「メジャー・インフラトン」序章2/7(僕のグランドゼロ〜マズルカの調べに乗って。少年兵の季節FIRE!FIRE!FIRE! No1. ) 

あおっち

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第12章 出会い。対馬防衛戦。

第2話 突きーっ!

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少女は足元に転がる流木を武器のつもりで、とっさに取った。
 その時だった。
 
(( バンッ! ))
 
 と、大きな爆発音とともにモービルの胸のカバーが少女の方に飛んできた。
 
( シュシュシュ! )

「キャー!うわ~っ!」
 
 岩の下に再び倒れる少女。
 胸のカバーが、岩に当たって止まった。間一髪だった。
 
( バシンッ! )

「うわー!もう、何が飛んで来た?もう……ん?何だろ?」
 
 モービルの胸のカバーが外れた暗いコクピットを目を細めて見ると、何やら両手をばたつかせてるパイロットが見えた。
 
「うそー!あんな上から落ちて、まだ生きてる。よし!戦うしかない!」
 
 剣道の心得がある少女は、流木を持って、上段の構えで横倒しのモービルに近寄っていく。
 コクピット内には若いパイロットが脱出を出来ずにいた。
 若いパイロットとは、椎葉きよしだった。
 
「ん~っく!ん~クソォ!完全に止まりやがって。せいの!う~。クソっ!ロックしたままか。」
 
 椎葉きよしを固定している左右の腰のパイロット固定ベルトバーの通電が切れて動かなくなっている。人の力では簡単に解除出来るものではない。
 それなりの道具が必要なのだ。
 
「核融合電池は仕方ないけどぉ、補助電源が死ぬ訳ないべ。断線かぁ?ハッキングに警戒して余計なところ焼き切ってたんじゃないか、エイモス。……。おい、エイモス?もう……ダメかぁ。」
 
 ヘッドギアのあごのところのスイッチを入れるきよし。
 ヘッドギア正面を照らせるだけのライトが付いた。
 
「あっ、もう。ライトは着くのに。」
 
 計器類のメンテナス板を開いて、ヘッドギアのライトで探るきよし。
 と、その時ヘッドギアに鋭い衝撃が来た。
 
( バシンっ! )
 
「ん?何、なんだべ?」
 
 気にせず作業を続けるきよし。
 再びヘッドギアに衝撃。
 
( バシン、バシンっ! )

「だから、何っ?え?」
 
 上を向くと、暮れ始めたミカン色の陽を浴びた少女が、棒を持って叩こうとしている。
 泣きながら叩こうとしているようだった。
 
「対馬の人のかたきー!このチャイニーズ野郎ーっ!」

( バシン、バシンっ! )

 「おじいちゃん、おばあちゃん達のかたきー!友達のかたきー!赤ちゃんのかたきー!赤ちゃんのおかあさんのかたきー!」
 
( バシン、バシンッ!バシン、バシンッ! )
 
 ビクともしないヘッドギアだったが、日本人の少女に攻撃されて、悲しくなるきよし。
 
「ちょっと待て、ちょっと待て!お願い!」
 
( バシン、バシンッ! )
 
 防音がしっかりしているヘッドギア。
 少女にきよしの声が、全く聞こえていない。
 咄嗟にきよしはヘッドギアを脱いだ。
 
「このチャイニーズ野郎っ!喰らえっ!」

(( 突きー! ))

 脱いだその顔に、少女の突きが右目に当たった。


( ゴンッ! )


 手を広げてバタバタするきよし。
 
「イタッー!待った待った!参った参ったべさ!なまら痛ー!。参った、参りました!待った待った!目はダメだめだべさーっ!マジ、なまらイッター!あー、ヒィーイテテぇ。」
 
 右目を押さえるきよしを見て、2度目の突きのポーズをしたまま動揺する少女。
 
「えっ!日本人っえっ!」
 
「なまらイッター。僕、ドサンコ。イッタぁー。お姉ちゃん勘弁してください。青タン出来んべ。イテテテ!」
 
 いきなり日本語、それも北海道弁のパイロットだった。
 突きのポーズを解いて、流木を降ろす少女だった。
 
「あ、あ~ごめんなさい、ごめんなさい。目~大丈夫ですか!」
 
「目は痛いべ~。なまらイタっ!なんで目~突くんですかぁ。パンダみたく青タンなるでしょ。あ~ビックリこいた。イテテっ。マジ、イタイ。」
 
「ごめんなさい、ごめんなさい。敵の兵隊と思って。ごめんなさい。」
 
「んですかぁ~?もぅ~それよりもそのぉ、その棒っこ!ここに刺しこんで、テコの原理で広げてください。腰挟まったんですっ。あー目、まだイタっ。さ、早く。さっ、その棒っこ貸して下さい。」
 
 流木を右目をつむったきよしに渡す少女。
 きよしは、股に無理やり棒を差し込んで、少女は指示通り、真上に棒を押してシートベルトバーを押し広げる。
 
「兵隊さん、押しますよ。いいですかぁ?」
 
 オーケーと指でしてから、両手で流木を持つきよし。
 
「はい、押しますよ。せ~の~!」
 
 力一杯流木を押す少女。
 
「ぐぐぐっ!」
 
「〇んこ、痛テテテ~!」
 
「大丈夫ですか?」
 
「おー〇んこ潰れるイタタ。フ~フ~!気にしないで棒っこ押して下さい。もう、いっぺん押してください。せーの!」
 
 再び全身で流木を押す少女。
 
「う~!」
 
「たま~イデデデデ~~っ!イデデデデ~よっしゃ!ありがとうございます。抜けた抜けました。腰~緩くなった。もう大丈夫、大丈夫。ありがとございます。ようやく動けますぅ。あっ、〇んこイデデデ。フーフー。」
 
 股を押さえて痛がるきよし。
 
「あ~腰が抜けて良かったです。でも、大丈夫ですか若い軍人さん。」
 
「若い軍人さん?って。あはははっ。ありがとうございますっ!ほーら、動けるようになりました。」
 
 少女を見上げて、おどけて腰をヒョイヒョイと左右に動かすきよし。
 右目を押さえて、少女を見た。
 
「お姉ちゃん有難う。なまら助かりました。下に降りて待って下さいっ。したっけ、お土産があります。今、地面に投げるから集めて下さい。手伝ってもらえますか?地元の方ですか?」
 
「違います!北海道の人間です!」
 
「えっ?んだの?えー!僕もですぅ。」
 
「ですよね。方言とイントネーションで解りました。詳しい話は、後にします。では、先にお土産下さい。ところで、このロボット爆発しませんよね?」
 
「え?あ~はははっ。マンガじゃないから爆発なんかしないです。電池止まってウンともスンとも言わなくて困ってるんだべさ。じゃ、お手伝い、お願い出来ますか?」
 
「もちろんです、軍人さん。」
 
 敬礼する少女。
 
「後でお名前とか教えてくださいね。さ、下に降ります。」
 
「了~!っじゃなく、ゴメン。了解!了解です。宜しくお願いしま~す。」
 
 ひとりで逃げて来た布村。
 何となく同郷で安心し始めた。
 同時にきよしの色白美少年顔に興味を持ち始めたのだった。
 
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