上にあげて、怒りながら大手を振って自分たちが乗るトラックに向かう布村。
腰に手を当てて、トラックが見えなくなるまで大きく手を振るきよし。
また手をあげて答える美紀。
そんなきよしを横目で見てトラックの助手席に座る布村。
身を乗り出して、ハンドルのクラクションを鳴らす。
( プップー!プップー! )
「こらー!色ボケきよし!パンダきよしー行くよ!ドンくさいパンダ野郎。プンプンッ。」
あっと、気が付いて走って運転席に座るきよし。
横目で布村をチラッとみて、室内のバックミラーで右目の青タンを見るきよし。
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「もう、いつまでも手を振って。いやらしい、もぅ!私に運転させる気?私運転できないからね!聞いてる?」
「ごめんなさい。解ってます解ってます。行きます行きますぅ。」
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