「メジャー・インフラトン」序章4/7(僕のグランドゼロ〜マズルカの調べに乗って。少年兵の季節JUMP! JUMP! JUMP! No1)

あおっち

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第7章 僕の愛しい娘。

第4話 愛しい娘。

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 水槽の中で胎児の様に丸くうずくまって浮かんでいるオディア。そのオディアが薄っすらと目を開いたのだった。
 
 左右を見るオディア。

 透明な水槽の壁は黒色に変色して、真っ暗で周りを見ることは出来ないハズだか、オディアの視線には広いキャビンペイロードベイ内の映像が鮮明に見えているのだ。

 顔だけ人間アンドロイドのピーターの姿が映っている。

 それはオディアの超能力なのだろうか。

 何か焦って連絡や操作を始めたピーターの姿がハッキリ映っていた。そんなピーターを薄目で見続けるオディア。

 地上にいて、オディアのバイタルを監視している3人のオバ様からダメ出しが入ったのだ。
 
( ちょっと!ピーターっ!どうしたの?オディ子、起こしたの? )
( なんで、地球に来るまで寝かせていないと。オース化(巨人化)因子がまだ稼働中よ。オース化しても幼児にはまだ制御出来ないわ。そのオービター(シャトル)は機動モービル用のペイロードベイでキャビンが広いから何とかなるけど、大丈夫なの? )

 顔だけ人間のピーターアンドロイドが、京子、麗子、オリエッタが1人づつ映っている3Dモニターの前で、右往左往していた。
 
「はい、ドクター京子。今、私もオディア殿下の覚醒脳波及び、バイタルの上昇を確認致しました。眼球が動いているよう……って、あっ。」
 
( あっ。麗子、オリー、あらら。……。 )
 
 サンパチトレーラーの中のオディアのバイタル、脳波モニターが沈静化した。
 一瞬の覚醒だったのかもしれない。
 波形がフラットになって行く。
 画面を色々、切り替えて確認するオリエッタ博士。
 腕をまた、組みながら話すオリエッタ。
 
「なんでバイタル管理中にいきなり起きたの?意味わかんない。ねっ?麗子。」
 
 うなずく麗子・オースティン千歳シーラスワン技研・医学療法対処部部長だった。
 
「なんかさ。なんかさ!ピーター。ネイジェア星人さん。ア~タたち、なんか隠してるっしょ。」
 
 サンパチのモニター前面にうつる顔だけ人間。
 
( オースティン博士。その様な事はございません。 )
 
「いやっ!隠してる。絶対隠してる。なんで高高度文明のハイテクのバイタル管理下の5歳児が、自力で起きることが出来るの?言いなさいピーターっ!その機械、細胞1つ1つ、脳細胞や神経細胞まで管理しているんでしょ。なんでやねん!」
 
 そんな、麗子たちを無視して3Dコンソールを操作する。ピーター・アンドロイド。

 アンドロイドの正面に映る3人の叔母様は納得いかない様子。横を振り向きながら話をしている。

 そんな事にお構いなしで、普通に報告するピーター・アンドロイド。
 
「どうやら、妃殿下はお休みになられたようです。」

( ちょっと~!何ごまかしてるの。 )
( 麗子、麗っ。もう落ち着いたんだし。いいじゃない。 )
( まぁ、いいんだけどさ。だけど、なんでオディ子が覚醒したん?お姉ちゃん。 )

 サンパチトレーラーの中で、腕を組んで各々のモニターを並んで見る3人の叔母様連。

 同じタイミングでお茶を飲んで、せんべいを口に挟んだ。京子は、煎餅をかじりながらモニターを見て何かを考えていた。
 
 そんなちょっとした騒ぎの中、EIが終了したシャトル。
 
 大きな機体を緩やかに反転し、夜側の地球から昼側の地球に向かい美しい地球の上層を滑らかに飛行し始めた。

 シャトルの進む先から太陽が顔を出した。
 
 メインモーターがラムジェットに切り替わり、上品な薄青い噴射炎に変わる。

 神々しく光る太陽と地表の空気層。

 コクピットの中では、太陽の日差しに目を細めるパイロットたち。鈴木副長が太陽の光を遮断するシールドを全面の耐熱ガラスに切り替えた。
 
 コクピット内が自然光から室内灯の人工的な明るさに戻った。そして、通常飛行に戻ったパイロット達は各々の仕事を始めた。
 
 そんな時、杉山がシートベルトを外して立ち上がった。
 
「スー、ちょっとオディ子見て来るわ。」
 
 先ほどのピーター・アンドロイドと京子たちの通信は9名のパイロットクルー全員が聞いていた。
 
 もちろんピーター・アンドロイドからの報告は、オリジナル・ペンタゴンの同志、特にオディアに関係のある者に配信されていた。地球の父の椎葉繁、実の祖父のアルフレッド・ウィルソンRSF少将。椎葉家の長女役、アイラリーム・パトリシア・ウィルソン妃殿下。
 
 もちろん執事長のクラウディアさん。そして、オディアを運んでる白鳳、新ビッグマムのクルー全員にだ。
 
 鈴木が計器類のチェックをしながら杉山に目礼する。弱いながらも重力が回復したコクピット内から先の通路を歩いて行く杉山機長。
 
 歩いて来た杉山に気が付くピーター・アンドロイド。
 
「キャプテン?今は妃殿下の全てのバイタル、脳波、落ち着いています。先程のご報告通りです。どうされましたか?」
 
「ピーターさん。仕事の邪魔をして済みません。ちょっとオディ子が心配になってね。もう、寝ましたか?」
 
「ハイ。モーグ(オース人の半冬眠状態。)になりました。先程は、ほんの一瞬だけです。ですが、私の知る限り儀式後で覚醒するとは。」
 
 黙ってオディアの水槽を見つめる杉山だった。
 
「私の2,600年以上の記憶の中では初めてです。やはり妃殿下は選ばれた人なのでしょうか。」
 
 少し笑顔気味でピーターに話しかける杉山。
 
「ピーターさん、オディ子の顔?見れる?」
 
 一瞬、首をかしげるピーター・アンドロイドだった。でも、即座に回答する。
 
「はい。キャプテン。問題ありません。正し、先ほどの覚醒がありましたので短時間で。」
 
「了解。」
 
 オディアの水槽に近寄る杉山機長。
 
「じゃ、お願いします。」
 
 ピーター・アンドロイドが3D仮想パネルを押した。スっとオディアの水槽のこちら半分が透明になった。
 
 ギリギリまで近寄る杉山。
 手を水槽にあてて、顔を近づけた。
 杉山、今はまだ独身で子供は居ないが、自分の娘か年の離れた妹の様にオディアを可愛がっていた。
 
 赤ちゃんのオディアが、椎葉家に保護されてきてからの5年間、家族の様にほぼ毎日会っていたのだった。
 
 時には、椎葉夫妻が不在で、椎葉祖父母も農業で忙しい時。きよしと共に預けていたジョナサン・麗子夫妻も忙しい時は、杉山がアイラと2人でおむつを取り替えたり。
 のぼせ無い様に注意して赤ちゃんのオディアとアイラと一緒にお風呂へ入ったりと。
 時には京子やノーラたちに相談して離乳食を作って、オディアに与えたりと結構世話をしていた。
 
 今、実は、これはかなりの極秘事項になるのだが、……ジン・シュウの宮内庁、ネイジェア星域皇国の皇室にも内緒で弟子のアイラと付き合い始めた杉山。ついつい、オディアに絵本を読んで寝かせる時に、スヤスヤ寝るオディアの横で、それがあったのだが……。オディアの世話が縁でつき合い始めたのだ。本人たちは内緒で周囲にバレていないと思っているが、既に地獄からの使者の京子・麗子姉妹、オリエッタ姉さんや椎葉繁、はた目には鈍そうなアルフレッド中将にもすっかりバレていたのだった。
 
「そんな事、一緒にご飯とか食べてたら良く解る話だべさ!あははっ。ババァの感っ!なめんなよっ!(京子余談)」との事。
 
 話は戻るが、その鈍くさい杉山が培養液に浮かんでいる可愛らしい、オディアの顔をジッと見ていた。
 
「キャプテン。もう宜しいでしょうか。」
 
 うつ向きながら、ニッコリして安心する杉山だった。
 
「ピーターさん。有難う。なんか、オディ子の顔見て安心しました。」
 
 ピーター・アンドロイドもぎこちなく微笑んだ。
 
 透明な水槽が、また緩やかに黒い壁になった。
 
 微笑んだまま、コクピットに戻る杉山だった。
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