「メジャー・インフラトン」序章5/7(僕のグランドゼロ〜マズルカの調べに乗って。少年兵の季節 JUMP! JUMP! JUMP! No2.

あおっち

文字の大きさ
上 下
50 / 99
第7章 バトル・オブ・苫小牧。敵本隊上陸。

第1話 立ち上がれ!コンチェム。(敵視点ver)

しおりを挟む
 濁った苫小牧沖の海中から、モービル・パイロットが両手両足をかきながら浮上してくる。

 空中で撃破され、海に墜落した自機から脱出したのだった。

 パイロットの足元の海底へ、爆発の閃光と大きな泡を上げながら巨大なHARMOR突撃人型装甲機の壊撃-3型V-2が海底の暗闇へ沈降していく。

 その海底へ沈む自機を一瞬見てから、ようやく海面まで浮上した敵パイロット。

 ヒビ割れたガラスシールドを開けて呼吸をする。

「ブハーッ!うわー!死ぬかと思った。ランドセル、ハー、ハー。水蒸気爆発しなくて良かったぁ。ハー、でも、海中でボカボカ爆発してたけど。ハー、ハー。もう、もうー!もう沢山だ。ハー、ハー。えーここは、海岸までどの位あるんだ?えー?俺の対ホーミングスキャン・ジャマー中隊はどうなったんだ?えー?隊長や童(トン)は?」 

 海面で浮かびながら周囲を見るトゥ四級軍士長。

 苫小牧市街地方面を見ると、上空で戦闘をしながら自軍のHARMORの大群が市街地へ向かっている。

 小さくて眩しい、オレンジ色のバーニアの光の大群が苫小牧市に向かって遠ざかって行く。 

 対空攻撃の破裂する爆煙が次から次に、空一面に上がっている。もの凄い対空砲火だ。


( バリバリバリ!ドドドド!ドンドンドン! )


 空にこだまする無数の破裂音。
 多数のミサイル音。
 爆発煙の中を味方の残存部隊が次々に進んでいた。

 その中を進んで行く味方の海兵大隊。

 トゥの目視で目的の苫小牧市海岸へはまだ5キロ以上はある様に感じた。

 改めて空を見るトゥ

 恐らく、自分達の対ホーミング部隊は全機破壊されたのだろう、黄色いモヤも無く自軍の大群が進んでいたのだが、一瞬にして対空砲火が止まったように見えた。

 次々に作られていた対空砲火の炸裂煙が止まったように見えたのだ。

 目を細めて市街地方面を見て、ニヤける涂。それと同時に、味方モービルが次々のランディングを始めているようだった。

 味方のバーニアの眩しいオレンジ色の光が、ドンドン地上に吸い込まれるように見えた。 

 両手を上げて歓声を上げる涂だった。

「おー!対空砲火が止まったのか?どうした!小日本人。あははっ!弾切れかぁー。あははっ。行け、行け、行けー!小日本人をぶち殺せー。行けー!負けるな同志っ!ハー、ハー……さぁ俺も行こうか。ふー!」

 海上で、思いっきりため息をつく涂だった。でも、あきらめて泳ぐしかなかった。

「この距離、泳ぐのかぁ。ちくしょー!」

 嫌々、泳ぎ始めた。

 泳ぎながら、だんだん直近の事象を思い出す涂。思わず目をつむって口をへの字にした。

「うわー、そうだった。俺に飛び掛かって来たんだな。」

 自機に飛び掛かって来る敵(シーラス)のHARMORの「シルフィZERO」の姿。

 物凄い衝撃で気を失ったのだ。

 そして、涂が気が付くとすでに海中だった。

 コクピット内へ噴き出す大量の海水。

 コクピットシールドをパージさせて無我夢中で海面まで泳いで浮上して来たのだ。

「うわーそうだ。そうだ撃墜されたんだな。……あっ?生きてるかな?AI?コンチェム?(クジャクかぁさん:涂のコール名は孔雀:コンジャック。それにちなんでAIマスコット名のコンチェム)聞こえるか?コンチェム応答してくれ。……。」


 海底に横たわる涂の自機のコンチェム。
 壊撃-3型V-2。

 胴体の前面を破壊され機体。

 その開かれた暗いコクピットのコンソールに、数か所に電源が付き始めた。

 海底に沈む、横たわる機体が再稼働したのだ。

 海兵隊仕様の機体。
 頑丈なロシア製の機体だった。

 直接、稼動部位を破壊されない限り海水の侵入位ではダメージは少ないのだ。


( こちらRWT2-CAMC-V2、AIコード:ETC-MC03.0891。只今、トゥ4級軍士長を確認しました。 )
 

「おー!コンチェムッ!コンチェム!生きてた!良かった。それで、コンチェム、お前の周辺状況を報告してくれ。沈んで行くの見て、寂しかった。報告してくれ。爆発しながら沈んで行ったけどぉ、ハー、ハー。だ、大丈夫だったか。」
 

( はい。当機は予定上陸沿岸より推定4500メートルの苫小牧沖、海底38メートル海底に着底しています。 )

「うわーずいぶん深いなぁ。んで、機体の状態は?」

( はい。機体の損傷個所及び欠損ですが、正面胸部AからCブロックの大破。コクピットは完全浸水で使用不能です。 )

「あらまあ。」

( しかし、リモートで海中稼働可能です。 )

「おー!そんで水中推進は?」

( 残念ながら、海面着水時の衝撃で大破。水中ジェット推進システムをパージしました。海底に沈降中、緊急パージで爆破除去しましたので、上尉の目撃したのはそのパージでの爆発だと思われます。 )

「なんだぁ。結局、水中推進だめかぁ。」

( はい。パイロット操縦系統と水中ジェット推進システムを除く、当機本体の全システム、稼働部位に異常ありません。海中での歩行移動は可能です。 )

「海底を歩くってか?」

( はい、上尉。当機、稼働限界は現在の予備電力で、歩行のみは約11分です。 )

「あ~ん。全然、だめじゃん。」

( はい。フュージョン・バッテリーは現在稼働停止。上尉?稼働を致しますか? )

「はあい?海中でか。」

( はい。全ての探査・通信機能が回復します。 )

「そりゃ動けば回復するでしょうに。動けばさ。」

( ただし、武器等、攻撃装備は全装備使用不能。ロケットモーター、各ジェット推進モーターも使用不能です。陸地で上陸後、完全整備か装備アッセンブリーの交換が必要です。 )


「ふ~ん。攻撃はできないかぁ。武器が使えないかぁ。ジャンプもだめかぁ。そうりゃ海底だからなぁ。はい、はい。はい納得~って、じゃなくて。おいっ!ちょっとコンチェム?核融合電池、稼働出来るのか?ホント?マジ!ウソだろう~?もう、海の中で浸水してるだろう。あの~、物凄い敵モービルの激突って言うか、攻撃でさ。使い物にならんだろう。現に僕らが撃墜されて、海に叩き落とされたんだろう?コンチェム、お前さんが無事に稼働してるのが、本当にビックリなのに。お前さんは予備電源で、だろぅ?電池で動いてるんだろ?こんな非常時に嘘つかないでくれ。ははっもう。あはははっ。」


( いいえ。嘘じゃありません。 )

「なに?マジか!」

( はい。 )

「うそぉー!」

( だから嘘じゃありません。 )

「えー!めっちゃ助かるじゃん。」

( はい。このフュージョン・バッテリーのアッセンブリー、JIF-NFB-33型は日本製。茨城製作所製アッセンブリーですので。 )


「あっ!」


( 今、作戦では全機、頑丈で信頼性が高い日本製の核融合電池アッセンブリーを搭載しています。 )

 
「お前、思いっきり信頼性が高い日本製って言いやがって。我が国製は……あはははっ。大事な作戦ではな。しゃーない。あはははっ。でも、敵国のって。今、戦時中なのに。よく手に入ったなぁ。」 


( はい。ビジネス協定はそのまま生きていますので。 )

「はあい?なんじゃそりゃ。」

( 上尉。バッテーリー・アッセンブリーのリブート可能信号を継続的に確認しています。

「っへー!本当に生きている。動いてるし。」

( 仕様書通りなら宇宙空間から地球内気圧への移動EI(大気圏再突入)でも使用可能製品ですので。 )


「へぇー!茨城って。それも第1世代、第2世代のリニア新幹線の超一流のメーカー……どうりで頑丈なハズだ。スゲー。」

 
( このアッセンブリーは地球型惑星内、内水深度120メートルまでの水圧状況下で正常稼働可能です。特に本機体はホワイトタイガー2改。宙空および海兵仕様ですので、海中下でも普通に稼働可能です。 )
 

「へー。じゃコンチェム!稼働頼む。」

( 了解しました。フュージョン・バッテリーの始動開始いたします。アッセンブリ・システムよりリブート信号受理しました。)

「くわー。本当に動くんだ、これがまた。スゲー。」

( 再稼働まで、12、11、10、9、 )

「ふふふっ。その日本を攻めてるんだがなぁ。僕たちは、あはは!なんか、ようわからん世界。ところでコンチェム、海底を移動可能か?」


( はい。もちろん可能です。脚部、腕部、動力系統に異常ありません。通信機器の状況もオールクリア。 )

「よっしゃー!」

( ただし、敵地ですので通信は帝國本部からの制限付きです。 )

「はあい?」

( こちらから通信は出来ません。 )

「なんでよ?救助ビーコン出してんだろ?」

( いいえ、出せません。 )

「なんで。」

( 上尉、当機は撃墜判定されました。 )

「あら。」

( 上尉は戦死判定を受けた模様です。 )

「ぶっ!マジか!」

( はい、残念ながら。その為、作戦完了宣言まで撃墜認定機は受信のみです。 )

「えっ。そんな規定があるんだ。えっ?ちょっと待て、撃墜されたら救助ビーコン発信するのが普通だろうに。」

( はい。しかし、当機は無敵の最新鋭機。その撃墜は認められないとの事です。敵に機体が渡るのもご法度です。 )

「へー。俺達ゃ半島の奴隷か?バカ臭っ。」

( 上尉?核融合正常作動確認いたしました。 )
 

「よし!ってなんか素直に喜べないなぁ。訳も解んないし。まぁいいや。」

( 上尉? )

「はいな。コンチェム大先生、なんでしょうか?」

( コクピットから人的操作、操縦系のコントロールは全く出来ません。が、いつでも行けます。ご指示を。 )

「操縦出来ないのはシャーないけどさ。さぁー!よし!コンチェム。海底、進軍開始する。」


( はい、進軍を開始します。 )


「目的地は苫小牧沿岸まで。僕の回収可能深度に来たら、アームで僕を回収してくれ。」

( 了解しました。 )

「ヘッドギア、シールドにヒビは入っているが浸水していない。海中でコクピットに入る。」 

( 了解いたしました。 )

 海底に横たわっている壊撃-3型V-2が海底の砂煙を上げながら立ち上がった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

「メジャー・インフラトン」序章4/7(僕のグランドゼロ〜マズルカの調べに乗って。少年兵の季節JUMP! JUMP! JUMP! No1)

あおっち
SF
 港に立ち上がる敵AXISの巨大ロボHARMOR。  遂に、AXIS本隊が北海道に攻めて来たのだ。  その第1次上陸先が苫小牧市だった。  これは、現実なのだ!  その発見者の苫小牧市民たちは、戦渦から脱出できるのか。  それを助ける千歳シーラスワンの御舩たち。  同時進行で圧力をかけるAXISの陽動作戦。  台湾金門県の侵略に対し、真向から立ち向かうシーラス・台湾、そしてきよしの師範のゾフィアとヴィクトリアの機動艦隊。  新たに戦いに加わった衛星シーラス2ボーチャン。  目の離せない戦略・戦術ストーリーなのだ。  昨年、椎葉きよしと共に戦かった女子高生グループ「エイモス5」からも目が離せない。  そして、遂に最強の敵「エキドナ」が目を覚ましたのだ……。  SF大河小説の前章譚、第4部作。  是非ご覧ください。 ※加筆や修正が予告なしにあります。

「メジャー・インフラトン」序章1/ 7(太陽の季節 DIVE!DIVE!DIVE!ダイブ!ダイブ!ダイブ!)

あおっち
SF
  脈々と続く宇宙の無数の文明。その中でより高度に発展した高高度文明があった。その文明の流通、移動を支え光速を超えて遥か彼方の銀河や銀河内を瞬時に移動できるジャンプ技術。それを可能にしたジャンプ血清。  その血清は生体(人間)へのダメージをコントロールする血清、ワクチンなのだ。そのジャンプ血清をめぐり遥か大昔、大銀河戦争が起こり多くの高高度文明が滅びた。  その生き残りの文明が新たに見つけた地、ネイジェア星域。私達、天の川銀河の反対の宙域だった。そこで再び高高度文明が栄えたが、再びジャンプ血清供給に陰りが。天の川銀河レベルで再び紛争が勃発しかけていた。  そして紛争の火種は地球へ。  その地球では強大な軍事組織、中華帝国連邦、通称「AXIS」とそれに対抗する為、日本を中心とした加盟国軍組織「シーラス」が対峙していたのだ。  近未来の地球と太古から続くネイジェア星域皇国との交流、天然ジャンプ血清保持者の椎葉清らが居る日本と、高高度文明異星人(シーラス皇国)の末裔、マズル家のポーランド家族を描いたSF大河小説「メジャー・インフラトン」の前章譚、7部作。  第1部「太陽の季節 DIVE!DIVE!DIVE!ダイブ!ダイブ!ダイブ!」。  ジャンプ血清は保持者の傷ついた体を異例のスピードで回復させた。また血清のオリジナル保持者(ゼロ・スターター)は、独自の能力を飛躍的に引き上げる事が出来たのだ。  第2次大戦時、無敵兵士と言われた舩坂弘氏をモデルに御舩大(ミフネヒロシ)の無敵ふりと、近代世界のジャンプ血清保持者、椎葉きよし(通称:お子ちゃまきよし)の現在と過去。  ジャンプ血清の力、そして人類の未来をかけた壮大な戦いが、いま、始まる――。  彼らに関連する人々の生き様を、笑いと涙で送る物語。疲れたあなたに贈る微妙なSF物語です。  本格的な戦闘シーンもあり、面白い場面も増えます。  是非、ご覧あれ。 ※加筆や修正が予告なしにあります。

「メジャー・インフラトン」序章3/7(僕のグランドゼロ〜マズルカの調べに乗って。少年兵の季節 FIRE!FIRE!FIRE!No2. )

あおっち
SF
 とうとう、AXIS軍が、椎葉きよしたちの奮闘によって、対馬市へ追い詰められたのだ。  そして、戦いはクライマックスへ。  現舞台の北海道、定山渓温泉で、いよいよ始まった大宴会。昨年あった、対馬島嶼防衛戦の真実を知る人々。あっと、驚く展開。  この序章3/7は主人公の椎葉きよしと、共に闘う女子高生の物語なのです。ジャンプ血清保持者(ゼロ・スターター)椎葉きよしを助ける人々。 いよいよジャンプ血清を守るシンジケート、オリジナル・ペンタゴンと、異星人の関係が少しづつ明らかになるのです。  次の第4部作へ続く大切な、ほのぼのストーリー。  疲れたあなたに贈る、SF物語です。  是非、ご覧あれ。 ※加筆や修正が予告なしにあります。

【本格ハードSF】人類は孤独ではなかった――タイタン探査が明らかにした新たな知性との邂逅

シャーロット
SF
土星の謎めいた衛星タイタン。その氷と液体メタンに覆われた湖の底で、独自の知性体「エリディアン」が進化を遂げていた。透き通った体を持つ彼らは、精緻な振動を通じてコミュニケーションを取り、環境を形作ることで「共鳴」という文化を育んできた。しかし、その平穏な世界に、人類の探査機が到着したことで大きな転機が訪れる。 探査機が発するリズミカルな振動はエリディアンたちの関心を引き、慎重なやり取りが始まる。これが、異なる文明同士の架け橋となる最初の一歩だった。「エンデュランスII号」の探査チームはエリディアンの振動信号を解読し、応答を送り返すことで対話を試みる。エリディアンたちは興味を抱きつつも警戒を続けながら、人類との画期的な知識交換を進める。 その後、人類は振動を光のパターンに変換できる「光の道具」をエリディアンに提供する。この装置は、彼らのコミュニケーション方法を再定義し、文化の可能性を飛躍的に拡大させるものだった。エリディアンたちはこの道具を受け入れ、新たな形でネットワークを調和させながら、光と振動の新しい次元を発見していく。 エリディアンがこうした革新を適応し、統合していく中で、人類はその変化を見守り、知識の共有がもたらす可能性の大きさに驚嘆する。同時に、彼らが自然現象を調和させる能力、たとえばタイタン地震を振動によって抑える力は、人類の理解を超えた生物学的・文化的な深みを示している。 この「ファーストコンタクト」の物語は、共存や進化、そして異なる知性体がもたらす無限の可能性を探るものだ。光と振動の共鳴が、2つの文明が未知へ挑む新たな時代の幕開けを象徴し、互いの好奇心と尊敬、希望に満ちた未来を切り開いていく。 -- プロモーション用の動画を作成しました。 オリジナルの画像をオリジナルの音楽で紹介しています。 https://www.youtube.com/watch?v=G_FW_nUXZiQ

戦国記 因幡に転移した男

山根丸
SF
今作は、歴史上の人物が登場したりしなかったり、あるいは登場年数がはやかったりおそかったり、食文化が違ったり、言語が違ったりします。つまりは全然史実にのっとっていません。歴史に詳しい方は歯がゆく思われることも多いかと存じます。そんなときは「異世界の話だからしょうがないな。」と受け止めていただけると幸いです。 カクヨムにも載せていますが、内容は同じものになります。

ビキニに恋した男

廣瀬純一
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

アルバイトで実験台

夏向りん
BL
給料いいバイトあるよ、と教えてもらったバイト先は大人用玩具実験台だった! ローター、オナホ、フェラ、玩具責め、放置、等々の要素有り

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

処理中です...