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第6章 バトル・オブ・苫小牧。戦地からの脱出。
第7話 戦友と。
しおりを挟む味方、バルトッシュ中隊が通った、グサグサに荒れた舗装を進む装甲支援車。
全員が集まり、なんとか揺れる車内で歓談する7人と自衛隊隊員たち。
磐田と斉藤の目が合い、お互いグーで拳を当てた。ニッコリしたまま、斉藤に話す磐田。
「本当はオレ達、無人サンパチの補給部隊の警護だったんだが。」
「閣下(舩坂少将)か、宙空将(岩井宙空将)の指示か?」
「いや、実はボス(椎葉繁)とウッチーの差し金みたいだ。」
「えっ!ボス。俺が助けただろ?除隊したんじゃ、」
「なんで?休隊だよ。」
「え?俺、勘違いしてるかぁ?ボスは?今、どうしてるの?ジメちゃん(内方はじめ)は?」
「あー、ウッチーは竜宮城、」
「何だ、竜宮城って?」
「隊に復帰したら教える。(今、教えろよー。)アホ、特機(特別国家機密事項)だ。まぁー、ボスは確か月の第3だ。」
親指を上にツンツンする磐田。
「ふ~ん。共同(日本国軍・自衛隊共同第3、月衛星基地)かぁ。ふ~ん」
その時、磐田のミリタリー・スマハンド、通称ミリスマがバイブレーションした。
「あ、東(アズマ)少尉。」
咄嗟に余計な事を言ってしまった磐田。
東保安監とか、東課長と言うべきだった。
本人は気が付かない。
これで素性がバレたフェニックス事、シーラス情報特務科、諜報員の東久子少尉。
地味に気がついていない八雲以下7名の民間人。
また、また、トドメに斉藤が余計な事を言ってしまった。
「え?あの、俺達を誘導して助けてくれたアズマさん。少尉って?海保の課長さ……。あっ!」
口を押える斉藤に注目する7人。
斎藤の、「あっ!」のリアクションが余計、東さんは誰か?と、全員に刻み込まれた。
周りを見てから、真っ赤になる斎藤貴明だった。
開き直って腕を組み目をつむる磐田。
この馬鹿タレがぁーと、冷たい目で2人の男を見る飛田三曹。
すかさず伊藤武子さん。
「何っ?何、何?東少尉?少尉って軍人さんの事?えっ。メグちゃん、東さんって東課長さん?えっ!海保さんじゃないの?違う東さん?東さんって何人いるの?」
( 磐田隊長?聞こえますか?ユーカピー? )
「アイカピーザッ!スミマセン少尉殿。カムトゥライト(素性が明らかになる)です。いえ、正確にはカムトゥライト気味です。」
至るとこに煙があがる苫小牧市港湾に近づくオスプレイ3。
「あ!……。うーん、エイモス?制服に戻して。私とブルーノート。」
( カスケード変形。海上保安監制服に戻します。 )
腕を組んで眉にシワを寄せて目を閉じるフェニックス。
その姿のまま、海上保安監の制服に戻った。同じくブルーノートも制服に変形をした。
額を人差し指で掻く、田中だった。苦笑いの田中こと、ブルーノート。
「少尉。姉に聞いてみます。か?」
「うっ。……頼む。」
軽く目をつむってから感応波通信を始めるブルーノート。
「こちらブルーノート。ラケルタ(ラテン語でトカゲ)聞こえるか?」
微妙な沈黙の装甲支援車内。
何かに気が付き、高田則子が左側頭部に手の平を当てる。そのまま目をつむって答える、情報特務科潜入隊員の高田則子こと田中紀子。
そんな高田の様子に気が付く赤坂だった。頭を押さえてる姿を2度見した。
「え?な、なん?ノンコ?頭痛いの?」
赤坂の腕をつかんで、左右に刻む様に返事をするラケルタ。
弟の田中恭輔・ブルーノートと感応波通信をしていたのだ。
ゆっくり目を開けると、磐田と飛田と目が合いうなづいた。
斎藤が3人を見て目をパチパチとした。
八雲組合長は早朝からの疲れが出たのか山本に寄りかかってウトウトしていた。
その山本も、拳銃で撃たれたおでこに張られた湿布が気持ち良いのかウトウトしている。
伊藤武子だけがキョロキョロと周りを見ている。
「だから東少尉さんって小樽の、私たちに連絡して来た東課長さんなの?ノンコちゃん?メグちゃん知ってた?」
「いえ、いえ、いえ。私は知りませんよ。ねー?ノンコ。」
高田の腿に腕を置いてゆする赤坂。その赤坂の腕を避けた。そしてその時、高田の服が変形を始めた。高田の腿当たりを見ていた赤坂。下から全身を見る赤坂。
「ぎゃー!何っ!ノンコ!」
「わわっ!高田さん!」
「えっ!どうしたの?あ!なんてカッコ!えっ!うわっ!」
伊藤武子の斜め横にすわっている飛田と、入れ口際に座っている磐田もカスケード変形を終えて、艶のある、硬そうなバトルスーツ姿になっていた。ウトウトしていた山本と八雲も驚いて目をマルマルと大きくしている。
磐田が、高田、イヤ、コールネーム(ラケルタ)の田中紀子と目を合わせる。その目線をなぞってラケルタの目を見る赤坂恵美。
「ノンコ、どういう事。」
グレーのバトルスーツ姿の田中紀子。
ロボット忍者のような姿のバトルスーツ。
背中には交差して日本刀の柄が両肩から出ていた。その日本刀の柄からラケルタの肩から腕をゆっくり手でなぞる赤坂だった。
ヘッドギアから首筋、肩から肘まで白い線で繊細な幾何学紋様が描かれている。
その様子だけでも、自分がノンコ、ノンコと言っていた友人が別次元の戦闘員か、なにか特別な組織の人間と理解出来た。
そして、装甲車の後部に目をやると磐田と飛田も色は黒で形が違うがカスケード変形をしてSF映画に出てくる様な戦闘服になっている。
やはりヘッドギアから首、肩腕までオレンジの色で幾何学紋様が描かれていた。
身を乗り出して斎藤を見ると、斎藤は理解出来たのか、腕を組んで目をつむっていた。
山本、八雲組合長、伊藤武子は驚いたままキョロキョロしている。
「メグ?御免。細かい事は竜宮城に行ってから話すよ。今はザッと。聞いて。皆さんも聞いてください。」
手を組んで肘を付けて前のめりで周りを見るラケルタ。
一度、赤坂の膝を、前に脚を伸ばして座る井上係長の肩を優しく叩いた。
井上も腕を組んで横に座るラケルタを厳しい顔で見始めた。
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