木の棒が俺の武器なんです!!

海野 入鹿

文字の大きさ
上 下
1 / 15

1話 会社員、異世界へ行く

しおりを挟む
「アー疲れた」

ようやく仕事が終わり帰路につく1人の男がいた。男の名前はサクヤ。今年、上京して就職したのはいいものの、仕事をただ淡々とこなしていく日々はたいして面白くもなく日々の日常に退屈していた。

「はあーなんか面白いことねえかなー」

などと言っていると、家に早くも着いた。家に入るとそこには草原が広がっていた。ふもとを見ると小さな町がある。どうやら、ここは丘になっているようだ。

「え、ちょ、どゆこと?」

慌てて後ろを振り返って見ると、家のドア、いや、家自体がない。
その時、空から声が聞こえてきた。

『こんにちは、サクヤさん。異世界へようこそ』

「いや、どゆことぉぉぉぉ!」

『サクヤさん。あなたは勇者となりこの世界を救うのです!』

「ちょっとまてぇぇぇ!確かになんか面白いことねえかなーって思ってたけども!いきなりすぎる!パニックだわ!勇者って!俺そんな器じゃないんですけどぉぉぉぉ!」

ー20分後ー

ようやく自分のおかれた状況が分かってきて、少し冷静になったサクヤは空の声にふと気になったことを質問した。

「状況はだいたい分かったけどさ、なんで俺が勇者なわけ?意味不明なんだけど?」

『そうですね。まずはこの世界についてから説明しましょうか。
この世界ではアルマという人々の体内に蓄積している物質を消費することで魔法が使えます。人類は魔法を利用して国を発展させていきました。
しかし、この世界には人類の天敵もいます。それが魔族。人類より魔法に長け、人類より身体能力が高い異形のものたちです。やがてその魔族を束ねる存在がでてきました。それが魔王。魔王は魔族のなかでも飛び抜けて強い化け物です。かつて魔王が率いる魔族は人類を駆逐し始め、人類を絶滅寸前まで追い込みました。
ですが、そんなときに突如現れ、魔王を倒し人類を滅亡の危機から救ったのが、のちに勇者といわれたものたちです。その後約500年ほど平穏な時代が続きました。
ですが、3ヶ月前に新たなる魔王が出現しました。そのせいか魔族も凶暴化して人々を脅かしています。なので、魔王を早急に倒す必要があるのですがこの世界の人だけでは魔族を倒すことはできても、魔王を倒すことは困難です。
なぜなら、この世界の人からは魔王にとどめを刺せる人間、いわゆる勇者の素質を持った人間が生まれないのです。
なので、魔王を倒すために他世界から勇者の素質を持った人間達をこの異世界に召喚し、人間が魔王に対抗できるようにしているのです』

「いや、長ぇぇぇぇぇ!!
  もっと分かりやすく!」

空の声は答える。

『つまり、あなたには勇者の素質があり、
魔王を倒すことがあなたの使命なのです。』

「なるほどね、俺に勇者の素質があるってことは特別なスキルとかすでに俺に備わっているんだよな?」

『はい?特別なスキル?そんなものはこの世界に存在しませんが?』

「まてまてまてまて、じゃあ勇者専用の武器とかは?」

『サクヤさん専用の武器ならありますよ』

そうだよな、じゃなきゃ魔王なんて倒せないわな、
とサクヤはほっと一安心した。
すると、空から細長い物体が落ちてきた。

『木の棒です』

「ちょっとまてえええええええ!」

サクヤは思わずツッコんだ。

「木の棒!?木の棒て舐めてんのか?こんなんで戦ったらスライムにも瞬殺されるわ!」

『ただの木の棒ではありませんよ。先端からは甘い蜜がでる機能があるんです!』

「いらねえええええええ!!!」

と、サクヤは今日一番の大きな声を出した。

『…仕方ないじゃないですか。予算に余裕がないんですよ。』

「予算!?金かけてんの!?てか、おまえ本当に魔王倒す気あるの!?』

『まあまあ、そんなこんなで魔王討伐頑張ってくださ~い』

「ちょっとぉぉぉぉぉぉぉ!!
木の棒で戦えってかぁぁぁぁ!?てか、ここの人達と意思疎通できんのかよぉぉぉぉ!」

『あ、そこんとこは安心してください。ちゃんと意思疎通はできますよ。では、健闘を祈ります!』

その後、しばらくしても空から声が聞こえてくることなかった。
サクヤは諦めたようにため息をつくと、

「とりあえず、町に行ってみるか」

とつぶやき、
ふもとに見える町に向かって
歩き出したのだった。




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

Hしてレベルアップ ~可愛い女の子とHして強くなれるなんて、この世は最高じゃないか~

トモ治太郎
ファンタジー
孤児院で育った少年ユキャール、この孤児院では15歳になると1人立ちしなければいけない。 旅立ちの朝に初めて夢精したユキャール。それが原因なのか『異性性交』と言うスキルを得る。『相手に精子を与えることでより多くの経験値を得る。』女性経験のないユキャールはまだこのスキルのすごさを知らなかった。 この日の為に準備してきたユキャール。しかし旅立つ直前、一緒に育った少女スピカが一緒にいくと言い出す。本来ならおいしい場面だが、スピカは何も準備していないので俺の負担は最初から2倍増だ。 こんな感じで2人で旅立ち、共に戦い、時にはHして強くなっていくお話しです。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。

アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。 両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。 両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。 テッドには、妹が3人いる。 両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。 このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。 そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。 その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。 両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。 両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…   両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが… 母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。 今日も依頼をこなして、家に帰るんだ! この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。 お楽しみくださいね! HOTランキング20位になりました。 皆さん、有り難う御座います。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

十人十色の強制ダンジョン攻略生活

ほんのり雪達磨
ファンタジー
クリアしなければ、死ぬこともできません。 妙な部屋で目が覚めた大量の人種を問わない人たちに、自称『運営』と名乗る何かは一方的にそう告げた。 難易度別に分けられたダンジョンと呼ぶ何かにランダムに配置されていて、クリア条件を達成しない限りリスポーンし続ける状態を強制されてしまった、らしい。 そんな理不尽に攫われて押し付けられた人たちの強制ダンジョン攻略生活。

処理中です...