【完結】白蛇神様は甘いご褒美をご所望です

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第3章

第34話 人外さんにとってのクリスマスは?

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「……小晴が自分から、求愛してきた……」
「紫苑の昔のことを聞きたくないとか、興味がないとかではないですよ」
「そうなのか?」
「はい。……その、大切な人が傷ついて、怪我などを負うと人間は心配で心臓がギュッと苦しくなるのです。今日はいろんなことがあって心が疲弊してしまっていて、紫苑の話を真剣に聞くには、少し私の準備不足なのだと思います。なので後日落ち着いてから、紫苑のことをたくさん聞かせてください。紫苑がどんな生き方をしてきたとか、どんな風に思っていたとか……知りたいのです」

 紫苑は「うん、うん」と何度も頷いて、可愛らしかった。

「小晴……。うん、小晴にもっと私を知って欲しい。私に何が好きで、何をしてきたのか」
「はい」

 さすがに疲れて頭が回らない状態で聞きたくなかったので提案をしたら案の定、すぐに機嫌を直してくれた。神様はこんなにコロコロと表情を変えるのだろうか。
 ふとそんなことが脳裏に過った。


 ***


(もう……どんな乗り物が出てきても驚かないわ)

 駆動音の感じさせない滑らかな走りは、心地よい揺りかごのようだった。
 生まれて初めて黒塗りの高級車に乗った時は緊張でガチガチだったのに、人間とは順応する生き物のようで、一週間経った今では景色を見るだけの余裕が生まれたほどだ。

(もっとも紫苑との距離感は、そんな簡単にはなれないけれど!)

 なぜ高級車での移動か。
 前回の浅緋の一件もあり、レンタルキッチンの利用場を適度に変えるため移動手段は車となったのだ。ちなみに前回は、幽世にある武家屋敷から歩いてすぐだった──と思う。

 電車とバスを使っても良かったのだが、人混みが多いところだと人払いでは効果が薄れてしまうため、紫苑が注目を浴びることになると左近さんに言われて納得してしまった。

 それでも車を出してもらうのが申し訳ないと言い出したら紫苑が「面倒だから昏倒させてしまえば」と呟いたので慌てて「車で移動しましょう!」となった次第である。

 店のホームページは右近さんと左近さんに相談して、限定販売に切り替えることにした。また人外界隈用の特別サイトも用意してもらい、紫苑を含めた人外界隈での価格設定(常識の範囲内)をお願いした。

 現在は受注生産のみにして、様子見状態をする運びになった。ちなみに、人外用の特別サイトは紫苑経由で紹介制にしており、少しずつ浸透していくことで話がついた。

(飴細工一つに数百万という世界に未だ震えが止まらない……。詐欺じゃないかと思うほどのぼったくりなのだけれど……人外的にはそれぐらいお小遣い程度の金額だって言うし……金銭感覚がおかしくなりそう)

 私が現世と同じ金額設定をしても、幽世の闇オークションでは数十倍の金額になるというので、わざわざ金額をそのままにしておく必要はないと言われてしまった。

(転売しない条件プラス常連さんなら、数百万は流石に貰えないから、元の金額より少し高めの設定にするか、飴を増やすかで左近さんたちに相談してみよう)

 ふと赤信号で車が止まり、窓の外西線を向けた。
 十二月になると赤と緑の色合いが増え、モミの木などのイルミネーションが目に留まる。ハロウィンが終わったら翌日にはクリスマスにイルミネーション切り替わるのだが、ここ二年ほどそんな余裕はなかったと思い返す。

 ただ仕事でクリスマス仕様の飴細工を考えたりしていたので、まったく忘れていたわけではない。そこでクリスマスイブの存在を思い出す。

(恋人や家族と過ごすクリスマスイブ!!)

 紫苑へのクリスマスプレゼントについて、すっかり失念していた。

(こ、婚約者としてクリスマスは一大イベントの一つだけれど、それは人外にというか神様にも適合するのかしら? というか祝うもの? でも贈り物をするには、よいタイミングなような?)

 まだ十二月中旬なのでリカバリーがつくだろう。
 火事などでの諸々な手続きやら、レンタルキッチン通いなど生活に余裕が出てきたからこそ気づいたのだと思う。

(婚約者らしく、イベントに合わせて贈り物をしたい……と言ったら紫苑はどう思うのかしら?)
「小晴?」
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