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第4章 バトル・オブ・苫小牧。敵、着上陸侵攻開始せり!

第3話 切り替えろ!奇襲から飽和攻撃防衛へ!

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 奇襲にしては何か変だと思った御舩。
 
 左眉が上がった。
 
 御舩は、メリッサに向かって何やら指示を出した。
 
 メリッサは、即座にウーラノスCDCの管理部門に連絡と指示を出し始めた。
 
「これから全部隊へ作戦発動の指示を出すが、……桐生君、現状の再報告頼む。」

 桐生上級曹長の報告。

「はい、長官。味方被害は第8特別中隊、2機のファイティング・スーが小破です。今のところの戦果は敵チャーリー小隊1機の完全撃破のみ。その他、敵アルファー、ベータ、チャーリー小隊は健在です。」

「岡島君、サンパチの無人補給は。後衛指揮所に到着したか?」

「はい、えー少々お待ちください。……無人サンパチ21輌(自衛隊・装備転換用38式補給走行トレーラー)は既に、道央高速道路上の臨時共同・後衛指揮所に到着しています。」

 御舩は下を覗き、段上真下のUSASF(アメリカ合衆国宙軍)の現場指揮官に司令をした。

 司令を受け、直ぐに配信する男性指揮官。

「そうか。よし、ウイング少尉。(イエッサー。)小破した2機は共同指揮所まで後退司令。(イエッサーッ!……ディシズウォーニホームコマンド。ディシズウォーニホームコマンド。シグナルワン、ホワイト・イエティー、ドォユーカピー?)桐生君。(はい。)岡島君。(はい。)そして7番機から9番機の該当国の諸君!よろしいか?全部隊通信。」

 ウーラノスCDCの全部隊放送が始まるのだ。
 
(( はっ! ))

(( イエッサーッ! ))
 
 立ち上がり敬礼をして返事をする自衛隊・日本国軍のオペレーターの2人。

 そして各国の指揮官が立ち上がって敬礼をした。
 
( 現在、北海道苫小牧市港湾に威力偵察と思われる敵HARMOR部隊が偽装貨物船より上陸し、侵略攻撃を仕掛けているが、これは交戦中の台湾・金門県と同様、陽動部隊である。深追いはするな。繰り返す。これは敵の陽動攻撃なのだ。各特別中隊はアタッカー・コマンダー各1機を警戒任務で残し、残りは直ちに敵、飽和攻撃に対応するため、地対空およ対HARMOR迎撃戦闘準備、装備換装をする。各アタッカーおよびスナイパーはインターセプションのツー(迎撃-2「地対空仕様」)。コマンダーは白兵戦装備に換装。各中隊へ直接連絡。 )


(( はっ! ))

 
 続く、御舩の司令演説。

 
( そして、苫小牧市防衛はシーラスマザー、およびシーラス・NATO共同参謀本部分析の敵、奇襲攻撃対策を破棄。只今より敵、飽和攻撃、波状攻撃防衛に切り替える。只今より敵、飽和攻撃、波状攻撃防衛に切り替える。 )


(( はっ!))


 一斉に通信を始める各国の事務武官たち。

 オービター7、8、9機の特別編成中隊へは、桐生が直接司令を与え始めた。

「こちらウォーニフォーム司令本部、特編各中隊へ。陽動部隊である。深追いはするな。各中隊はアタッカー・コマンダー代表で各1機を警戒任務で残し、残りは直ちに迎撃装備を換装。各アルファーマイクおよびシエアマイク全機インディーアのビストロトゥー。チャーリーマイクはクローズクォーターズに換装。只今より奇襲攻撃対策を破棄。敵、飽和・波状攻撃防衛に切り替える。繰り返す。こちら……。」


 その時、桐生が座る日本側コンソールの一段下の台湾チームの男性事務武官が、御舩を見ながら立ち上がった。

「長官!台湾方面のビッグマム全機、 SHM(スナイパー・HARMOR)ダイブ始めます。」

 うなずく御舩。

 目下、シーラス・台湾は、日本の千歳シーラスワンとシーラス2ボーチャンから各種司令、情報の戦略・戦術サポートをうけて作戦行動を立てていたが、スナイパー・HARMORのダイブと共に、全権がシーラス・台湾に移る約束なのだ。

 上空からの情報の戦略・戦術サポートも、シーラス直営のシーラス2ボーチャンから米軍のシーラス1アレースへ移行される。

 スナイパーHARMORの放出は、台湾防衛戦の目途が立ち、主要戦闘も終わった事を意味する。

 AXIS残敵の掃討戦が、始まる事を意味していたのだ。

 もし、現時点で苦しい戦闘中、もしくは劣勢であれば、スナイパーは放出されず「ビッグマム」各機に収まったまま上空で待機する計画だった。

「よし。台湾チーム(イエッサー!)、ポーランドチーム(イエッサー!)ボーチャンへ、ボーチャンからアレースへ戦略・戦術権、切り替え開始。」


(( イエッサー! ))


 オペレーションルームの中央階段左のポーランド宇宙軍の男性事務武官と女性事務武官が立ちあがり御舩に敬礼をした。

 これで、今回の台湾陽動作戦と、北海道防衛戦が完全に切り離されたのだ。
 
 北海道、しいては日本の防衛作戦の戦略・戦術の全ての権利が千歳シーラスワンに移り、シーラス2ボーチャンと共闘して、全力で集中対応できるのだった。
 
 台湾チームの男性2人の事務武官もそのまま敬礼をした。

 2チームは、お互いにインカムで連絡を取り合いながら切り替えの操作を始めた。

 その2チームを壇上からチラチラッと見て、腕を組んでから画面に見入る御舩だった。

 巨大正面モニターの左は、シーラス台湾の林少尉が作った戦術画面になっているが、その半分下に、ビッグワンから送られるスナイパー・HARMORの発射シーンが写しだされた。

 恐らく整備兵のリンダ上級准尉がいるベイロードペイの天井付近、射出監視所のカメラなのだろう。開かれたゲートの四方から伸びる4本のマグネティック・ガイドウェイ。

 怒涛の噴射炎が地球に吸い込まれる様な映像。

 「ビッグワン」の機体が上昇を始め、右下の飛行高度を示すカウンターが19000からどんどん、カウントアップしている。

 注目するオペレーションルームの事務武官たち。

 その時、3つの黒い物体をつけた白い輪の骨組みの円柱が射出された。

 弾かれて降下するスナイパー・HARMORの放出する姿だった。
 
 白い画面奥に、3つの黒い物体が吸い込まれていく。
 
 同じ画面を見るアフロダイテイの擬装艦橋に立つ郭少将と秘書官の王中佐。

 その郭の元に同時にルフェーブル大佐の「ビッグワン」からスナイパー・HARMORを全機パージ・放出した報告が入った。

 衛星軌道上に浮かぶ、衛星ボーチャンの台湾チームにも同時に台湾・アフロダイテイCDCより報告が入った。

 そのボーチャン、台湾チームの女性オペレーター事務武官、球面の右上のフランスチームの2人組の後ろで浮遊しているソフノフスカを見て報告を始めた。

 立ち上がったのは台湾宇宙軍・シーラス台湾・呉淑華(ウー・シューフア)台湾航空宇宙軍一等士官長(上士)だった。大きな声でソフノフスカ司令に報告した。

( 長官!シーラス・台湾、アフロダイテイCDCより入電。 )

 フランスチームの3Dモニターを腕を組んで睨みながら頷き、返事をするソフノフスカ。

「呉上士(マスターサージェント・ウー)入電読み上げ、頼みます。」

「イエッサー!」

 球形令室の全員が手を止めて、各自の正面の刻々と変わる3Dモニターをだまって見始めた。

 呉淑華ウー シューファー一等士官長がその場で立ち上がり、敬礼をしてから大き目な声で指令電文を読み上げた。
 
( アフロダイテイCDCより入電。ロフテッド軌道急襲攻撃部隊はスナイパー・HARMORの全数放出を完了した。これより台湾全域の司令全権をわがシーラス・台湾へ委譲されし。只今より有告(停戦命令)まで、全ての戦闘・戦術権、司法権、決定権の受理を確認す。繰り返す。これより台湾全域の司令全権をわがシーラス・台湾へ委譲されし。只今より有告(停戦命令)まで、全ての戦闘・戦術権、司法権、決定権の受理を確認す。以上です。 )
 
 腕を組みながら大きく頷くソフノフスカ。

「よし!清水、警報。」

「イエッサー!」

 スマハンドで操作をする護衛兼秘書、日本国宙軍、新格闘徽章付きの清水明子少尉。

 シーラス台湾へ、戦略司令権が切り替わった警報を鳴らした。


(( キュイーンキュイーン。キュイーンキュイーン。 ))


 千歳シーラスワンのオペレーションルームにも切り替わった警報が鳴る。

(( キュイーンキュイーン。キュイーンキュイーン。 ))

 一斉に作業を始める千歳シーラスワン・ウーラノスCDCのオペレーターたち。

 そしてシーラス・台湾のアフロダイテイ偽装艦橋の全館に流れる切り替えの警報。
 
(( キュイーンキュイーン。キュイーンキュイーン。 ))
 
 既に切り替え準備も終わり、戦況を眺めるクォ少将と秘書の王中佐がベランダに立っていた。
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