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第6章 バトル・オブ・苫小牧。戦地からの脱出。

第3話 間一髪!爆発、組合トラック。

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 兵士達に援護誘導されて、装甲車に飛び乗る4人。女性兵士と磐田も乗り込み観音扉を閉めた。
 
 ニッコリしながら一息する面々。
 
「飛田、車内スピーカー。」

「はい。隊長。」

 車内スピーカーを開く飛田3曹。

 直ぐに音声が来た。

「隊長。敵、着上陸兵確認。味方後方支援部隊と交戦を開始しました。後方支援の陸軍、普通科釧路第13師団より交戦報告。送れ。」

 うなずいてから喉マイクに指を当てる磐田。

「了解、こちら磐田。南原班、回収開始!送れ。」

「佐々木了解。ベータ(南原)班の回収行動に移ります。」

 動き出す装甲車。
 その時、装甲車の壁を小石か、何か無数に叩く音が聞こえた。空き缶を落としたような軽い音。

( カ、カ、カ、カッ。 )

( カンカンカンカンッ! )
 
 そして、至近距離での爆発音。

 八雲たちが乗っていた黄色い組合トラックが携行対物ミサイル攻撃を受けたのだ。

 
( バイン! )
 

 しかし、完全装甲、完全防音の支援車の中。

 全く揺れも、振動も無かった。

 爆発音も、被弾音も遠くで聞こえる感じだった。
 キョロキョロする八雲、山本と伊藤武子。

「佐々木?状況、送れ。」

「避難市民のトラックが、敵の携行兵器と思われるミサイルの攻撃で爆破。送れ。」 


( え~! )
( うそ~! )
( 危なかった! )
( うわーギリ、助かった! )


「引き続き、敵ホーミング(追尾)波確認。ロックオン確認、ホーミングジャム(ロックオン妨害装置)発射。回避行動開始!送れ。」

「対人許可。フラッシュデコイ放出。送れ。」

「了解。20ミリ(支援用20ミリチェーンガン)発砲開始。デコイ放出!送れ。」

 自動20ミリチェーンガンが火を噴いた。 


( ブ、ブゥ、ブー、ブー! )


 吹き飛ぶ敵、上陸部隊兵たち。

 更に支援車輛から攻撃が続いた。

 フラシュ・デコイに近づいた敵歩兵。

 
(( パッ!パッ! ))


( う、うわー! )
( う!目がぁー! )

 敵兵士が全周波数の光源のフラッシュでたじろんだ所で装甲車のチェーンガンの洗礼を受けた。


(( ブー、ブー! ))


( ギャー! )
( ウガー! )
 
 一瞬でバラバラになり砕ける敵兵士たち。海辺に後退を始める。

「佐々木、ベータ班報告は?遅れ。」

「ベータ班より報告。3名を保護した。送れ。」

「了解。ベータ班の保護市民回収急げ。送れ。」

「回収準備了解。敵は後退の模様。更に敵探索、周辺警戒開始します。送れ。」

「磐田了解。」

 フェリーターミナルから猛ダッシュの8輪の支援車。

 敵、威力偵察部隊の攻撃を避けながら、井上、赤坂、高田が待つ国道奥の建物の裏手に向かった。

 建物の裏で10名の陸軍兵士に周囲を守られながらしゃがんで息を付く、井上係長たち。

 その井上に女性兵士から紙ジュースを渡されて飲み始めた。

「あ、ありがとうございます。」

「あっ。有難う。」

 ニッコリする2人の女性兵士たち。
 3人に解説した。

「もうすぐ、八雲組合長たちがみなさんをピックアップしに、ここに来ます。」

「えっ!マジっ!」

「なんでわざわざフェリーターミナルビルへ行かずに、ここ?って思ってたけど。」

「はい。組合長たちも装甲車に乗車してここに向かってます。敵兵も上陸始めましたので敢えて戦闘地域の海岸から離れて、皆さんを離れたビルの裏にお連れしました。」

 皆から少し離れた所では南原隊長が、何か指示を受けているのだろう、うなずきながら通信していた。

「なるほど。了解しました。」

 通信が終わった南原隊長。こちらに急いで走って来て、女性隊員に指示を与えた。

「さぁ。戸島と菊池!」

「はっ!」

「2人はこのまま3人を警護、男性の介助で支援車に搭乗させよ。3人の搭乗が終わり次第周囲を警戒。その後、撤退する。俺たちは撤退指示が出た。石油備蓄基地を放棄、撤収する。あれだ、見ろ。」

 アゴで横を差す南原。

 ビルの角から見える海側の方面だった。

 先程まで銃撃戦をしていた釧路の陸軍兵たちが大勢、道路手前の低い道を大勢駆け足をして撤退していた。

 砲塔を後ろに向けながら幹線道を走る旧10式改の戦車群。8輪の31式戦闘支援車も続いて後退のようだった。

 その時、南原が何かに気が付いた。

 バックで八雲たちを乗せた装甲支援車が東側からやってきたのだ。

「よし!」

 ヘルメットの上で握りこぶし上げてから、手を広げて上下にする南原。

 一斉に射撃姿勢のまま散開する南原の小隊兵。

 機械の様に、正確に配置に着いた。

 小隊が作る警戒の円の中へ、両方の観音扉を開き始めた支援車がバックでゆっくり侵入した。

 止る前から、支援車の中から磐田、斎藤、飛田の3人が音も無く飛び出し、射撃姿勢のままで警戒の輪に合流した。

 ショットガンを持ったままの斎藤が、保護された井上係長と2人の女性保安士に音も無く近づく。

 湾岸組合の上下制服を着て、散弾銃を覗きながら近づく男が来た。

「ん?あー!うえ~斎藤さん!なんで銃持ってるの?」

 振り向く磐田と目が合う斎藤貴明。

「井上係長、後で説明します。さぁ、乗り込みましょう。私達はこの装甲車で、迎えの小樽の海上保安署、本署の東課長と合流します。空からピックアップに来るらしい、です。さぁ。」

「海上保安署の本署って、ヘリコプターか?まぁ、いいや。有難い。」

 無言で、2人の女性が井上を肩に担いで支援車の中に入って行く。

 その先頭を井上係長を女性兵士に任せて、とっとと先に支援車にはいる高田と赤坂。2人の女性に気が付く伊藤武子。

「うわー!メグちゃんっ!則子ちゃんっ!」

「お武ちゃん!」

「えっ?伊藤さん!なんでここにいるの!」

 そこへ、井上が乗り込んできた。

 その井上を高田と赤坂は伊藤とおしゃべりしながら腕を伸ばして井上を手前に転がした。
 
( あっー、痛い!って。 )
 
「ノンコちゃん、メグちゃん。兵隊さんに助けられたのさ。まぁ、みんな無事で良かったべさ。あはは。井上くんも転がる位に元気で。あはは!」

 皆の足元に井上を転がしたまま、手を取り合って喜ぶ老女と2人の保安士。

 雑に扱われた井上が文句を言う。

「痛て、て。もうメグちゃんたち。僕、ケガ人だよ。扱いが荒いなぁ。痛てて。」

「あははっ。御免なさい係長。」

「あはは!井上くん。ごめんなさい!」

「もう、男の癖に文句言わない。がははっ。仕方ないわね。」

「がははって、もう、ノンコちゃんもメグちゃんも。」

 赤坂と高田が笑いながら、井上の背中をさすり上半身をおこして、足元の狭い兵員室の奥の壁へ井上の背中を着けた。

「よっこらしょっと!」

( 痛っ! )
 
「がははっー!太ももの裏、係長怪我してるっしょ!怪我しているからこんな硬い席に座って傷が開くべさぁ。文句言わない。」

 井上が、硬い椅子を軽く叩いて確認した。

「あ?そうかぁ?そうだね。ありがとう2人共。ふぅでも。命拾いした。」

 そんな事をしている内に、女性兵士の飛田3曹と斎藤貴明、磐田の3人が乗り込んで観音扉を閉めた。

 直ぐに通信を始めるリーダーの磐田だった。
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