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彼は私の言葉を全く気にすることなく、強引に私の手を引いて歩き出した。
いったい彼は何者なのだろうと思っていると、いきなり自分の名前を名乗ったのだ。

「俺は、西園寺 陽斗(さいおんじ はると)今日の婚礼を予約している新郎だ。」

その名前を聞いて驚いた。

西園寺家といえば由緒ある財閥系の家柄だ。
今日の結婚式の中でも別格に盛大な式になると聞いている。
VIP客も多く、警備もかなり厳重になっているはずだ。

新婦の代わりと言っているが、何かの事情で今日の結婚式に間に合わないのだろうか。

「新婦様がいらっしゃるまでの代わりをすると言う事でしょうか?」

すると、彼は立ち止まり私の方を向いたのだ。
片眉を上げて、少し悪い笑顔のように見える。

「そうだな、お前の言う通りだ。それなら引き受けてくれるな。」

「い…いらっしゃるまでの間でしたら…お困りのようなので、お引き受け…します。」

とうとう私は彼の勢いに負けて、新婦が来るまでの間という約束で引き受けてしまった。
頼まれると断れない悪い癖が出てしまったのだ。




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