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第10章 ラブラブ・キャンピングワゴン❤️

第4話 ジュリアの追憶。

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「きゃ~!冷た~い!やったなオディ~。この~!」
 
 滝野自然公園の子供用水遊び場、足首くらいの浅い水のプールが小川のように流れている。
 しゃがんで手を冷たい水に浸してたジェシカ。
 そのジェシカのお尻を押して倒したオディア。

「もう、お尻まで、めっちゃ冷たい!この~オディ!」

( キャー!キャッキャ! )
 
 水をジャバジャバ飛ばして、きよしの足元に逃げるオディア。
 
「このー!オディア!ほらー!ハハハハッ!」
 
 きよしとオディアに水をかけるジェシカ。
 
「キヤー!キャッキャ!」
 
「うわっ。ジェシカ!冷た、冷たっ!参った参った。アハハハッ!」
 
 3人は水を掛け合って遊んでいる。
 
 ルオとリリィは双子ちゃんを前抱っこしていた。
 ゆっくりしゃがんで小ちゃな足を水に浸して構っていたのだ。
 
( キャッキャッ! )
( キャッキャッ! )
 
 大喜びのゴーシャとアーシャ。
 その双子のビデオを撮る子煩悩なバルトッシュパパ。
 ルオとリリィが子供を遊ばせながら、お互いを見つめ合っていた。
 
 水遊びをしているきよしやルオたちの所に、子供達や大人の着替えを持ってきた3人のエレナ、ジュリア、小林だった。
 エレナが、ニコニコ笑顔で子供達を見てるジュリアに話しかける。
 
「ジュリーも、遊びなよ。カバン、私が見てるから。さぁ。」

 エレナが、なんとなく乗り切れていないジュリアに気をつかって声を掛けた。
 
「うふふっ。ここで見るだけで十分楽しいわ。」
 
 ゴソゴソと双子ちゃんのバックの中の何かを探すエレナ。
 
「あったあった!京子さんからもらった日本のお煎餅。ハイ、未央ちゃん!ハイ、ジュリー!」
 
 ひとつづつ、袋に入った大きめのお煎餅を、袋を破って食べ始める3人。
 
「カリッカリッ。あっ!美味いわ~、ねぇ未央?」
 
「ははっ。エレナさん、日本のお煎餅初めて食べたの?美味しいしょ。」
 
 3人の前では、ずぶ濡れになりながらきよしの周りで追いかけっこするジェシカとオディア。そしてルオとリリィは仲良く並んで引っ付いて、双子ちゃんを水面で歩かせていた。
 
「お煎餅食べたら、ウチの子と遊んでジュリー。」
 
 笑顔をしながら、何となくチロチロっとジュリーとエレナを見る小林。
 
「う~ん……。今はいいかなぁ。エレナ、ん~今は……。」
 
 笑顔はしているが、今ひとつ元気がないジュリア。
 真顔になってジュリアを見るエレナ、女の勘が働いた。
 そんな2人をメガネを指で上げて、神経質に2人を見守る小林。
 
「ジュリー。あなた、訳ありね。お昼はバーベキュー。夜、温泉よ。ずーっとゴーシャとアシャと一緒よ。嫌なら私たち、帰るわぁ。そーしたら元気になる?どォ?」
 
「エレナ、ごめんなさい!そーじゃない、そーじゃないのエレナ。そーじゃないの。ちがう。子供は大好きなのよ。ただ……。」
 
 ジュリアの肩をさするエレナ。
 
「私で良ければ話して。同い年なんだし。あっ関係ないか。アハハ。」
 
「変な気を使わせてごめんエレナ。皆が楽しんでる時に、ごめん。」
 
 小林がその場の空気を読んだ。
 空気読みの、気遣い・心配り男。小林の真骨頂だった。
 
「あっ。オディアの唇、紫色!エレナ、ジェシー。俺、京子叔母さんが作ったHOTお子ちゃまコーヒーのポット持ってくる。んじゃ!」
 
 小林が気を利かせてその場を去った。
 スッと小走りに去る小林を振り返る美人な2人。
 
「ほーんと、日本人の男は気を使うよね!アハハハ。逆に白人の男は、女同志で大事な話をしている時、余計な時に何、何?って近寄ってくるわよね。ほんと邪魔よね~!アハハハ。」
 
 そんな時に、ビデオカメラを持った旦那のバルトッシュが、2人が気になってジャバジャバと水をはねながら寄って来た。
 
「エッラ、何、話ししてるの?何?何?何かあった?」

 目が点になるエレナとジュリア。
 
「あっ。……もぅ!嫌だ~!パパったら!もう!娘達を撮ってなさい!アハハハ~。」
 
 手を叩いて爆笑する2人。
 納得いかないまま何度も2人に振り向き、また娘達のビデオ撮りに行くバルトッシュパパ。
 
「あ~もう。笑うしかないわ。ジュリーごめんね。アハハッ。」
 
 また自分よりひと回り大きいジュリアの背中をさするエレナ。
 苦笑いして、話を始めるジュリア。
 
「3年前、もう3年経つのか。……主人と1歳の娘を亡くしたのよ。AXISの攻撃でね。」
 
 ハッとなり、目を見開くエレナ。
 そして、その大きな目から涙が溢れてきた。
 瞬く間に顔が真っ赤になりジュリアの肩に被さり肩で泣いた。
 そして、顔を上げた。
 
「そーなのっ。うっ、そーなのジュリア……、ジュリア。御免なさい。」
 
「エレナいいの。3年前かぁ。マレーシアの港、ポートケランのPKSF国連平和維持宇宙軍の米軍基地よ。知らない?チャイニーズAXISのマレー侵攻。」
 
「えっ?その時なの。……ご夫婦で配属してたんだ。」
 
 うつ向くエレナ。
 浅瀬プールで遊ぶ自分の娘たちとリリアナやルオをぼんやり見ていた。
 
「主人のチャーリーは高校の時の同級生で、一緒に志願入隊したの。」
 
「軍に入ってから結婚したのね。」
 
「そう、お互いそんなに裕福な家庭じゃなかったし、軍に入って家庭作って、育児プログラムを使って賢く暮らす。なんてね。彼の事、愛していたし。」
 
「まぁ、私もその口よ。ふふっ。ん?軍に入ったの後悔してる?ジュリー?」
 
 小林が荷物を持って歩いて来た。
 振り向く2人。
 
 折り畳みの簡易キャンピングチェアーを黙って2つ、2人の足元に置く小林。
 ジュリー、エレナが涙を拭いて、笑顔で小林に答える。
 
「未央ありがとう。」
 
「未央ありがとう。座るわね。」
 
 キャンピングチェアーに座る2人の金髪美女。
 
「保冷バックに大人のジュースやら、お菓子とか入ってるから適当に食べて。」
 
 オヤツや飲み物が入ったビニールの保冷バックを2人に預ける小林。
 
「オディアにホットコーヒー飲ませるわ。これは京子叔母さんから預かった赤ちゃん用ホットミルク。ゴーシャとアーシャに飲ませていい?」
 
「もちろん!おねがい未央ちゃん。未央ちゃんマメね~。うふふ。ありがとう。」
 
 エレナがニコニコしながら小林にお礼を言う。
 
「バルトパパにはビール持っていくわ。まだ時間早いからエレナさん、あげていいしょ?(北海道弁)」
 
「はははっ。まだ時間早いから、アルコールOKねっ。お願いするわ。私もビールいただきます。本当に日本のビールは美味しいよね。うふふっ。(英語)」
 
 ニコニコしながら荷物を持っていく小林の肩をピシピシ叩くエレナ。保冷バックをあさって、さっそく缶ビールを出すジュリー。
 
「じゃ、俺も水遊びしてくる。じゃあ!(英語)」
 
 両腕にポットや紙コップ、ビールを抱えて、走っていく小林。
 缶ビールを開けて乾杯するエレナとジュリア。
 
( プシュ! )
 
( プシュ! )

「チアーズ……あ、乾杯ッ。日本語で、(乾杯)よねフフッ。」
 
「ハイ、カン・パーイ・デース!フフッ。」
 
 オディアにホットおこちゃまコーヒーを飲ます小林。
 その後ろでビールを飲むジェシカと、スズラン印の瓶ガラナを飲むきよし。
 小林からもらったポットでミルクをカップに入れて冷ましながら双子に飲ませるルオとリリアナ。
 ビデオを撮りながらビールを飲むバルトシュ。
 おのおのが、ノンビリ楽しんでいるようだった。
 
 そんな彼らをビールを飲みながらまったりと見る美女2人。
 エレナがジュリアの首からぶら下がるIDに目がいった。
 
 軽く目を細めて見た。
 
 IDと一緒に焼けた跡なのか、決してきれいとは言えない小粒な宝石のついた大きめなリングがぶら下がる。
 それを手を伸ばして指に置いて見るエレナ。
 やはり、プラチナのリングなのだろうか、焼けた跡があるリングだった。
 細かな傷や一部潰れていたりしている。
 
「これは?もしかしたら、お子さんの。」
 
「ええ。娘の足首にしてた幸運のプラチナジュエリーよ。……探したけど、これしか見つからなかった。」
 
「そう……そうなのね。なんかジュリーごめん。」
 
 ビールを足元に置いて、ピッタリ簡易椅子を横に付けて、両腕を広げてジュリアの肩に抱き着くエレナ。
 
「あの時、まぁあの当時は、子供が小さいから軍の配慮でね、夫婦交代で勤務してたの。私はその日、私がいた機動モービルのHARMOR小隊は港湾の警備中。主人は非番で休日だった。」
 
 ゆっくりうなずきながら目を閉じて、話を聞くエレナ。
 
「チャイニーズの侵攻はその昼に始まったの。機動モービルの侵攻が真昼間だなんて。あんなデカブツ、普通は深夜でしょう?潜水母艦1隻から20機の機動モービルで攻めてきたのよ。突然ね。そして、戦闘が終わり私達はAXISのHARMORを全機破壊。無事、港にあるPKSFの米軍基地を守ったわ。」
 
「それは凄い。それで、」
 
「うん。私達は歓喜の内、基地に戻ったの。夜、基地から山の手の私たちの官舎に戻る途中、まだ煙の上がるショッピングモールが途中にあったの。その周囲も酷いやられ様だったわ。エレナも知ってると思うけど、司令官のご家族の誘拐が目的だったのね。残酷なAXIS。SNSでアップして有名な、グレイ東アジア地域統括司令長官の奥様とお嬢さんの公開処刑の……あれよ。」
 
「あー、あれは、酷い殺し方。私も見たわ。本当に残酷な軍隊。オーマガッ!凄いショックを受けたわ。」

 オーマイガーッと何度も言いながら、ひたいに指をつけて首をふるエレナ。
 
「そうでしょ、残酷よね。でもね、エレナ。」
 
「なに、ジェリー。」
 
「港湾の攻撃は、実は陽動だった。」
 
「陽動って、目標はそのグレイ司令長官の家族の誘拐だったのね。」
 
「そうゆう事。それで、山の手には3機の敵のHARMORの隠密部隊が空挺で襲ってきていたの。私、その時は判らなかった。」
 
 ジュリアの肩に頬をつけたまま、空を見続けるエレナ。
 
「主人、チャーリーは娘のサヤとショッピングモールで買い物していたみたいなの。」
 
 空を上目で見るエレナの瞳に、また涙が溜まって来た。
 
「そのショッピングモールの周りではすごい数の警察や消防、救急、軍、軍の機動歩兵の救命活動で大騒ぎだった。私は心配になりチャーリーへ電話したけど、電話に出ない。車の電話も繋がらない。実はこのプラチナリング、発信機入りだったの。」
 
 傷ついたリングを手の平に乗せてから、ゆっくり握るジュリアだった。
 
「車のAIに発信機の信号を受信するよう命令し信号を車のナビに映すと、無事に発信されているの。私の車の正面なの。あ~良かったと安心して、車を止めて外に出たのよ。でも正面は救命活動とかで沢山の人がいて判らなかった。スマハンドに受信を移して見ると私の方に信号が近づいてくる。私は正面を凝視したわ。主人がサヤを抱いて私に向かって走ってくるかと期待して。」
 
 目をつむるエレナ。
 
「ところが、警察の車両と続くレッカー車なの。でもその2台が私の脇を通ると、スマハンドのサヤの信号も同じく通過したの。レッカーされる車はフロントから後部座席までペシャンコに潰れて真っ黒に燃えた跡のライトブルーのワゴン車。」
 
 エレナの目から滝のように涙が落ちてきた。
 
「トランクから後ろはそのままだった。ナンバーを見ると、チャーリーが大好きな昔のバンド、ガンズのナンバーで、G&R “O” mineだった。」
 
 涙を流しながら無言になる2人。
 
「なんて、辛いことなの。ジュリー。うっ、うっ。」
 
 水遊びをする2グループを見つめる2人。
 
「AXISの空挺部隊はそのショッピングモールを目印に降下したのね。主人も、サヤも。駐車場の出口で4、5台の車と、縦に並んで燃えていたらしいの。降下したHARMORに踏まれたと、思う。恐らく。潰れた主人の車は私が近づく直前まで燃えてたみたい。少し、煙が出てたわ。」
 
 目から涙は出ているが、口元をキリッと引き締めてしゃべるジュリア。
 
 そんなジュリアたちを、オディアと遊びながらチラッと、見るジェシカ。
 ジェシカには部下のジュリアが、何の話をしているか察しがついたようだった。
 鼻で笑って呆れるジェシカ。
 ジュリアの話は進む。
 
「私は半狂乱で、そのレッカー車を止めて、燃えた跡の車に乗り込み2人を探したの。後で気が付いたけど、指や足を火傷をしていたわ。でも、このリングしか見つけられなかった。このリングだけしかなかった。」
 
 リングにキスをして優しく握るジュリアだった。
 そのジュリアの肩に手を乗せるエレナ。
 
「そんな事が今の私に起きたら、私は耐えられない。どう?ジュリア。一緒に私たちと過ごせる?」
 
「もちろん。話聞いてくれて、エレナ。ありがとう。実はその後、引きずった私は1年後、一度、軍を辞めたの。」
 
「えっ?軍を辞めたの。」
 
「書類上は辞めた事にはなってないけどね。と、言うのは……。」
 
 突然、後ろからジェシカの大きな声。
 
「私が引き留めたのさ。ハハハッ!なっ?そうだな兵隊っ!いつまでもしみったれた話しないっ!解ったら次は補給の準備だ準備っ!(パンパンッ!)兵隊!バーベキューの準備。はははっ。Go!Go!ムー、ムーッ!(パンパンッ!)」
 
 2人が振り向くと、腕を組んでずぶ濡れのままのジェシカが笑いながら立っていた。
 後ろでは、きよしがタオルでオディアの体を拭いて着替えをしている。
 いつの間にか引き上げてきたジェシカたちに驚くエレナ。
 その横に座るジュリアは両手を広げた。

( こういう事。 )

 と、口をへの字にして、手を広げジェスチャーをした。
 
 苦笑いのエレナも、口をへの字にして、涙を拭いてから立ち上がった。
 正面からは双子を前抱っこしてルオとリリアナが戻ってきている。
 
 水遊びでビショビショになった双子ちゃんを受け入れるために、小林からタオルをもらってエレナと、ジュリアがしゃがんで用意をした。
 
 そのリリアナとルオの後ろでは、まだビデオ撮影してみんなと景色を撮影するバルトッシュ・パパがいた。
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