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第8章 バトル・オブ・苫小牧。敵、偵察部隊を狙撃せよ。

第3話 オルカ砲撃開始!砲弾を撃ち落とせ。

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 海岸へ向かって広がる千歳南部の畑作地帯。

 その300メートル程の上空を時速180キロの低速で進む敵、偵察モービル。

 狙撃されても、全く姿勢の変化もなく飛行続ける敵、3番機だった。

 パイロットを狙撃された1番機、2番機はゆっくり落下を初め、農地の林や河川に激突して爆発もせず停止した。

 手ごたえがあったのに関わらず、飛行姿勢に変化が無い3番機に気がつくリリアナ。

「OH?ミスザマーク?No.No.No!ファキンウェイ!(外した?いやいやいや!ありえない!)」

 飛行を続ける3機目の機体。

 その敵3番機を落ち着いて見ているルオだった。

 ルオ側から見て、敵3番機の着弾ヒット時の拡大リピート映像では敵モービルの肩にレール弾丸が命中して腰部から抜ける映像が確認出来た。

 リリアナが敵のモービル・パイロットを外したのか、それともパイロットは狙撃出来たが、まだAIが生きていて自立飛行で偵察を続けているか、不明だった。

 しかし、リリアナにいちいち説明している暇はない。

 現に敵モービルは偵察飛行を続けているのだ。

 ルオはカバーショットするしかなかった。

 瞬時に判断したホァンルオ中尉。

「アイカバー、ガァライッ!コントンミイ!(了解、僕に任せて。)」


( シュピーン! )


( ウガッ! )


 3番機コクピット内。

 パイロットの血糊が狭い球形の空間前面に弾けた。

 3機目をルオがカバー射撃で撃ち落としたのだ。

「ふぅ。さすがダーリンありがとう。」

 みるみる内に、収穫が終わった畑の中に落下する3機目の機体。

 緑がむせぶ穀物の葉を散らかしながら、畑の先のサイロに激突して止まった。

 保存している飼料を散らしながら倒壊するサイロ。

 その様子を映像で確認しているジェシカ、小林小隊の各隊員たちだった。

          ◇

 しかし、同時に浜厚真海岸ではオルカ砲撃部隊が千歳市への砲撃を開始したのだ。
 

( ドドーン!ドドーン! )

( ドドーン!ドドーン! )


 浜厚真海岸から打ち上がる179ミリ焼夷榴
弾。

 ボーチャンが放ったモルガンtype1からの衛星映像が千歳シーラスワンの大型モニターへ、浜厚真海岸の上空映像を映している。

 衛星映像に映るオルカ砲撃隊の、上空からの砲撃映像だった。

 同時に左画面には砲弾の軌跡と予想進路を捉えた映像も表示されている。

 報告する岡島3等陸尉。

「閣下!オルカ!砲撃を開始しました。」

「桐生君!」

 続けて戦術オペレーション報告をする桐生上級曹長。

「はい、閣下!ブロンシュより、統合データ来ました。各コマンダーからも砲弾をキャッチ!全部署、データリンケージ開始。」

 うなずく御舩。

 ルオとリリアナに直接通信をした。

「よし!順次、迎撃開始。パールバディ・ワン、ファニーダディ機は、撃ち漏らしミスショット監視。」

( 了解っ! )
 
 高高度からゆっくり降下する花束の様な2機。

 まずは敵の偵察モービルを撃ち取り、まるで空中に浮かんでいる様にゆっくり落下するパールバティ・ワンとファニーダディの2機だった。

 そのパイロットの2人が監視するリアルタイムモニター。

「ルオ、仕事第2弾よ。(了解、リリー。)で、ダディ?どう?」

( はい、リリー。オルカの砲弾は正確にトレースされています。CHMワン(コマンダーHARMOR-ONE:ジュリア機)データとCHMツー(コマンダーHARMOR-TWO:小林未央機)リンケージ正常。ホァン中尉が撃ちます。リリアナ、カバー準備を。 )
 
「了解、ダディ。カバー・スナイプ準備。」

 既にスタンバって追撃中の黄中尉こと、ルオ。

 打ち上がるオルカの砲弾と、迎撃するミサイルのレーダー画像がさらに砲弾軌跡映像に合成されて立体的に表示され始めていた。

「さぁて、何発撃ち漏らすか?ワクワクするんだわさ。レディー・スラッシュ準備は?」

 ルオのAI、レディー・スラシュが答える。
 
( はい、いつでもカバーシュ、オケーです。ウォーニホームCDC、CHMワン、CHMツー、ファニーダディ機とデータリンケージ正常維持。衛星軌道上のブロンシュとの誤差修正完了。エイモスより地球公転軌道誤差および諸元(風、風向き、湿度、気温、高度差)受信中、射撃諸元継続補正中。いつでもいけますわ。ルオ。)

 きよしとジェシカがいる空港南端部に設置されたオートマ(対空無人偵察装甲車エイジャックス)から次々に打ち上がる地対空迎撃ミサイル。

 新たに出動して設置した自衛隊の中距離CIWS-3搭載車両の新型37式多目的支援装甲車20輌が、30ミリガトリングをレーダー射撃で撃ち始めた。

 オルカが打ち上げた砲弾を、追いかけて行くミサイルと、30ミリ曳光弾の軌跡。

 その砲弾の予想進路で先に破裂する迎撃ミサイルや砲弾が破裂する物凄い煙の数々。

 尋常じゃない速さで、早朝の青空を弾幕が追いかけて上昇していく。
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