「メジャー・インフラトン」序章2/7(僕のグランドゼロ〜マズルカの調べに乗って。少年兵の季節FIRE!FIRE!FIRE! No1. ) 

あおっち

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第13章 それぞれの対馬。

第3話 覚醒!クロノスタシス。

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椎葉きよしはAIXSの侵攻初日、対馬北部の旧帝国日本陸軍の(豊砲台跡)の工事現場に居た。
 
 ここは、AXISの対馬侵攻に対する最北端防衛基地として、日本国軍と自衛隊が共同で(豊砲台跡)に基地を建設していたのだ。

 予定名称は(豊砲台・対馬防衛基地)だった。
 この基地は、数あるタイプのHARMORの中で、制式呼称:アタッカー・アサルトHARMORの配置だけを予定していた。
 そのアタッカー視線でのアドバイザーとして5日間、夏休みを利用して呼ばれていたのだった。

 自衛隊に推薦したのはきよしの新格闘の師範でもあり、オディアの実の祖父、現イギリス宙空軍少将のアルフレット・ウィルソンだった。
 その基地の準備中に、椎葉きよしはAXISの侵攻に遭ってしまったのだった。

 ここ豊砲台・対馬防衛基地には、配置予定HARMORのサイズ確認の為、最新鋭とはいえ訓練用HARMORが1機あるのみだった。その訓練用モービルできよしが各種アタッチメント、新型50ミリ速射カノンなどの通常兵器の配置確認をしていたのだ。

 本来、海峡防衛ではスナイパー・ガンナーHARMORが必須配置なのだが、パイロットの育成遅延でスナイパーの配置が当面の間、凍結していた。(一説にはAXISと懇意と噂のある政治家の圧力と言われていた。)

 海岸防衛用の長距離砲(アタッカー・アサルトHARMOR用レールガン)などの格納、配置、着脱調整テストなど、現場で打ち合わせをしていた。

 その最中に対馬侵攻が始まったのだった。
 
 ちなみに、対馬配備のHARMORは現在、自衛隊の米国製旧型のアレックスの 18機だけであった。

 対馬市、近郊の自衛隊基地へ日本国軍が最新鋭国産HARMORと米国製HARMORを数機、順次配備予定だったが、AXISの対馬侵攻に間に合わなかった。
 
 侵攻初日、空爆がひと段落した後、敵のAXIS南北朝鮮軍が一番乗りで、対馬南西の小芝田地区へ最新鋭のAXIS・HARMORの24機と、地上機甲部隊を上陸させ対馬沿岸の漁村を占領した。
 そして、若い女性以外の民間人全員を虐殺したのだ。
 
 翌朝、全力即応の自衛隊は頑張った。1時間の攻防の果て敵モービルの21機を粉砕した。
 しかし、多勢に無勢。
 上陸した敵地上機甲師団の2000名の内、50名に及ぶ対モービル部隊の地上兵の携行兵器により、自衛隊モービル18機全機は全滅した。
 
 自衛隊パイロットは全員殉職したのだ。
 
 島嶼防衛に特化した最新鋭の20式戦車の20輌がなんとか、その機動力を生かし残り敵HARMOR部隊の3機を破壊し、地上機甲師団の進軍を防いでいたが、弾薬不足でこちらも壊滅間近と日本の防衛庁からは思われていた。

 この時すでに防衛部隊の対馬自衛隊普通科連隊と日本国陸軍の普通科連隊にも多数の死傷者が出始めていた。

 AXISの侵攻は、攻撃地域の陽動作戦で、主要施設の爆発から始まった。
 続いて、空から最新鋭爆撃機による空爆が始まったのだ。
 
 その音が、豊防衛基地で、トンネルの中で打ち合わせしていたきよし達に聞こえて来たのだ。
 突然、空に鳴り響くジェット音。
 トンネルから急ぎ出て、空を見る椎葉きよしたちの一行。
 
 青空に何本もの飛行機雲が広がっていた。
 基地の工事業者の人達もヘルメットを脱いで空を見ていた。
 その雲の先端から細く光る物体が細い雲を引きながら、地上に矢の様に連射されていた。
 対地誘導ミサイルが対馬の何かを攻撃していたのだ。

          ◇        ◇

 即座に、携帯電話で自衛隊基地や自宅に連絡するスタッフ。
 
「あれ?ん……。基地に全くつながりません。」
 
「私のも、あれ~あれ~……つながりません。」
 
「えっ?家にもつながらない。美紀ちゃん、美紀ちゃん……。あ~だめだぁ。」
 
 唖然とする3人の自衛隊スタッフ。
 
 振り向くと椎葉きよしがいない。
 きよしは作業現場を迂回して、向いの訓練用モービルが格納されているトンネルに向かって、通路踊り場を走っていた。
 作業するみんなに声を上げながら走る椎葉きよし。

( タタタタッ! )
 
「皆さん退避してください。ここも空爆を受ける可能性があります。携帯電話はダメです。携帯の電源を落として避難してください。携帯の電源を落としてっ!」
 
 きよしは、走りながら避難するように工事業者や建設業者に大声で掛けていた。と、その時、対地ミサイルが、手前の飛行機雲の先端から、こちらに向かって飛来していた。
 あっと言う間に着弾したのだ。

(( シュン~、ズガーン! ))

 一瞬の出来事だった。
 
 工事現場のど真ん中に誘導ミサイルが着弾したのだ。
 爆発の煙が充満する、山の窪みにある基地現場。
 
 道に伏せたきよし。
 向いの奥のトンネルにいた自衛隊スタッフを煙の間から探した。

「吉田のおじさんっ!みんな大丈夫ですかーっ!」
 
 3人を見つけると、全員血だらけで倒れていた。

「あー!吉田のおじさん!」
 
 下の現場をのぞくと、大勢が倒れていたが、何人かの現場作業員は、意識があり立ち上がろうとしていた。
 
「あっ、あ!これから、モービルを出します。皆さん!逃げてください。」
 
 上のきよしを見上げる年配の作業員たち。
 
( あー椎葉君!俺たちに構うな!早よ行け!俺たちは心配ない!ロケット(バーニア)吹かして早くやっつけてくれー! )
 
( あんちゃん行け~。早く行け~! )
 
「あ、あ、みんな。助けずにごめんなさい……」
 
 昨晩は、ここの工事現場の飯場で、作業員のおじさんたちと一緒に晩飯を食べて意気投合したきよしだった。
 その妻も、子もいる家族持ちの人たちが目の前で倒れていたり、負傷して苦しんでいたのだ。
 
 訓練用試作品のHARMORに乗るのをためらう、椎葉きよしだった。
 
 ここで、バーニア(ジャンプ用噴射ジェット・ロケット)を吹かしたら、ほぼ全員が焼死するのだ。
 
( コラッ!コラッコラっ!若者~っ!早よ行かんかい~! )
 
 きよしに向かって叫ぶ数名の作業員たち。
 その時、きよしの体に異変が起こった。

(( ドクンッ!ドクンッ!ドクンッ! ))

(( うっ!なんだ!ん~うっ、うっ! ))

 一瞬、きよしの周りの景色が止まった。
 心臓の音が体の中から響く。

( ドクンッ!ドクンッ!ドクンッ! )
 
 自分の呼吸の音がする。
 
 めまいのような不思議な感覚を覚えるきよし。
 2発目のミサイルが作業員の倒れている現場に直撃しようとしていた。
 
(( うわー!うわー!みんなー! ))
 
 あらん限りの声を出すきよし。
 
 何故か、全てに虹の様な影が付いた。
 地面に突き刺さろうとするミサイル。
 地面にゆっくり刺さり、ゆっくり爆発が始まる。
 舞い上がり始める煙やほこり。
 同時にミサイルの内側からゆっくり光が照り始める。
 膨らんでスローモーションで表面がさけはじめるミサイルの先端が、土の中にもぐり始めた。
 そしてミサイルの周囲の土が盛り上がり始めたのだ。
 
 えぐった地面の破片。
 盛り上がる土。
 きよしの目にする光景が全てスローモーションに映る。
 
 しかし、しっかりしている自分の感覚。両手、指を握ったり、広げたり。普通の動きである。普通の速さで動いている自分。
 自分の着ている服も普通に動くのだ。
 きよしが、正面を見ると煙が少しずつ上に広がり始めた。
 
 とにかく普通に動けるきよしは、廊下を走り鉄の階段を急いで降りた。
 作業場の広場の中央にはまだ1メートル位の高さの煙や土がゆっくり上に向かって伸び始めている。
 きよしに声をかけたオジサンは口を開けてきよしがいた3階の方を見ている。
 他の作業員4名もきよしが居た3階を見上げたままだった。
 
 きよしは、とっさの判断で、その5名をきよしが一人一人持ち上げ、急いで現場の反対にある駐車場の材料置き場に降ろした。
 
 5人目を運び終わり、工事現場に戻ると、爆炎やミサイルの炸裂して飛び出た小さなクラスター爆弾や対人用の弾が広がり、現場を襲おうとしている。
 
 そんな中、きよしの心臓の音が落ち着きを取り戻そうとしていた。
 
 スローモーションの世界が終ろうとしているのを感じて、訓練用モービルに慌てて走って近寄るきよし。
 
 乗り込むため、搭乗姿勢制御用の操作カバーを開けようとして手をカバーの内側に手を差し込んだ瞬間、スローな世界が解けたのだ。
 虹色の世界が解けたのだった。

(( ボンッ!ズガーン!ドドドドドドー! ))

 現実の世界に戻った椎葉きよし。
 
 HARMORの脚部の後ろに隠れた。
 爆炎と破片、爆風が襲う中できよしは自分の手の平の動きを確かめた。
 
「今のは、なんだったんだ。みんなゆっくり動いていた。今まで何回か、瞬間、瞬間、そんな気がしたことはあったけど。今回のは物凄く長い時間だった。」
 
 汗だくになり、息を切らして煙の中を凝視するきよし。
 
 煙が上がり始めた時、工事現場の反対側で、倒れる3人の自衛隊スタッフが見えてきた。
 
「沢田1陸士長、忠岡1陸士、吉田1陸士っ!吉田おじさんっー!畜生ーっ!」
 
 スローに動く、ミサイルに描かれたAXISの国旗を思い出すきよし。
 
「なんだ?対馬侵攻が始まったのか?畜生ーっ!無差別攻撃をしやがって。絶対一人残らず生きて返さない。」
 
 倒れる吉田1陸士を見つめるきよし。
……対馬に到着した時を思い出した。
 
 きよしが対馬空港に着いた時、新婚の美人妻と一緒に、吉田1陸士がきよしを出迎えに来ていたのだ。
 吉田は、きよしの父、椎葉繁の同級生だった。
 
 亡くなった繁の父、祖父の清春道場の弟子でもあった。
 同じ栗山町の出身だった。
 
 昨年、岩国自衛隊基地の椎葉繁サムライ道場で知り合った20歳も年の離れた木村美紀と結婚したのだ。
 美紀は陸上自衛隊で格闘徽章、射撃徽章付きのスーパー・トゥルーパー・レディーだった。
 
 PKF国連軍のヨーロッパ援軍遠征の最中、東ヨーロッパ防衛戦で実戦経験もある貴重な自衛隊員。
 そんな強力なお嫁さんをもらった吉田叔父さんがきよしを2人で迎えに来てくれていたのだ。
 
「吉田師範!吉田おじさん、初めての対馬です。よろしくお願いします。」
 
 頭をかいて、頭を下げるきよし。
 
「いや~きよすぃ!また、ホントにデカくなって!いやいやいや!デカいわ。1~2年でまた背ぇ伸びたか?いやいやいや!すげぇーなぁ。奈美叔母さん(きよしの祖母、繁の母親)の葬儀以来だから、2年ぶりか?」

( バシンっ! )

 と、ニコニコした新妻に、背中を叩かれる吉田。
 ニコニコしながら横目でにらむ新妻の美紀だった。
 
 空港で迎えに来ている人たちも、大きな音で一瞬静かになる。
 
 真っ赤になって背中を押さえる吉田叔父さん。
 
「あううっ……。いやいや、うっ、去年の俺と美紀ちゃんの結婚式以来かぁ……うぅ。」
 
 腕を組んで、ニコニコしながらうなずく新妻の美紀。
 
「はははっ。一瞬忘れた。ははっ。(横目で新妻をみる吉田。)じゃーこれから自衛隊基地まで案内するわ。繁とか京子さん、オディ子?みんな元気だべか?美紀ちゃんも暇してたから自衛隊サボって一緒に来たべさ。1・年・ブ・リ・だ・べ。(また、横目で新妻をみる吉田。)ドしても美紀ちゃん、きよしに会いたいとかで。はははっ!」
 
 きよしの手荷物を持って、背の高いきよしに、無理に背伸びして肩をはたく吉田。
 
「はははっ!去・年・の結婚式以来ですよね。ははっ……はははっ。(同じく少し汗をかいて、横目で美紀を見るきよし。)対馬は初めてなんで、吉田おじさん、よろしくお願いします。」
 
 反対の腕に絡む美紀。
 
「わぁ!きよし君!「去年」は結婚式に皆で来てくれてありがとう。(ジローと横目で旦那を見る美紀。)お子ちゃまきよし君に、また会えた!うわぁ感激ーっ。会って、すぐだけど、写真いい?」
 
「美紀ちゃん!もう~失礼な。嫁はちょっとミリオタでぇ。」
 
「ちょっとじゃないわよ。もう、コアなミリオタですっ!うふふっ。大の!大の!小林小隊の!大ファンです~!あ~感激~っ。キャー!ほーんとデカいっ!カッコいい!お肌色白なのに、ツヤッツヤ!顔がちっちゃ!もう、本物ー!キャー可愛い~!きよし君、いきなりですがぁ、写真撮るよ!私の射撃の教え子の~ぉ、女の子たちに~ぃ自慢できるぅ~。キャー!はーい、ピィース~ぅ!」

( カシャ! )
( カシャ! )
 
「わ~!ありがとう~!この写真、米国の小林小隊・テキサスファンクラブに投稿していい?私も会員なのよ!いい?モザイクかけるから。いい?」
 
「ハイ。どうぞ。えへへ。」
 
 だらしない顔で照れるきよし。
 
「ハイ、じゃー、もう一枚。」

( カシャ! )

 歩きながら自撮りする美紀に呆れる吉田。
 
「まぁきよし頼む、相手してくれや。はははっ。美紀ちゃん、昼飯食べに行くよ~。」
 
 言われるままに、美紀の相手をするきよしだった。
 気が付くと若い女性たちが集まって来た。
 やはり、お子ちゃまきよしは若い女性に有名なのか、アイドルを迎えるような、ちょっとした若い女性の人だかりが出来て盛り上がる対馬空港だった。

 そんな昨日の事が脳裏に浮かんだ。
 爆炎の合間から見える、血を流して倒れている父、繁の友人の吉田。
 小さいころから遊んでもらっている同郷の優しい吉田を見つめるきよし。
 こぶしが震える。
 
「うぐ、ぐ、ぐ。クッソ!」
 
 即座に動き、再び操作カバーに手の平を差し込んだ。
 そして顔を上に向けて、宣言した。
 
「椎葉清、少尉。ID89・29・KS・TANGO・125Alpha1。確認!」
 
 薄っすらと全関節の綺麗なモーター音と、核融合電池の制御音が始まった。

( キィィィーン、シュィィーン……。 )
 
(( プシュー、プシュ! ))
 
 モービルの全身の小さなライト類に電気が入る。
 コクピット・シールド・バイザー・カバーが開き始める。

( シュイィーン!シュー! )
 
( ウィウィ、シュ……ガタンッ。 )
 
 コクピット・シールドが開きながらしゃがみ始めた最新鋭の日波(日本ポーランド)共同開発モービル(JUKA製・JPM- 36式汎用有人搭乗・人型装甲機動攻撃機・初期導入訓練用試作機体-甲型)の訓練用試作機だった。
 
 後の完成形の名称は「シルフZERO」と呼ばれた。
 
 この36式は訓練用試作機ではあるが人機一体に動くのが売りで、ほぼ人間の動きを忠実に再現できたのだ。
 その最新鋭の試作機HARMORに搭乗準備をするきよし。
 HARMORに搭載された制御用OS(AMWOS、日本通称名:アモス)の女性声のAIが回答しながらパイロット搭乗ポジションで、機体を固定した。

( 椎葉きよし少尉を確認。搭乗を許可いたします。本機は搭乗パイロットの健康状態を検査することを提案いたします。その際、5秒ほど動きを止めて下さい。検査を始めてよろしいでしょうか。 )

( シュ!ギィーン、ガシャン。……プシュ。 )

「アモスの提案、承諾。検査開始。」

( 検査開始。よん、さん、ふた、ひと、検査を終了いたしました。 )

「アモス。緊急搭乗準備。」
 
( 通常搭乗手続きを省略します。緊急搭乗準備開始致します。少尉、プライオリティー・オーダーをお願い致します。 )
 
「緊急ジャンプ用意。遠距離砲ーっアイドルー準備っ。」
 
( 緊急ジャンプ用意します。遠距離砲、始動。核融合電池最大融合開始。水プラズマエンジン始動。 )
 
 モービルの背中にある多数のバーニア噴射孔。
 それぞれが急速に加熱し、膨大な範囲で陽炎が上がる。
 同時に、隣のトンネルに立て掛けた長距離射撃用のモービル用レールガンの電源が入った。
 レールガン置き場から危険を知らせるサイレンが、無人のトンネルに鳴り響く。

( ウォーン、ウォーン、ウォーン。装備品ペイロードの関係者は直ちに退避して下さい。繰り返します……。)
 
 綺麗に収納され、立て掛けられた細長いレールガンが回転し、自動的に機動モービルHARMORの取りやすい高さに移動した。
 そして弾丸を装填した。
 
( 椎葉少尉、遠距離砲、アイドルー完了。セットフリーです。 )
 
「了解、アモス。パイロットスーツ。」
 
( パイロットスーツ出します。G2収納扉、開きます。足元にお気をつけて下さい。 )
 
 人に例えると、足首の上のアキレス腱にあたる所が、上から縦にがばっと開いた。
 2名分の軽機関銃や拳銃、手りゅう弾等の装備品、複数の人間を治療出来るエマージェンシーキットの箱など、開いたカバーにギッシリ詰まっている。
 その中のケースからパイロットスーツを出し着替え始める椎葉きよし。
 着替えながら、AIに指示を与えた。
 
「アモス状況探査開始。周囲5キロ。一般情報及び対馬に関する情報。あとは任意の判断で。それと、アモス、報告先の確保準備。」
 
( スタンバイ衛星との光通信完了。偵察母衛星アレースの「モリガン1」およびシーラスの攻撃・偵察衛星「さくら」の協力の元、状況探査は既に終了しています。当機の報告先の確保開始。連絡先は。 )
 
「千歳第1宙域打撃群作戦本部と。え~、ん~HYK、SS009・2371・7865(栗山町自宅の椎葉繁の携帯)へ有事打電。そして、秘匿アナログ・モールス変換信号変換の設定。送受信媒体の準備。」
 
( 千歳第1宙域打撃群作戦本部、HYK、SS009・2371・7865へ有事打電完了。椎葉少尉、モールス変換形式は? )
 
「え~。マズル形式とスミス形式(訓練部隊の訓練用モールス信号)。日本国軍ホストよりダウンロードの開始。」
 
( 日本国軍ホスト接続、ダウンロード終了しました。少尉、正体不明の妨害電波を受けております。マズル形式は解読不能。スミス形式完全受信。スミス形式のみモールス発信可能です。ただ今、本機へのハッキング確認。ハッキング妨害成功。しかし、本機からの一切の通信は出来なくなりました。 )
 
「何?何で?」
 
( 強力なハッキングの為、物理的構造体およびシステム構造体の一部を只今、強制切断。又はデリートしました。 )
 
「えっ!ウソっ!」
 
 パイロットスーツを着ている途中のきよしは上半身裸のまま驚いて、HARMORのコクピットがある上を見た。
 コクピットから薄っすらと、青い煙が上がっていた。
 AIが外部へ繋がる通信機器の配線をダメージコントロール用溶接レーザーで切断したのだった。
 
「お前~。あ~あ。まぁスマハンドもあるし。」
 
( 直ちにスマートハンドの電源をお切り下さい。敵は警戒しています。直ちにお切り下さい。 )
 
「あっ、ハイハイ。解ってますから。え~、切りました。ヘッドギアからアナログ発信できるようにしておいて。」
 
( 了解。万が一に備えてヘッドギア(パイロットヘルメット)のアナログ発信プロトコル、揮発メモリー上に物理的レコード処置を致します。ライティング終了……椎葉少尉?只今、敵ハッキング電波を「さくら」が特定しました。 )
 
「何?どこだ?宙(そら)か、地上か?」
 
( 対馬北部の海栗島うにじま、既に占拠された第19警戒隊の海栗島うにじまの沖合。3隻の大型潜水母艦を確認しました。エネミー、敵です。ハッキングシステムを確認。探査中と思われます。形式、中華帝国海軍最新鋭の殲陸01型HARMOR用潜水母艦です。……戦術計測完了。最大排水量から1隻8機の敵モービルを搭載可能です。3隻の敵潜水母艦の存在を確定。予想最大基準排水量および質量の減少を確認できた。戦力判定で24機のモービルを放出したと思われます。 )
 
「24機か。解った。母艦に対する打撃効果は。」
 
( 遠距離砲で全艦、撃沈可能です。 )
 
「よっしゃ!行くぞアイモス!ちょっと待て、あっまた。うっ……。アイモス待て。うぅ。」
 
 パイロットスーツの胸を押さえて、しゃがむきよし。
 
( 椎葉きよし少尉の所在未確定。誰?アイモスとはどのような暗号でしょうか?日本人の発音的に、アモスと呼ばれていますが、アイモスとなるとローマ字のIが最初に……。 )
 
 モービルの左脚部に居たハズのきよしが、瞬間移動の様に正面にサっと立っていた。
 脇にはいつの間にか救急箱と、両手にはハサミや特殊炭素繊維の光触媒ホータイを持っていた。肩で息をしながら、訓練用HARMORの正面で無造作に急いで、救急箱に仕舞うきよし。

( 椎葉きよし少尉の所在不明、所在……。正面3メートル先に椎葉少尉を確認致しました。 )
 
「ふんっ。面倒な奴。エイモス行くぞ!」
 
( えっ?エイモスとは、また新しい言い方…… )
 
「オメーダ!エイモス行くぞ!」
 
( あ、あっ私、私?あっハイハイ。行きましょう。行きましょう。当機体、未確認の状態を探知。G2装備扉が開いてます。医薬品が80パーセント消失。緊急発進準備の為、扉、閉じます。発信準備完了。アイモス?エイモス?エイモスとは英式発音。どっちでもいいか。エイモス稼働開始致します!長距離砲を装備後、50ミリ新型速射カノンおよび予備マガジンパックを取得致し…… )
 
 パイロットスーツ姿で何事も無くモービルに乗り込むきよしだった。

 駐車場に置かれた資材の上で座らされている5人の作業員達。
 きよしのスロー時間中(いわゆるクロノスタシス様状態)に助けられた作業員だった。
 
 作業現場でミサイル着弾の激しい爆発音がする。と、同時に座って上を見ている5人の作業員が、ここに運ばれる前の続きの叫び声をあげる。
 
「行け~って、椎葉君~?あれっ?」
 
「俺たちの~事ぅなんかぁぁ、あれ?おりょ?」
 
「行かんかい~……、れれれっ。なんでここ?」
 
「いぃぃぃぃ……って。どこ?ここ、どこ?作業場は?気持ち悪っ!あれっ?あれっ?痛テテテ、血出てるし。でもあっ、一気に駐車場。」
 
「構うなぁ……って、あれっ?構う?あれ筋肉兄ちゃんは?あれっ?ここどこ?あれっ?なんで資材の上?」
 
 スロー時間できよしに救助された5人の作業員は一瞬の出来事で戸惑っていた。
 空爆攻撃を受け訓練モービルを出動させる為には作業現場で空から直接外に出る事しか出来ず、バーニアを吹かして飛ぶ必要があった。
 その為には作業員が犠牲になってしまう。
 それに躊躇する椎葉きよしに、俺たちに構わず行け!っと、出動のハッパ掛けている所だったのが一瞬で駐車場の資材置き場になってしまい、ワケが解らなくなっていた。
 作業員たちが混乱している時、物凄い音がし始めた。
 作業現場から音が出ている。
 作業現場を振り向く現場作業員たち。
 
( キーンーッ!ズゴゴゴゴゴー! )
 
「なんだなんだ?ジェット機か?」
 
 爆音と共に、斜め上に飛び上がるJPM- 36式の訓練試作機HARMOR。
 片手に長距離砲のレールガン、もう一方には50ミリ新型速射カノンを持っている。
 5人の頭上上空を飛び上がった。

( オオオオ~ォ! )

 目を見開いて驚く5人の作業員。

( キィイーンゴゴゴゴーッ! )

「よっしゃー!行け、行けー!」
 
「仲間の仇うちだー!兄ちゃん頼むぜー!」
 
 両手を上げて、応援する5人の作業員。
 バーニアを吹かして飛び上がったきよしのモービルを見えなくなるまで応援したのだ。
 
 2回の空対地ミサイルの攻撃を受けた作業現場では、全てが埃だらけになっていた。
 その奥のプレハブの作業詰所。
 作業員達の休憩室だった。ここだけは全く被害を受けていなかった。
 電源が取れない為、軽トラックに乗った発電機がうなっていた。

(( ヒューン……ドンッ!ズガガガガー! ))

 飛び立つJPM- 36式HARMORの物凄い爆音が鳴り響く作業現場。
 ガタガタと振動する詰所。
 エアコンが効いた詰所で、爆音と振動で目が覚める吉田1陸士がいた。
 
「う、う~。痛い。イデデデデ。」
 
 壁にもたれ掛けている状態で、目が覚めた吉田。
 太ももと右肩を負傷していた。でも、誰かが応急処置をしたのか包帯がまかれていたのだ。
 なぜか、左手にはレポート用紙を持ち、右手には使い捨ての注射器を持たされていた。
 その注射器の文字を見ると、抗生剤と書かれていた。

「ん?なんだぁ。」
 
 その注射器を地面において、割れたメガネを額に上げて横で倒れている沢田1陸士長、忠岡1陸士を見ると、同じく手には抗生剤の注射器を握らされている。
 
 2人とも止血サルファー剤のセロックスなのか、黄色い粉の上から包帯がまかれているのが解った。
 粉にも包帯も血が滲んでいる。
 救急医療を経験した誰かが手当をした様だった。
 吉田は、左手に持たされたレポート用紙へ書かれた手紙を読んだ。
 急ぎなのか、元々なのか、きったない字なりで文字が書かれていた。
 
( 椎葉です。 )
 
「おーきよし!きよしか!イテテ。ん?」
 
 イテテと言いながら、身を乗り出し窓や周りを見渡す吉田。
 倒れている作業員たちを見渡してから、フフンッ、とニッコリしてから手紙を読み始める。
 
( 椎葉です。3人共、何とかご無事で何よりでした。応急処置、残り10名にも致しました。救急箱に残りの抗生ざいの注射7本入っています。傷がひどい方はちゅうい書きを読んでからちゅうしゃしてください。セロックスもおきます。サルファーざいで止血もしますから傷に振って下さい。セロックスのほうたいもあります。 )
 
 横に置かれた残った注射器の白い箱を引き上げて、もう一度メガネを上げて見る吉田だった。箱を置いてから、引き続き手紙を読む。ひらがなと多くてちょっと読みずらかった。
 
( ざんねんながら2名は息をしていません。ごいたいは外にあんち(安置)してます。AXISの攻撃です。しばらく続きます。3日くらいはここでガマンしてください。僕は36しき(36式HARMOR)で行きます。かならずたすけに来ます。 )
 
 読み上げてから元気が出てくる吉田だった。
 
「きよしか!あっ、イデデッ……きよしか。よし!ハハハッ。」
 
 感激する吉田の横で、沢田1陸士長、忠岡1陸士も目を覚ました。

「おい、忠岡っ。気が付いたか、オイ?」
 
「う~イテテテ、う~、俺生きてるんか?う~、あっ吉田。」
 
 脇腹を負傷している忠岡だった。
 
「お~えらい目にあった。2人とも生きてるんだな。あっ、鼓膜か!左が聞こえない。」
 
 2人の上官の沢田も体を起こした。

「2人とも、イテテテ。生きてるな。とりあえず。イテテテ。」
 
 3人の目の前には、どこもかしこ負傷している作業員数名が横たわっていた。
 全員が黄色いセロックスの包帯が巻かれて、応急処置をされていた。
 きよしが負傷者全員に抗生剤の注射をしたのか、全員の手に使用した注射器を握らされていた。
 その作業員たちも、それぞれが次第に目を覚まし始めた。
 外から何やら騒がしい人の声が聞こえてくる。詰所のドアが勢いよく開いた。
 
( ガラガラガラッ! )
 
「おーみんな無事か!」
 
「友田のおっさん!裕二も!おー生きておった!みんな良かった良かった!」
 
 駐車場からきよしに助けられた5人の作業員が、仲間を探しに来たのだった。
 恐らく椎葉きよしが救急手当後、この部屋に集めたのだった。
 
「作業場に沢山倒れてたはずなんだけど、だーれもいなくて探してた。ここに居たか!」
 
 生き残った作業員が手と手を取り、肩を抱いて喜び合っていた。

「あ、きよすぃ!」
 
 何かに気が付いた吉田1陸士がビッコを引きながら急いで詰所を飛び出した。
 残骸が散乱する作業場に来て3階のトンネルを見る。
 ニッコリ微笑む吉田1陸士だった。
 
 そこにあるはずの訓練用の36式のHARMORがない。
 横のトンネルの長距離砲や50ミリ速射カノンが無い。
 その装備品トンネルの周りからうっすらと煙が昇っている。

「うわ、臭っ。ん?」
 
 金属が熱せられた、きつい、ツンッする臭いに眉をひそめる吉田。
 入れ口の金属の足場が、飛び上がるモービルの高出力のバーニアの高温で熱せられ、まだ所々、オレンジ色に発熱して光っている。ほんの少し前に飛び出したのが吉田にもわかっりニッコリした。
 そして、誰かが吉田の肩を叩いた。振り向く吉田。
 
「あぁ忠岡か。お前、大丈夫か。」
 
「まぁ、ゆっくり歩けば大丈夫だ。椎葉君か?」
 
「んだ、見ろ!」
 
「ああ!なるほどぉ、椎葉君だな。お子ちゃまきよしか。」
 
「そう。あれがお子ちゃまきよしだ。はははっ!いやいやいや、繁~っ!お前の息子は凄いぞ!」
 
 2人の後ろから、沢田も、助けられた5人の作業員も来た。
 
 作業場から広がる青い空を笑いながら、いつまでも見上げてる彼らだった。

          ◇        ◇

第2 部作が終わりました。

次、第3 部作

「メジャー・インフラトン」序章3/7(僕のグランドゼロ~マズルカの調べに乗って。少年兵の季節 FIRE!FIRE!FIRE!撃て!撃て!撃て! No2. ) 

に続きます。いよいよ対馬防衛戦の開幕です。
お楽しみに~!
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