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第1章 黄昏前に。

第6話 パラダイスシティー。

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 滑走路の真ん中を歩くグレーと水色、薄いブルーの迷彩色の巨大なHARMOR。
 
 その周囲の上空にはドローンのミルバスを飛ばしていた。
 
 左上腕部には大きな美少女アニメの絵が描かれている。
 
 背中全面のランドセルに、その巨大な身長より更に長い、スナイプ・レールガンを装着してあるのだ。
 
 銃床が滑走路の地面すれすれまで伸びている。
 
 両腕には旧型40ミリアサルト速射砲を持ってゆっくり歩きながら警戒巡回をするルオの機体だった。
 
 コールサインはパールバディ・ワン。
 
 その機体は先月5月1日、ロールアウトしたばかりの機体だ。
 
 訓練2大隊合同の最後のハワイ訓練演習で、ペナルティーがなければスナイパーHARMOR史上最高得点をマークした機体なのだ。
 
 日本・ポーランド共同開発の最先端、最新鋭の富岳重工業製作、スナイパー専用のフガク・ユーカ製のJPMAST-38式高機動装甲機器・甲型、高高度降下狙撃専用機(波蘭名称:シルフまたはシルフィード・ZERO)。
 
 鼻歌交じりでニコニコしながら揺れるコクピットで、リラックスするファン(黄)・ルオ少尉。
 
 AIに音楽を鳴らす様に指示をする。
 
「さぁ、レディー・スラッシュ。いつものあれ。小隊とジェシー達に医療回線なんだわさ。」
 
( はい、ルオ「パラダイス・シティー」ね。うふふ。 )

「おっ!」
 
 G&Rの「パラダイス・シティー」のスラッシュのギター・イントロが突然鳴る小林のコクピット。
 ニッコリする小林。
 
「ルオ、好きだなぁ。あははっ。」
 
 第1国防管制ビルの各種コマンダーセッテングも終わり、ゆっくりしゃがむ毘沙門天。
 
 コクピット内では各種レーダー探知機の確認作業をする小林も顎でリズムを取りながら作業を進めた。
 
「エルジビエタ(エリザベス)?ボリューム上げて。」

( 了解。ご機嫌ね未央。うふふっ。 )

 オリエッタの次女、エルジビエタの音声をきよしに頼んで勝手に音声データを盗み、小林のパートナーAIの音声にしたのだった。ただし、思考回帰分析データは恋人気味のジュリアに頼んで組み立てたのだった。

 声はエルジビエタ・マゾフシェ・シーラス。しかし思考はジュリア・T・ジャクソンなのだ。
 
 そして、我らがきよし。

「……。」
 
 頭で軽くリズムを取りながら、真面目に放った偵察ドローンのデータを確認しながらゆっくり巡回警備をしていた。

「うふふっ。マイダーリンっ。最高の選曲よ。」

 揺れるコクピットでヘッドギアの後ろに手を組んでくつろぐリリアナ・ヒューズ。
 
「ダーリンとベットの中で聞きたいわね。あははっ。戦場のG&R。最高っ!うふふっ。」
 
「リリィ?この戦闘が終わったら、2人で北海道ドライブしない?ジョナサン叔父さんが使ってない古い旧車のハンビー貸すからってさ。2人でドライブ行けって言うんだわさ。あははっ。ハンビーの整備は旧車大好きのウチのパパ(黄部長)がして、最高のコンディションなんだわさ。」
 
 身を乗り出すリリアナ。
 
「え?マジ?行く行く!小樽も行きたいし、函館も行きたい。あっ!知床で熊さんも見たい。」
 
 その恋人の話の最中にボス(ジェシカ・スミス)から通信が入る。ボスも頭でリズムを取っていた。
 
「結婚式は、愛ちゃんのホテルね。うふふっ。」
 
 千歳の優しい森林地帯で、偵察任務中のジェシカ。

 飛ばした偵察ドローンのデータを見ながら話していた。冗談のつもりで言った。
 
「あっ。もうマム(ジェシカ・スミス)。まだ早いって!あははっ。じゃーきよしと合同で結婚式どう?この戦闘を終わったあとよ。直ぐに!あははっ。ルオと私の結婚式、きよしとマムの結婚式よ!あはは、冗談、冗談よ。あははっ。」
 
 リリアナも冗談を言ったつもりが、ルオとリリアナが少しマジ顔でモニターを見つめ合った。
 
 言いだしっぺのジェシカも、急に赤くなった。そして、解体工事現場の影に隠れてしゃがむシバの神。
 
 きよしも赤くなる。赤くなりながら情報端末で戦況を確認するきよしだった。
 
「もう、リリィったら。うふふっ。」
 
 逆にリリアナから返されて、微妙な笑顔になるジェシカだった。
 
「ふっ。……。」
 
 きよしはすでに、頭の中は戦闘モードになっていた。
 
 他人事の様に笑いとばすきよしだった。
 
 きよしには、来るであろう敵HARMORの殲滅のみしか意識がなかった。
 
 サブモニターできよしの顔を見続けるジェシカ。
 戦闘が始まる前のひと時。
 
 戦闘に全てを集中させている戦士、椎葉きよし。そのきよしを母親の様に理解しているジェシカなのだ。
 
 そんなきよしでも、恋愛話。
 自分の結婚話に触れられて、顔を一瞬でも赤くして反応してくれた事が嬉しかったのだ。
 
「私のきよし。うふふっ。私だけのきよし。」
 
 うっとりして、きよしの顔が映るサブモニターを見るジェシカ・スミス小隊長だった。
 
「パラダイスシティー」のリズムに合わせてノリノリの2小隊の面々だった。
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