木の棒が俺の武器なんです!!

海野 入鹿

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1話 会社員、異世界へ行く

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「アー疲れた」

ようやく仕事が終わり帰路につく1人の男がいた。男の名前はサクヤ。今年、上京して就職したのはいいものの、仕事をただ淡々とこなしていく日々はたいして面白くもなく日々の日常に退屈していた。

「はあーなんか面白いことねえかなー」

などと言っていると、家に早くも着いた。家に入るとそこには草原が広がっていた。ふもとを見ると小さな町がある。どうやら、ここは丘になっているようだ。

「え、ちょ、どゆこと?」

慌てて後ろを振り返って見ると、家のドア、いや、家自体がない。
その時、空から声が聞こえてきた。

『こんにちは、サクヤさん。異世界へようこそ』

「いや、どゆことぉぉぉぉ!」

『サクヤさん。あなたは勇者となりこの世界を救うのです!』

「ちょっとまてぇぇぇ!確かになんか面白いことねえかなーって思ってたけども!いきなりすぎる!パニックだわ!勇者って!俺そんな器じゃないんですけどぉぉぉぉ!」

ー20分後ー

ようやく自分のおかれた状況が分かってきて、少し冷静になったサクヤは空の声にふと気になったことを質問した。

「状況はだいたい分かったけどさ、なんで俺が勇者なわけ?意味不明なんだけど?」

『そうですね。まずはこの世界についてから説明しましょうか。
この世界ではアルマという人々の体内に蓄積している物質を消費することで魔法が使えます。人類は魔法を利用して国を発展させていきました。
しかし、この世界には人類の天敵もいます。それが魔族。人類より魔法に長け、人類より身体能力が高い異形のものたちです。やがてその魔族を束ねる存在がでてきました。それが魔王。魔王は魔族のなかでも飛び抜けて強い化け物です。かつて魔王が率いる魔族は人類を駆逐し始め、人類を絶滅寸前まで追い込みました。
ですが、そんなときに突如現れ、魔王を倒し人類を滅亡の危機から救ったのが、のちに勇者といわれたものたちです。その後約500年ほど平穏な時代が続きました。
ですが、3ヶ月前に新たなる魔王が出現しました。そのせいか魔族も凶暴化して人々を脅かしています。なので、魔王を早急に倒す必要があるのですがこの世界の人だけでは魔族を倒すことはできても、魔王を倒すことは困難です。
なぜなら、この世界の人からは魔王にとどめを刺せる人間、いわゆる勇者の素質を持った人間が生まれないのです。
なので、魔王を倒すために他世界から勇者の素質を持った人間達をこの異世界に召喚し、人間が魔王に対抗できるようにしているのです』

「いや、長ぇぇぇぇぇ!!
  もっと分かりやすく!」

空の声は答える。

『つまり、あなたには勇者の素質があり、
魔王を倒すことがあなたの使命なのです。』

「なるほどね、俺に勇者の素質があるってことは特別なスキルとかすでに俺に備わっているんだよな?」

『はい?特別なスキル?そんなものはこの世界に存在しませんが?』

「まてまてまてまて、じゃあ勇者専用の武器とかは?」

『サクヤさん専用の武器ならありますよ』

そうだよな、じゃなきゃ魔王なんて倒せないわな、
とサクヤはほっと一安心した。
すると、空から細長い物体が落ちてきた。

『木の棒です』

「ちょっとまてえええええええ!」

サクヤは思わずツッコんだ。

「木の棒!?木の棒て舐めてんのか?こんなんで戦ったらスライムにも瞬殺されるわ!」

『ただの木の棒ではありませんよ。先端からは甘い蜜がでる機能があるんです!』

「いらねえええええええ!!!」

と、サクヤは今日一番の大きな声を出した。

『…仕方ないじゃないですか。予算に余裕がないんですよ。』

「予算!?金かけてんの!?てか、おまえ本当に魔王倒す気あるの!?』

『まあまあ、そんなこんなで魔王討伐頑張ってくださ~い』

「ちょっとぉぉぉぉぉぉぉ!!
木の棒で戦えってかぁぁぁぁ!?てか、ここの人達と意思疎通できんのかよぉぉぉぉ!」

『あ、そこんとこは安心してください。ちゃんと意思疎通はできますよ。では、健闘を祈ります!』

その後、しばらくしても空から声が聞こえてくることなかった。
サクヤは諦めたようにため息をつくと、

「とりあえず、町に行ってみるか」

とつぶやき、
ふもとに見える町に向かって
歩き出したのだった。




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