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ヌガルの戦い
それぞれの思惑
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レスカー帝国最南端の都市レガント。
かつては、豊富な資源を持ち合わせる帝都の次に栄える大都市として全盛期の帝国の象徴的存在であった。
だが、度重なる戦や貴族たちによる権力闘争などに巻き込まれたレガントは長い年月をかけて徐々にその権威を失っていく。
大帝国を支えた豊富な資源も尽き、人も去っていき閑散としていた。それでもまだ都市としての体裁を保っていたが、すでに腐敗の一途をたどっていた政府は、まだ再興の可能性があったこの都市を見捨てた。
もし、政府がレガントを再興させていたら、スラム街など存在せず反乱軍が発生することもなかっただろう。やがてレガントは他国から『ゴーストシティ』と呼ばれ、あまりの荒廃ぶりに他国も占領しようとはしなかった。こうして、レガントは人々の記憶から忘れ去られていった。
そして現在。レガントは反乱軍によりフリーダムという都市に生まれ変わっていた。皮肉にも反乱軍の拠点となっているフリーダムは、全盛期の帝国を思わせるような活気と笑顔で溢れていた。
彼らには、帝国軍がフリーダムまで進軍して来れないという自信があった。
二カ国の支援はもちろん、ヌガルの森がフリーダムへの道を阻んでいるからだ。
ヌガルの森は、草木がうっそうと茂り、日の光が木々に遮られて地面まで届かない密林地帯。ゆえに、大規模の軍勢が侵攻してきたとしても戦い方によっては少数の軍勢でも大勝できるような地形だった。
彼らにとって、ヌガルの森とは自然の城壁なのだ。
一方、エラシス率いる軍は帝都を出立し、帝国領を南下していた。途中、四大貴族のサステリア家の当主の甥であるガルフ将軍を始めとする軍と合流して、総勢10万の兵を擁して反乱軍討伐へと進軍する。
エラシス軍に従軍していたレオは、斜め前方にいるエラシスに見とれていた。
エラシス様が来ている黄金に輝く鎧。エラシス様の太陽のような雰囲気に似合っていて好きだな。
だが、レオにはその鎧についてある疑問があった。
「あの、エラシス様。」
「何だ?」
「その鎧だと、すごく目立ってその…敵に皇帝だとばれてしまいそうなんですけど、大丈夫なんですか?」
エラシスは一瞬ポカーンとし、ハハハハと笑い出した。
「私の場合はそれでいいんだ。」
「えっ?」
「だって、私が皇帝と分かれば私に襲いかかってくるだろ?そうすればよりスリルを楽しめるではないか。」
そうこうしているうちに、ヌガルの森が前方に見えてきた。
「さあて、借りを返す時が来たな。」
エラシスは笑みを浮かべると、ヌガルの森へと足を踏み入れたのであった。
ヌガルの森からアレクたち反乱軍が控えているフリーダム側のヌガルの森前ヘと2人の斥候が到着した。
「リーダー!帝国軍がヌガルの森に侵入した模様です!」
と、斥候がアレクへと報告をすると
「そうか、知らせてくれてありがとう。」
と、アレクは斥候たちに礼を言った。
アレクは後ろを振り返り仲間たちを見る。
「皆!帝国軍がもうそこまで迫っている!」
アレクは言葉を続ける。
「帝国軍は、数も僕たちの倍いて、屈強だ…僕たちに勝ち目はほとんどない。」
皆はうつむく。
「だけど、前回この森で僕たちは勝利した!あの帝国軍にだ!」
うつむくのをやめ、皆はアレクの方を太陽を見るように見つめる。
「僕たちだって自分たちの国を変えられるんだ。自由のために!未来のために!今一度、帝国軍に再び勝とう!」
「おおおおおおおお!!!」
アレクの言葉は皆を奮い立たせ、人々の闘志に火をつけた。
「では、行くぞ!」
アレクを先頭に約1万5000の軍勢がヌガルの森へと入っていった。
アレクはこの森を見るたびに、帝国軍との戦いで拉致された親友を思い出す。
黄金の鎧の女がレオを連れ去っていくことを止められなかったのをアレクは悔やんでいた。
あの時、僕に力があれば親友を助けることができたのかもしれない。
あの女は確か『陛下』と呼ばれていた。
皇帝エラシス。
噂では、人をいたぶるのが趣味とかいう最悪の皇帝。おそらく、今もあいつをエラシスはいたぶっているだろう。
アレクは拳を固く握りしめる。
早く帝国をぶっ潰してレオを助けないと…!
ヌガルの森で、それぞれの思惑が飛び交っていた。その思惑が交じる時、彼らがどうなるかはこの時は誰も知る由もなかった。
かつては、豊富な資源を持ち合わせる帝都の次に栄える大都市として全盛期の帝国の象徴的存在であった。
だが、度重なる戦や貴族たちによる権力闘争などに巻き込まれたレガントは長い年月をかけて徐々にその権威を失っていく。
大帝国を支えた豊富な資源も尽き、人も去っていき閑散としていた。それでもまだ都市としての体裁を保っていたが、すでに腐敗の一途をたどっていた政府は、まだ再興の可能性があったこの都市を見捨てた。
もし、政府がレガントを再興させていたら、スラム街など存在せず反乱軍が発生することもなかっただろう。やがてレガントは他国から『ゴーストシティ』と呼ばれ、あまりの荒廃ぶりに他国も占領しようとはしなかった。こうして、レガントは人々の記憶から忘れ去られていった。
そして現在。レガントは反乱軍によりフリーダムという都市に生まれ変わっていた。皮肉にも反乱軍の拠点となっているフリーダムは、全盛期の帝国を思わせるような活気と笑顔で溢れていた。
彼らには、帝国軍がフリーダムまで進軍して来れないという自信があった。
二カ国の支援はもちろん、ヌガルの森がフリーダムへの道を阻んでいるからだ。
ヌガルの森は、草木がうっそうと茂り、日の光が木々に遮られて地面まで届かない密林地帯。ゆえに、大規模の軍勢が侵攻してきたとしても戦い方によっては少数の軍勢でも大勝できるような地形だった。
彼らにとって、ヌガルの森とは自然の城壁なのだ。
一方、エラシス率いる軍は帝都を出立し、帝国領を南下していた。途中、四大貴族のサステリア家の当主の甥であるガルフ将軍を始めとする軍と合流して、総勢10万の兵を擁して反乱軍討伐へと進軍する。
エラシス軍に従軍していたレオは、斜め前方にいるエラシスに見とれていた。
エラシス様が来ている黄金に輝く鎧。エラシス様の太陽のような雰囲気に似合っていて好きだな。
だが、レオにはその鎧についてある疑問があった。
「あの、エラシス様。」
「何だ?」
「その鎧だと、すごく目立ってその…敵に皇帝だとばれてしまいそうなんですけど、大丈夫なんですか?」
エラシスは一瞬ポカーンとし、ハハハハと笑い出した。
「私の場合はそれでいいんだ。」
「えっ?」
「だって、私が皇帝と分かれば私に襲いかかってくるだろ?そうすればよりスリルを楽しめるではないか。」
そうこうしているうちに、ヌガルの森が前方に見えてきた。
「さあて、借りを返す時が来たな。」
エラシスは笑みを浮かべると、ヌガルの森へと足を踏み入れたのであった。
ヌガルの森からアレクたち反乱軍が控えているフリーダム側のヌガルの森前ヘと2人の斥候が到着した。
「リーダー!帝国軍がヌガルの森に侵入した模様です!」
と、斥候がアレクへと報告をすると
「そうか、知らせてくれてありがとう。」
と、アレクは斥候たちに礼を言った。
アレクは後ろを振り返り仲間たちを見る。
「皆!帝国軍がもうそこまで迫っている!」
アレクは言葉を続ける。
「帝国軍は、数も僕たちの倍いて、屈強だ…僕たちに勝ち目はほとんどない。」
皆はうつむく。
「だけど、前回この森で僕たちは勝利した!あの帝国軍にだ!」
うつむくのをやめ、皆はアレクの方を太陽を見るように見つめる。
「僕たちだって自分たちの国を変えられるんだ。自由のために!未来のために!今一度、帝国軍に再び勝とう!」
「おおおおおおおお!!!」
アレクの言葉は皆を奮い立たせ、人々の闘志に火をつけた。
「では、行くぞ!」
アレクを先頭に約1万5000の軍勢がヌガルの森へと入っていった。
アレクはこの森を見るたびに、帝国軍との戦いで拉致された親友を思い出す。
黄金の鎧の女がレオを連れ去っていくことを止められなかったのをアレクは悔やんでいた。
あの時、僕に力があれば親友を助けることができたのかもしれない。
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噂では、人をいたぶるのが趣味とかいう最悪の皇帝。おそらく、今もあいつをエラシスはいたぶっているだろう。
アレクは拳を固く握りしめる。
早く帝国をぶっ潰してレオを助けないと…!
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