「メジャー・インフラトン」序章5/7(僕のグランドゼロ〜マズルカの調べに乗って。少年兵の季節 JUMP! JUMP! JUMP! No2.

あおっち

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第1章 黄昏前に。

第4話 いとしのfunnyダディ。

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 宙空ターミナルの警戒地域までジャンプ中の2機のアタッカーHARMOR。
 
( ズバババーキィィーン! )
 
( キィィーン、シュッバババー! )

 途中で北方面と南方面に別れて飛び始めた。
 
 椎葉きよしの乗る「シバの神」はターミナル南西部、千歳空港跡の旧政府専用機格納庫前にランディングした。

( キィーンドバババーッ……。ドシンッ!キシューン……プシュ!)
 
 ランディング地点のすぐ横の倉庫は解体中なのだろうか、重機やクレーンが作業中の姿で止まっていた。どこも無人だった。
 
 作業員は、作業途中で避難したのだろう。
 簡単な事務机の上も書類で散らかっていた。

「メティス、こちらGOSSH(ゴッドオブシバの略系)、回線切り替え完了。通信を開始する。オーバー。SJGで警戒巡回開始する。ミルバス放出終了。カピー。」

「こちらミーティス(英語読み)。通信良好、ロジャー。警戒巡回開始受領した。ミルバスデータ受信良好。カピーザッ。」
 
 きよしは対人監視および攻撃ドローンのミルバスを数機発射させて、50ミリカノンを両腕に持ったまま周辺を警戒巡回を始めた。
 
 ジェシカの「メティス」は北西部の湿地帯に向かってジャンプ中だった。
 
 ヘッドギアを外して作業しているリリアナが左下サブモニターに映っている。360°シームレス全天周モニターのジェシカのコクピット。
 
 アメリカ製のこの機体は、耐久性を重視した日本製のコクピットと、構造がまるで違っていた。
 
 360度、上下左右に継ぎ目なしで表示される全天周モニターなのだ。
 
 その中心でパイロットが操縦している。
 
 バーニアを吹かして飛行していると、コクピット・シートに座ったパイロットが、まるで空を高速で移動しているかのように錯覚するのだ。
 
 そのコクピット・シート下に映る映像も千歳宙空ステーション、高速道路IC、そして森林地帯から千歳近郊の湿地帯と映像が変わっていく。

 (( キィィーン、ババババーッ!))

 空を高速で移動するジェシカのHARMORを脚を止めて見上げる千歳宙空ステーションや周辺を歩く人たみ。
 
「もう、リリーったら。」
 
 ジェシカは、目を大きくしてから可愛い唇をへの字にして小刻みに頭を上下する。
 そして秘匿通信準備をAIに指示する。
 
「ミーティス(英語読み。)。チームヤンキー、チームズールーへ医療通信。チェック。」

( イエス、マム。護衛任務小隊全隊員、医療通信チェック終了。……あら、リリィ。あらまぁヘッドギア被らずに。ジェシー?ファニーダディ機、リリーに注意した方がいいわ。 )

「了解、ミーティス。……ヘイ、兵隊!ファニーダディ機っ!兵隊の義務を忘れるな。」

 第81訓練小隊、第90訓練小隊全員が、ニカニカして2人のやり取りに注目した。
 
 リリアナが作業の手を止めて、ヘッドギアをその場しのぎで、斜めに被って敬礼をした。

 
(( プッハハハハッ。 ))


 噴き出す小隊の2チーム員たち。
 
「もう。リリアナったら……。もう、うふふっ。ミーティス医療通信終了。うふふっ。ふ~ぅ。」
 
 諦めて、シートに深く座るジェシカ・スミス中佐だった。
 
( 了解、マム。通信終了。でもいいの?ジェシー。軍法会議確定よ。面倒臭いじゃない? )

「……ふふっ。それは生き残っていたらね。恐らくダディがしつこく注意するわ。それとミーティス、今の内に言っておくわ。」

( ……。もういいのよ。ジェシー。 )

「ダラス(米空軍基地)と、テキサス(シャトルオービター試験場)、千歳までの6年間ありがとう。」

( とんでもないわジェシー。たかがAIに気持ち入れたらいけないわ。もしその時が来たら(自爆や秘匿破壊)判断を誤るわ。 )

「解ったわミーティス。さあ、もうそろそろランディングね。ミーティス、静かに行こうか。」

( イエス、マム。 )

 うるさい水プラズマ噴射バーニアから両脇のアーク・エアージェットに切り替えるメティス。


( ドドドドー、ゴンッ。……シュー、ブシュワー! )


 静かに着地する米仏共同開発、米国製の最新鋭のアタッカー・HARMOR「ファイティング・スー(ロッキード・ダッソー社製RD-HMAA-09A)」。
 
 両脇のエアー噴射も静かに停止した。
 
 沼地にゆっくり沈降するメティスのフットギア部。


( ゴボゴボッ。 )

 
 メティスの正面に広がる沼地と北海道の青く高い空。
 
 景色を見てニッコリするジェシカだった。
 
 ジェシカは足元を見ると着地時点で逃げていた沢山の鳥が帰って来た。
 
 裏の林では隠れたエゾリスがまた出て来て、走り回っている。
 
 深呼吸をするジェシカだった。
 
「さぁミーティス、警戒巡回開始するわ。」

( イエス、マム。フェイズド・アレイ・レーダー全天強化開始。出力最大。ミルバス(ドローン)を全数放出。 )

 沼地をゆっくり抜けて低い林の中に歩いて行く「メティス」機だった。
 

          ◇      ◇


 各種ボタンやコンソールに入力しながらルオと話すリリアナ。
 
 ルオが体を前に乗り出した。
 
「いや、ちょっとね。ジュリアとのコマンド・データ・リンケージが時々切れるのよ。ヤバイヤバイ。ね、ルオ。ヤバいっしょ。……ん~、あっ!ちょっとダディー?またディセーブル(無効)だって。ちょっとダディー。私、物理回路。バイパスしたのに。コマンダー側の問題じゃないの?ちょっとダディー聞いてる?もう、イラッ!プンプンッ!」
 
 ファニーダディ機がサンパチトレーラーの側で止まった。
 コクピット内で作業するリリアナとは別に、簡易ローンチシステムのSHAALSの接続作業が、自動に始まるファニーダディ機だった。

( リリアナ?リリー? )

 優しく問い掛けるファニーダディ機のAIシステム。
 
「何よ、ダディ。初陣でケチ着くの、なんかイヤ。」
 
( リリアナ。落ち着いて。 )
 
「えっ、何よダディ。こっちも確認してるんだから。」
 
 イライラするリリアナに動じず落ち着いて話すAI。

 その声の持ち主はリリアナの今は亡き実父、コロンビア大学IT工学部博士、キンバリー・ヒューズ博士の声だった。
 
( 今、データリンケージ・プロトコル再確認中。あなたは自分のするべきことをしなさい。こちらは任せて。オブライエン部長と確認中。必要なら再構築するさ。……ところでお嬢ちゃん? )

「えっ?だから何よダディ。」
 
( そのヘッドギアは?ん?ん? )

 ヘッドギアを指差すリリアナ。
 
( んっ? )

 父親から指摘される子供の様に、ヘッドギアへ、人差し指を差すリリアナ。

( それは、床にあるものなのかなぁ。ん?誰の?ん?……ん? )

 自分の顔に人差し指を差すリリアナ。

( そう。 )
 
 すこし膨れ気味に両手を開いてから、口をへの字にして嫌々ヘッドギアを被るリリアナ・ヒューズ少尉だった。AIに落ち着かされるリリアナ。

( もうこの娘はっ。出来るでしょう。後はダディーに任せなさい。あなたはルオとお話でもしてリラックスしてなさい。いい? )

「……。」

( リリー?聞いてる?聞いてるの? )
 
 苦笑いしてから、唇をへの字にして、両手を開くリリアナだった。
 
 そして、イタズラっぽく上目遣いで、細く可愛い舌を(チロッ)と、出した。

( あっコラッ!舌。舌出した、コラッ!悪い子っ。どうゆう風に育ったのか。親の顔を見てみたい! )

 
(( あーっ、はははっー! ))


 リリアナの正面に笑い声と共に表示される訓練小隊、全員の正面画像。皆、愉快に笑っている。

「えー!皆見てたのぉ、もうイヤダー。アハハ。」

 照れ笑いするリリアナだった。
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