星が輝く夜に

海野入鹿

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第1章　出会いの夜

第2夜　血の味

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「誰が飲むか！僕は人間だ！」

ギルバートはパック袋を受け取らず、パシッと手ではたき捨てた。
ギルバートはそれを拾い、ギルバートの顔に投げつけた。

「まあいい。どのみちお前は血を飲みざるえなくなるさ。」

「もういい、僕は家に…」

ギルバートが部屋から出ようとした時、ピタッとギルバートの口が止まった。

「あれ？僕の家が思い出せない…」

ギルバートは座り込んで頭を抱えて自分の家族の記憶を思い出そうとしたが、まるでモヤがかかったように思い出せない。
ギルバートが混乱に陥っていると、そんな様子を見たハザードが思い出したかのように言った。

「ごくまれにだが、吸血鬼化するに伴って人間時代の記憶が消える奴もいるそうだ。どうやらお前もその1人のようだな。」

「そんな…」

それを聞くとギルバートは膝から崩れ落ちた。
ハザードはそんな哀れな子供をどこか悲しそうな目でじーっと見ていた。

「……えせ。僕の日常を返せ！！！」

ギルバートは突然ハザードに襲いかかる。
しかし、その瞬間ギルバートの首に激痛が走った。

「ああああああああああああ！！！！」

ギルバートは地面をのたうち回りかけたのを、

「暴れるな。」

と、ハザードが足でギルバートの胴体を強く踏みつける。

「死ぬ！死ぬ！」

「このくらいで吸血鬼は死なん。」

もがくギルバートを冷ややかな声でハザードが言い放つ。ギルバートの痛みは数時間もの間続いた。
ようやく痛みが収まり、ハアッハアッと荒い息をしながら首の辺りを確認すると、首輪のような装置がつけられていた。

「こ…れは…」

「それは我が友人が作った、私に従順でないと見なしたら激痛が走る装置だ。」

「くそ…こんなものぉ！」

ギルバートが強引に外そうとするとまた激痛が走る。
激痛が収まった頃には、ギルバートはもう息絶え絶えだった。

「今日はもう夜明け、もう寝る時間だ。明日までには血を飲む覚悟をしておけ。」

そう言うと、ハザードは部屋から出て行った。

「こんなの…悪夢だ。」

ギルバートは小さな声で呟くとガクッと眠るように気絶した。

それから三日、ギルバートは一向に血を飲もうとしなかった。
しかし、食事をとらないため徐々に衰弱していき、ギルバートはベッドにうずくまっていた。

（もう、名前すら分からない僕の両親…でも、死んで天国に行ったらまた思い出せるかな…）

すると、バアンッとドアを開けてハザードがギルバートの部屋に入っていった。

「まさかここまで衰弱しても飲まんとは…その頑固さは褒めてやる。」

ハザードはズカズカとベッドへ向かい、ギルバートを仰向けにして口にパック袋を突っ込んだ。

「飲め。」

ギルバートは衰弱していたため抵抗ができなかった。

ゴクン

一口飲むと、やみつきになりそうなおいしさで一瞬目まいが起きた。

（おいしい…）

途端にゴクゴクと夢中になって飲み始める。

ハザードが手を離してもなお、ギルバートは血を飲むのをやめない。

（ダメだこんなの。母さんの血においしさを覚えるなんて…）

そう思いながらも、ギルバートは血を飲み続けた。
パック袋の血を一滴残らずギルバートが飲み干した後、ギルバートがハザードをキッと睨んでいた。

「そんなに睨んでいると目つきが悪くなるぞ。」

するとギルバートが3日ぶりに口を開いた。

「あんなものを飲むくらいなら、死んだ方がマシだった」

「その割には随分とおいしそうに飲んでたじゃないか」

「うるさい！黙れ！」

「だが、次はこんなものじゃない。生血を知ってしまったら、お前のようなタイプは完全に虜になるだろうな。」

そう言うと、血を飲ませて満足したのかハザードは部屋から出て行った。
その後、しばらくギルバートはベッドの上でボーッとしていた。

「違う…僕は人間だ」

（でも、あの味を知ってしまったらもう…）

この日、ギルバートは初めて血を飲んだ。

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