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フラース攻防戦
2人の夢
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エラシス軍のフラース入城を阻止しようとするノシェラン軍、何が何でもフラースへ入城しようとするエラシス軍。両軍の戦闘は激しくなっていき、一進一退の攻防が続いていた。ノシェランはそんな戦場で、
あいつはこの状況をどうするだろうか
と、ある男のことを思い出していた。
ノシェランはヨラン家の次男として生まれた。ヨラン家は、裕福でも貧しくもないどこにでもいるような貴族だった。そんな家の次男であるノシェランには軍人や文官などを目指して自力で出世するしかなかった。そんな彼は、他の凡庸な貴族の次男三男と同様にぼーっと生きていた。そこそこな屋敷を得て、そこそこな地位を得て、そこそこな人生を送ることができればいいと思っていたのである。
だが、そんな彼の平凡に送る予定だった人生を変える出会いがあった。
それは、ノシェランが士官学校に入学したときのこと。これから5年間住む遼の部屋に行くと、1人の少年が二段ベッドの下段のベッドに座っていた。
「よっ!俺はルフロって言うんだ。これから5年間ルームメイトとしてよろしくな!」
「僕はノシェラン。こちらこそよろしく。」
このルフロという少年はノシェランと同じような環境の貴族の家の次男であった。そんな共通点もあってか、ノシェランとルフロはすぐに仲良くなった。ルフロは活発でユーモアあふれる少年だった。多少強引なところもあるけれど、言いたいことははっきりと言う面もあった。ノシェランはそんなルフロを親友として頼もしく、そして尊敬の念すら抱いていた。またノシェランと違い、ルフロにはちゃんとした将来の夢があった。
時は流れ、2人は最上位学年になっていた。
「なあ、ノシェラン。ノシェランは卒業したらやりたいこととかないんだよな?」
「そうだけど…」
「だったらさ!俺と一緒に軍人になって大将軍を目指そうぜ!」
「いいよ。」
「でもお前はそういう面倒くさいこと嫌いだもんなーって、いいの!?」
「うん。なんかお前を見てるとさ、人生ぼけーっと生きている自分が馬鹿らしくなってきたんだ。ルフロ、ありがと。お前のおかげで僕にも生きる目的ができたよ。」
「なんかよく分かんねえけど、
どういたしまして!」
以前の彼ならば、貴族であればある程度の地位を得ることができ、死ぬリスクもない文官となっていたことだろう。だが、もうそこに以前の彼はいなかった。ルフロに刺激を受け、自分を変えようとしている彼は、初めて自らの意思で軍人への道を選んだのである。
さらに時は流れ、ルフロとノシェランは副官を経て将軍となっていた。2人はそれぞれ武勲をあげ続け、特にルフロは将来が有望視されていた。2人は順調に大将軍への道を歩んでいた…はずだった。
レスカー帝国との戦で、ルフロが重傷を負ったのだ。戦はテテンド帝国側が敗戦して、ルフロたちは敗走を余儀なくされた。ルフロは何とか帰還できたが、怪我は数日間でさらに悪化していった。ノシェランがルフロの屋敷に駆けつけた時には、すでに死に体だった。
ルフロがノシェランの存在に気づく。
「………ノシェランか…見舞いに来てくれた…のか?」
「ああ、そうだよ。」
ノシェランは一目見て分かってしまった。
もう助からない、と。
ルフロが必死にノシェランに訴える。
「なあ……ノシェラン…頼む………」
「何をだ?ルフロ。」
ノシェランは必死に溢れそうになる涙を堪えながら言う。
「お…願い……だ。俺の分まで……絶対に大将軍になってくれ…」
「ああ…ああ!なるとも!なってやるさ!……だから…だから私のそばでずっと私の活躍を見守っててくれ…」
ノシェランはルフロの手をギュッと握る。すると、ルフロは自分の想いを託して安心したのか静かに眠りについた。
「…バカ野郎…共に大将軍になろうと言ったのはお前だったのに、そのお前が死んでどうするんだ…!」
ノシェランは、今まで堪えていた涙が溢れ出して止まらなかった。
それから、ノシェランはひたすら大将軍になるために武勲をあげた。自分に夢を託してくれた親友のためにもノシェランは大将軍を目指した。ノシェランは北方の国々との戦に勝ち続け、ついに彼は最も大将軍に近い将軍と呼ばれるようになった。
あと少しでルフロとノシェランの夢が叶おうとしていた。
―そして現在、兵力で劣るノシェラン軍は次第に劣勢に追い込まれていた。
あと少しまで来ているんだ。
こんなところでやられるわけにはいかない。
私たちの夢を終わらすわけにはいかない!
それでも、ノシェランはまだ生きることを諦めていなかった。やがてそれは、ノシェラン軍全体に広がっていき、ノシェラン軍はここから驚異の粘りを見せることとなる。
あいつはこの状況をどうするだろうか
と、ある男のことを思い出していた。
ノシェランはヨラン家の次男として生まれた。ヨラン家は、裕福でも貧しくもないどこにでもいるような貴族だった。そんな家の次男であるノシェランには軍人や文官などを目指して自力で出世するしかなかった。そんな彼は、他の凡庸な貴族の次男三男と同様にぼーっと生きていた。そこそこな屋敷を得て、そこそこな地位を得て、そこそこな人生を送ることができればいいと思っていたのである。
だが、そんな彼の平凡に送る予定だった人生を変える出会いがあった。
それは、ノシェランが士官学校に入学したときのこと。これから5年間住む遼の部屋に行くと、1人の少年が二段ベッドの下段のベッドに座っていた。
「よっ!俺はルフロって言うんだ。これから5年間ルームメイトとしてよろしくな!」
「僕はノシェラン。こちらこそよろしく。」
このルフロという少年はノシェランと同じような環境の貴族の家の次男であった。そんな共通点もあってか、ノシェランとルフロはすぐに仲良くなった。ルフロは活発でユーモアあふれる少年だった。多少強引なところもあるけれど、言いたいことははっきりと言う面もあった。ノシェランはそんなルフロを親友として頼もしく、そして尊敬の念すら抱いていた。またノシェランと違い、ルフロにはちゃんとした将来の夢があった。
時は流れ、2人は最上位学年になっていた。
「なあ、ノシェラン。ノシェランは卒業したらやりたいこととかないんだよな?」
「そうだけど…」
「だったらさ!俺と一緒に軍人になって大将軍を目指そうぜ!」
「いいよ。」
「でもお前はそういう面倒くさいこと嫌いだもんなーって、いいの!?」
「うん。なんかお前を見てるとさ、人生ぼけーっと生きている自分が馬鹿らしくなってきたんだ。ルフロ、ありがと。お前のおかげで僕にも生きる目的ができたよ。」
「なんかよく分かんねえけど、
どういたしまして!」
以前の彼ならば、貴族であればある程度の地位を得ることができ、死ぬリスクもない文官となっていたことだろう。だが、もうそこに以前の彼はいなかった。ルフロに刺激を受け、自分を変えようとしている彼は、初めて自らの意思で軍人への道を選んだのである。
さらに時は流れ、ルフロとノシェランは副官を経て将軍となっていた。2人はそれぞれ武勲をあげ続け、特にルフロは将来が有望視されていた。2人は順調に大将軍への道を歩んでいた…はずだった。
レスカー帝国との戦で、ルフロが重傷を負ったのだ。戦はテテンド帝国側が敗戦して、ルフロたちは敗走を余儀なくされた。ルフロは何とか帰還できたが、怪我は数日間でさらに悪化していった。ノシェランがルフロの屋敷に駆けつけた時には、すでに死に体だった。
ルフロがノシェランの存在に気づく。
「………ノシェランか…見舞いに来てくれた…のか?」
「ああ、そうだよ。」
ノシェランは一目見て分かってしまった。
もう助からない、と。
ルフロが必死にノシェランに訴える。
「なあ……ノシェラン…頼む………」
「何をだ?ルフロ。」
ノシェランは必死に溢れそうになる涙を堪えながら言う。
「お…願い……だ。俺の分まで……絶対に大将軍になってくれ…」
「ああ…ああ!なるとも!なってやるさ!……だから…だから私のそばでずっと私の活躍を見守っててくれ…」
ノシェランはルフロの手をギュッと握る。すると、ルフロは自分の想いを託して安心したのか静かに眠りについた。
「…バカ野郎…共に大将軍になろうと言ったのはお前だったのに、そのお前が死んでどうするんだ…!」
ノシェランは、今まで堪えていた涙が溢れ出して止まらなかった。
それから、ノシェランはひたすら大将軍になるために武勲をあげた。自分に夢を託してくれた親友のためにもノシェランは大将軍を目指した。ノシェランは北方の国々との戦に勝ち続け、ついに彼は最も大将軍に近い将軍と呼ばれるようになった。
あと少しでルフロとノシェランの夢が叶おうとしていた。
―そして現在、兵力で劣るノシェラン軍は次第に劣勢に追い込まれていた。
あと少しまで来ているんだ。
こんなところでやられるわけにはいかない。
私たちの夢を終わらすわけにはいかない!
それでも、ノシェランはまだ生きることを諦めていなかった。やがてそれは、ノシェラン軍全体に広がっていき、ノシェラン軍はここから驚異の粘りを見せることとなる。
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