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第六章 三つ巴
第六十二矢 動き始める戦局
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「あれが木曽谷か…」
武田晴信はちょっとした丘となっている場所から木曽谷を見下ろしていた。
あれから一月経った頃、武田軍は木曽谷へと進軍を開始した。それに対し、木曾義康は斎藤道三に援軍を要請。道三は大量の金貨を交換条件にして、これを承諾した。
そして今、武田軍の目と鼻の先には木曾・斎藤の軍が待ち受けていた。
「美濃の蝮、か…噂は聞いておる。どれほどの男か見させてもらおう…!」
晴信は辺りに響き渡るような大声で号令をかけた。
「全軍、突撃せよ!!」
かくして、木曽谷をめぐる武田と斎藤・木曾の戦が火蓋が切られたのだった。
そして同時期、三河国でも戦局が動き始めた。
「よしっ、じゃあ安祥城へ行きます!」
俺は一万ほどの兵を率いて、駿府館から出陣した。
目指すはもちろん、三河国における織田の最重要拠点・安祥城である。
そしてその進軍の途中で岡崎城に立ち寄って、松平軍と合流を果たした。
松平軍の大将である石川清兼は俺に頭を下げた。
「今川殿、この度は我が領土のために動いてもらい、真にかたじけない。」
「いやいや、別にそんな頭下げなくてもいいですって。お互いに助け合いでしょー」
俺は清兼に頭を上げさせた。
今のところ、全てが順調に進んでいた。
(この後も順調にいくといいなあ~)
しかし、そんな俺の淡い期待は玄海が主導する一向一揆に一蹴された。
玄海は放った忍から今川軍の大まかな動きを把握して、今川軍の進軍に合わせて一向一揆をさらに過激化させたのだ。
これによって、松平軍は兵を多少そちらに回さなければならなくなった上に、今川・松平軍は行く先々でその一向一揆の鎮圧のために足止めを強いられた。
「本当、一向一揆って厄介だなあ。そう思わない?犬丸君。」
俺はそばにいた犬丸に話しかけた。
「はい、あちこちに湧いてくるわ、無駄に士気が高いわで鎮圧にもひと苦労でございまする!」
犬丸はコクコクとうなずいた。
「だよね~」
俺はハアとため息をつきながらも、進軍を続けた。
一方で、玄海にとっても予想外のことが起こっていた。
当初、一揆の広がりは留まることを知らず、一向宗とは何ら関係のない農地を耕す百姓や町で商品を売る商人にまで広がった。
ここまでは玄海の狙い通りだった。
だがその後、一揆の規模は予想以上に膨れ上がり一向宗の門徒ではない人々が増えていった。
これにより、今まで一向宗が巧みに操っていた民衆が一向宗の言うことを聞かなくなり、一揆が次第に暴走化していったのだ。
しかし、玄海は暴走化した民衆を放置して、僧兵と傭兵を中心とした兵を安祥城へ送って今川と織田が争っている間に漁夫の利を得ようとしていた。
暴走化した民衆を抑えつければ、不満の矛先は一向宗にも向く。そうなるよりかは、勝手に暴れてくれていた方が今川軍や織田軍を効果的に苦しめることができると玄海は考えたのだ。
(ああ、しかし…しかし真に哀れな方々だ。)
富を得ていなければ、小汚い。
知恵がなければ、品性もない。
そんな哀れで下等な人々が高尚で全てを持ち合わせている僧である私を理解できず、命令を聞かないのは仕方のないことである。
なぜなら、私と彼らでは全く住む場所が違うのだから。
玄海は大量の金貨を使って造られた豪華絢爛な部屋で一筋の涙を流して、暴走化している民衆たちを哀れんだ。
武田晴信はちょっとした丘となっている場所から木曽谷を見下ろしていた。
あれから一月経った頃、武田軍は木曽谷へと進軍を開始した。それに対し、木曾義康は斎藤道三に援軍を要請。道三は大量の金貨を交換条件にして、これを承諾した。
そして今、武田軍の目と鼻の先には木曾・斎藤の軍が待ち受けていた。
「美濃の蝮、か…噂は聞いておる。どれほどの男か見させてもらおう…!」
晴信は辺りに響き渡るような大声で号令をかけた。
「全軍、突撃せよ!!」
かくして、木曽谷をめぐる武田と斎藤・木曾の戦が火蓋が切られたのだった。
そして同時期、三河国でも戦局が動き始めた。
「よしっ、じゃあ安祥城へ行きます!」
俺は一万ほどの兵を率いて、駿府館から出陣した。
目指すはもちろん、三河国における織田の最重要拠点・安祥城である。
そしてその進軍の途中で岡崎城に立ち寄って、松平軍と合流を果たした。
松平軍の大将である石川清兼は俺に頭を下げた。
「今川殿、この度は我が領土のために動いてもらい、真にかたじけない。」
「いやいや、別にそんな頭下げなくてもいいですって。お互いに助け合いでしょー」
俺は清兼に頭を上げさせた。
今のところ、全てが順調に進んでいた。
(この後も順調にいくといいなあ~)
しかし、そんな俺の淡い期待は玄海が主導する一向一揆に一蹴された。
玄海は放った忍から今川軍の大まかな動きを把握して、今川軍の進軍に合わせて一向一揆をさらに過激化させたのだ。
これによって、松平軍は兵を多少そちらに回さなければならなくなった上に、今川・松平軍は行く先々でその一向一揆の鎮圧のために足止めを強いられた。
「本当、一向一揆って厄介だなあ。そう思わない?犬丸君。」
俺はそばにいた犬丸に話しかけた。
「はい、あちこちに湧いてくるわ、無駄に士気が高いわで鎮圧にもひと苦労でございまする!」
犬丸はコクコクとうなずいた。
「だよね~」
俺はハアとため息をつきながらも、進軍を続けた。
一方で、玄海にとっても予想外のことが起こっていた。
当初、一揆の広がりは留まることを知らず、一向宗とは何ら関係のない農地を耕す百姓や町で商品を売る商人にまで広がった。
ここまでは玄海の狙い通りだった。
だがその後、一揆の規模は予想以上に膨れ上がり一向宗の門徒ではない人々が増えていった。
これにより、今まで一向宗が巧みに操っていた民衆が一向宗の言うことを聞かなくなり、一揆が次第に暴走化していったのだ。
しかし、玄海は暴走化した民衆を放置して、僧兵と傭兵を中心とした兵を安祥城へ送って今川と織田が争っている間に漁夫の利を得ようとしていた。
暴走化した民衆を抑えつければ、不満の矛先は一向宗にも向く。そうなるよりかは、勝手に暴れてくれていた方が今川軍や織田軍を効果的に苦しめることができると玄海は考えたのだ。
(ああ、しかし…しかし真に哀れな方々だ。)
富を得ていなければ、小汚い。
知恵がなければ、品性もない。
そんな哀れで下等な人々が高尚で全てを持ち合わせている僧である私を理解できず、命令を聞かないのは仕方のないことである。
なぜなら、私と彼らでは全く住む場所が違うのだから。
玄海は大量の金貨を使って造られた豪華絢爛な部屋で一筋の涙を流して、暴走化している民衆たちを哀れんだ。
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