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第2章 強者どもの夢の跡。

第1話 ブレイクターン(反転上昇)準備!ビッグマム。

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 降下を続ける巨大なロボットの1群。
 
(( ヒューン、ゴーッ!シュッシュッ! ))
 
(( シュ、シュ、シュッ! ))
 
(( シュ、シュ、シュッ、ゴゴゴゴー! ))

 アタッカー・HARMORが矢のように突き進んでいく。
 
 大金門島、北部急襲部隊のオービター・1番機「ビッグワン」から降下した、ローマン・マズル大佐のAA-1からAA-6の6機のアタッカー・HARMOR部隊だ。
 
 そして、少し離れて4番機「ビッグフォー」、機長のトム・レイヤー大佐が放ったAA-7からAA-12までの6機のアタッカー・HARMOR部隊、総勢12機が一直線に、大量破壊兵器のエアースパーク・マーク2(気化爆弾)予定爆心地へ向かって降下しているのだ。
 

 ルフェーブル大佐が機長をするオービター「ビッグワン」。
 

 オービター司令室、コクピット中腹に座る情報戦略・戦術コマンダーの2人の女性士官たち。
 
 彼女たちに更なる緊張が走る。
 
 いよいよコマンダー・HARMOR放出の為の高度15000メートルでのオービターの急反転ブレーク(反転上昇)と、気化爆弾の爆発タイミングを合わせると言う最も難しい局面になった。
 
 敵の目を欺きあざむ、島へ上陸するという最も大切なタイミングなのだ。
 
 オービターから、第3群と第4群のコマンダー・HARMORを放出する為には、速度800キロ以上を保ち、指定安全慣性Gの(8G以内)を維持しながら急反転するのだ。
 
 両機長たちには、職人ワザ近いに近い操縦が求められるのだった。
 
 ルフェーブル機長がインカムで4番機機長のトム・レイヤー大佐に話しかける。

 
「トム。コマンダー放出まで、いよいよ3分を切ったな。」
 
「ハイ、大佐。」
 
「本作戦、各オービターのメインイベントだ。いいかトム。」
 
「はははっ。この為に女房や娘家族にうとまれながら、生きてきました。腕が鳴りっぱなしです。」
 
 ルフェーブルに目を合わす隣席のオナー副機長。
 少し、はにかんだ笑顔で見返すルフェーブル。
 
「フッ。了解。さぁオナー大尉。頼む。」
 
「イエッサー!」
 
 敬礼をしてから、笑顔から厳しい目つきになり、喉のインカムマイクを押さえてペイロードベイ内の機内放送を行うオナー副機長。
 
「ペイロードベイ技術者各位。これより、」

( ペイロードベイ技術者各位。これより第3群。コマンダー・HARMOR射出を行う。 )
 
 ここからは、オービター内のエンジニアたちの戦場になるのだ。
 
 コマンダー・HARMORの射出準備中のエンジニアリング・パワードスーツを着た技術者達が手を止めて、お互いうなずき合った後、左手のカウントダウン表示を出した。
 
 ガラス張りの狭いエンジニアリング指揮所で、長い白髭で年配のエンジニアが正面の大きなデジタルカウンターの数字を90に合わせた。
 
 まだカウンター数字の発表のされていないのに勝手にカウントダウンを90秒に合わせたのだ。
 
「まだ、技術大尉。カウントダウン指示が来てないでしょう。何を勝手に。」
 
 若いエリートエンジニアが注意して大尉の肩を持つと、その老人は振り向き人差し指を左右に振った。
 
 そして、シートベルトを確認してから腕を組んだ。
 
 キャノピーの形をした射出コントロールブースに寝そべるリンダ・アイランド上級准尉と、オービターの巨大な扉のコントロールブースに居るアイダ・ブラン准尉がお互いの親指を上げて確認をした。
 引き続き行われるオナー副機長の機内放送。
 
( ベイロードベイの技術者諸君の更なる奮闘を祈る。エアスパーク・マーク2イグニッション90秒前カウンター準備。同時に第3群のコマンダー・HARMORを射出する。 )

 
(( オォーッ! ))
 
 腕を上げて答えるペイロードペイのエンジニアたち。
 
 エンジニアリング指揮所の中。
 機内放送の90秒がピッタリ一致したことに驚く若いエンジニア達。
 
「スゲーッ!ピッタリッ!」
 
「なんで初めての実戦で乗るビッグワンなのに。なんでカウントダウン数がわかるんですか?」
 
「東部ヨーロッパ戦線依頼ずっとローマン愚連隊で、技術者の感ってやつですね。凄いです技術大尉。」
 
 良い子ぶって老人を注意したエリートエンジニアは仕方なく口をへの字にして手を開いた。
 驚いて笑い始める若いエリートエンジニアたち。
 左右後ろのエンジニアも首を振ったりニヤけたり。
 
 そんな彼らを見て、唇をへの字にしてから、小刻みにうなずき満足したのか白髭を撫でるベテランエンジニアだった。
 
 それから腕を伸ばして、スタートスイッチを押す準備をした。

 引き続き機内放送をアナウンスするオナー副機長。
 
( 時計合わせー、よろしいか?ゴー、ヨン、サン、フタ、ヒト、イマッ!全機!カタパルト用意!マグネティック・ガイドウェイ出せー!作業終了のスタッフは直ちにブレイクに備えろ!以上。 )

(( ガラガラッー、ドン! ))

 「ビッグワン」の後部観音開きのハッチの上下に4本、電磁カタパルトの棒が、外に突き出た。
 
 いよいよ、第3群コマンダー・HARMORの放出が始まる。
 
 全スタッフ、全オービターのカウントダウン表示も始まった。
 各オービターの中で、手の空いたスタッフたちがクルっと壁から出て来た固定ベルトに、身体を固定した。
 
 固定ベルトに空きがないスタッフは、靴や肘、ヘッドギア後頭部に付いているマグネティック・アンカーを床と壁に固定した。
 
 ルフェーブルとオナーの2人がお互いを見てうなずく。
 後ろから女性事務武官のサリーの声。
 
「機長、エアースパーク・マーク2のイグニッション(点火)ポイント指示あり。西ABエリアは当、北エリアの1.5秒後、東ACエリアは3秒後にイグニッションです。」
 
 司令コンソールの女性士官から報告を受けるルフェーブル。オナーに司令を渡した。
 
「よし、オナー大尉。ブレイク&パージ準備。」
 
 AUTOモードから手動に切り替えて、操縦桿と出力レバーを握るルフェーブル大佐と、隣で飛ぶ僚機のトム・レイヤー大佐。
 
「イエッサー!ブレイク&パージ準備。」
 
 コクピット内のクルー達が各々の準備を始めた。後ろの女性士官に掛け声を掛けるルフェーブル機長。
 
「よし。接近中のマーク2の行動報告。」
 
「イエッサー。機長、当機北AAエリア、エアスパーク・マーク2、現在高度1800より降下中。南南東から接近。45秒後、降下中チームAAに最接近予定予測。機長っ!マーク2各機からイグニッション警告通知を確認。マーク2本体の起爆カウントダウン始まりました。」
 
「よし。いよいよだな。」
 
 緊張しながらも、うなずくオナー副機長。 
 今度はオナー副機長が、コクピット中央2人の女性情報事務武官へ、指示をした。
 
「ムーア少尉、ダン少尉。現在、降下中のチームAAの状況報告。マーク2イグニッション30秒前まで。」
 
 目を合わせて、ニヤッとするサリー・ムーアとエバーレイ・ダンの2人の戦略戦術女性コマンダーの情報事務武官。
 
「イエッサー。降下中アタッカー・チームAA状況報告、カウントダウン70から始めます。……70、69、68、67(降下全機、エアロシェル準備態勢。……エアロシェル装着、……展開姿勢終了報告。シェル展開始めました。)了解。……55、54、53、52、アタッカー部隊、エアロシェル展開終了。(AA2より全機確認しました。)チームAA展開確認。(えー、AA2よりAA5のリセット作業報告来ました。……よし。AA5の指向性リレーの作動確認。)了解、副機長。全機コンパクト・パッシブ・アレー・レーダー異常なし。全機、エアースパーク2の爆心地突入準備完了!42、41、40……。」
 
 機長のルフェーブル大佐が満足そうにうなずいた。
 
 更に情報通信作業を続ける2人の戦略戦術情報士官の女性たち。
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