上 下
76 / 88

12-3

しおりを挟む

病院船の運航も軌道に乗って来て、今は病院バスに力を入れている。

少しずつ陽斗の理想とする医療も形になって来ていた。

最近では陽斗の考えに共鳴する若者も増えて、陽斗は定期的に一般人向けの勉強会も行っていた。

勉強会には熱心な医大生も多く、陽斗は教えるのが楽しくなって来ているようだった。


そして、今回の勉強会は、病院バスに実際に乗って3日間の実習を体験すると言うものだった。

今回の参加者は男性が3名で女性が1名だった。

陽斗は女性が1名だと、何かと問題が起きそうだからと私も同乗することになったのだ。
雫は今回も西園寺本家にお泊りだ。



出発前に陽斗が全員の紹介をした。

「今回の参加者は男性が3名、女性が1名、男性は、高橋、相葉、浅田の3名です。女性は、森本 愛(もりもと あい)さんとなります。今回はいろいろな手伝いをしてもらうために私の妻である澪も参加させていただきますね。運転手や医療技師はプロの方々にお願いしているので安心してください。それでは楽しい勉強会にしましょう。」

皆がパチパチと拍手をする中、女性の森本はなんだか不機嫌そうなのが気になった。

今回の課題になるプリントを配った時だった。

森本が動き出したのだ。


「何か質問があれば個々に来るように」と陽斗が言うと、森本は課題のプリントを持って陽斗の所へ質問に行った。

私は心の中で、これは陽斗狙いなのだと考えていた。
でも、大学生の森本がすることは可愛い事だろう油断したのだった。


「西園寺先生、課題について質問なのですが、」

森本は陽斗に質問しながら、陽斗のすぐ横に座ったのだった。

そして、質問をするごとに陽斗の太腿に手を置いて話をするのだ。
これには陽斗も気になったらしい。


「森本君、質問は僕の前に座ってくれないかな、説明がしずらいからね。」


「…はーい。」

明かに気だるい返事である。

他の男性3人はとても真面目だった。
3人とも外科医を志望しているだけに陽斗に憧れているのだろう。


今回は、3日間の勉強会の為、邪魔にならないように陽斗と別の部屋を用意してもらったのだ。

勉強会は深夜まで続いていたようだ。
私は先に部屋で休ませてもらう事にした。

その日の深夜、私はトイレのために部屋を出た。
すると、廊下には森本がたっていたのだ、
私は何気なく森本へ声を掛けた。

「森本さん、どうしましたか?」

森本は私の呼びかけに対して、ギロリと睨むような目をしたのだった。

私は恐くなり、思わず肩をすぼめるほどだった。



2日目の研修会が始まった。
森本が睨んだ恐い目を思い出したが、勉強会は普通に進んだのだった。

あの時はたまたま機嫌が悪かったのだろうか。

今日の森本は胸元が深く開いたブラウスを着ている。
森本は胸元を大きく開けて陽斗の前に座り質問をするのだった。

ここまでくると可愛いでは済まされない気がするのだった。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

推しがいるのはナイショです!

いずみ
恋愛
水無瀬華は、会社では困った新人に振り回されながらも、社員の憧れのエリート五十嵐課長に頼りにされ、有能に仕事をこなしているOLだ。 ある日、男に絡まれているところを助けてくれた、謎の男、久遠。 口の悪い久遠に最初は腹をたててた華だが、彼が自分と同じ、アイドル『RAGーBAG』のファンだと知って少しだけ警戒をといた。 課長が気になっていたはずなのに……華の心は、強引な久遠に惑わされていく。

お久しぶりです、元旦那様

mios
恋愛
「お久しぶりです。元旦那様。」

隠れオタクの女子社員は若社長に溺愛される

永久保セツナ
恋愛
【最終話まで毎日20時更新】 「少女趣味」ならぬ「少年趣味」(プラモデルやカードゲームなど男性的な趣味)を隠して暮らしていた女子社員・能登原こずえは、ある日勤めている会社のイケメン若社長・藤井スバルに趣味がバレてしまう。 しかしそこから二人は意気投合し、やがて恋愛関係に発展する――? 肝心のターゲット層である女性に理解できるか分からない異色の女性向け恋愛小説!

助けてください!エリート年下上司が、地味な私への溺愛を隠してくれません

和泉杏咲
恋愛
両片思いの2人。「年下上司なんてありえない!」 「できない年上部下なんてまっぴらだ」そんな2人は、どうやって結ばれる? 「年下上司なんてありえない!」 「こっちこそ、できない年上の部下なんてまっぴらだ」 思えば、私とあいつは初対面から相性最悪だった! 人材業界へと転職した高井綾香。 そこで彼女を待ち受けていたのは、エリート街道まっしぐらの上司、加藤涼介からの厳しい言葉の数々。 綾香は年下の涼介に対し、常に反発を繰り返していた。 ところが、ある時自分のミスを助けてくれた涼介が気になるように……? 「あの……私なんで、壁ドンされてるんですか?」 「ほら、やってみなよ、体で俺を誘惑するんだよね?」 「はあ!?誘惑!?」 「取引先を陥落させた技、僕にやってみなよ」

【完結】溺愛予告~御曹司の告白躱します~

蓮美ちま
恋愛
モテる彼氏はいらない。 嫉妬に身を焦がす恋愛はこりごり。 だから、仲の良い同期のままでいたい。 そう思っているのに。 今までと違う甘い視線で見つめられて、 “女”扱いしてるって私に気付かせようとしてる気がする。 全部ぜんぶ、勘違いだったらいいのに。 「勘違いじゃないから」 告白したい御曹司と 告白されたくない小ボケ女子 ラブバトル開始

優しい微笑をください~上司の誤解をとく方法

栗原さとみ
恋愛
仕事のできる上司に、誤解され嫌われている私。どうやら会長の愛人でコネ入社だと思われているらしい…。その上浮気っぽいと思われているようで。上司はイケメンだし、仕事ぶりは素敵過ぎて、片想いを拗らせていくばかり。甘々オフィスラブ、王道のほっこり系恋愛話。

その眼差しは凍てつく刃*冷たい婚約者にウンザリしてます*

音爽(ネソウ)
恋愛
義妹に優しく、婚約者の令嬢には極寒対応。 塩対応より下があるなんて……。 この婚約は間違っている? *2021年7月完結

糖度高めな秘密の密会はいかが?

桜井 響華
恋愛
彩羽(いろは)コーポレーションで 雑貨デザイナー兼その他のデザインを 担当している、秋葉 紫です。 毎日のように 鬼畜な企画部長からガミガミ言われて、 日々、癒しを求めています。 ストレス解消法の一つは、 同じ系列のカフェに行く事。 そこには、 癒しの王子様が居るから───・・・・・ カフェのアルバイト店員? でも、本当は御曹司!? 年下王子様系か...Sな俺様上司か… 入社5年目、私にも恋のチャンスが 巡って来たけれど… 早くも波乱の予感───

処理中です...