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第1章 Never Can Say Goodbye.
第3話 開戦!スクランブル、台湾・金門県防衛戦。
しおりを挟む台湾の南。内陸部の嘉義空港。
嘉義県の緑豊かな深部にその空港があった。
この5年間で大幅拡張をし、世界で最先端のV-TOL専用国際ハブ空港。いわゆる垂直離着陸型機・専用空港となったのだ。その空港にサイレンが鳴り響く。
( ウゥーン。ウゥーン。ウゥーン。 )
サイレンの音が、緑が深い山々にコダマする。
滑走路、倉庫を問わず大勢の兵士達が臨戦態勢に入り、戦闘準備を開始したのだ。
台湾航空宇宙軍がある管制塔を兼ねた近代的な空港ビル。
そのビルの姿は千歳宙空ステーションの南端部に鎮座するシーラスワンの管制ビルとほぼ同じ作りだった。
その中の、だだっ広いシーラス・台湾のオペレーションルーム。
緊急招集が掛かった大勢の事務武官のスタッフが、駆け足でやって来て、持ち場に着き始めた。
( ウゥーン。ウゥーン。ウゥーン。 )
オペレーションルームを見渡せる最上階の戦略戦術指令室にも、男女の上級事務武官達が入って来た。
入口で、敬礼する2体の機動歩兵、WALKER。カラフルな高砂族の戦士風装飾がされている。
WALKERの間を通り、男女の上級武官達が持ち場の椅子に座った。
直ちに、ヘッドセットやインカムを装着し、端末や連絡を取りながら立ち上げ作業を開始した。
実はここ嘉義空港も千歳シーラスワン同様、巨大な管制塔ビルの正体は、超ド級宇宙戦艦(超ド宙空急襲攻撃型戦闘母艦・ウーラノス型3番艦「アフロダイテイ」の擬態艦橋)が偽装して鎮座しているのだった。
その為、千歳シーラス・ワンのオペレーションルームとほぼ同じ作りになっていて、正面に巨大なモニターと階段状のオペレーションエリアがあり、各国同盟加盟国軍の事務武官や台湾航空宇宙軍の上級士官達が臨戦態勢でオペレーションを始めていたのだ。
再び敬礼をする高砂族戦士の機動歩兵。そのロボ・スーツが舷門送迎のサイドパイプを鳴らした。
( ポ~ッ、ピーッポ~! )
そして、歩哨のWALKERが号令をかけた。
( Major General on the command bridge!(少将が入室します。) )
一斉に立ち上がる戦略・戦術指令室、台湾航空宇宙軍のエリート上級武官達。
最上段、最上階の戦略・戦術指令室コマンダー・ブリッジにシーラスの制帽・制服を来た男が敬礼をして入って来た。
敬礼が終わると、手を下げて席に着き、再び作業を始める男女のエリート武官達。
その武官達のいる司令室の脇を歩いて来る男の歳は40代後半だろうか、顔の右頬から横に三角形の3本の古いアザがある。
右の口元や頬を頂点とし、後頭部にむけて広がるアザ。そして欠けた右耳。
白髪交じり、白ヒゲで深緑のシーラス情報特務科の制帽。
その制帽の後ろ、首筋側には栗山椎葉道場マスコットの蝦夷フクロウと蝶々さんのふたつのマスコットがチョンと付いて、歩きに合わせてカタカタと揺れている。
そのマスコットをチラッと見るオペレーション中の女性武官。
制服両肩には黒に星1つの徽章。
台湾軍少将の徽章。
両胸には数多くの戦績を残した、多数のジャラジャラ。
その厳つい大男がゆっくり手を後ろに回してゆっくり歩いて来た。
制服の男はオペレーションルームを望む部屋の先端の壇上。ベランダで止まった。
ベランダのゼログラビティ・バーの手すりに両腕を付いた。
右腕の義手のロボットアーム、その手の甲から、ホログラフの小さな3Dモニターが浮かび、数々の文字が下から上に流れる。
それをジッと読む男。
読み終わったのか、後ろの端末エリアに座る女性上級武官へ、横目でうなずいた。
うなずき返してから、女性武官は後ろの集団へ合図した。
その後ろにエリート集団が席を立ち休めの姿勢で整列した。
少将職の男に気が付いた、下のオペレーションエリアの事務武官達は次々に立ち上がり敬礼をして、腕を後ろにまわし休めの姿勢を取り始めた。
休めの姿勢のままで最上部を見る台湾コマンダー(司令参謀)や事務武官、オペレーターたち。
男の後ろからスマートに歩いて来る女性士官。
ウエストが強調された深緑の仕立ての良い、スカート制服の似合う女性秘書官だった。
王少佐(王晴美:ワンチュンメイ、シーラス・台湾情報特務科秘書官:統合司令部付少佐)と言う、超エリート士官だった。
「王少佐、どうだ?」
横で敬礼をする女性秘書官に聞く男。
男は振り向きもしない。
「はい、郭少将閣下。台湾全軍の指揮権、委譲されました。」
「よし。」
男が見ていた3Dモニターの文章は各台湾軍の指揮権委譲の1級大将達の署名を見ていたのだった。
一歩間違うとクーデターに間違われる行動なのだ。
実はこの時、台湾軍には8名の1級大将がいたのだが、その内の3名が親中派だった。
その親中派3名の1級大将が、チーム・内方とアメリカ・特殊部隊シールズの脅迫に負けて、全権を郭に委ねるとの署名したのだ。
コードネーム、シーシェン(死神)ことホンファ・フチャ少佐や、フェニックスこと超絶美人のシーラス情報特務科の潜入員、東少佐の仕掛けた色香を使うハニートラップに引っかかったのだった。
そんな大人の苦労を事を知ってか知らずなのか、更に一歩前に出て、堂々と報告する女性秘書官。
「閣下、台湾全軍、全部署、配置に着きました。全1級大将の署名もデータ検閲終了しました。全てご本人に間違いありません。」
「よろしい。……。」
全スタッフを見渡す郭志明(クォ・ヂーミン)・台湾航空宇宙軍少将だった。
左右に敬礼する郭少将。
左右を見渡してから、そして全軍に宣言した。
「同志諸君。エネミーが我が領土、金門県への砲撃が只今、確認された。無差別砲撃が開始されたのだ。しかし、事前に我がシーラス情報特務科の活躍により事前にキャッチされている事だ。今回の砲撃、後から来るであろう敵のHARMORやWALKERの混成機甲師団の上陸攻撃はあくまでも、「ある攻撃」の為の陽動に過ぎないとされている。だが、だがなのだ、同志諸君。そのエネミーに本目標が、あろうが、なかろうと、我が領土領海領空を犯しているのは紛れもない事実である。よって!我が台湾に攻撃する者は、誰一人許さない。侵入する者は一人として生きて返さない。同志諸君!国際社会へ、台湾に攻撃する者は手ひどい目にあう事を示そうじゃないか!台湾全土、第1級スクランブル事態を発動する!諸君の武運長久を!」
(( はっ! ))
(( はっ! ))
台湾の全軍、潜水艦内。戦艦内、空港港湾内、基地内全ての将兵がモニターに向かって敬礼をした。
台湾全軍の反撃が始まるのだ。
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