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第7章 ロフテッド軌道・急襲攻撃訓練。
第5話 訓練開始!
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満点の星が輝くハワイ島の上空。
その星々の中でひときわ大きく目立つ星が落ちて来た。
星空に横一直線並んで、12個の白い星が落ちてくる。
真っ直ぐ並んで星空を降下してきた。
星の正体は、12機の千歳シーラスワン所属、航空宙空自衛隊の訓練用スペースシャトルオービター。
この大気圏再突入(EI)がひと段落すると、いよいよ12機の訓練用スペースシャトルオービターから最初の巨大な戦闘ロボ、アタッカー・HAMORが射出されるのだ。
訓練オービター1番機「ニンジャ・ワン」のコクピット。
副機長の鈴木が、全機射出準備の確認を終えた。
「機長、全機オールグリーン。」
「よし。」
機長の杉山がアタッカー・HAMORの射出の号令をかける。
「全機っ!ゴ、ヨン、サン、フタ、ヒト、いまっ!」
( ダイブ!ダイブ!ダイブ! )
( ダイブ!ダイブ!ダイブ! )
12機のオービターの電磁カタパルトからまずは、アタッカー・HAMORから射出された。
( ガラガラシュパー! )
( ガラガラシュパー! )
垂直に降下しているオービターから、カタパルト・レールウェイに火花を飛ばしながら12機の巨大ロボが噴き出すように飛ばされたのだ。
減速をしながら次の射出ポントまで降下するオービターとは逆に、アタッカーHARMORは、背中のランドセルのバーニアから真っ白い炎を全開にして怒涛の急降下を始めた。
( ドバババハーシュンシュンシュンー! )
( シュシュ、シュンーゴゴゴーッ! )
真っ暗な地表に向かって加速する12機。
ある程度の高度に達すると、12機は4チームに分かれランディングポイント4拠点へ向かって降下するのだ。
訓練場の西側に向かうのは、アルファ(A)チームのポーランドJWコスモス、第1訓練大隊バルトシュ・カミンスキ中佐「ゲームボーイ中隊」の3小隊、全9機。
ブラボー(B)チームはピォトル・コズウォフスキ少佐「シルバーヘアー中隊」、同じく3小隊の9機。
逆に東側へは、チャリー(C)チームの第2訓練大隊ジェシカ・L・G・スミス中佐「メティス中隊」の3小隊。
訓練場中央寄りのポイントには、デルタ(D)チームの台湾航空宇宙海兵隊、蔡柏宇(チュア バイ(ボウ)ユー)大尉「タイタン中隊」の4チームが、訓練に参加するのだ。
一気に目標高度の3000メートルまで加速しながら降下する4チームのアタッカー・HAMOR。
3000メートルまで降下すると、降下しているアタッカー・HARMORここから4拠点に分かれ始め背中のバーニアも停止して、次第に減速も始めるのだ。
各HARMORの頭上に小さなパラシュートが開き始めた。
減速および降下方向の微調整が始まった。
それから目標拠点の直上、高度1000メール上空までに迫ると、今度は本格的なランディングシークエンス(着陸前行動)が始まるのだ。
それも画期的な降下行動が始まるのだ。
アタッカー・HAMORの脇腹から噴射炎が無いエアー・ジェットの噴射が始まった。
(( ブシュワー、シューッ! ))
目標降下減速速度に達すると、アタッカー・HAMORは機体を180°回転し足元にお皿のような直径20メートルのエアロシェルを開いたのだ。
過去の降下作戦では、100トンにも及ぶ巨大なHAMORを降下させる為、3つの大きなコーンの巨大なパラシュートで減速したか、かなり大きいパラシュートだけに夜でも発見されやすかったのだ。
今はコンパクトな「エアロシェル」を採用している。
これは多機能のエアーブレーキなのだ。
アタッカー・HAMORは、カスケード硬化布によって強力に防御をされ、そして索敵用アクティブ・ソナーを底面に付けたエアロシェルを広げて降下してきたのだ。
減速降下しながら索敵するのも任務の一つだった。
大きなお皿のような「エアロシェル」乗って降下する12機のアタッカー・HARMORの雄姿だった。
◇ ◇
今回の訓練テーマは、『人質の確保と救出。そして敵兵力と基地の殲滅。タイムリミットはHAMOR着陸から40分』なのだ。
敵AXISの巨大ロボのHAMORに扮したアグレッサー(教導)HAMOR部隊から人質を40分以内で救出しなければならない。
アグレッサーHAMOR部隊はローマン・マズル大佐率いる50機。
対する訓練2大隊は36機。
今回の訓練に対する、訓練2大隊の評価は厳しいものだった。
小林小隊(小林未央、椎葉きよし、黄ルオ)の今までの過去12回の訓練(もちろん最高機密)を知らないせいもあるのだが、旧来からのHAMOR保有各国の訓練司令官たちは問答無用に、アグレッサー部隊の全面勝利と予想していた。
なぜなら最強のアグレッサーHAMOR部隊は、敵役として「実戦経験」のある最強部隊であり、裏付けとしてAIのシーラス・マザーのシミレーションの結果からもアグレッサー部隊の完全勝利と分析されていたのだ。が
また、探知不能のワイルドカードとして7機のHAMORがアグレッサー部隊に割り当てられた。
これは空からの急襲に対してのハンディキャップなのだ。
そして、HARMOR同士のロボットVSロボットの戦いではなく、あくまでも「パイロットと指揮系統の技能向上の一環」との副題なので、鬱陶しい地上兵に模した標的板が要所要所に配置される。
良く射撃場にある人型の標的板のようなものだ。
それが対ロボット用の「地上携行対HAMORミサイル」や「地上兵」を型どり、厄介なことに全数が完全探知不能ワイルドカードなのだ。
訓練側HARMORパイロットは、敵役のアグレッサーHARMOR部隊と、この小さな標的の両方を相手にしなければならいのだ。
突然、トラック荷台からパタッと現れる標的を3秒以内に撃ち取るか、退避しなければならない。各訓練用HARMORの各部につけられた被弾マーカーへ、レーザー光が当たると被弾判定がされるのだ。
地上では、訓練HARMARを迎え撃つ、ローマン大佐率いるアグレッサー部隊(教導部隊)の50機が、息を潜めて市街地射撃場に潜んでいる。
配置に付くアグレッサー部隊。
今回の訓練では、ハワイ島の訓練場の中で最も攻略が難しいとされる市街地モデルでの急襲攻撃訓練だった。
市街地を模した様々な高さのビルや店舗、民家が再現されている訓練場。
至る所に隠れる場所もあり、人間の兵士の訓練でも、難所だった。
しかも、この市街地訓練場はビルや建物の老朽化が進み、建て替えるため存分に壊しても良いと言われているのだ。
そのため、審判の士官は今回に限り、ビルのガレキに巻き込まれても全く平気なパワードスーツWALKARを着用しているのだ。
◇ ◇
「こちらミーティス(邦読みメティス:ジェシカ・スミス少佐機)、訓練大隊アタッカー全機のエアロシェル展開開始する。ニンジャ・ワン、オーバー。」
( ……こちらニンジャ・ワン(杉山機長のオービター名)、了解。ロジャー。 )
12機の足元で、瞬時に膨らむエアロシェル。
( シューン、バサバサッ! )
( シューン、バサバサッ! )
「カスケード硬化正常終了。オーバー。ニンジャ・ワン、ドゥユーカピー。」
次のコマンダーHAMORの放出準備をしながら答えるニンジャ・ワンの戦略戦術コマンド席の女性事務武官のサリー。
「こちらニンジャ・ワン、ロジャー!アタッカーHAMOR全機のエアロシェルブレーキの展開確認した。アクティブソナーも正常稼働確認した。オーバー?」
降下するアタッカーHAMORの第2訓練大隊リーダーのメティス機から冷静に返信と報告するジェシカ。
「ニンジャ・ワン。ロジャー。あっ。アクティブ(アクティブソナー)に反応あり。コーンボウラー?解析照合を行え。結果を送れ。カピー。」
僚機、オービター内のペイロードベイで降下準備中のコマンダー・HARMORのジュリア機「コーンボウラー(茎かじり虫)が応答する。
「ミーティス、こちらコーンボーラー、カピー。えー、えーアナライズ終了。ビンゴ!敵ASP(アグレッサースナイパー)確認、マム(ジェシカ・スミス少佐)、確認よろしく。カピー。」
「コーンボーラー、アナライズデータ受信。カピー!ステルス様エネミー4機を推定確認。あー、あー、エネミーASP確定は1機のみ。カピー」
同じデータを確認する椎葉きよし。
赤外線スコープの視界に、ビルの上で寝そべる不気味な熱源が浮かび上がる。
データベースとのクロスチェックは一瞬だった。
( 椎葉少尉、91パーセントの確率で、新型スナイパー・イクティニケと確認。 ASPファーストターゲットに登録しました。 )
自機AIのエイモスに指示を出すきよし。
「よし。エイモス、ASPファーストターゲットを光学ロックオン。ダイブ準備。」
( 了解、椎葉少尉。アグレッサースナイパーHAMORのPhoton Phase Lock(光子位相ロック)および
Spectral Signature Lock(スペクトルシグネチャロック)を完了。少尉、ダイブ準備完了。 コントロール・ドラグシュート(パラシュート)の配置完了。ダイブ・オールグリーン。 )
「よし。」
椎葉きよしは、レーダー波や探査波に引っかからないよう機体のほとんどの電源を切ってエアロシェルから光学目標のアグレッサースナイパーHAMORに向かって自由落下するのだ。
暗闇の奥に光るメティス(英読:ミーティス)機の複数のアイカメラ。
きよしが降下するジェシカの愛機を目視した。
きよしが、宣言した。
「ASPファーストターゲット、ロックオン!」
コクピット内のきよしの姿が映るモニターにニッコリ見つめて、投げキスをするジェシカ。
「よし!メティス、出る。オーバー?」
「GOSSH(シバの神)!ロジャー。こちらミーティス、ウィルコ(行動を了解)」
椎葉きよしのコクピットでは自分のスマハンド以外、真っ暗になった。
「エイモス。サイレントダイブ開始。」
( サイレントダイブ開始します。)
いきなりエアロシェルから飛び降りる椎葉きよしの「God of Siva」こと34式HAMORだった。
( ヒュルヒュルルル~。 )
その自然落下する機体の風切り音を残して、落下を続ける椎葉きよし少尉の「シバの神(God of Siva)」。
真っ暗なコクピット内では、スマハンドの薄いグリーンのモニターを見つめるきよし。
エイモスは強力な索敵波に引っかからないように34式HAMORのほどんどの電源をOFFにしていたのだ。
逆にきよしは、わざと敵の探査波網に引っかかるように、主力兵器の「50ミリ速射カノン砲」2台の全電源を入れたままエアロシェルに立てかけ、単身ダイブしたのだ。
案の定、下で構えるアグレッサーHAMOR部隊には50ミリカノン砲を持つアタッカー・HAMORがエアロシェルに乗って降下していると誤認識した。
降下するきよしの34式HAMORを完全にロストしていた。
きよしの目論見は成功したのだった。
発見されないまま更に降下する椎葉きよしの「GOS」。
そんなビルの屋上でカモフラージュをして寝そべるローマンたちアグレッサー部隊の1人。
USASF(アメリカ宙軍)のスナイパー・HAMORのパイロット。
「よーし、準備OK。よし、よし。ベテランとヒヨッコの新人混成部隊が降りてきたぞ!ははは。鉄壁の壁ってどういう意味か、ヒヨッコたちに教えてあげるぞ。」
コマンダー・HARMARに乗るローマンが、緊張感のないアグレッサーに注意を促した。
「コラコラ、たのむから集中してくれ。こんな2大隊の大訓練はアメリカ陸軍の貴様たちにとって、初めてなハズだろ。何を仕掛けてくるか分からない。いいか、彼らはトップガンだ!標的と実弾意外は本番と同じだ。とにかく貴様たちは初めてなんだ。油断しないでくれ。」
「そんなもんすかね~大佐殿。了解ですって、あん?」
その時、余裕の態度をとっていたスナイパー・HAMORのコクピット内に響く警報。
( ヒュンヒュン、ヒュンヒュン、警告、警告。直上に巨大な物体を感知。ヒュンヒュン、ヒュンヒュン。)
「なんだ?警告って。(バシン!ゴゴゴッ!)何っ!」
コクピットに響くバーニア噴射開始時の衝撃波。
スナイパーの表示に警告文が出た瞬間、直上から椎葉きよしの34式HAMORのバーニアの噴射炎が寝そべるスナイパーの直上に叩きつける。
( ズバババーッ! )
椎葉きよしの心臓が鼓動を早め、手のひらには汗が滲んでいた。
しかし、きよしは深呼吸をして冷静さを保とうとした。
数々の訓練で培ってきた集中力を最大限に発揮し、目標に向かって突き進んでいるのだ。
アグレッサースナイパーHAMORのレーダーに、落下する34式のバーニアの噴射炎で、ノイズが入る。
椎葉きよしは、噴射炎にも「EMSパウダー」を仕込んであったのだ。
噴射炎の中に、好きな時に粉を投入できるのだ。
この粉は一瞬で効果が消えるため、対象以外に影響が全く影響が出ないのだ。
証拠も残らないパウダーなのだった。
完全に全モニターがクラッシュを始めて焦るスナイパー・HAMORのアグレッサー・パイロット。
「なんだ、なんだ!全探査レーザーにノイズって!モニターもクラッシュって!」
バーニアの白い炎の明かりに浮かび上がるアグレッサー・HAMORの姿。
いきなりビルの屋上にうつ伏せで潜んでいたアグレッサー・スナイパーHARMARの背中にきよしの34式HAMORが馬乗りになった。
( ドシン! )
「ぐっ。うわわわ!」
34式HAMORの着陸圧と、2機の重さに耐えられず、派手に崩れ始めるビル。
ビルが粉砕されるような衝撃音とともに、34式HAMORはアグレッサー機と共に、ビルにめり込み、大量のコンクリート片が飛び散った。
暗闇の中、ビル倒壊の噴煙が立ち昇り、まるで隕石が衝突したかのような光景だった。
爆音が夜空を切り裂き、ビルは粉々に砕け散った。
舞い上がったコンクリートの粉塵が、わずかに残る他のビルの室内灯の光を浴びて白く輝き、鼻をつく埃の匂いが辺りに広がった。
( ゴゴゴーガラガラー! )
( うわーっ!何じゃーっ! )
崩れるビルの騒音や振動の中で、エイモスがハッキングを開始したのだ。
その星々の中でひときわ大きく目立つ星が落ちて来た。
星空に横一直線並んで、12個の白い星が落ちてくる。
真っ直ぐ並んで星空を降下してきた。
星の正体は、12機の千歳シーラスワン所属、航空宙空自衛隊の訓練用スペースシャトルオービター。
この大気圏再突入(EI)がひと段落すると、いよいよ12機の訓練用スペースシャトルオービターから最初の巨大な戦闘ロボ、アタッカー・HAMORが射出されるのだ。
訓練オービター1番機「ニンジャ・ワン」のコクピット。
副機長の鈴木が、全機射出準備の確認を終えた。
「機長、全機オールグリーン。」
「よし。」
機長の杉山がアタッカー・HAMORの射出の号令をかける。
「全機っ!ゴ、ヨン、サン、フタ、ヒト、いまっ!」
( ダイブ!ダイブ!ダイブ! )
( ダイブ!ダイブ!ダイブ! )
12機のオービターの電磁カタパルトからまずは、アタッカー・HAMORから射出された。
( ガラガラシュパー! )
( ガラガラシュパー! )
垂直に降下しているオービターから、カタパルト・レールウェイに火花を飛ばしながら12機の巨大ロボが噴き出すように飛ばされたのだ。
減速をしながら次の射出ポントまで降下するオービターとは逆に、アタッカーHARMORは、背中のランドセルのバーニアから真っ白い炎を全開にして怒涛の急降下を始めた。
( ドバババハーシュンシュンシュンー! )
( シュシュ、シュンーゴゴゴーッ! )
真っ暗な地表に向かって加速する12機。
ある程度の高度に達すると、12機は4チームに分かれランディングポイント4拠点へ向かって降下するのだ。
訓練場の西側に向かうのは、アルファ(A)チームのポーランドJWコスモス、第1訓練大隊バルトシュ・カミンスキ中佐「ゲームボーイ中隊」の3小隊、全9機。
ブラボー(B)チームはピォトル・コズウォフスキ少佐「シルバーヘアー中隊」、同じく3小隊の9機。
逆に東側へは、チャリー(C)チームの第2訓練大隊ジェシカ・L・G・スミス中佐「メティス中隊」の3小隊。
訓練場中央寄りのポイントには、デルタ(D)チームの台湾航空宇宙海兵隊、蔡柏宇(チュア バイ(ボウ)ユー)大尉「タイタン中隊」の4チームが、訓練に参加するのだ。
一気に目標高度の3000メートルまで加速しながら降下する4チームのアタッカー・HAMOR。
3000メートルまで降下すると、降下しているアタッカー・HARMORここから4拠点に分かれ始め背中のバーニアも停止して、次第に減速も始めるのだ。
各HARMORの頭上に小さなパラシュートが開き始めた。
減速および降下方向の微調整が始まった。
それから目標拠点の直上、高度1000メール上空までに迫ると、今度は本格的なランディングシークエンス(着陸前行動)が始まるのだ。
それも画期的な降下行動が始まるのだ。
アタッカー・HAMORの脇腹から噴射炎が無いエアー・ジェットの噴射が始まった。
(( ブシュワー、シューッ! ))
目標降下減速速度に達すると、アタッカー・HAMORは機体を180°回転し足元にお皿のような直径20メートルのエアロシェルを開いたのだ。
過去の降下作戦では、100トンにも及ぶ巨大なHAMORを降下させる為、3つの大きなコーンの巨大なパラシュートで減速したか、かなり大きいパラシュートだけに夜でも発見されやすかったのだ。
今はコンパクトな「エアロシェル」を採用している。
これは多機能のエアーブレーキなのだ。
アタッカー・HAMORは、カスケード硬化布によって強力に防御をされ、そして索敵用アクティブ・ソナーを底面に付けたエアロシェルを広げて降下してきたのだ。
減速降下しながら索敵するのも任務の一つだった。
大きなお皿のような「エアロシェル」乗って降下する12機のアタッカー・HARMORの雄姿だった。
◇ ◇
今回の訓練テーマは、『人質の確保と救出。そして敵兵力と基地の殲滅。タイムリミットはHAMOR着陸から40分』なのだ。
敵AXISの巨大ロボのHAMORに扮したアグレッサー(教導)HAMOR部隊から人質を40分以内で救出しなければならない。
アグレッサーHAMOR部隊はローマン・マズル大佐率いる50機。
対する訓練2大隊は36機。
今回の訓練に対する、訓練2大隊の評価は厳しいものだった。
小林小隊(小林未央、椎葉きよし、黄ルオ)の今までの過去12回の訓練(もちろん最高機密)を知らないせいもあるのだが、旧来からのHAMOR保有各国の訓練司令官たちは問答無用に、アグレッサー部隊の全面勝利と予想していた。
なぜなら最強のアグレッサーHAMOR部隊は、敵役として「実戦経験」のある最強部隊であり、裏付けとしてAIのシーラス・マザーのシミレーションの結果からもアグレッサー部隊の完全勝利と分析されていたのだ。が
また、探知不能のワイルドカードとして7機のHAMORがアグレッサー部隊に割り当てられた。
これは空からの急襲に対してのハンディキャップなのだ。
そして、HARMOR同士のロボットVSロボットの戦いではなく、あくまでも「パイロットと指揮系統の技能向上の一環」との副題なので、鬱陶しい地上兵に模した標的板が要所要所に配置される。
良く射撃場にある人型の標的板のようなものだ。
それが対ロボット用の「地上携行対HAMORミサイル」や「地上兵」を型どり、厄介なことに全数が完全探知不能ワイルドカードなのだ。
訓練側HARMORパイロットは、敵役のアグレッサーHARMOR部隊と、この小さな標的の両方を相手にしなければならいのだ。
突然、トラック荷台からパタッと現れる標的を3秒以内に撃ち取るか、退避しなければならない。各訓練用HARMORの各部につけられた被弾マーカーへ、レーザー光が当たると被弾判定がされるのだ。
地上では、訓練HARMARを迎え撃つ、ローマン大佐率いるアグレッサー部隊(教導部隊)の50機が、息を潜めて市街地射撃場に潜んでいる。
配置に付くアグレッサー部隊。
今回の訓練では、ハワイ島の訓練場の中で最も攻略が難しいとされる市街地モデルでの急襲攻撃訓練だった。
市街地を模した様々な高さのビルや店舗、民家が再現されている訓練場。
至る所に隠れる場所もあり、人間の兵士の訓練でも、難所だった。
しかも、この市街地訓練場はビルや建物の老朽化が進み、建て替えるため存分に壊しても良いと言われているのだ。
そのため、審判の士官は今回に限り、ビルのガレキに巻き込まれても全く平気なパワードスーツWALKARを着用しているのだ。
◇ ◇
「こちらミーティス(邦読みメティス:ジェシカ・スミス少佐機)、訓練大隊アタッカー全機のエアロシェル展開開始する。ニンジャ・ワン、オーバー。」
( ……こちらニンジャ・ワン(杉山機長のオービター名)、了解。ロジャー。 )
12機の足元で、瞬時に膨らむエアロシェル。
( シューン、バサバサッ! )
( シューン、バサバサッ! )
「カスケード硬化正常終了。オーバー。ニンジャ・ワン、ドゥユーカピー。」
次のコマンダーHAMORの放出準備をしながら答えるニンジャ・ワンの戦略戦術コマンド席の女性事務武官のサリー。
「こちらニンジャ・ワン、ロジャー!アタッカーHAMOR全機のエアロシェルブレーキの展開確認した。アクティブソナーも正常稼働確認した。オーバー?」
降下するアタッカーHAMORの第2訓練大隊リーダーのメティス機から冷静に返信と報告するジェシカ。
「ニンジャ・ワン。ロジャー。あっ。アクティブ(アクティブソナー)に反応あり。コーンボウラー?解析照合を行え。結果を送れ。カピー。」
僚機、オービター内のペイロードベイで降下準備中のコマンダー・HARMORのジュリア機「コーンボウラー(茎かじり虫)が応答する。
「ミーティス、こちらコーンボーラー、カピー。えー、えーアナライズ終了。ビンゴ!敵ASP(アグレッサースナイパー)確認、マム(ジェシカ・スミス少佐)、確認よろしく。カピー。」
「コーンボーラー、アナライズデータ受信。カピー!ステルス様エネミー4機を推定確認。あー、あー、エネミーASP確定は1機のみ。カピー」
同じデータを確認する椎葉きよし。
赤外線スコープの視界に、ビルの上で寝そべる不気味な熱源が浮かび上がる。
データベースとのクロスチェックは一瞬だった。
( 椎葉少尉、91パーセントの確率で、新型スナイパー・イクティニケと確認。 ASPファーストターゲットに登録しました。 )
自機AIのエイモスに指示を出すきよし。
「よし。エイモス、ASPファーストターゲットを光学ロックオン。ダイブ準備。」
( 了解、椎葉少尉。アグレッサースナイパーHAMORのPhoton Phase Lock(光子位相ロック)および
Spectral Signature Lock(スペクトルシグネチャロック)を完了。少尉、ダイブ準備完了。 コントロール・ドラグシュート(パラシュート)の配置完了。ダイブ・オールグリーン。 )
「よし。」
椎葉きよしは、レーダー波や探査波に引っかからないよう機体のほとんどの電源を切ってエアロシェルから光学目標のアグレッサースナイパーHAMORに向かって自由落下するのだ。
暗闇の奥に光るメティス(英読:ミーティス)機の複数のアイカメラ。
きよしが降下するジェシカの愛機を目視した。
きよしが、宣言した。
「ASPファーストターゲット、ロックオン!」
コクピット内のきよしの姿が映るモニターにニッコリ見つめて、投げキスをするジェシカ。
「よし!メティス、出る。オーバー?」
「GOSSH(シバの神)!ロジャー。こちらミーティス、ウィルコ(行動を了解)」
椎葉きよしのコクピットでは自分のスマハンド以外、真っ暗になった。
「エイモス。サイレントダイブ開始。」
( サイレントダイブ開始します。)
いきなりエアロシェルから飛び降りる椎葉きよしの「God of Siva」こと34式HAMORだった。
( ヒュルヒュルルル~。 )
その自然落下する機体の風切り音を残して、落下を続ける椎葉きよし少尉の「シバの神(God of Siva)」。
真っ暗なコクピット内では、スマハンドの薄いグリーンのモニターを見つめるきよし。
エイモスは強力な索敵波に引っかからないように34式HAMORのほどんどの電源をOFFにしていたのだ。
逆にきよしは、わざと敵の探査波網に引っかかるように、主力兵器の「50ミリ速射カノン砲」2台の全電源を入れたままエアロシェルに立てかけ、単身ダイブしたのだ。
案の定、下で構えるアグレッサーHAMOR部隊には50ミリカノン砲を持つアタッカー・HAMORがエアロシェルに乗って降下していると誤認識した。
降下するきよしの34式HAMORを完全にロストしていた。
きよしの目論見は成功したのだった。
発見されないまま更に降下する椎葉きよしの「GOS」。
そんなビルの屋上でカモフラージュをして寝そべるローマンたちアグレッサー部隊の1人。
USASF(アメリカ宙軍)のスナイパー・HAMORのパイロット。
「よーし、準備OK。よし、よし。ベテランとヒヨッコの新人混成部隊が降りてきたぞ!ははは。鉄壁の壁ってどういう意味か、ヒヨッコたちに教えてあげるぞ。」
コマンダー・HARMARに乗るローマンが、緊張感のないアグレッサーに注意を促した。
「コラコラ、たのむから集中してくれ。こんな2大隊の大訓練はアメリカ陸軍の貴様たちにとって、初めてなハズだろ。何を仕掛けてくるか分からない。いいか、彼らはトップガンだ!標的と実弾意外は本番と同じだ。とにかく貴様たちは初めてなんだ。油断しないでくれ。」
「そんなもんすかね~大佐殿。了解ですって、あん?」
その時、余裕の態度をとっていたスナイパー・HAMORのコクピット内に響く警報。
( ヒュンヒュン、ヒュンヒュン、警告、警告。直上に巨大な物体を感知。ヒュンヒュン、ヒュンヒュン。)
「なんだ?警告って。(バシン!ゴゴゴッ!)何っ!」
コクピットに響くバーニア噴射開始時の衝撃波。
スナイパーの表示に警告文が出た瞬間、直上から椎葉きよしの34式HAMORのバーニアの噴射炎が寝そべるスナイパーの直上に叩きつける。
( ズバババーッ! )
椎葉きよしの心臓が鼓動を早め、手のひらには汗が滲んでいた。
しかし、きよしは深呼吸をして冷静さを保とうとした。
数々の訓練で培ってきた集中力を最大限に発揮し、目標に向かって突き進んでいるのだ。
アグレッサースナイパーHAMORのレーダーに、落下する34式のバーニアの噴射炎で、ノイズが入る。
椎葉きよしは、噴射炎にも「EMSパウダー」を仕込んであったのだ。
噴射炎の中に、好きな時に粉を投入できるのだ。
この粉は一瞬で効果が消えるため、対象以外に影響が全く影響が出ないのだ。
証拠も残らないパウダーなのだった。
完全に全モニターがクラッシュを始めて焦るスナイパー・HAMORのアグレッサー・パイロット。
「なんだ、なんだ!全探査レーザーにノイズって!モニターもクラッシュって!」
バーニアの白い炎の明かりに浮かび上がるアグレッサー・HAMORの姿。
いきなりビルの屋上にうつ伏せで潜んでいたアグレッサー・スナイパーHARMARの背中にきよしの34式HAMORが馬乗りになった。
( ドシン! )
「ぐっ。うわわわ!」
34式HAMORの着陸圧と、2機の重さに耐えられず、派手に崩れ始めるビル。
ビルが粉砕されるような衝撃音とともに、34式HAMORはアグレッサー機と共に、ビルにめり込み、大量のコンクリート片が飛び散った。
暗闇の中、ビル倒壊の噴煙が立ち昇り、まるで隕石が衝突したかのような光景だった。
爆音が夜空を切り裂き、ビルは粉々に砕け散った。
舞い上がったコンクリートの粉塵が、わずかに残る他のビルの室内灯の光を浴びて白く輝き、鼻をつく埃の匂いが辺りに広がった。
( ゴゴゴーガラガラー! )
( うわーっ!何じゃーっ! )
崩れるビルの騒音や振動の中で、エイモスがハッキングを開始したのだ。
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それを助ける千歳シーラスワンの御舩たち。
同時進行で圧力をかけるAXISの陽動作戦。
台湾金門県の侵略に対し、真向から立ち向かうシーラス・台湾、そしてきよしの師範のゾフィアとヴィクトリアの機動艦隊。
新たに戦いに加わった衛星シーラス2ボーチャン。
目の離せない戦略・戦術ストーリーなのだ。
昨年、椎葉きよしと共に戦かった女子高生グループ「エイモス5」からも目が離せない。
そして、遂に最強の敵「エキドナ」が目を覚ましたのだ……。
SF大河小説の前章譚、第4部作。
是非ご覧ください。
※加筆や修正が予告なしにあります。
「メジャー・インフラトン」序章5/7(僕のグランドゼロ〜マズルカの調べに乗って。少年兵の季節 JUMP! JUMP! JUMP! No2.
あおっち
SF
海を埋め尽くすAXISの艦隊。
飽和攻撃が始まる台湾、金門県。
海岸の空を埋め尽くすAXISの巨大なロボ、HARMARの大群。
同時に始まる苫小牧市へ着上陸作戦。
苫小牧市を守るシーラス防衛軍。
そこで、先に上陸した砲撃部隊の砲弾が千歳市を襲った!
SF大河小説の前章譚、第5部作。
是非ご覧ください。
※加筆や修正が予告なしにあります。
―異質― 激突の編/日本国の〝隊〟 その異世界を掻き回す重金奏――
EPIC
SF
日本国の戦闘団、護衛隊群、そして戦闘機と飛行場基地。続々異世界へ――
とある別の歴史を歩んだ世界。
その世界の日本には、日本軍とも自衛隊とも似て非なる、〝日本国隊〟という名の有事組織が存在した。
第二次世界大戦以降も幾度もの戦いを潜り抜けて来た〝日本国隊〟は、異質な未知の世界を新たな戦いの場とする事になる――
大規模な演習の最中に異常現象に巻き込まれ、未知なる世界へと飛ばされてしまった、日本国陸隊の有事官〝制刻 自由(ぜいこく じゆう)〟と、各職種混成の約1個中隊。
そこは、剣と魔法が力の象徴とされ、モンスターが跋扈する世界であった。
そんな世界で手探りでの調査に乗り出した日本国隊。時に異世界の人々と交流し、時に救い、時には脅威となる存在と苛烈な戦いを繰り広げ、潜り抜けて来た。
そんな彼らの元へ、陸隊の戦闘団。海隊の護衛艦船。航空隊の戦闘機から果ては航空基地までもが、続々と転移合流して来る。
そしてそれを狙い図ったかのように、異世界の各地で不穏な動きが見え始める。
果たして日本国隊は、そして異世界はいかなる道をたどるのか。
未知なる地で、日本国隊と、未知なる力が激突する――
注意事項(1 当お話は第2部となります。ですがここから読み始めても差して支障は無いかと思います、きっと、たぶん、メイビー。
注意事項(2 このお話には、オリジナル及び架空設定を多数含みます。
注意事項(3 部隊単位で続々転移して来る形式の転移物となります。
注意事項(4 主人公を始めとする一部隊員キャラクターが、超常的な行動を取ります。かなりなんでも有りです。
注意事項(5 小説家になろう、カクヨムでも投稿しています。
「メジャー・インフラトン」序章1/ 7(太陽の季節 DIVE!DIVE!DIVE!ダイブ!ダイブ!ダイブ!)
あおっち
SF
脈々と続く宇宙の無数の文明。その中でより高度に発展した高高度文明があった。その文明の流通、移動を支え光速を超えて遥か彼方の銀河や銀河内を瞬時に移動できるジャンプ技術。それを可能にしたジャンプ血清。
その血清は生体(人間)へのダメージをコントロールする血清、ワクチンなのだ。そのジャンプ血清をめぐり遥か大昔、大銀河戦争が起こり多くの高高度文明が滅びた。
その生き残りの文明が新たに見つけた地、ネイジェア星域。私達、天の川銀河の反対の宙域だった。そこで再び高高度文明が栄えたが、再びジャンプ血清供給に陰りが。天の川銀河レベルで再び紛争が勃発しかけていた。
そして紛争の火種は地球へ。
その地球では強大な軍事組織、中華帝国連邦、通称「AXIS」とそれに対抗する為、日本を中心とした加盟国軍組織「シーラス」が対峙していたのだ。
近未来の地球と太古から続くネイジェア星域皇国との交流、天然ジャンプ血清保持者の椎葉清らが居る日本と、高高度文明異星人(シーラス皇国)の末裔、マズル家のポーランド家族を描いたSF大河小説「メジャー・インフラトン」の前章譚、7部作。
第1部「太陽の季節 DIVE!DIVE!DIVE!ダイブ!ダイブ!ダイブ!」。
ジャンプ血清は保持者の傷ついた体を異例のスピードで回復させた。また血清のオリジナル保持者(ゼロ・スターター)は、独自の能力を飛躍的に引き上げる事が出来たのだ。
第2次大戦時、無敵兵士と言われた舩坂弘氏をモデルに御舩大(ミフネヒロシ)の無敵ふりと、近代世界のジャンプ血清保持者、椎葉きよし(通称:お子ちゃまきよし)の現在と過去。
ジャンプ血清の力、そして人類の未来をかけた壮大な戦いが、いま、始まる――。
彼らに関連する人々の生き様を、笑いと涙で送る物語。疲れたあなたに贈る微妙なSF物語です。
本格的な戦闘シーンもあり、面白い場面も増えます。
是非、ご覧あれ。
※加筆や修正が予告なしにあります。
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