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第1章 銀河の果てに。

第4話 養女、オディアリーム・エダ・ウィルソン・椎葉。

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オービターの窓からは巨大なアイラが、歩き去るのが見える。
 
 この55スーリアの空港ポットに佇む自衛隊オービター・シャトル。
 オディアを搬送する為に杉山達が千歳宙空ステーション空港から乗って来たのだ。まだ、制式配備されていない140メートル級の巨大武装オービターの試作機だった。
 
 現在、配備されている航空宙空自衛隊の120メートル級大型オービター(BR-BM-1ビッグマム)は、一昨年末に配備されたばかりの新型オービターではあるが、鈴木達が出発準備をしているこのアース・スーリアの巨大なオービターはビッグマムと運用目的が違う別の新型機体だった。
 
 ネイジェア星域皇国からの提供技術によって今も1500~2000メートル級の宙空戦艦や宇宙戦闘巡洋艦が製造されていたが、その巨大な宇宙船にコバンザメの様にドッキングして今後運用される予定の、戦術目的のいわゆる次期試作機だった。
 
 その名も正式名称(GH‐60ジャイアントホーク)。
 
 ジャイアントホークの格納室には巨大な機動モービル1中隊(21機)と機動歩兵2個小隊(20台)を搭載し、宇宙空間、惑星大気圏内を長期間に渡り作戦運用する目的で作られた宙空急襲攻撃型オービターなのだ。
 杉山達はシーラス軍と共同で今年2月、120メートル級のビッグマムを通常の作戦高度降下運用から、急襲攻撃型に改良・試験をして成功したのだ。晴れて4月にシーラス全軍で採用された。杉山と鈴木はその実績と腕を買われ、ジャイアントホークを試験運用をしていたのだ。
 そのオービターで運用される機動モービルに、呼称は複数あった。
 
「アメリカ軍制式装備名称:HARMOR(ハマー)有人搭乗軍事機動作戦用人型装甲機:(Humanoid Armored Machine for Operations and Reconnaissance)」または「NATO軍国際制式装備名称:HMAE(フメイ)高機動装甲急襲攻撃戦略機器(High Mobility Armored Assault Strategic Equipment)」
 
 などと呼ばれた。でも日本では普通に機動モービルと言った。
 その21機の機動モービルを固定し放出するシリンダー装置が規則正しく、上下に並んでいる。そのコクピット側奥に、直径2メートル程度の円柱形のポットが固定されていた。
 巨大オービター、ジャイアントホークのペイロードベイ(格納庫)の奥に歩き進む3人。
 コクピット側の両舷に2.2メートル程の装甲化機動歩兵被服兵器のアーマード・ロボ・スーツ(アーマード・パワード・スーツ)が5体づつ左右に分かれセットされているのが見える。
 この、人間サイズの機体にも数々の名称があった。
 
「アメリカ軍制式装備名称:WALKER(ウォーカー): Weaponized Armored Locomotive Kinetic Exoskeleton for Reconnaissance」とか「NATO軍国際制式装備名称:AMIBA(エイムバー): Armored Mobile Infantry Battle Armor」
 
 と呼ばれていた。しかし、日本では普通に機動モービルに対して、機動歩兵と言われている。
 だが、ちょっとヲタ気味もしくは完全ヲタ脳のゲーマー達からは、昔から知ってる知ってる風に、ロボ・スーツやパワード・スーツと知ったかぶって呼ばれていた。
 
 その円柱形のポットの前に、顔だけ白人男性で体がチタニュウム・シルバーのアンドロイドとメガネをかけた神経質そうな白人女性がならんで何やらチェックしていた。
 
 その2人に椎葉繁と杉山機長、後ろからアルフレッドが歩いて来た。
 3人が近づくと手を止める女性。
 アンドロイドは気にせずそのまま3Dコンソールで作業を進めていた。
 繁の顔を見るなり、ニッコリ笑顔になる女性。それの女性はウィルソン家の公式執事、執事長のクラウディア・ガンジェットだった。
 
「クラウディアさん、3週間、有難うございました。」
 
 繁が、深々と頭を下げた。クラウディアは口に手を充てて笑って話した。
 
「ほほほっ。椎葉さんのような地球の方なら、いつでも大歓迎ですわ。楽しかった。おほほほっ。ほんと楽しかった。私たち執事一同、皇女殿下の地球の里親はどんな方かって、大変心配していましたのよ。ホント。安心致しました。ましてや、アイラ殿下様達の武道のご師範はどんなお方か。皆、会いたくってお待ちしていました。とにかく、こちらこそ3週間楽しかったですわ。」
 
 頭を掻いて照れる椎葉繁。
 
「いえいえ、私も、オディ子が巨人化した時は、取り乱してご迷惑おかけいたしました。体は大きくても中身は5歳児。大変でしたが、頑張るオディアを見て我が子ながら、また可愛くなりました。はははっ。将来オディ子がどんなイイ女になるかも解りましたし。本当に驚きの毎日でした。こちらも大変貴重な経験をさせていただきました。でも、自分が巨大化させて頂いた時も、本当になんというか……。はははっ!有難うございました。」
 
「おほほほっ。椎葉様もオース化の遺伝子をお持ちとは。更に奥様共々、原始因子をお持ちとは。偶然なんでしょうか。それとも宇宙かみさまの御意志なのかしら?本当に驚きましたわ!地球で万が一の時は妃殿下をお助けしてくださいませ。」
 
「はい!地球では我が子、椎葉家の長女ですから。お任せください。これからも夫婦で大切に育てます!」
 
「……。」
 
 メガネを取り、涙目になり目頭を押さえるクラウディア執事長。
 
「オディア皇女殿下のご両親様も、あの世でお喜びなされてることでしょう……。」
 
 一瞬、沈黙の場。
 繁の顔が瞬間曇る。
 その繁を見て、
 
( しまった! )

 という表情のクラウディア執事長だった。
 
「これ、クラウッ!息子のリチャード達の事はもう!ええわいっ!バカ者!」
 
「た、た、大変失礼いたしました殿下。私め、といたしたことが……。」
 
 手でアルフレッドの腕を押さえる椎葉繁。
 そして苦笑いをしながらクラウディア執事に気を使って言った。
 
「少将、いいんです。いいんです。クラウディアさんも気にせず。」
 
 チタニュウム・シルバーのアンドロイドの作業の手が一瞬止まり、4人を見た。

 その4人の脳波をモニタリング・チェックしてから、何事も無く作業を続け始めた。
 
 今は亡き、オディアの両親。
 そのワケは。

 ……実は、4年前に起きた誘拐事件だった。

 オース皇国のリチャード殿下とエダ妃殿下は、赤ん坊のオディアを連れて月裏にジャンプした。

 しかし、月裏リゾートのジャンプ・ポートで敵国の手に落ちたのだ。

 オース皇国・皇室夫婦誘拐事件の始まりだった……。
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