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第6章 旧友たちと。

第1話 駆け巡る、マザーの欺瞞情報。

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「……閣下。マザーより上陸地点の予想です。同志に配信しますか?」
 
 クリスタル端末を御舩に渡すメリッサ。
 
 そのクリスタル端末の画面を見る御舩の顔が段々険しくなっていく。
 
「頼む。」
 
 険しい顔のまま、腕を組んで背中を向けて何やらインカムで話始めた。

          ◇

 シーラス・台湾の司令長官執務室。
 
 ほほに、大きな3本の傷跡の残った、クォジーミンが足を組んでクリスタル画面を睨んでいた。
 
「なぁ~に~!そんなバカな!」
 
 そして、クリスタル端末を机の上に放り投げた。
 
 頭の後ろに腕を組んで、天井を厳しい顔で見るジーミン。
 
「ん~。……ったく。アホかっ!」
 
 立ち上がって、戦略戦術ルームに戻って行った。

 月裏の55スーリア、シーラス情報技術院のミリューシャ・シーカ・ラファド・エリスカ副長官の個室。

          ◇
 
 
 55スーリア内に作られた、美しい人工都市。
 
 母星のネイジェア星を模した人工太陽が昇り始めた。
 
 大きな部屋の窓から広がるのは、母星の大都市と同じ景色だった。
 
 その手前、床まで伸びたガラスの室内ベランダに立って佇む金髪女性。
 
 女性は、シルクの様な薄い深紅の布を肩から羽織っていた。
 腰まで伸びる長い金髪。
 
 それは、地球産のモーニングコーヒーを飲みながら、シーラスのクリスタル端末画面を見るミリューシャだった。
 
「ふっ。ふふっ。」
 
 鼻で呆れ笑いをしてから、コーヒーカップを上げて、カップの周りを回して見た。
 
 そのカップには、幼い子供の書いた日本語が、書かれていた。
 
( みりーおばちゃんへ くりしょう 1ねん2くみ しいば きよし )
 
 と、書いてあった。
 再び、フフッと優しく笑った。
 
 外の景色へ目を移すと、キッと唇を引き締めた。
 眉を絞って、睨みながら景色を見始めたミリューシャだった。

          ◇
 
 栗山町、椎葉家の大きな和風の母屋。
 
 仏壇のある広い畳の間で、朝食を食べ始めた3人のオバ様。
 
 一枚板の、高級な和風のローテーブルに無造作に置かれるクリスタル端末。
 
 クリスタル端末から何やらホログラムの空間案内が浮かび、チャイムが鳴った。

( ピンピンっ♪ ピンピンっ♪ )

 麗子・オースティンが、せわしなくアゴを動かして、ご飯を食べながらお箸でぬか漬けを口に放りこんだ。
 
「カリッ、カリッ。モグモグ。ちょっと姉さんピンピンって端末鳴ってるわ。同志通信って。オリーも。ふん。……モグモグモグ。」
 
 チラッと、テーブルに置かれた端末を見る京子とオリエッタ。
 
「モグモグッ。どうせ苫小牧をハズした予想地点の案内じゃないの?アホのシーラス・マザーの予想とか。」
 
「さすが我が姉。どれどれ?」
 
 腕を伸ばして、端末を覗いてまたテーブルにクリスタル端末を置く京子。
 
「はははっ。正解。もー馬鹿らしいわさ。」
 
 オリエッタもクリスタル端末を腕を伸ばして見てから、テーブルに置いた。
 
「この間、麗子。はじめちゃん(内方はじめ)にさ、マザーの調子、話してじゃない。やっぱり。」
 
 うなずく京子。
 
「そう。誰かがマザーいじってるかなぁ。ってさ。なんか疲れるべさぁ。」
 
 苦笑いのオリエッタ。お味噌汁をすすりながら、京子と麗子を見ながら話した。
 
「なんか、忙しくなりそうだから一杯食べておくよ。お味噌汁、お代わりする。」
 
 みそ汁のお椀を持ったまま身を乗り出し、味噌汁をお玉で入れるオリエッタ。入れ終わると、麗子と京子に腕を伸ばす。
 
「麗ちゃんは?京子っ?」
 
 麗子が、自分の味噌汁のお椀をオリエッタに渡した。
 
「オリー、私も。」
 
「はいよ。」
 
 麗子の手からお椀をとって、お玉でみそ汁を足すオリエッタだった。

          ◇       
 
 今度は、ワタツミの夫婦士官室。
 
 ベットで裸のまま毛布に潜り込んで、寝ている内方夫妻。

( ピンピンっ♪ ピンピンっ♪ )

「ん、ん……。同志通信。なんだなんだ。クワ~ッ!眠い。ぬにゃぬにゃ。どれ~?」
 
 ベットから太い腕を伸ばしてクリスタル端末を見る内方はじめ。
 
「……ほ~んまに、いい加減にせんと。また調査依頼増えるやんかぁ……。」
 
 内方はじめにピッタリ背中を着けて寝ている「J 」博士こと、愛妻のキャロル。
 
「ん?パパ、な~に。同志通信来たん?わざと苫小牧を抜いた上陸予想地点か、何か?」
 
 目を閉じたまま、旦那の持っているクリスタル端末を取って見る「J」博士。
 
 片目でチラッと一瞬見て、旦那に返す。
 
「正解で面白くない。頭悪すぎて、ダルイわぁ……クワァ~カァ~!もう、ムニャムニャ。どうせ盗まれたレールガンと同一犯ちゃうの?面白くない。またパパ忙しくなるじゃない。」
 
 ムクっと起き上がり頭を掻いた。
 
「……。」
 
 美しい大きな乳房を出したまま速攻、内方の頬にキスをして、また速攻布団にくるまって寝るJ博士。
 
「ははっ。俺も寝る。」
 
 そして、暫くの沈黙。
 
 クルっと夫の背中に体を向きを変えて、甘える愛妻。
 
「ちょっとぉ。ねぇ……。はじめちゃん。」
 
 はじめの左耳たぶを引っ張る愛妻。
 
 ギョロと、片目を空けるはじめ。
 
 愛妻の方を振り向てから、小っちゃく唇にキスをする内方はじめ。
 
「変に目が覚めましたよ~奥様っ!それでは……撃ち~かたぁ!はじめ~っ!」
 
「もう、バカ……うふっ。」
 
 仲良しイチャイチャが始まる内方夫婦だった。
 
 揺れる内方のベットの上に置かれたクリスタル端末。
 
 その画面には北海道道南地域に敵上陸予測の赤い丸が示されていたが、肝心な苫小牧には表示が無く、札幌と石狩町、様似沖と十勝の広尾沖に赤丸がされていたのだ。
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