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第19話 昼夜の皇帝の秘密・前編
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そんなことを話している間に柊の道は消え、煌国、夜の東屋に戻ってきていた。
枯れたはずの赤紫色の藤の花が、さわさわと揺れる。周囲を照らすのは、夜月の無害な精霊だと鼬瓏が話していたのを思い出す。
ふと東屋には、皇帝が二人佇んで待っていた。
どちらも同じ顔で、同じ瞳をしている。唯一の違いは紺か黒の服ぐらいだろうか。私、魂だけなのだけれど、それでもこの二人には見えているらしい。そこは少しだけホッとした。
「よくぞこの国に舞い戻った」
「沙羅紗殿……、無事でなにより」
出迎えてくれるなんて思っていたなかった。思えば、私が帰る場所で誰かが私を待ってくれている人誰もいなかった。蒼月はいつも私と一緒にいるので「お帰り」も「行ってきます」もない。
「……ただいま戻りました」
「ああ」
鼬瓏《ユウロン》は私に手を伸ばして、手を掴もうとするが魂だけの私の指先は、触れることはできずにすり抜けていく。
「──っ」
「ったく、分かっていたことだぞ」
「?」
よく分からないが、とりあえず疑問を口にすることにした。
「ところで皇帝の服装を何故二人が?」
「余と鼬瓏は双子の兄弟だ。余は昼の皇帝として民を導き、弟の鼬瓏は夜の皇帝としてアヤカシたちを統括している。皇帝は本来一人だが双子が生まれた場合、陰と陽、昼と夜の側面を持って生まれたとして、昼と夜の皇帝としてそれぞれ即位する」
情報量が多すぎる。いや、でもそっくりだから兄弟だとは思っていたけれどまさか双子。そこは少し驚いた。
「(夜を統べるアヤカシの統括?)……それで鼬瓏が夜に見回りをしていたと?」
「本来はその必要もなかったのだが、鼬瓏が余の代わりに呪いを受けたため、アヤカシの統括が揺らいだ」
「そのバランスが崩れた結果、四凶召喚を許してしまったということ?」
「そういうことだ。しかし呪いに関しては解析と解呪に、いささか時間がかかったのも想定外だった」
「というと?」
颯懍は底意地の悪そうな笑みを鼬瓏に向けた。
「先ほど言ったように本来は、余が呪いを受けて女人になるはずだったらしい。そしてこの呪いを完全に解く方法は好いた相手との口づけ。つまりは余の寵愛を欲したところから起因する」
(元凶はアンタじゃないか……。ここでまさかの痴情のもつれとは……。つまり第四皇妃は皇帝の寵愛を得るために、呪いを仕掛けたが上手くいかなかったから四凶を使って、その上、皇帝の食指が動きそうな異邦人の術士である私の器を狙った……)
なんて面倒な女に引っかかったんだろう。皇帝、颯懍がちょっとだけ不憫に思えた。
「颯懍の弟である私の正体そのものは非公認でしたから、公にしていないことを沙羅紗殿に語ることができませんでした。誓約もありますし、もし告げれば……」
「本当に皇族の一員になるしかないからな」
「ああ、言えないのはそういう……」
「貴女は元の世界に戻りたいと言っていたのもあったので……私が本当のことをいえば貴女を逃すことはできない」
「!」
これは鼬瓏なりの配慮だったのだろう。そんな心遣いが少し嬉しい。
「いや、それがなくとも、遅かれ早かれ沙羅紗に手を出していただろう。なにを美談にしようとしている」
「兄上……」
「(ぶっちゃけちゃったよ、この人)……じゃあ、今回の黒幕は第四皇妃の単独?」
「余を昼の間女にすることで困らせ、自分で解決して更なる寵愛を得ようと考えた。──とここまでは第四皇妃が考えた絵図だったのだろう。もっとも、第四皇妃が暴走したのは、あの娘の余命僅かだったからだ。そのことを薬師から聞いた太傅が唆した」
「じゃあ……」
異世界召喚を行い、その人間の器を手に入れることで第四皇妃は皇帝の寵愛を、太傅は皇帝の弱みを握り傀儡としたかったのだとか。この世界の後宮はドロドロしていないと思っていたが、そうでもないようだ。昼ドラには負けるけれど、ドロドロはあったのね。
「四凶の封印場所を教えたのも太傅だったようで、騒ぎを大きくして異世界人を召喚、その器を乗っ取れば今度こそ颯懍兄上の寵愛を受けられると信じていたようです」
(余命が僅かだったから、第四皇妃には新しい器が必要だった。それも皇帝が欲するような……特別な存在となれば異世界人の召喚は都合が良かった、と。そして私の世界で調伏師たちに話を持ちかけた。いろいろ合点がいったわ)
中途半端に四凶の封印を解いたのは、異世界人の器を得たら自身で封印を施して、功を得ようと自作自演に持ち込むつもりだったのね。でも私には蒼月という器乗っ取り防止のプロがいる。
私と蒼月は契約によって繋がっているので、乗っ取るのは不可能に近かい。物理的に離れればと、狙ってやったけれど失敗に終わっているし。
「我がいる以上、我を倒さない限り器の乗っ取りなどできないからな」
(まあ、蒼月と拮抗するなら、それこそ神様クラスじゃないと瞬殺だものね)
「すでに太傅は捕らえている。此度の顛末は以上だ。さて、残る儀式を済ませてしまおう」
「?」
二人は東屋の奥に目線を向けた。
東屋の奧には寝台が見え――私の身体が横たわっている。改めて自分の体を見ると魂だけの存在なのだな、と実感する。
「――って、なんで私の服装が白装束になって、周囲に白い花を敷き詰めているの!? まだ死んでないのだけれど!」
「当たり前だ! 貴様の器に悪霊が取り憑かないようにするための処置だ。見て分からんか!?」
「見て分からないから言ったのよ! これから火葬するような感じだし! でもそれは、どうもありがとうございます!」
「まったく……」
颯懍は相変わらず煩いのだが、鼬瓏は妙に静かだ。
「沙羅紗、貴様が肉体に戻る為の儀式内容だが」
「反魂法とは違うと思うけれど、こちらの世界では特別なお作法でも?」
実は戻れない、といわれなくて内心安心ホッとしたのは内緒だ。でも言い淀むところを察するに、何かすべきことがあるのだろうか。
「ああ。貴様が元からこの世界の人間であれば問題なかったのだが、異邦人だからな。この土地との加護が薄い。肉体と魂の結びをこの地に縛り付けるため――余か、鼬瓏のどちらかと正式な婚姻を結ぶ必要がある。喜べ。特別に貴様に選ばせてやろう!」
「(あ。颯懍の身内になるから、皇帝が二人いるという秘密を私に明かしたのね)そう。なら鼬瓏を選ぶわ」
「っ!」
「即答か。余の妻になれば、存分に可愛がってやるぞ?」
「丁重にお断りします」
颯懍が食い下がるのは、嫌がらせのようなものだろう。この人、分かっていてやっている。本当にこの皇帝は性格が悪い。いや捻くれているというか、素直ではない。
「私が好きなのは鼬瓏だもの。それで私は普通に肉体に戻ればいい感じ?」
「……貴様は、本当に躊躇いとかないのだな」
「?」
蒼月にも時々同じようなことを言われるが、なにか変なことを言っただろうか。失礼ではないはず。そんなことを思っていると、颯懍は眠っている私の髪を一房掴むと口づけを落とした。
「なっ!?」
「義妹になるのだ。余からの祝福を大いに喜ぶがよい」
「肉体に戻ったら、ドロップキックをしに行きますわ」
意識のない人間に何してくれているんだ。憤慨しかけたが、颯懍は子どものように無邪気に笑った。
「ふっ、余にそのような不遜なことを言うのは、後にも先にも貴様ぐらいだろうな。……暫くは政務で余は忙しくなるが、貴様らはゆるりとして暮らしておけ」
(今さらだけれど、太傅って、確か皇帝を助け導く国府に参加する結構身分の高い人じゃ? そうか。ここは後宮だったから、宮廷内の噂や政治関係の話は耳に入らなかった)
颯懍は言いたいことを一方的に話して、東屋を出て行った。残ったのは私と鼬瓏だけ。思えば蒼月はこの場所に出た瞬間、影の中にいなくなっていた。
私の肉体と魂を繋ぐためにも、影の中にいるのだろう。
「沙羅紗殿」
「鼬瓏」
「こちらに、今……貴女の魂と肉体を結びつけますので」
「うん」
手を引いてもらい、私は自分の肉体に自分の半透明になっている手を重ねた。
枯れたはずの赤紫色の藤の花が、さわさわと揺れる。周囲を照らすのは、夜月の無害な精霊だと鼬瓏が話していたのを思い出す。
ふと東屋には、皇帝が二人佇んで待っていた。
どちらも同じ顔で、同じ瞳をしている。唯一の違いは紺か黒の服ぐらいだろうか。私、魂だけなのだけれど、それでもこの二人には見えているらしい。そこは少しだけホッとした。
「よくぞこの国に舞い戻った」
「沙羅紗殿……、無事でなにより」
出迎えてくれるなんて思っていたなかった。思えば、私が帰る場所で誰かが私を待ってくれている人誰もいなかった。蒼月はいつも私と一緒にいるので「お帰り」も「行ってきます」もない。
「……ただいま戻りました」
「ああ」
鼬瓏《ユウロン》は私に手を伸ばして、手を掴もうとするが魂だけの私の指先は、触れることはできずにすり抜けていく。
「──っ」
「ったく、分かっていたことだぞ」
「?」
よく分からないが、とりあえず疑問を口にすることにした。
「ところで皇帝の服装を何故二人が?」
「余と鼬瓏は双子の兄弟だ。余は昼の皇帝として民を導き、弟の鼬瓏は夜の皇帝としてアヤカシたちを統括している。皇帝は本来一人だが双子が生まれた場合、陰と陽、昼と夜の側面を持って生まれたとして、昼と夜の皇帝としてそれぞれ即位する」
情報量が多すぎる。いや、でもそっくりだから兄弟だとは思っていたけれどまさか双子。そこは少し驚いた。
「(夜を統べるアヤカシの統括?)……それで鼬瓏が夜に見回りをしていたと?」
「本来はその必要もなかったのだが、鼬瓏が余の代わりに呪いを受けたため、アヤカシの統括が揺らいだ」
「そのバランスが崩れた結果、四凶召喚を許してしまったということ?」
「そういうことだ。しかし呪いに関しては解析と解呪に、いささか時間がかかったのも想定外だった」
「というと?」
颯懍は底意地の悪そうな笑みを鼬瓏に向けた。
「先ほど言ったように本来は、余が呪いを受けて女人になるはずだったらしい。そしてこの呪いを完全に解く方法は好いた相手との口づけ。つまりは余の寵愛を欲したところから起因する」
(元凶はアンタじゃないか……。ここでまさかの痴情のもつれとは……。つまり第四皇妃は皇帝の寵愛を得るために、呪いを仕掛けたが上手くいかなかったから四凶を使って、その上、皇帝の食指が動きそうな異邦人の術士である私の器を狙った……)
なんて面倒な女に引っかかったんだろう。皇帝、颯懍がちょっとだけ不憫に思えた。
「颯懍の弟である私の正体そのものは非公認でしたから、公にしていないことを沙羅紗殿に語ることができませんでした。誓約もありますし、もし告げれば……」
「本当に皇族の一員になるしかないからな」
「ああ、言えないのはそういう……」
「貴女は元の世界に戻りたいと言っていたのもあったので……私が本当のことをいえば貴女を逃すことはできない」
「!」
これは鼬瓏なりの配慮だったのだろう。そんな心遣いが少し嬉しい。
「いや、それがなくとも、遅かれ早かれ沙羅紗に手を出していただろう。なにを美談にしようとしている」
「兄上……」
「(ぶっちゃけちゃったよ、この人)……じゃあ、今回の黒幕は第四皇妃の単独?」
「余を昼の間女にすることで困らせ、自分で解決して更なる寵愛を得ようと考えた。──とここまでは第四皇妃が考えた絵図だったのだろう。もっとも、第四皇妃が暴走したのは、あの娘の余命僅かだったからだ。そのことを薬師から聞いた太傅が唆した」
「じゃあ……」
異世界召喚を行い、その人間の器を手に入れることで第四皇妃は皇帝の寵愛を、太傅は皇帝の弱みを握り傀儡としたかったのだとか。この世界の後宮はドロドロしていないと思っていたが、そうでもないようだ。昼ドラには負けるけれど、ドロドロはあったのね。
「四凶の封印場所を教えたのも太傅だったようで、騒ぎを大きくして異世界人を召喚、その器を乗っ取れば今度こそ颯懍兄上の寵愛を受けられると信じていたようです」
(余命が僅かだったから、第四皇妃には新しい器が必要だった。それも皇帝が欲するような……特別な存在となれば異世界人の召喚は都合が良かった、と。そして私の世界で調伏師たちに話を持ちかけた。いろいろ合点がいったわ)
中途半端に四凶の封印を解いたのは、異世界人の器を得たら自身で封印を施して、功を得ようと自作自演に持ち込むつもりだったのね。でも私には蒼月という器乗っ取り防止のプロがいる。
私と蒼月は契約によって繋がっているので、乗っ取るのは不可能に近かい。物理的に離れればと、狙ってやったけれど失敗に終わっているし。
「我がいる以上、我を倒さない限り器の乗っ取りなどできないからな」
(まあ、蒼月と拮抗するなら、それこそ神様クラスじゃないと瞬殺だものね)
「すでに太傅は捕らえている。此度の顛末は以上だ。さて、残る儀式を済ませてしまおう」
「?」
二人は東屋の奥に目線を向けた。
東屋の奧には寝台が見え――私の身体が横たわっている。改めて自分の体を見ると魂だけの存在なのだな、と実感する。
「――って、なんで私の服装が白装束になって、周囲に白い花を敷き詰めているの!? まだ死んでないのだけれど!」
「当たり前だ! 貴様の器に悪霊が取り憑かないようにするための処置だ。見て分からんか!?」
「見て分からないから言ったのよ! これから火葬するような感じだし! でもそれは、どうもありがとうございます!」
「まったく……」
颯懍は相変わらず煩いのだが、鼬瓏は妙に静かだ。
「沙羅紗、貴様が肉体に戻る為の儀式内容だが」
「反魂法とは違うと思うけれど、こちらの世界では特別なお作法でも?」
実は戻れない、といわれなくて内心安心ホッとしたのは内緒だ。でも言い淀むところを察するに、何かすべきことがあるのだろうか。
「ああ。貴様が元からこの世界の人間であれば問題なかったのだが、異邦人だからな。この土地との加護が薄い。肉体と魂の結びをこの地に縛り付けるため――余か、鼬瓏のどちらかと正式な婚姻を結ぶ必要がある。喜べ。特別に貴様に選ばせてやろう!」
「(あ。颯懍の身内になるから、皇帝が二人いるという秘密を私に明かしたのね)そう。なら鼬瓏を選ぶわ」
「っ!」
「即答か。余の妻になれば、存分に可愛がってやるぞ?」
「丁重にお断りします」
颯懍が食い下がるのは、嫌がらせのようなものだろう。この人、分かっていてやっている。本当にこの皇帝は性格が悪い。いや捻くれているというか、素直ではない。
「私が好きなのは鼬瓏だもの。それで私は普通に肉体に戻ればいい感じ?」
「……貴様は、本当に躊躇いとかないのだな」
「?」
蒼月にも時々同じようなことを言われるが、なにか変なことを言っただろうか。失礼ではないはず。そんなことを思っていると、颯懍は眠っている私の髪を一房掴むと口づけを落とした。
「なっ!?」
「義妹になるのだ。余からの祝福を大いに喜ぶがよい」
「肉体に戻ったら、ドロップキックをしに行きますわ」
意識のない人間に何してくれているんだ。憤慨しかけたが、颯懍は子どものように無邪気に笑った。
「ふっ、余にそのような不遜なことを言うのは、後にも先にも貴様ぐらいだろうな。……暫くは政務で余は忙しくなるが、貴様らはゆるりとして暮らしておけ」
(今さらだけれど、太傅って、確か皇帝を助け導く国府に参加する結構身分の高い人じゃ? そうか。ここは後宮だったから、宮廷内の噂や政治関係の話は耳に入らなかった)
颯懍は言いたいことを一方的に話して、東屋を出て行った。残ったのは私と鼬瓏だけ。思えば蒼月はこの場所に出た瞬間、影の中にいなくなっていた。
私の肉体と魂を繋ぐためにも、影の中にいるのだろう。
「沙羅紗殿」
「鼬瓏」
「こちらに、今……貴女の魂と肉体を結びつけますので」
「うん」
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