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第5章 バトル・オブ・苫小牧。千歳、侵入。
第8話 苫小牧フェリーターミナルビル。
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一方、八雲組合長、御一行様。
少女小隊のバーニア噴射で、ホコリだらけの事務所の壁に、もたれ座る4人。
オデコのコブをさすりながらため息をつく山本検査士。
「ふー。組合長?どうしますか。」
義理の息子へ、立ち上がりながら単眼鏡を渡す八雲。
「あ、お義父さん!僕の!どこにありました?ロッカーですか?」
「んだぁ。オメーのロッカーにあったべさ。んで、これでよ、組合事務所の陸屋根からオメー達ば、この望遠鏡で覗いてたら、あん娘にさ。」
人差し指と親指を開いて、銃を撃つ仕草をする八雲組合長だった。
「パンパンーっ!てな、あはは!2人とも撃たれてさぁ。もう、なまらはんかくさいべさ。もう心臓止まった思いしたべや。」
苦笑いする2人。
話に割って入る老女。
「え?えっ?知らない、何だべ?山さん、貴ちゃんもテッポで撃たれたの?なんで組合長、教えてくれないのさ!」
ここから、また訳の解らない話がエスカレートするんだろうと、目を合わせる八雲と斎藤。
斎藤が伊藤武子の話をさえぎる。
「いやいやいやー。実は山さんも、僕も生きているのはお武さんのおかげだべさ。」
斎藤に、話を合わす山本。
「んだべ。この両面テープで、俺のメットにさ、この布ば、付けてくれたお陰だべさ。」
ヘルメットから紺色の布の半分を剥がして伊藤武子に見せる。
「この布だべ、布。これ。こんだべ。」
「え?何?何?」
八雲組合長も何故、2人が至近距離で少女にピストルで撃たれたのに生きているかを忘れていた。
弾が当たった所の繊維が潰れて丸くスベスベしている。
「こん布が鉄砲の弾ば、止めたんだべや。」
順番に手にとって指で確認する伊藤武子と、八雲組合長。
「へー!東(ヒガシ)さんって人から段ボールで送ってくれた布。ふーん。」
「コンブできて、イテーべー!死ぬよりいいんだけんども。」
山本のコブを下からと横から覗いてからニタニタする武子。
「これ、柔らかい、いい布よ!余った分、勿体無いから、自分の古い制服に縫い付けたべさ。」
自分のスカートとか、上着の襟を皆んなに見せる伊藤。
驚く男性陣。
「えー!」
「お武さん、全身って、最強だべや!」
「そうなの?」
「んだ。スーパーガールだべさ。テッポの弾、跳ね返すしべし。」
「ふん!なまら、はんかくさい事言ってさ。んーな事ないべさ。」
「イヤイヤ、ホントだってばよ。なぁ貴明。」
「ホントです。僕もデコと髪の生え際、これコブ。(あー、ホントだわ。)後、胸。これこれ。」
胸のシャツを下げて、青タンを武子に見せる斎藤。
山本や斎藤が伊藤に絡んで話し始めた時、八雲が事務机に座り込んだ。
机の上下を撫でながら、次第に目がまたウルウルし始めたのだ。
単眼鏡から組合ビルの陸屋根から除いた光景を思い出した。
今、座っている席はたしか、髙橋副組合長が。
向かいの机や床には女性職員が撃たれて倒れていた筈だった。
何やら薬品の匂いがする。
さすった手の平と、机の匂いかぐ組合長。その行動に気がつく斎藤たち。
戦闘が始まった苫小牧市内。
理由は解らないが、救急隊とか自衛隊が血糊や証拠を消す為に薬品を使って拭いたと思った。
少女に撃たれて倒れた3人の光景が目に浮かんできた。
「お義父さん何やってんだべ?どうかしましたか?」
急に手首で口を押さえて、声を出さずに泣き始める八雲組合長。
涙がボロボロ落ち始めた。
「く、く。ここの席に高橋が血~だらけでよ。早乙女さん、川橋さんもこの前に倒れててさ。」
また、両手で顔を押さえて真っ赤になって泣き始める八雲。
「このよ、この机とか薬品臭い。警察や救急車来てた。早乙女さん、川橋さん。高橋も連れて行ってもらったんだべか。うっ。うっ。」
やっと状況が理解出来始めた伊藤武子。
泣きじゃくる組合長の肩を掴む武子。
「なんでさ!涼子ちゃん(早乙女)来月結婚するべさ。アユちゃん(川橋)もやっと彼氏出来て。何で組合長、私に教えてくれなかったのさ!ちょっと!やっぱり昨日、2人が朝3時に来て手伝うって言うの断れば、死ななくて良かったべさ。もぅー組合長!ちょっと!私が髙橋さんに電話しろって!それだったの?もぅだったら、もっと、もっと電話してたのにさ、組合長!」
高橋の机に塞ぎ込む八雲の肩を無理に揺する武子。
しかし、昨日は朝早くからわざわざフェリーターミナルビル事務所に降りて片づけるのが面倒と騒いだ伊藤武子。
だから家族と避難もしないで、2人のOLが来たのだ。
そんな事も忘れてその場限りの感情で騒ぎたてる老女だった。
「ちょっ!伊藤さん。組合長も解ってるから。」
斎藤が武子の腕を持ったが、無理にその腕を振りはらう老女。
「何でさ!だから私は避難しようって昨日言ったじゃない!3人が死んだんだべ!」
激情する老女。
「もう、いいから伊藤さん。皆、解ってるから。」
「だって!だって死んだんでしょ。これからの若い子が。わーん!」
泣きながら、組合長の肩を持ったまま膝から崩れる伊藤武子。
ゆっくり組合長と武子を離す山本検査士。
しかし、そんな彼らを上空から見ている目があった。
少女小隊のバーニア噴射で、ホコリだらけの事務所の壁に、もたれ座る4人。
オデコのコブをさすりながらため息をつく山本検査士。
「ふー。組合長?どうしますか。」
義理の息子へ、立ち上がりながら単眼鏡を渡す八雲。
「あ、お義父さん!僕の!どこにありました?ロッカーですか?」
「んだぁ。オメーのロッカーにあったべさ。んで、これでよ、組合事務所の陸屋根からオメー達ば、この望遠鏡で覗いてたら、あん娘にさ。」
人差し指と親指を開いて、銃を撃つ仕草をする八雲組合長だった。
「パンパンーっ!てな、あはは!2人とも撃たれてさぁ。もう、なまらはんかくさいべさ。もう心臓止まった思いしたべや。」
苦笑いする2人。
話に割って入る老女。
「え?えっ?知らない、何だべ?山さん、貴ちゃんもテッポで撃たれたの?なんで組合長、教えてくれないのさ!」
ここから、また訳の解らない話がエスカレートするんだろうと、目を合わせる八雲と斎藤。
斎藤が伊藤武子の話をさえぎる。
「いやいやいやー。実は山さんも、僕も生きているのはお武さんのおかげだべさ。」
斎藤に、話を合わす山本。
「んだべ。この両面テープで、俺のメットにさ、この布ば、付けてくれたお陰だべさ。」
ヘルメットから紺色の布の半分を剥がして伊藤武子に見せる。
「この布だべ、布。これ。こんだべ。」
「え?何?何?」
八雲組合長も何故、2人が至近距離で少女にピストルで撃たれたのに生きているかを忘れていた。
弾が当たった所の繊維が潰れて丸くスベスベしている。
「こん布が鉄砲の弾ば、止めたんだべや。」
順番に手にとって指で確認する伊藤武子と、八雲組合長。
「へー!東(ヒガシ)さんって人から段ボールで送ってくれた布。ふーん。」
「コンブできて、イテーべー!死ぬよりいいんだけんども。」
山本のコブを下からと横から覗いてからニタニタする武子。
「これ、柔らかい、いい布よ!余った分、勿体無いから、自分の古い制服に縫い付けたべさ。」
自分のスカートとか、上着の襟を皆んなに見せる伊藤。
驚く男性陣。
「えー!」
「お武さん、全身って、最強だべや!」
「そうなの?」
「んだ。スーパーガールだべさ。テッポの弾、跳ね返すしべし。」
「ふん!なまら、はんかくさい事言ってさ。んーな事ないべさ。」
「イヤイヤ、ホントだってばよ。なぁ貴明。」
「ホントです。僕もデコと髪の生え際、これコブ。(あー、ホントだわ。)後、胸。これこれ。」
胸のシャツを下げて、青タンを武子に見せる斎藤。
山本や斎藤が伊藤に絡んで話し始めた時、八雲が事務机に座り込んだ。
机の上下を撫でながら、次第に目がまたウルウルし始めたのだ。
単眼鏡から組合ビルの陸屋根から除いた光景を思い出した。
今、座っている席はたしか、髙橋副組合長が。
向かいの机や床には女性職員が撃たれて倒れていた筈だった。
何やら薬品の匂いがする。
さすった手の平と、机の匂いかぐ組合長。その行動に気がつく斎藤たち。
戦闘が始まった苫小牧市内。
理由は解らないが、救急隊とか自衛隊が血糊や証拠を消す為に薬品を使って拭いたと思った。
少女に撃たれて倒れた3人の光景が目に浮かんできた。
「お義父さん何やってんだべ?どうかしましたか?」
急に手首で口を押さえて、声を出さずに泣き始める八雲組合長。
涙がボロボロ落ち始めた。
「く、く。ここの席に高橋が血~だらけでよ。早乙女さん、川橋さんもこの前に倒れててさ。」
また、両手で顔を押さえて真っ赤になって泣き始める八雲。
「このよ、この机とか薬品臭い。警察や救急車来てた。早乙女さん、川橋さん。高橋も連れて行ってもらったんだべか。うっ。うっ。」
やっと状況が理解出来始めた伊藤武子。
泣きじゃくる組合長の肩を掴む武子。
「なんでさ!涼子ちゃん(早乙女)来月結婚するべさ。アユちゃん(川橋)もやっと彼氏出来て。何で組合長、私に教えてくれなかったのさ!ちょっと!やっぱり昨日、2人が朝3時に来て手伝うって言うの断れば、死ななくて良かったべさ。もぅー組合長!ちょっと!私が髙橋さんに電話しろって!それだったの?もぅだったら、もっと、もっと電話してたのにさ、組合長!」
高橋の机に塞ぎ込む八雲の肩を無理に揺する武子。
しかし、昨日は朝早くからわざわざフェリーターミナルビル事務所に降りて片づけるのが面倒と騒いだ伊藤武子。
だから家族と避難もしないで、2人のOLが来たのだ。
そんな事も忘れてその場限りの感情で騒ぎたてる老女だった。
「ちょっ!伊藤さん。組合長も解ってるから。」
斎藤が武子の腕を持ったが、無理にその腕を振りはらう老女。
「何でさ!だから私は避難しようって昨日言ったじゃない!3人が死んだんだべ!」
激情する老女。
「もう、いいから伊藤さん。皆、解ってるから。」
「だって!だって死んだんでしょ。これからの若い子が。わーん!」
泣きながら、組合長の肩を持ったまま膝から崩れる伊藤武子。
ゆっくり組合長と武子を離す山本検査士。
しかし、そんな彼らを上空から見ている目があった。
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