「メジャー・インフラトン」序章4/7(僕のグランドゼロ〜マズルカの調べに乗って。少年兵の季節JUMP! JUMP! JUMP! No1)

あおっち

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第4章 新たな仕事。

第4話 ドクター「J」。

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 シーラスの潜水母艦基地「ワタツミ」の減圧室。

 入り口の黄色いライトの回転灯が回転する。そしてAIエイモスの声。
 
( 第31区画DDC‐15の加減圧室のドアが開きます。ドア付近から下がって下さい。 )

(( プシュー! ))

 減圧室の扉が開いた。布村愛子が入ろうとしたら、トラッシュが優しく愛子を止めた。
 
「あ、あ、御免なさい。メディックが先ね。」
 
 同時にドクター達や装備品主計課のワタツミのスタッフが入る。
 
 看護師達はDDCに担架を数本も持って入っていった。入り口から覗く少女たちとトラッシュ。
 
 メディックは肩に被弾したベクターと、減圧症で倒れた中村・スーザン・幸子をエアーで膨らんでベットになった担架へ乗せて治療を始めた。
 そして点滴治療を始めたようだった。
 
 奥の水中モードのままのジムニーHEVは最小の運搬形式に変形、分解して主計課のスタッフ達に運ばれていく。 

 愛子の両肩に手を置いたトラッシュとその手を優しく持つ愛子はそのジムニーの部品を目で追いかけた。

 また、内方達が使用した銃や用具などの装備品をテキパキと次々にスタッフがDDCより運び出していた。愛子が、DDCをのぞく。
 
「さっき、サッチー喋ってた気がするけどぉ。やっぱり具合悪いんだ。」
 
 愛子の横にしゃがむトラッシュ。暗いDDCを目を細めて見つめた。そして立ち上がりながら、
 
「これからの訓練でカバー出来るさ。初めてで、何ともない結衣が異常なんだな。これがまた。」
 
 心配そうにサッチーをドクターの後ろから見ている佐藤結衣。トラッシュの声が聞こえたのか、舌を出して、ベーッをした。

 フフッと笑う愛子とトラッシュ。
 
「ふふっ。従来の技術では、皆が潜水した深度では早くて4~5日の減圧時間がいるけど、最近は40分も必要ないって、凄いよな。」
 
「ふ~ん。そうなんだぁ。」
 
 感心して減圧室を見回す愛子とトラッシュの2人。

 その2人と、寺田麗子と鈴木絵里の前を、白衣を着た白人の女性ドクターと、格闘兵士2人の合計3人が急ぎ足で来た。

 4人に気が付き、敬礼するトラッシュと愛子たち。
 
「鹵獲した敵の装備品はこのDDC内ですか?リーバ中尉。麗ちゃん?愛ちゃん?」
 
 とトラッシュたちに聞く武器・装備開発ドクター「J」だった。

 何の事か解らないトラッシュと寺田麗子が目を合わせる。
 
 麗子がドクター「J」の白衣の裾を引く。
 
「あのーJ先生、なんですか?敵のなんちゃらって。」
 
「あぁ麗ちゃん知らない?え?絵里ちゃんも聞いてないのかぁ。愛は?」
 
 首を振る愛子。流暢な日本語でニコニコ話す「J」博士こと、千歳シーラス技研の装備品主任研究員のキャロル・シンガー博士(イスラエル人)。椎葉所長の元で、特にホァンリーリン副所長の右腕でもあった。
 
 今では内方エイモスチーム全部隊の装備品(兵器と戦闘用品)全般を担当している。
 
 彼女は米国MITを中退し東大工学部に編入した変わり者だった。
 
 現在は武器開発のスペシャリストでもあり、そして時には愛子たち、現役高校3年生の大学受験の委託家庭教師でもあった。


( ヘイ!ドクッ。J ッ!こっち!こっち! )


 DDCの中からガイザーが手招きして腕ごと部屋の奥に指さした。メガネの柄をつまんで奥を覗くドクター「J」。
 
「ほら~、あ、あった。フッ!やっぱり。ノアありがとう。フフッ。」
 
 ニコニコしながらDDCに入る3人。

 そして愛子たちの先輩兵士2人が新型小型レールガンを重そうに持って部屋から出て来た。

 トラシュが興味を持ってレールガンを触る。「J」博士が意地悪い目をしながら言った。
 
 
「リーバ中尉、持ってみな。」
 
「えっ、これですか?」
 
「そう。それ。」
 
 
 レールガンについているベルトを一度持ったが、ガンとして動かなかった。
 

「あら、あらっ。ん、う、動かないや。」

 
 愛子を見て両手を開いてニガ笑い。
 
 今度はしゃがんで肩にかけて立ち上がるトラッシュ。

 一気に立ち上がると、一瞬後ろによろける。

 
「うえ~!あ~結構重いや。150キロ以上は、こ、これあるでしょう?重っ!」
 

「へ~?トラッシュでも重い物あるんだぁ。ふ~ん。」
 
 後ろ手を伸ばして手を組みながら、トラッシュに絡む愛子。
 
「う、う、本当に重い。嘘じゃない。愛ちゃんも重いけど、愛ちゃんより重い。」
 

( パシッ! )
 

「あう。」
 
 トラシュの太ももを平手で叩く愛子。

 大きな胸を突き出したままプイっと横を向いた。
 
 ははっと笑う兵士と少女たち。

 そんな和やかな中に、DDCから内方たちが出て来た。
 
 愛子の肩を突くトラシュ。
 
 アッと、気が付いてそれなりに整列するトラッシュと少女たちだった。

( ザザッ! )

 敬礼する内方たちと愛子たち。
 
 愛子が敬礼の手を下げながら、左右をキョロキョロ見た。
 
「あれっ、結衣っ。ベクター姉さんは?結衣っ。」
 
「ん?あれっ。あ~ほれっ。」
 
 アゴでDDCの中で輸血をうけて担架に寝ているベクターを差した。

 首を伸ばしてDDCの中をのぞく愛子、麗子、絵里そして、トラッシュの4人。

 愛子が口に手を当てて叫んだ。
 
「えっー!無敵のベクター姉さん、死んだんですか。」
 

(( え!え~! ))
 
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