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第二章 動乱の今川家
第十四矢 覚悟
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「敵将はどこじゃあ!」
返り血を大量に浴びていた岡部親綱は荒ぶりながら、逃げ惑う敵兵を斬り倒していた。
(福島正成、是非とも一度は手合わせしてみたい相手よ!)
親綱の活躍もあり、義元軍は順調に恵探軍を蹴散らしていた。
そんな中、逃げ惑う兵らの流れに逆らって義元軍に近づく軍勢がいた。そう、福島正成の率いる兵らである。
敵は義元ただ一人。余計な戦闘を避けるためにも正成たちは慎重に動いていた。
そして、正成はついに義元の姿を捉えた。
「義元ぉ!」
正成が率いる兵らの士気は最高潮に達し、正成の合図と共に義元へと突撃していった。
そうして、未だ複数の兵と共に前線にとどまっていた俺に正成が襲いかかった。
「えっ!?」
数人の兵らが俺を殺そうと斬りかかる。俺は突然のことで驚いたが、咄嗟に反応して返り討ちにする。そして、兵らを倒して前を見ると大槍を持つ正成の姿があった。
「今川義元、覚悟!!」
正成が俺に大槍を振るう。
「ヤバッ!」
俺は正成の攻撃を何とか受け止める。しかし、さすがは歴戦の武将。
「グッ…!重いっ…!」
正成の力に俺が押されていると、
「殿っ!」
そばにいた吉田氏好が、複数の兵らをなぎ倒して俺の元に駆けつける。
正成は氏好の攻撃を避けるため、一旦後ろに退いた。氏好は義元の前に立ち、正成の前に立ち塞がった。
「殿、ご無事でありまするか!?」
「うん、まあ何とか…」
襲撃に気付いたのか、続々と義元軍の兵が集まってきた。一方で、逃げ惑っている恵探軍の兵数はすでに半分以下になっていた。
(早く仕留めねば!)
正成は焦り、義元の首を取らんと再び攻撃を仕掛ける。
しかし、今度は横から親綱が割って入ってきた。
正成はあと一歩が届かない。
「福島正成とお見受けする。手合わせ願おうか。」
「小僧が…千年早いわ!そこをどけ!」
正成と親綱は槍を交える。
「わしの夢を邪魔をするなあ!」
(この迫力…!さすがは甲斐の武田と渡り合っていたことだけはあるわ!)
その後、二人は一進一退の攻防を繰り広げていたが正成はふと周囲の異変に気付いた。
周りを見ると、正成の兵たちはすでに十数人にまで減っていたのだ。
すでに勝敗は決していた。
それを理解して、正成の兵たちが正成を逃がそうと正成の前に並び立つ。
「正成様、貴方様はここで死してはなりませぬ…!生き延びて必ずや我らに勝利を!」
「おぬしら…」
「さあ、早く行ってくださいませ!」
「おぬしらの勇姿…決して無駄にはせぬ!」
正成は一筋の涙を流すと、数人の兵を引き連れて退却していく。
「逃がすかあ!」
親綱を筆頭に義元軍が正成を追おうとするが、正成の兵たちが行かせまいと命懸けの足止めを決行する。
親綱はニッと笑い、そんな正成の兵たちを讃えた。
「それでこそ武士の姿よ…!」
正成の兵たちは最期のその時まで義元軍に立ち向かった。
「正…成……様…………」
最後の正成の兵が倒れると、恵探軍はすでに全軍撤退した後だった。
「この戦、俺たちの勝利だ!」
義元軍は勝利の雄叫びを上げた。
こうして、駿府館の戦いは義元軍の大勝に終わったのだった。
返り血を大量に浴びていた岡部親綱は荒ぶりながら、逃げ惑う敵兵を斬り倒していた。
(福島正成、是非とも一度は手合わせしてみたい相手よ!)
親綱の活躍もあり、義元軍は順調に恵探軍を蹴散らしていた。
そんな中、逃げ惑う兵らの流れに逆らって義元軍に近づく軍勢がいた。そう、福島正成の率いる兵らである。
敵は義元ただ一人。余計な戦闘を避けるためにも正成たちは慎重に動いていた。
そして、正成はついに義元の姿を捉えた。
「義元ぉ!」
正成が率いる兵らの士気は最高潮に達し、正成の合図と共に義元へと突撃していった。
そうして、未だ複数の兵と共に前線にとどまっていた俺に正成が襲いかかった。
「えっ!?」
数人の兵らが俺を殺そうと斬りかかる。俺は突然のことで驚いたが、咄嗟に反応して返り討ちにする。そして、兵らを倒して前を見ると大槍を持つ正成の姿があった。
「今川義元、覚悟!!」
正成が俺に大槍を振るう。
「ヤバッ!」
俺は正成の攻撃を何とか受け止める。しかし、さすがは歴戦の武将。
「グッ…!重いっ…!」
正成の力に俺が押されていると、
「殿っ!」
そばにいた吉田氏好が、複数の兵らをなぎ倒して俺の元に駆けつける。
正成は氏好の攻撃を避けるため、一旦後ろに退いた。氏好は義元の前に立ち、正成の前に立ち塞がった。
「殿、ご無事でありまするか!?」
「うん、まあ何とか…」
襲撃に気付いたのか、続々と義元軍の兵が集まってきた。一方で、逃げ惑っている恵探軍の兵数はすでに半分以下になっていた。
(早く仕留めねば!)
正成は焦り、義元の首を取らんと再び攻撃を仕掛ける。
しかし、今度は横から親綱が割って入ってきた。
正成はあと一歩が届かない。
「福島正成とお見受けする。手合わせ願おうか。」
「小僧が…千年早いわ!そこをどけ!」
正成と親綱は槍を交える。
「わしの夢を邪魔をするなあ!」
(この迫力…!さすがは甲斐の武田と渡り合っていたことだけはあるわ!)
その後、二人は一進一退の攻防を繰り広げていたが正成はふと周囲の異変に気付いた。
周りを見ると、正成の兵たちはすでに十数人にまで減っていたのだ。
すでに勝敗は決していた。
それを理解して、正成の兵たちが正成を逃がそうと正成の前に並び立つ。
「正成様、貴方様はここで死してはなりませぬ…!生き延びて必ずや我らに勝利を!」
「おぬしら…」
「さあ、早く行ってくださいませ!」
「おぬしらの勇姿…決して無駄にはせぬ!」
正成は一筋の涙を流すと、数人の兵を引き連れて退却していく。
「逃がすかあ!」
親綱を筆頭に義元軍が正成を追おうとするが、正成の兵たちが行かせまいと命懸けの足止めを決行する。
親綱はニッと笑い、そんな正成の兵たちを讃えた。
「それでこそ武士の姿よ…!」
正成の兵たちは最期のその時まで義元軍に立ち向かった。
「正…成……様…………」
最後の正成の兵が倒れると、恵探軍はすでに全軍撤退した後だった。
「この戦、俺たちの勝利だ!」
義元軍は勝利の雄叫びを上げた。
こうして、駿府館の戦いは義元軍の大勝に終わったのだった。
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