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第5章 海上保安庁ヘリ。

第7話 緊急降下せよ!海保クマタカ。

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 大間の漁港は大騒ぎだった。

 漁船員が衛星通信用スマハンドで海上保安庁へ、緊急連絡をしたのだ。
 
 緊急連絡を受けた千歳の管区からではなく、どういう訳か東北の海上保安庁が直ちに海域現場にヘリコプターを急行させた。
 
 その、東北の海上保安庁のヘリ上空から、20隻にも及ぶ巨大タンカー群を対馬海峡、大間町沖に発見した。
 
 大間町の大間漁港には、急搬送用のシーラス所属のオスプレー2が、医療班と共に港の駐車場に着陸した。
 
 煙を吐きながらマグロ漁船が、大間漁港に入って来た。
 
 喫水線も撃たれていたのだろう。
 右に傾きながら漁港に入って来た。
 
 家族や漁業関係者の大勢が船を待っていた。
 
 マグロ漁船は至る所に被弾していたため、傾いた船体のまま港に接岸せず、港の中で負傷者をシーラスの特殊救助カッターに乗せるのだ。
 
 特殊カッターは、船を接岸させずに、負傷者を乗せた特殊カッターごと、オスプレー2で吊るして緊急病棟へ運ぶのだ。
 
 シーラスの特殊カッターの中で、心配そうに救助の模様を見る負傷者の家族。
 
 漁船から負傷者が、シーラス特殊救命カッターの小型クレーンで救命担架のまま、吊るされて来た。
 
「よすお~。よすお~!」
 
 血だらけの高木義男の母親が泣きながら担架から救急隊とベットに映した。

          ◇        ◇
 
 その大間の港の救助の模様と、海上保安庁のヘリからのタンカーの映像を千歳シーラスワンの大型モニターで見る事務武官たち。
 
 同じ映像を地球衛星軌道上のボーチャンで見る指令室の面々。
 
 そして月の第3共同衛星基地でモニターを見る椎葉繁やアルフレッド・ウィルソンたち。
 
 御舩と秘書官がまた大型モニター前のベランダまで歩いて来た。
 
 そのタンカー群の映像を見た瞬間から、御舩が右下の日本国軍のオペレーターに向かって大声で腕を振りながら叫んだ。
 
「あっ、いかん!いかん!海上保安庁のヘリは引き返えせ!対空で撃たれる!急げー!すぐ連絡~!急げ~!」
 
 直ちに海上保安庁ヘリに、連絡をする日本国軍オペレーター。
 
「こちら千歳シーラスワン、こちら千歳シーラスワン。H81クマタカ、H81クマタカ。直ちに海域を離脱して下さい。エネミーからの対空攻撃が予想されます。直ちに海域を離脱して下さい。」

( こちらH81クマタカ、了解。直ちに海域を離脱する。 )

 画面を注視する御舩とオペレーションルームの事務武官たち。
 
 海上保安庁のヘリ(クマタカ)から流れる映像が上空から映し出されたタンカーの大群映像から青空と雲の映像が変わった。どうやら旋回をした様だった。
 
 と、その時ボーチャンから至急電が入る。
 
「H81クマタカ。こちらシーラス監視衛星のボーチャン、タンカーよりロックオン確認、対空来ます。H81クマタカ直ちに高度を下げて下さい。返信いらず、直ちに高度を下げて下さい。返信いらず。」
 
 ヘリの画面が不安定になり、映し出される雲が画面の上に流れて高度を下げ始めているのが解る。
 
「急げーっ!逃げきれるかっ。うかつだった。」
 
 焦る御舩。
 
 軍属でない海上保安庁が捜索のために、動くことに許可をしたことに後悔した。
 
 引き続きボーチャンからの連絡が続いている。
 
 画面を注視する御舩たち。
 
「こちらボーチャン、敵ロックオン確認と同時に、既に衛星軌道のモリガン1より神の杖発射しています。タンカー甲板セットまで、ご、よん、さん、ふた、いま。」

(( ガンッ! ))

 タンカーのだだっ広い甲板の一部に白い棒が突き刺さった。
 
 タンカーの中の作戦室に響くEMS棒の突き刺さる音。
 
 AXISの司令達が天井を見たり不思議がっている。
 時を同じくして、甲板上では対空ミサイルがミサイルランチャーより発射された。
 
 海上保安庁ヘリに向かってかなりの数を発射したのだ。

(バシュー!)(バシュー!)(バシュー!)(バシュー!)

 衛星軌道上のシーラス2ボーチャン指令室。
 
 オルガ・ソスノフスカ、シーラス2ボーチャン長官がまた、木村紗枝3等宙佐の横に浮遊し指示を与えていたのだ。
 
「木村3等中佐、どうだ?」
 
「はい、タンカー甲板にセット完了!神の杖、システム正常。アイドルー開始。長官!いつでも行けます。」
 
 シーラス2ボーチャンの球体司令ルームの真上、イギリス軍オペレーターから現状報告が来る。

( 敵、対空ミサイル発射しました。複数ですっ!対空戦闘準備通達しますか? )

「構わん。よし!紗枝、EMS発動。」
 
「EMS、発動します!」
 
 北海道上空のモルガン1の上部が、真っ赤に光りながら回転を始めた。
 
 と、同時にタンカーに突き刺さった白い棒が、真っ赤に加熱した。
 
 陽炎が立つくらい過熱を始めた。
 
 タンカー内部の司令室。
 最新の精密機器が一面に広がるAXISの指令室のモニター類。
 
 そのモニターからスイッチ全ての明かりが、機器がショートし真っ暗になった。
 
 この白い棒から半径2キロ以内の電子機器がショートしたのだ。
 
 巨大タンカー群の全ての電源がカットされた。
 
 モリガン1から送られる衛星軌道上からの映像。
 海上保安庁ヘリに向かうミサイル群が自爆し始めた。
 
 しかも2キロ以上に離れていたヘリは全く異常がなかった。

(( オオオ~! ))

 歓喜に沸く千歳シーラスワンのウーラノスCDC、オペレータールーム。インカムを手で持って画面を注視するスタッフたち。

( こちら海上保安庁、H81クマタカ。対空ミサイルの自爆を目視出来た。繰り返す対空ミサイルの自爆を目視出来た。 )

(( オオオ~! ))

 再び歓喜に沸く千歳シーラスワンのオペレータールーム。
 
「了解H81クマタカ。帰投されたし。繰り返す直ちに帰投されたし。」

( 了解、直ちに帰投する。千歳シーラスワンならびにボーチャンの皆様、感謝します。 )

「よしっ!メリッサ、ボーチャンに繋いでくれ。」

「はい、つながりました。閣下どうぞ。」

「ソフノフスカ長官?聞こえるか?」
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