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第三章 河東争奪
第三十三・五矢 侍女の願い
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*今川家に仕える侍女目線の話となっております。
皆様、こんにちは。
私、侍女として多恵姫様に仕えておりますお梅と申すものでございます。
私は先々代の当主様であられる氏親様の頃から長らく仕えております。
先代の氏輝様がお亡くなりになられて以降、今川家では内乱や反乱など物騒な事が次々に起こりました。ですが、現当主であられる義元様―殿のお力により今再び平穏を取り戻したのでございます。
そんな殿は氏親様や氏輝様とはまた違った魅力のある素晴らしいお方です。
先の内乱の際にも、その魅力に惹かれた方々が多くおられるでしょう。私もその一人にございます。
多恵姫様も同様に、美しく懐が深いお方でございます。このあいだも、他の侍女の失態を許してくださっておりました。多恵姫様は侍女たちの憧れの的にございます。
そして、五郎様はとにかく愛らしく、侍女たちの癒しとなっております。
五郎様が歩けるようになって以来、殿と多恵姫様は頻繁に庭園を散歩するようになりました。
庭園では、五郎様が目を輝かせて新たに目にする生き物らに興味津々でございます。
先ほどは池を泳ぐ鯉に夢中になっておられました。
殿と多恵姫様はその姿を優しき目で見守りなさっています。
まことに仲睦まじい家族でございます。
そして、私の横では同じく殿と多恵姫様の後方に控える二人の小姓がおります。
朝比奈藤三郎と三浦犬丸でございます。
この二人はいつも喧嘩をしており、先ほども
「わしのほうが殿への忠義が上じゃ!」
と、言い争っておりました。まだまだかわゆい子どもにございます。
まあ、私も殿への忠義は負けておりませぬが。
また、先日は甲斐国を追われた信虎様が共に散歩なされました。
信虎様は未だに自らを追放した晴信殿に怒っておられるようですが、孫や娘を前にするとすっかり優しきおじじ様となられます。
しかしながら、信虎様の悪政は私たちの耳にも入っており、追放されたのは自業自得やもしれません。
魅力的な殿に優しき多恵姫様、私はこの今川に仕えてられて幸せにございます。
だから私は願うのです。いつまでも、いつまでもこの方々に仕えていきたいと。
*この話をもって第三章を閉幕とします*
皆様、こんにちは。
私、侍女として多恵姫様に仕えておりますお梅と申すものでございます。
私は先々代の当主様であられる氏親様の頃から長らく仕えております。
先代の氏輝様がお亡くなりになられて以降、今川家では内乱や反乱など物騒な事が次々に起こりました。ですが、現当主であられる義元様―殿のお力により今再び平穏を取り戻したのでございます。
そんな殿は氏親様や氏輝様とはまた違った魅力のある素晴らしいお方です。
先の内乱の際にも、その魅力に惹かれた方々が多くおられるでしょう。私もその一人にございます。
多恵姫様も同様に、美しく懐が深いお方でございます。このあいだも、他の侍女の失態を許してくださっておりました。多恵姫様は侍女たちの憧れの的にございます。
そして、五郎様はとにかく愛らしく、侍女たちの癒しとなっております。
五郎様が歩けるようになって以来、殿と多恵姫様は頻繁に庭園を散歩するようになりました。
庭園では、五郎様が目を輝かせて新たに目にする生き物らに興味津々でございます。
先ほどは池を泳ぐ鯉に夢中になっておられました。
殿と多恵姫様はその姿を優しき目で見守りなさっています。
まことに仲睦まじい家族でございます。
そして、私の横では同じく殿と多恵姫様の後方に控える二人の小姓がおります。
朝比奈藤三郎と三浦犬丸でございます。
この二人はいつも喧嘩をしており、先ほども
「わしのほうが殿への忠義が上じゃ!」
と、言い争っておりました。まだまだかわゆい子どもにございます。
まあ、私も殿への忠義は負けておりませぬが。
また、先日は甲斐国を追われた信虎様が共に散歩なされました。
信虎様は未だに自らを追放した晴信殿に怒っておられるようですが、孫や娘を前にするとすっかり優しきおじじ様となられます。
しかしながら、信虎様の悪政は私たちの耳にも入っており、追放されたのは自業自得やもしれません。
魅力的な殿に優しき多恵姫様、私はこの今川に仕えてられて幸せにございます。
だから私は願うのです。いつまでも、いつまでもこの方々に仕えていきたいと。
*この話をもって第三章を閉幕とします*
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