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第3章
第26話 楽しい飴作り
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火事から数週間が過ぎ、私はあの日以降、悪夢を見ることなく平和に過ごしている。
店の修理が完了するまで、レンタルキッチンを一時的に借りることで話がまとまり、新しめの広い調理場を半年契約で借りることができた。「ここも白銀財閥の関連会社なので、貸出料などは気にしないでください」と左近さんに言われてしまった。
満面の笑みに私がそれ以上、食い下がることはできなかった。
(何から何まで……至れり尽くせりすぎる! 右近さんも左近さんも優しすぎる……!)
ホームページなどは右近さんが手伝ってくれて、かなり可愛くリニューアルされていた。お手紙やら発注開始の連絡などで溢れており、ここ数日は返信などに時間をかけた。紫苑が「私も構ってほしい」と適度な休憩をとらされたので、無理をすることも減った。
(紫苑は優しいを通り越して私に激甘だし……)
私に恩返しできそうなことといえば、紫苑が喜んでくれるような飴細工作りぐらいだろうか。いつも美味しそうに食べてくれるので、今日から再開する飴作りに俄然気合いが入る。
(事務作業やら火事の後処理などでバタバタしたけれど、やっと飴作りができる!)
***
まずは人気でもある季節の草木を使った金太郎飴を作ることにした。
髪を縛って、黙々作業するのを紫苑は目を輝かせている。
「小晴の仕事姿を見たい」
「退屈しません?」
「まったく。ずっと見ていたいけれど?」
(発言がちょっと怖いけれど……、飴作りに理解があるのは嬉しい)
そんなこんなで、私が折れた。
「それじゃあ、はじめますね」
「うん」
大きめの鍋に水飴と砂糖を入れて加熱。
130度の温度の飴を出すと80度ぐらいになるまで冷ます。その後着色を行い食用の色素で色を付ける。この色合いの配分を私はけっこう気をつけていた。その後よく混ぜ合わせていく。
「混ぜていくたびに、色が透明から白くなるのだね」
「はい。飴は練ると空気が入って白くなるのです」
練っていくと、色が煌めき艶が出てくる。
それから組み立てて形にして、転がして丸くしたのち伸ばす。そこから長さと太さを均一にしたのち、一口サイズに切った。一回で三百ほどの金太郎飴ができあがる。
少し冷ましてからラッピングをするのだが、その前に約束通り紫苑にできあがりを食べて貰おうと一欠片差し出した。
「小晴の作った飴はやはり目映い光を放っている」
「(それは幻覚です!)ええっと、はい、どうぞ」
「ん、甘い」
「!」
口にした飴は美味しかったのか、目をさらに輝かせた。
幸せそうに食べてくれるのは見ていて気分がいい。
(指ごと食べようとするのは、ちょっと困るけれど)
紫苑用にラッピングをして渡したら、ぎゅうぎゅうに抱きしめてくるので過剰なスキンシップにドギマギしてしまう。すっかり抱きつき癖がついてしまった気がしなくもない。ギュッとされる度に、胸がポカポカして、私も抱きしめ返すと紫苑は頬を染めて照れ出す。
「小晴、ああ、可愛い。このまま食べてしまいたい」
「た、食べるのは飴だけです!」
「今はそれで我慢しよう」
愛されまくって、撫で回された猫の気分だ。
「できあがった飴は量って袋詰めするのでしょうか?」
左近さんも興味深そうに、私は頷いた。
「はい。常連さんの誕生日月には、飴細工を別で付けますが大体はそうです」
「なるほど。それでしたら袋詰めは私たちが行いますので、お館様と一緒に一階のカフェで息抜きしてきてはいかがでしょうか?」
「え!」
突然の提案に驚いていると、紫苑は「名案だ」と頷く。
「小晴、この建物の一階にカフェがある。そこではパフェというものがあるらしいのだ」
「……食べてみたいのですね」
「小晴と一緒に食べてみたい。小晴が頑張ったご褒美を私もあげたいのだが……」
「うぐっ……」
どんどん紫苑があざとくて、断りづらい言葉を投げかける。
けれどそれが嫌ではなかった。
そこに嘘や打算的なものはなく、ただ純粋に一緒にいたいという気持ちが伝わってくるからだ。
「紫苑は本当に甘い物が好きなのね」
「幸せの味がするからだろうか。小晴といるとさらに美味しく感じる」
「神様でも甘い物食べ過ぎたら血糖値とか影響するの?」
「残念ながら人間と構造が異なるので、問題ないかと」
左近さんは、さらっととんでもないことを言い放った。
「……何か狡い」
「小晴?」
子犬のような瞳で見てくるのは本当に狡い。こうすると私が断れないのを知っているのだ。目的の為なら紫苑は割と何でもする。
「……わかりました。紫苑、行きましょう」
「小晴!」
左近さんに袋詰めをお願いして、カフェへと向かった。
後で左近さんには手伝ったお礼として、飴細工と金太郎飴をラッピングして渡そう。
そんな気楽な感じで一階に向かった。そこで思わぬ人物と再会するなんて思ってもみなかった。
店の修理が完了するまで、レンタルキッチンを一時的に借りることで話がまとまり、新しめの広い調理場を半年契約で借りることができた。「ここも白銀財閥の関連会社なので、貸出料などは気にしないでください」と左近さんに言われてしまった。
満面の笑みに私がそれ以上、食い下がることはできなかった。
(何から何まで……至れり尽くせりすぎる! 右近さんも左近さんも優しすぎる……!)
ホームページなどは右近さんが手伝ってくれて、かなり可愛くリニューアルされていた。お手紙やら発注開始の連絡などで溢れており、ここ数日は返信などに時間をかけた。紫苑が「私も構ってほしい」と適度な休憩をとらされたので、無理をすることも減った。
(紫苑は優しいを通り越して私に激甘だし……)
私に恩返しできそうなことといえば、紫苑が喜んでくれるような飴細工作りぐらいだろうか。いつも美味しそうに食べてくれるので、今日から再開する飴作りに俄然気合いが入る。
(事務作業やら火事の後処理などでバタバタしたけれど、やっと飴作りができる!)
***
まずは人気でもある季節の草木を使った金太郎飴を作ることにした。
髪を縛って、黙々作業するのを紫苑は目を輝かせている。
「小晴の仕事姿を見たい」
「退屈しません?」
「まったく。ずっと見ていたいけれど?」
(発言がちょっと怖いけれど……、飴作りに理解があるのは嬉しい)
そんなこんなで、私が折れた。
「それじゃあ、はじめますね」
「うん」
大きめの鍋に水飴と砂糖を入れて加熱。
130度の温度の飴を出すと80度ぐらいになるまで冷ます。その後着色を行い食用の色素で色を付ける。この色合いの配分を私はけっこう気をつけていた。その後よく混ぜ合わせていく。
「混ぜていくたびに、色が透明から白くなるのだね」
「はい。飴は練ると空気が入って白くなるのです」
練っていくと、色が煌めき艶が出てくる。
それから組み立てて形にして、転がして丸くしたのち伸ばす。そこから長さと太さを均一にしたのち、一口サイズに切った。一回で三百ほどの金太郎飴ができあがる。
少し冷ましてからラッピングをするのだが、その前に約束通り紫苑にできあがりを食べて貰おうと一欠片差し出した。
「小晴の作った飴はやはり目映い光を放っている」
「(それは幻覚です!)ええっと、はい、どうぞ」
「ん、甘い」
「!」
口にした飴は美味しかったのか、目をさらに輝かせた。
幸せそうに食べてくれるのは見ていて気分がいい。
(指ごと食べようとするのは、ちょっと困るけれど)
紫苑用にラッピングをして渡したら、ぎゅうぎゅうに抱きしめてくるので過剰なスキンシップにドギマギしてしまう。すっかり抱きつき癖がついてしまった気がしなくもない。ギュッとされる度に、胸がポカポカして、私も抱きしめ返すと紫苑は頬を染めて照れ出す。
「小晴、ああ、可愛い。このまま食べてしまいたい」
「た、食べるのは飴だけです!」
「今はそれで我慢しよう」
愛されまくって、撫で回された猫の気分だ。
「できあがった飴は量って袋詰めするのでしょうか?」
左近さんも興味深そうに、私は頷いた。
「はい。常連さんの誕生日月には、飴細工を別で付けますが大体はそうです」
「なるほど。それでしたら袋詰めは私たちが行いますので、お館様と一緒に一階のカフェで息抜きしてきてはいかがでしょうか?」
「え!」
突然の提案に驚いていると、紫苑は「名案だ」と頷く。
「小晴、この建物の一階にカフェがある。そこではパフェというものがあるらしいのだ」
「……食べてみたいのですね」
「小晴と一緒に食べてみたい。小晴が頑張ったご褒美を私もあげたいのだが……」
「うぐっ……」
どんどん紫苑があざとくて、断りづらい言葉を投げかける。
けれどそれが嫌ではなかった。
そこに嘘や打算的なものはなく、ただ純粋に一緒にいたいという気持ちが伝わってくるからだ。
「紫苑は本当に甘い物が好きなのね」
「幸せの味がするからだろうか。小晴といるとさらに美味しく感じる」
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「……わかりました。紫苑、行きましょう」
「小晴!」
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後で左近さんには手伝ったお礼として、飴細工と金太郎飴をラッピングして渡そう。
そんな気楽な感じで一階に向かった。そこで思わぬ人物と再会するなんて思ってもみなかった。
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