レスカー帝国物語

海野 入鹿

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優雅なる貴族社会

眠っている記憶

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1人の少女がいた。その少女の中には幸せに暮らしていた家族の記憶が眠っている。

広い食堂に少女と少女の両親が食事をしていた。壁沿いには使用人たちがずらりと並んでいる。
食事。
それは少女にとっては楽しみにしている時間の一つだ。なぜならば、その時間は父と母と少女が3人揃って会える数少ない時間の一つだからだ。
中庭にいた小鳥の話、最近流行しているドレスの話などくだらない話を少女は両親に喋る。両親は可愛らしい小動物を見るかのような目でそんな少女の話を聞く。
そこには、幸せそうな『家族』があった。



レオは久しぶりに悪夢を見ることなく起きることができた。

これもヤヌス様からもらったこの薬のおかげだな

とヤヌスに感謝をして、朝の支度を済まして使用人が部屋に来るのを待つ。そして、使用人が来たら食堂まで案内してもらう。食堂には、使用人が3人壁沿いにいて、横に長い長方形の黄金のテーブルに三つの絢爛な装束がされている椅子があった。その中の一つの椅子に座る。
そしてエラシスが食堂に来たら、レオの朝食の時間が始まるのだ。
レオはスラム育ちのため、最初はフォークやスプーンの使い方すらわからなかったが、エラシスの食事の所作を真似ることで基本的な食事マナーを覚えていった。

貴族主義、絶対王政が全盛期を迎えているこの大陸の常識として、奴隷が主人と同じ場所で同じ内容の食事を食べることなどあり得ない。
しかし、エラシスは

「1人で食べるより、誰かと食べた方が飯がうまいからな。」

と言って、レオに共に食事をするように命令した。
本来なら、皇帝と奴隷が一緒に食事をするなど周りが許さない。しかし、そんな彼女を止めようとするものは誰もいなかった。
傀儡の皇帝など、所詮は大臣たちの思うがままに国を支配するための道具。大臣たちにとって、政治に関わることでなければ、エラシスがどこで何をしようがどうでもよかったのだ。

食事を進めていると、エラシスが思い出したかのようにレオに言う。

「そういえば、社交パーティーが近々あるそうだ。お前も私の奴隷兼バユセイユ家の養子として参加するのだぞ。」

「社交パーティー?」

「ぺちゃくちゃとしゃべったり、社交ダンスを踊ったりするんだ。私にとってはつまらん催しだ。」

「俺社交ダンスなんて踊れない…」

「安心しろ。参加すると言ってもお前は私と一緒に座っているだけだ。」

エラシスはレオが食事を食べ終えるのを確認すると、

「では、鍛錬の間に行こう。」

2人は食堂から出て行き、
稽古をしに鍛錬の間へと向かった。

―眠りはいつか覚めるもの。

レオを奴隷としてから、少女は今まで失われつつあった『何か』を取り戻し始めていた。
その『何か』を完全に取り戻した時、少女の中に眠っている記憶は目覚め蘇り、

少女は真の皇帝となるだろう。



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