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秘密
しおりを挟むこの家から通学する第一日目。
高校へは今まで通りに通えるが、かなり遠くなってしまった。
自転車で通える距離ではない。
そのため、母が言っていたように、龍崎か早乙女が学校まで車で送ってくれることになったいた。
今日は第一日目ということもあり、初日は二人で来てくれることになったのだ。
車で学校の近くまで送ってくれるという。
早乙女の運転で、助手席には龍崎。
後部座席に私は乗せられた。
この二人を見ていると、学校ではなく、異世界にでも連れて行かれそうな雰囲気だ。
少しして車は校門の少し手前で停止した。
車を降りで学校に向かおうとすると、二人は私のすぐ後ろをついて来るではないか。
なんだかとても恥ずかしい。
龍崎と早乙女は目立ちすぎる。
友達に見つかったら何を言われるか分からない。
しかし、残念なことに、その姿はしっかりと学生たちに見られていた。
朝の通学時間であれば当たり前ではある。
校門で二人と別れて学校に入ると、私を待ち構えていたように皆が私の周りに集まった。
「…め…めぐ…恵美!あの超イケメン二人は誰!!」
「…驚くよね…私も良く分からないけど、教育係の執事って言ってたよ。」
「…っええええええ、漫画で見たことあるけど…執事ってどういうこと?それに執事の本物ってあんなにカッコいいの!!」
その後も友人達からいろいろ聞かれたが、そもそも私自身がよくこの状況を理解できていないため説明ができない。
少しの騒ぎはあっても、いつも通りの友人たちに、いつも通りの授業だ。
皆の姿を見てなんだか安心する。
学校にいる間はいつもと変わらない日常なのである。
しかし、学校はたった一日休んだだけなのに、私自身はとても長く休んでいたように感じていた。
今までと変わったこともある。
「恵美、今日の帰りにさぁ、いつもの店でパンケーキ食べに行かない?」
「…ごめん。帰りも迎えに来てくれるんだ…だから寄り道はできないよ…」
友人といつもの寄り道はできなくなってしまったのだ。
龍崎と早乙女が迎えに来てくれることになっている。
友人は不思議な表情をして、私の言っている意味が分からないようだが、この後その意味を皆が知ってしまうのだった。
校門を出てすぐの所に黒い車が止まっている。
私が門を出ると同時に、龍崎と早乙女が車の前に立ったのである。
すると二人のイケメンが突然現れて、学生たちは大騒ぎになってしまったのだ。
横を通る女子高生は、頬を赤くして二人を見てはキャーキャー騒いでいるようだ。
まるで、有名なアイドルが突然現れたような状況だ。
(ねぇねぇどっちが好み?私は優しそうな右側かな…)
(え…私は大人の色気が駄々洩れの感じがする左の男がいい!!)
写真を撮ったり、大騒ぎになってしまったではないか。
しかし、二人はそんなことは全く気にならない様子。
そして、近づく私に微笑んでくれるではないか。
「…恵美様、お帰りなさいませ…」
二人の微笑と声を聞いて、皆はさらにヒートアップ状態だ。
黄色い声というよりは、絶叫と言った感じだ。
龍崎が私の手を取り、二人が同時に軽く跪くと、回りから悲鳴が聞こえるほどだった。
私はこの状況が恥ずかしくて、どうにかなってしまいそうだった。
二人は全く気にしていない。
「高校生の皆さんは、とてもお元気ですね…驚きました。」
その言葉を聞いて驚いたのは私の方だ。
二人はこの状況をよく理解していないようだ。
「それは、お二人が…その…カッコいいからじゃないですか?」
「…ほう…私達でもまだ高校生に気に入られるのでしょうか?」
「…お二人とも…ご自分の姿を鏡で見たことありますか?」
まわりからキャーキャーと言われながらも、私は車に乗り込んだ。
龍崎と早乙女は女子高生から手を振られたので、それに応えるよう微笑んで手を振り返した。
一瞬皆が息を飲んだのか、沈黙があり、その後一斉に大きな割れるような悲鳴が聞こえてきたのだ。
近くで手を振られた女子高生は気絶寸前だ。
その様子を見ていた私は、なぜか少し怒った表情で車から外を見ていたようだ。
自分でも何を怒っているのか分からない。
ただ、なんとなく気分が良くないのは確かだ。
すると少しして、早乙女がクスッと笑いながら私の手を握った。
「…恵美様、もしかしたら…妬いていらっしゃるのでは?」
「----はぁ?なんで、私がやきもちを妬く必要があるのですか?」
「ご心配は無用ですよ。私たちは恵美様が一番ですから…ねっ龍崎。」
龍崎も少し意地悪な笑いをしながら頷いた。
「…恵美様は本当に可愛いですね…」
龍崎の言葉に恥ずかしくなり俯いてしまった。
二人が皆に笑顔で手を振ったのことで、無意識に気分が悪くなっていたのだろうか。
帰りの運転は龍崎が担当している。
早乙女は助手席ではなく、後部座席の私の隣に座っていた。
するといきなり、早乙女は私の肩を引き寄せたと思うと、頬にチュッと音をさせてキスをした。
いきなりのキスに心臓は爆発寸前だ。
顔から火が出そうでもある。
なぜ、このイケメン二人は何かあるごとに平気でキスするのだろう。
単なる挨拶なのだろうか?不思議な二人だ。
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