「メジャー・インフラトン」序章4/7(僕のグランドゼロ〜マズルカの調べに乗って。少年兵の季節JUMP! JUMP! JUMP! No1)

あおっち

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第3章 内方エイモスチーム。

第8話 換装開始!エンジニアたちの戦場。

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 神保が手を上げながらジムニーBEVで、黄に向かって来た。
 

( 「プップー♪」部長ーっ!「プップー♪」部長ー。迎えに来ました。)


 ジムニーBEVは、そのまま黄の前で止まった。


( キィィーン……、キキキ。 )

 
 神保が運転して来たオープンのジムニーに乗り込む黄。

「よっこら、せっ!(バタンッ!)」
 
 自分の部下の肩を自慢げに叩く黄だった。
 神保の先読みに関心した黄。
 満足な顔をした。
 
「神保、よーやってくれた。バルトも感心してた。アハハハッ。さすが、我が部下。」
 
「何を言うんですか部長。「シレーヌ」のテイクオフも万事オーケーです。あ、そうだ。部長の奥様、リーリン副所長がまだ、ポー軍の第13倉庫の横で、星間亜光速ハイパー・モーター・エンジンのチェックしてましたけど、このまま、ジムニーで迎えに行きますか?」
 
「いやいや、作業中は集中してるから、俺が逆に怒られる。避難指示でも出たら俺が行くよ。」
 
「え、そうなんですか?」
 
「ん!まぁいい。よっしゃ神保、先に本部で降ろしてくれ。「奥様」は俺が後で迎えに行くから。」
 
「了解で~す。」
 
 黄たちが乗るジムニーBEVは、ほぼ3キロ先にそびえたつ第2国防管制ビル(超ド級、宙空急襲攻撃型戦闘母艦ウーラノス型1番艦・ウーラノスの擬態艦橋)に向かってモーター音を散らしながら走って行った。

          ◇        ◇


 静かになった、10番機シレーヌのオービター・ペイロードベイ。
 
 そこに換装準備で、次第に集まるエンジニアや整備兵たち。

 バルトッシュ・カミンスカ中佐と目が合い、無言の話をした。


( ……。 )

( ……。 )
 

 うなずくポーランド軍と日本国軍・自衛隊のエンジニアと整備兵たち。

 音も無くコクピット昇降ロープが降りて来た。
 
「では、おやっさん!皆も達者で!(日本語)」
 
 昇降ロープに足をかけると、するするとロープが巻き上げられていく。

 敬礼をしながら上昇する中隊長のバルトシュ・カミンスカ中佐。
 
 (おやっさん)とは、オービターアーカイブおよびシーラス第13整備倉庫の責任者で上級エンジニアの佐々木技術中佐だった。その技術中佐が万感の思いで、部屋の前で敬礼をした。
 
 佐々木はポーランド・宇宙軍からはるばる日本へ学びに来たバルト教育大隊の専属技師だったのだ。

 子供がいない佐々木夫婦は、バルトの妻のエレナや双子ちゃんたちと、短期間ではあるが家族ぐるみの付き合いをしていた。
 
 バルトッシュに向かって両かかとをつけて返礼の敬礼をするポーランド共和国、同郷の白人エンジニアたち。
 
 このエンジニアたちもまた、教育プログラムでバルトッシュ教育大隊のベテラン・パイロットや若手のトップガン・パイロットと共に、家族ぐるみでポーランドから来たエリート・エンジニアだったのだ。
 
 そのエンジニアにとって、このバルトシュの姿は戦況によっては生きている「カミンスカ中佐」を見る最後の姿かも知れなかった。
 
 ロープから手を離し、コクピットへ入る前に、振り向いて佐々木技術中佐にうなずくバルトッシュ。

 お返しにうなずく佐々木だった。
 
 そしてバルトッシュはニッコリしてからコクピット内に消えた。
 
 バルトシュが乗る隊長機、(コール名:ゲームボーイ)のコクピット・シールド・バイザーが下がり、コクピットからこぼれる光も無くなった。
 

 薄暗闇になったシレーヌのペイロードベイ。

 
 小さな計器類のランプだけが支配した暗い倉庫内空間に戻ったのだ。
 
 唇を噛みしめる佐々木技術中佐。

 老齢の佐々木にとっては、ポーランドの自分の息子が戦場に行くようなものだ。

 佐々木は再び操作室に戻り、ドンと椅子に座った。
 
 薄汚い整備士コンソールには、写真カードが張り付けてあった。

 自分の家族とバルトシュの双子ちゃんたちの2家族が映った写真カードをゆっくり手に取って見る佐々木。
 
 写真カードが指に反応して、自動的に次の写真へと、ゆっくり切り替わった。
 
 エレナを中心に顔を合わせる双子ちゃんの写真。
 佐々木が趣味の写真で、撮ってあげた3人の写真だった。
 
 和室で、佐々木部長の膝の上の「マウゴジャタ(ゴーシャ)」と、妻の樹里の膝に乗った「ヨアンナ(アシャ)」の写真。

 次々に、モーフィングして切り替わる写真カード。
 
 こだわりの写真カードにオルゴールが鳴るように作ってバルトシュ夫婦に2枚、プレゼントしたのだ。
 
 佐々木と同じく子供写真が趣味のエレナが、物凄く喜んだのだ。
 
 そんな事を思い出して微妙な笑顔になる、第13号倉庫管理責任者の佐々木技術部長だった。
 
 そんな佐々木を見る部下の整備士たち。
 
 それも束の間、オービター・ペイロードベイの薄暗闇の天井部から順番に白い大きな光が差し込みはじめた。

 そして眩しい朝の白い光の壁が降りて来た。
 
 後部大型ハッチが開き始めたのだ。

 写真カードを元の机に戻して、艦内マイクを持って叫ぶ佐々木。
 
「よっしゃ!きよしバーニアへの換装を開始する。ええか、野郎ども!」
 

( オォォー! )
 

 腕を上げて佐々木に答えるエンジニアや整備兵たち。

 機内にガルシア機長のアナウンスが入った。

「ペイロードベイのメカニック・タイタン(ロボット工学エンジニア)とテクノスミス(整備兵)に連絡。HARMORアンカー・シリンダー回転します。十分気を付けて作業を開始してください。各ブロックのエンジニアリング・パワード・スーツ員は、搬入の際にメカニック・タイタン指示に従って……。」
 
 室内のHARMORをセットした大型シリンダーがきしみ音と共にゆっくり回り始めた。


( ギシギシッ、ガガガッ、ウィーンガガガガッ。)

 
 エンジニアたちの戦場が始まったのだ。
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