星が輝く夜に

海野入鹿

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第1章　出会いの夜

第4夜　自覚

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部屋では、大きなベッドの上で三人の親子が川の字になって寝ていた。

「さてと、さっそくいただくとしよう。」

ハザードがベッドに近寄ると、それぞれ三人に手をかざした。

「…何をしたんだ。」

ギルバートが聞くと、ハザードが答える。

「さらに深く眠るように暗示をかけた。これで吸血中に目を覚ますことはないだろう。」

すると、ハザードは母親の首元に噛みついた。
ジュルジュルと血をみるみる吸っていき、母親は死人の顔になっていく。
ギルバートはその光景を見て、嫌な気持ちになった。人間時代の道徳心が痛んだのもあったが、かつて同じようなことを目の前で見ていた気がしていたのだ。

ハザードが血を飲み終えて首元から口を離すと、吸血鬼にしか感じられない血の香ばしい匂いがブワッと匂ってきた。
ギルバートは思わず部屋の外に飛び出して座り込んだ。冷凍した血と比べものにならないとても濃厚な匂いだったのだ。

「フーッ！フーッ！」

ギルバートは顔を真っ赤にして興奮しながらも、落ち着こうと呼吸を整える。
呼吸を整え落ち着いたところで、ギルバートは再び部屋に入った。

「落ち着いたか。」

部屋に入ったときには、ハザードがすでに父親も手にかけた後だった。

「お前のために子供を残してある。くれぐれも今みたいに理性を失わないようにな。」

「…わかった。」

ギルバートは初めて人間の血を飲んだ日、まだ人間として生きようとしていた。
だが、無理だった。
血を前にすると、吸血鬼の本能が抑えられなかった。それでも、今までどこかで自分は人間だと思いたい部分があった。
それも今日、吸血をして人を殺すことで終わりを告げる。
元々わかりきっていたことだったのだ。
吸血鬼が人間のフリをするのは限界があるということを。それでも…

「おい、何をグズグズしてる。」

ギルバートがためらっていると、ハザードが少しイラついた声で急かした。

ギルバートは覚悟を決めた。

「ごめんね…」

ギルバートはスヤスヤと眠る子供に謝ると、子供の首元に噛みついた。
首元は柔らかく、スッとすんなり牙が入った。
ギルバートはジュルッと一口血を吸うと、目の色を変えた。

（冷凍した血とはレベルが違う！これが…生血…）

ギルバートがうっとりと恍惚した顔を浮かべる。そして、吸血する前のためらいや理性はあっさりと吹き飛んでしまい、夢中になって少年の血を貪った。

（ああ、僕はもう吸血鬼なんだ。）

ギルバートはこの時、自分が吸血鬼であることを自覚した。

ギルバートは血を飲み終えた。
ギルバートの前には黒炭があるだけだった。

「吸血鬼が加減できずに人を吸い殺してしまう理由がわかったか？」

「うん…」

ギルバートはボーッと血の味を思い出す。

理性が飛ぶほどおいしくて、かつ一生飲んでいたいような中毒性。
知ってしまったら、もう人間には戻れない魔性の味。

ギルバートは口の周りについた血を拭った。

「僕は、吸血鬼だ。」

この日を境に、ギルバートは人間だったことを忘れ、吸血鬼として生きることを決めた。

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