「メジャー・インフラトン」序章4/7(僕のグランドゼロ〜マズルカの調べに乗って。少年兵の季節JUMP! JUMP! JUMP! No1)

あおっち

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第6章 旧友たちと。

第4話 御舩の公務室。

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 千歳シーラスワンのオペレーションエリア。
 その最上段の戦略・戦術コンバット・コントロール・ルーム。
 
 その一番奥の一室。
 
 橿原のシーラス本部から遥々千歳にやってきた衣笠幕僚長と、休憩がてら自室で打ち合わせをしている御舩だった。
 
 そこへ、メリッサがコーヒーを持って来た。
 
「幕僚長、失礼いたします。」
 
 日本人OLの様に、淑やかに2人の前にコービーと置くメリッサだった。
 そしてメリッサが御舩に報告する。
 
「閣下、ムーンラビット中隊。エネミーの航空部隊の第1群、全機。殲滅いたしました。」
 
 目を見張る衣笠幕僚長。
 
「凄いっ!ほぼ100機。それは、第6世代だろ。凄いっ。凄いな~シーラスは。」
 
 少し笑顔になる御舩。
 
「了解。ジョナサンたちは?」
 
「千歳ムーンリバー中隊、24機。全機無傷です。」
 
 更に笑顔になる御舩。
 
「おっ。そうか。了解した。またオースティン大佐が戦果を挙げたな。」
 
 マグカップをテーブルに置きながら、メリッサを見る御舩。
 
「この後は、ジョナサンは三沢かな。」
 
「はい。三沢に降ります。その後、バックアップで、道南上空で待機致します。」
 
 身を乗り出して、2人のやり取りを見る衣笠幕僚長。
 
「いや、メンドーだが補給後は、三沢から対馬上空に上がって、高高度で待機に変更してくれ。高度2万でよい。戦闘後の加盟国軍機が追撃か、返り討ちに合う可能性がある。状況次第では殿しんがりを務めるかもしれん。待機要請はフランクリン准将には伝えてある。詳細はこれから連絡する。」
 
「はっ!」
 
 敬礼をするメリッサ。
 そのメリッサを衣笠が見上げながら。
 
「メリッサさん。いつもリモートで打ち合わせありがとう。3Dでいつも拝見していますが、直に拝見させて頂くと、本当に物凄い美人さんですね。いや~感激。よろしくお願いします。」
 
 立ち上がって、帽子を脱いで握手を求める衣笠だった。
 
 お盆を胸から下げたまま握手をするメリッサ。
 
 握手をすると、一歩さがって、ビシッと45度の角度で日本式お辞儀をするメリッサだった。
 
 サッと顔を上げた。
 
「衣笠幕僚長、こちらこそよろしくお願い致します。」
 
「いやいや~。あはは。こちらこそよろしく。はははっ。」
 
 衣笠幕僚長が帽子を被りながらソファーに座ると、ニッコリしてから御舩に目礼をして、その場を去るメリッサだった。
 
「いやー!戦時中に申し訳ないが、貴殿は美人に囲まれて羨ましいな。お陰でリフレッシュしたな。」
 
 ミルクや砂糖に手を付けないで、何も入れないブラックコーヒーをすする衣笠幕僚長。
 
 一口つけて、美味しいかったのだろう、ニッコリしながらマグカップを見る幕僚長。再びすすり出す。
 
「あ~シーラスワンに来て、しばらくぶりに体を休められた。不謹慎だがゆっくり出来た。自宅よりゆっくり出来たわ。あはは。いやいやいや、ウーラノス士官室。ありゃ凄いわ。あはははっ。しっかし、弘!もう、霞が関(防衛庁)に居ても、全く官僚!官僚共と居ても、情報が遅いし判断もトロイ。こっちが気を使って休む暇がない。ホントに鈍くさい。弘のいう通り奈良のシーラス本部の防衛庁詰所に居て正解だった。しかし、北海道の現場は、イワン(岩井宙空将)の打ち合わせでぇ、防衛庁の情報とは、かなり温度差があった。やばい、やばい。ホント、判断を誤る所だった。」
 
 一瞬、睨む衣笠幕僚長だった。
 その衣笠と御舩。
 2人は防衛大学時代の同期だったのだ。
 
 衣笠は2期後輩の岩井宙空将から、つい先程までウーラノス・ブリーフィング・ルームでロシアや、名目中立国の現状分析と、対応策の打ち合わせをしていたのだった。
 
「岩井も変わっただろう?」
 
「おー、シャキシャキして人が変わったみたいだ。( 閣下 )のおかげだ!」
 
「閣下、止めろ!はははっ。」
 
 笑いながらコーヒーをすする2人だった。

( ビー。 )

 3D端末のインターホンが鳴る。
 
 衣笠の迎えが来たのだった。メリッサが取り次いだ。
 
 画像には、挨拶する武田と護衛兵士2人が映っている。
 
「閣下、衣笠幕僚長。武田少将閣下がお目見えになりました。」
 
 ニッコリする2人。
 
「おー来たか(武田日本国海軍少将)。よし、来たか。通してくれ。簡単な打ち合わせの後、衣笠と武田は別海総指揮所に行く。メリー、用意はいいか?」
 
 衣笠はクリスタル端末や書類を鞄に仕舞い始めた。
 
「はい閣下。ボーチャンからも、高高度護衛でモリガンを出して待機していますわ。アレースのモリガンも待機しています。」
 
 聞きなれない言葉に右眉を上げる衣笠。
 
 その表情を見て笑いながら答える御舩。
 
「はははっ。よっぽど防衛庁、大丈夫か。ポー(ポーランド)との共同大規模戦闘母衛星基地のボーチャン、コウノトリだ。知らんか。実際には英米仏台も共同参加だがな。」
 
「椎葉がいる衛星か?あれは月衛星だろ?」
 
「ん、知らんのか?本当に知らんのかい?椎葉は第3共同の月衛星基地だ。お前さんが行った事もある基地だよ。それと違う、新しく出来たボーチャンだって。知らんか?」
 
「椎葉はあの第3か。新しい基地なんか?坊ちゃん?なんだそりゃ。読んだ事あるけどな。」
 
「そう、そう。夏目漱石。親譲りで無鉄砲で、2階から飛び降りて……。なんでやねん。だれが夏目漱石の小説やねん。ボーチャン、ポーランド語でコウノトリだ。衛星軌道の衛星基地の名称。ホンマに。」
 
「解った。解った。ボケとツッコミしたつもりないわ。」
 
「あっはは!まぁ、あ~よっぽど……、まぁええか。アメさんのアレースは知ってるだろう。」
 
「アレースは、知ってるさ。報告書がよく上がってくるし。」
 
 その時、武田稔日本国軍少将も入室してきた。
 ノンビリ、コーヒーをすすって談笑2人が気にいらなかったのだろうか、声を荒げて入ってくる初老の高級将校だった。
 
「弘、まだなんか打ち合わせあるんか?もうええやん。俺としてはもう別海に飛びたいやんか。あー、キヌ(衣笠幕僚長)も。キヌ、もう行くぞ。話はオスプレイの中ですればええやんか。」
 
 ソファーの後ろを振り向いて手を上げて挨拶する衣笠幕僚長。
 
 ソファーに近づきながら話し続ける、御舩と同じシーラス(シラス加盟国軍)本職では中将職の武田だった。
 
 シーラス本部は実戦経験の疎い日本国軍の幹部の中に気を使い、わざわざ、ひとつ階級を下げて歴戦錬磨の武田を、日本国軍幹部に派遣していたのだ。
 
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 実は彼も少し前までは御舩達、特殊遺伝子保持者の秘書官兼ガードマンだった。
 
 ネイジェア星域皇国の皇帝陛下、直系で優秀なメリッサ・ガー・サイオン妃殿下にバトンタッチし、今は役目を終えて後輩の育成や日本国軍の実戦指揮官として活躍している。
 
 その武田が両手を広げて話す。
 
「メリッサも秘書官で忙しいし、キヌ手間かけるな。お姫様にコーヒーを作らせるな。もうボーチャンのモリガンも、アレースのモリガンもスタンバってるし。」
 
「だから、なんだモリガンって。」
 
 イライラ気味に話そうとする武田を抑える御舩。
 
「稔、そう急くな。キヌよ。アメさんのアレース知ってるな。」
 
「あー、まーそれ位は。だから報告書がたまに上がってくる。北米の母衛星だろ。」
 
「その2号基地だ。管理が日、波(ポー)、英、米、仏、台のシーラスだ。」
 
「ふ~ん。全然知らんかった。あ、あ~あ~モリガンって迎撃衛星な。移動する俺達の護衛で。2基って、たいそうな事だな。」
 
 嫌味を言ってから、残ったコーヒーを急いですすり、鞄を脇に抱えて立ち上がる衣笠だった。
 
「さー、武田さん。行こうか。」
 
 自衛隊最高幹部と日本国軍の幹部が御舩に手を上げて別れを告げる。
 
 御舩の個室から護衛の衛士と共に去る2人。
 
 開いたままのドアの向こうでまた手を上げる衣笠幕僚長。
 
 手を上げて返す御舩。
 
 そのドアからメリッサが長い脚を前に出しながら歩いて来た。独り言をいう御舩。
 
「ふうー、これで、……北のロシアの押さえはオーケーと。後は、名目中立国か。」
 
 メリッサが、笑顔から通常の顔に戻って側に立った。
 
 メリッサと目が合いながら、残ったコーヒーを飲み干してマグカップを置く御舩。
 
 帽子を被り、机横のエントランスから戦略戦術室へ、メリッサと共に入っていった。
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