36 / 85
第三章 河東争奪
第三十三・五矢 侍女の願い
しおりを挟む
*今川家に仕える侍女目線の話となっております。
皆様、こんにちは。
私、侍女として多恵姫様に仕えておりますお梅と申すものでございます。
私は先々代の当主様であられる氏親様の頃から長らく仕えております。
先代の氏輝様がお亡くなりになられて以降、今川家では内乱や反乱など物騒な事が次々に起こりました。ですが、現当主であられる義元様―殿のお力により今再び平穏を取り戻したのでございます。
そんな殿は氏親様や氏輝様とはまた違った魅力のある素晴らしいお方です。
先の内乱の際にも、その魅力に惹かれた方々が多くおられるでしょう。私もその一人にございます。
多恵姫様も同様に、美しく懐が深いお方でございます。このあいだも、他の侍女の失態を許してくださっておりました。多恵姫様は侍女たちの憧れの的にございます。
そして、五郎様はとにかく愛らしく、侍女たちの癒しとなっております。
五郎様が歩けるようになって以来、殿と多恵姫様は頻繁に庭園を散歩するようになりました。
庭園では、五郎様が目を輝かせて新たに目にする生き物らに興味津々でございます。
先ほどは池を泳ぐ鯉に夢中になっておられました。
殿と多恵姫様はその姿を優しき目で見守りなさっています。
まことに仲睦まじい家族でございます。
そして、私の横では同じく殿と多恵姫様の後方に控える二人の小姓がおります。
朝比奈藤三郎と三浦犬丸でございます。
この二人はいつも喧嘩をしており、先ほども
「わしのほうが殿への忠義が上じゃ!」
と、言い争っておりました。まだまだかわゆい子どもにございます。
まあ、私も殿への忠義は負けておりませぬが。
また、先日は甲斐国を追われた信虎様が共に散歩なされました。
信虎様は未だに自らを追放した晴信殿に怒っておられるようですが、孫や娘を前にするとすっかり優しきおじじ様となられます。
しかしながら、信虎様の悪政は私たちの耳にも入っており、追放されたのは自業自得やもしれません。
魅力的な殿に優しき多恵姫様、私はこの今川に仕えてられて幸せにございます。
だから私は願うのです。いつまでも、いつまでもこの方々に仕えていきたいと。
*この話をもって第三章を閉幕とします*
皆様、こんにちは。
私、侍女として多恵姫様に仕えておりますお梅と申すものでございます。
私は先々代の当主様であられる氏親様の頃から長らく仕えております。
先代の氏輝様がお亡くなりになられて以降、今川家では内乱や反乱など物騒な事が次々に起こりました。ですが、現当主であられる義元様―殿のお力により今再び平穏を取り戻したのでございます。
そんな殿は氏親様や氏輝様とはまた違った魅力のある素晴らしいお方です。
先の内乱の際にも、その魅力に惹かれた方々が多くおられるでしょう。私もその一人にございます。
多恵姫様も同様に、美しく懐が深いお方でございます。このあいだも、他の侍女の失態を許してくださっておりました。多恵姫様は侍女たちの憧れの的にございます。
そして、五郎様はとにかく愛らしく、侍女たちの癒しとなっております。
五郎様が歩けるようになって以来、殿と多恵姫様は頻繁に庭園を散歩するようになりました。
庭園では、五郎様が目を輝かせて新たに目にする生き物らに興味津々でございます。
先ほどは池を泳ぐ鯉に夢中になっておられました。
殿と多恵姫様はその姿を優しき目で見守りなさっています。
まことに仲睦まじい家族でございます。
そして、私の横では同じく殿と多恵姫様の後方に控える二人の小姓がおります。
朝比奈藤三郎と三浦犬丸でございます。
この二人はいつも喧嘩をしており、先ほども
「わしのほうが殿への忠義が上じゃ!」
と、言い争っておりました。まだまだかわゆい子どもにございます。
まあ、私も殿への忠義は負けておりませぬが。
また、先日は甲斐国を追われた信虎様が共に散歩なされました。
信虎様は未だに自らを追放した晴信殿に怒っておられるようですが、孫や娘を前にするとすっかり優しきおじじ様となられます。
しかしながら、信虎様の悪政は私たちの耳にも入っており、追放されたのは自業自得やもしれません。
魅力的な殿に優しき多恵姫様、私はこの今川に仕えてられて幸せにございます。
だから私は願うのです。いつまでも、いつまでもこの方々に仕えていきたいと。
*この話をもって第三章を閉幕とします*
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
独裁者・武田信玄
いずもカリーシ
歴史・時代
国を、民を守るために、武田信玄は独裁者を目指す。
独裁国家が民主国家を数で上回っている現代だからこそ、この歴史物語はどこかに通じるものがあるかもしれません。
【第壱章 独裁者への階段】 純粋に国を、民を憂う思いが、粛清の嵐を巻き起こす
【第弐章 川中島合戦】 甲斐の虎と越後の龍、激突す
【第参章 戦争の黒幕】 京の都が、二人の英雄を不倶戴天の敵と成す
【第四章 織田信長の愛娘】 清廉潔白な人々が、武器商人への憎悪を燃やす
【最終章 西上作戦】 武田家を滅ぼす策略に抗うべく、信長と家康打倒を決断す
この小説は『大罪人の娘』を補完するものでもあります。
(前編が執筆終了していますが、後編の執筆に向けて修正中です))
【短編】輿上(よじょう)の敵 ~ 私本 桶狭間 ~
四谷軒
歴史・時代
【あらすじ】
今川義元の大軍が尾張に迫る中、織田信長の家臣、簗田政綱は、輿(こし)が来るのを待ち構えていた。幕府により、尾張において輿に乗れるは斯波家の斯波義銀。かつて、信長が傀儡の国主として推戴していた男である。義元は、義銀を御輿にして、尾張の支配を目論んでいた。義銀を討ち、義元を止めるよう策す信長。が、義元が落馬し、義銀の輿に乗って進軍。それを知った信長は、義銀ではなく、輿上の敵・義元を討つべく出陣する。
【表紙画像】
English: Kano Soshu (1551-1601)日本語: 狩野元秀(1551〜1601年), Public domain, ウィキメディア・コモンズ経由で

世界はあるべき姿へ戻される 第二次世界大戦if戦記
颯野秋乃
歴史・時代
1929年に起きた、世界を巻き込んだ大恐慌。世界の大国たちはそれからの脱却を目指し、躍起になっていた。第一次世界大戦の敗戦国となったドイツ第三帝国は多額の賠償金に加えて襲いかかる恐慌に国の存続の危機に陥っていた。援助の約束をしたアメリカは恐慌を理由に賠償金の支援を破棄。フランスは、自らを救うために支払いの延期は認めない姿勢を貫く。
ドイツ第三帝国は自らの存続のために、世界に隠しながら軍備の拡張に奔走することになる。
また、極東の国大日本帝国。関係の悪化の一途を辿る日米関係によって受ける経済的打撃に苦しんでいた。
その解決法として提案された大東亜共栄圏。東南アジア諸国及び中国を含めた大経済圏、生存圏の構築に力を注ごうとしていた。
この小説は、ドイツ第三帝国と大日本帝国の2視点で進んでいく。現代では有り得なかった様々なイフが含まれる。それを楽しんで貰えたらと思う。
またこの小説はいかなる思想を賛美、賞賛するものでは無い。
この小説は現代とは似て非なるもの。登場人物は史実には沿わないので悪しからず…
大日本帝国視点は都合上休止中です。気分により再開するらもしれません。
【重要】
不定期更新。超絶不定期更新です。
天竜川で逢いましょう 起きたら関ヶ原の戦い直前の石田三成になっていた 。そもそも現代人が生首とか無理なので平和な世の中を作ろうと思います。
岩 大志
歴史・時代
ごくありふれた高校教師津久見裕太は、ひょんなことから頭を打ち、気を失う。
けたたましい轟音に気付き目を覚ますと多数の軍旗。
髭もじゃの男に「いよいよですな。」と、言われ混乱する津久見。
戦国時代の大きな分かれ道のド真ん中に転生した津久見はどうするのか!?

転生一九三六〜戦いたくない八人の若者たち〜
紫 和春
SF
二〇二〇年の現代から、一九三六年の世界に転生した八人の若者たち。彼らはスマートフォンでつながっている。
第二次世界大戦直前の緊張感が高まった世界で、彼ら彼女らはどのように歴史を改変していくのか。
【おんJ】 彡(゚)(゚)ファッ!?ワイが天下分け目の関ヶ原の戦いに!?
俊也
SF
これまた、かつて私がおーぷん2ちゃんねるに載せ、ご好評頂きました戦国架空戦記SSです。
この他、
「新訳 零戦戦記」
「総統戦記」もよろしくお願いします。

本能のままに
揚羽
歴史・時代
1582年本能寺にて織田信長は明智光秀の謀反により亡くなる…はずだった
もし信長が生きていたらどうなっていたのだろうか…というifストーリーです!もしよかったら見ていってください!
※更新は不定期になると思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる