「メジャー・インフラトン」序章4/7(僕のグランドゼロ〜マズルカの調べに乗って。少年兵の季節JUMP! JUMP! JUMP! No1)

あおっち

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第2章 攻撃型母衛星基地「シーラス2ボーチャン。」

第3話 始動!巨大オービター「ビッグマム」を打ち上げろ!

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 千歳宙空ステーションの最南端にあるシラス加盟国軍、通称:シーラスの巨大滑走路。
 
 そこには旅客機の3倍の大きさの大型シャトル、通称「ビック・マム」が、打ち上げ(ローンチ)を待って、順番にズラッと並んでいる。

 その先には滑走路の脇からノーズコーン(船体の鼻先)を出している3機のオービター。
 
 この「ビック・マム」は垂直離陸が出来るV-TOLオービタービークルではあるが、まだまだこの頃はオービタービークル(シャトル)単体の性能では大気圏脱出するまでの燃料種と出力は確保されておらず、初動の打ち上げだけ全長80メートルもの巨大な外部ローンチ・ロケット・ブースター(固体燃料打上げロケット)をオービター後部につけての打ち上げが必要だった。
 
 そのビック・マム3機が滑走路の端から、頭部だけ出していた。
 
 オービターの発射は大陸弾道ミサイルの様に、地中から打ち上がるのだ。
 
 オービター本体に外部ローンチ・ブースターを取り付けた後に、指定されたローンチ(打ち上げ場)まで移動、頭部を起点に巨大な構造体が地面ごと地下に降りた。
 そして、半地下から垂直に飛び上がり、大宇宙へ向かってローンチ(打ち上げ)するのだ。
 
 わざわざ半地下からの発射式にしたのは、ローンチ・ロケット・ブースターの点火初期の大出力の噴射炎や、万が一の故障による墜落回避のためだった。
 
 また、近隣にステーションビルを始め5キロ圏内に市街地もあり発射時の事故防止対策として、よくある大陸弾道ミサイルを打ち上げるミサイル発射サイロの様な地下発射型のローンチとなったのだった。
 
 ちなみに40メートル級の小型武装オービターでの打上げならば、千歳で稼働再開した大きなジェットコースターのレールのようなオービター用ローンチループ利用で椎葉きよしたちの訓練同様に可能だったが、今回の台湾・金門県迎撃作戦では巨大ロボットのHARMORの2大隊プラス1中隊におよぶ大部隊を戦地へ投入する必要があったのだ。
 
 そこで、大量輸送専門の120メートル級の「ビッグ・マム」を採用したのだった。
 
 40メートル級武装オービターでは、オービター1機あたり機動モービルHARMORは3機までの搭載しか出来ないのだ。
 
 それで、中隊分20機ものHARMOR搭載可能の大型オービターの「ビッグ・マム」出番となったのである。
 
 地下発射準備まで20分、オービターを半地下発射してから地球上の目的地上空まで30分で到着する。
 準備から発射、戦地到着まで1時間も掛からずに世界中、地球上のあらゆる所へ、遥か上空からの急襲攻撃が出来るのだった。
 
 発射管制局のモニターを見つめてるホァン技術部長。
 
「よし!」
 
 各モニターを確認してから、監視台があるベランダまで速足で行った。インカムを押さえながら、部下の神保と通信した。
 
「神保!ローンチ(打ち上げ場)はどうだ?」
 
 部下の神保は、巨大な移動クレーンの、それもまた巨大なタイヤ脇にある操作台で声を張り上げた。
 
「ハイ、ホァン部長!アルファー、ベーター、チャーリー!行けます。」
 
 オービター発車管制塔のベランダで腕を上げて、左右にふる黄技術部長。「ビッグマム」のペイロードベイに格納された大隊長のローマン・マズルに報告した。
 
「よっしゃ!ローマン!オールグリーン!繰り返すオールグリーン。カピー?」
 
 オービター・ペイロードベイ(機内格納庫)で横倒しのままセットされたHARMOR。そのコクピットで状況を見守るローマン・マズル大佐が居た。
 ニッコリ微笑んで黄部長に答えた。
 
「了解、アイカピーザッホァン部長!ロジャー。こちら第1群マズル大隊。第3群までのHARMORオールグリーン。ルフェーブル機長、管制塔!頼みます。オーバー。」
 
 モニターに向かって親指を立てて、グットサインをするローマン大佐。その画像を見てうなずくオービター発射管制塔のチーフエンジニア。
 
「了解マズル大佐。ロジャー。こちら管制塔、こちら管制塔。1番機!ルフェーブル大佐。制御渡します。オーバー。」
 
「了解。こちらルフェーブル!ロジャー。管制塔、制御頂きました。カウントダウンします。カピー。」
 
「了解。カピーザッ。マズル大隊に武運長久を!ルフェーブル機長グッドラック!オーバー。」

「了解、ロジャー!ありがとう管制塔!ウィルコ(行動了解)!」
 
 モニターにまた親指を立てて、グットサインをするローマンとルフェーブル。
 
「こちらマズル大隊隊長機、機長了解。ロジャー。」
 
 続けて答える2番機、3番機の機長たち。
 
「2番機、機長了解。ロジャー。」
「3番機、機長了解。ウィルコ。」
 
 うなずくルフェーブル、シーラス大佐。
 
「よし!全機ブースター・モーター始動!最大噴射開始。」

(( ロジャー!ブースター・モーター始動!最大噴射開始! ))
 
 滑走路に空いている各噴射孔から衝撃波の3つの扇方の雲が順番に上がった。
 
 
( ドン! )
       ( ドン! )
              ( ドン! )

 
 通信直後に3つの巨大な衝撃波の雲と共に、真っ白な噴煙が、噴き出した。
 ローンチの地下では、ロケットモーターバーニアからの青白い噴射炎が徐々に絞られていく。

(( ヒュィーンゴゴゴゴー!キィィーン……ジュゴゴゴゴゴゴーッ! ))

 特殊遮蔽グラスを装着し始める、ホァンと神保のエンジニアたち。
 滑走路の地面の下から3機分の白い大きな噴煙が、火山の大爆発の様に空に向かって更に噴出始めた。

「5、4、3、2、隊長機発進!」
 

(( キュイィーン……ズゴゴーッ!ドババババーッ! ))
 

「2番機発進!」

(( ゴゴーッ!ドババババーッ! ))

「3番機発進!」

(( ゴゴーッ!ドババババーッ! ))

 3機の120メートル級の巨大型シャトル・オービターが順番に打ち上がっていく。
 
 朝4時前の千歳市。
 
 3機の巨大ローンチ・ブースター・ロケットの噴射光が、千歳市を照らした。

 
(( ドゴゴゴゴゴー! )) 


 直撃するような腹ワタに響くオービターの発射音が千歳市を叩いた。
 
 陽の昇らない早朝から仕事をしていた市民たちが、その轟音と共に薄暗闇の空を矢のように上昇するオービターの噴射炎の眩しい光を目で追っていた。
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