「メジャー・インフラトン」序章4/7（僕のグランドゼロ〜マズルカの調べに乗って。少年兵の季節JUMP! JUMP! JUMP! No1）

第２章 攻撃型母衛星基地「シーラス２ボーチャン。」

第5話 超ド級！海中移動基地ワタツミ級1番艦「ワタツミ」

　薄暗い海底を巨大な角の丸い板が移動している。
　
　深度80メートルを無音で進むシーラスの超大型の海中基地だった。

　核融合電池、磁気推進方式で海中を進むため、全く音がしない。

　初期の頃はキャタピラー水中推進とも言われていた。
　
　シラス加盟国でも、特別な上層部や上級将官以外、日本国軍、自衛隊にも全く存在を知らされていない巨大な海中物体だった。
　
　その物体は、熱核大陸弾道ミサイルおよび惑星対衛星間攻撃亜光速ミサイルローンチ搭載の攻撃型海中移動基地の「海神（ワタツミ）級」の１番艦の「ワタツミ」だ。

　先程、メリッサが使っていたウイスキーとは「ワタツミ」のTACコードなのだ。
　
　月裏のアース・スーリアで建造されたため、特AS潜とも呼ばれた。
　
　１番艦と言う事は複数の姉妹艦があると言う事なのだ。
　
　全長333メートルで全幅が74メートル。厚さ約32メートル。
　
　大阪の高層ビル「あべのハルカス」が水中を進んでいるようなものだ。

　よくある円筒状の潜水艦とスタイルが全く違い、角が丸く分厚い板状の新式の核融合潜。

　昨年の対馬攻防戦では搭載された５隻の内、４隻の子潜水艦が大いに活躍したのだ。
　
　ワタツミの形状は独特で、左右の艦舷半ばから内側に絞られており、その左右の空間には核融合ウォータージェット推進で対艦対潜護衛用情報高速潜水艦「呂（ロ）‐36　中型潜」が２隻。
　
　同じく核融合エンジンだが磁気推進の対空対地攻撃型戦闘潜水艦「呂（ロ）‐61　中型潜」の２隻。

　真上には大陸弾道弾、及び対大陸弾道弾攻撃用イージス型潜水艦「伊（イ）‐500　甲型潜」の合計５隻の潜水艦の母艦でもあった。
　
　通常、洋上に浮上するときは後部に鎮座接続されている「伊‐500」のみを出すため、この頃の巷ではシーラス潜水艦とは「伊‐500」を指していたのだ。
　
　この伊型潜が海上に浮上している時は、その海中には巨大な海中基地の「ワタツミ」がいるのだ。
　
　情報特務科の戦略戦術のための、移動する海中作戦基地でもあり、海中補給母艦でもある。
　
　有事の際は、救援物資を大量に搬送する事も出来るのだった。
　
　そしてその巨大潜水母艦のDDC（減圧室）。
　
　……　薄暗いDDCに５人の男女がダラ～と腰を掛けていた。