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フラース攻防戦
戦の天才
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ノシェラン隊の鉄壁ぶりにエラシス軍が徐々に劣勢に追い込まれていた。ノシェラン隊がエラシス軍の進撃を食い止めていることで、他の将軍の隊が側面からエラシス軍へ攻撃を仕掛けることができるのだ。俺たちの軍は今にもテテンド帝国軍に包囲されかけていた。だがそんな状況だと言うのにエラシスは笑っている。
「なあ、レオ。面白いとは思わんか?」
エラシスがテテンド帝国兵をなぎ倒しながら俺に話しかける。
「何が!?」
下手をすると全員死ぬかもしれないというのになにが面白いんだ?
レオはエラシスの考えが理解できなかった。
「前方の敵に手こずり、側面と後方からも敵が襲いかかる。まさに絶対絶命だ。だが!それがいい!このスリルもまた戦でしか味わえん!」
「エラシス様!前!前!」
エラシスにテテンド帝国兵が襲いかかる。エラシスは、これをそくざに薙ぎ払った。
「だがな、この絶対絶命の窮地から脱出し、勝利をおさめるのはさらに気持ちいい!」
エラシスは満面の笑みで敵兵を殺していく。
「なぜ、このフラースの南側の軍に攻撃を仕掛けたと思う?
…それはな、ここが最も攻めやすそうだったからだよ。」
「それはどういう…」
「さて、そろそろ頃合いか。少しだけ私がいない間耐えていてくれ。」
すると、2人の将軍がそれぞれ隊の先頭に立って、エラシス隊の両側面を攻めてきた。
「皇帝エラシス、覚悟!」
そう2人の将軍が挟み撃ちのような感じでエラシス隊を攻撃し始めると、エラシス様はくるりと向きを変え、まず左側にいた敵将を標的に定めた。
「来たな!我の名はサナン!貴様を倒す将軍だ、覚えておけ!」
「ほう、勇敢だな。」
サナンと名乗った将軍は、果敢にもエラシスに真っ向勝負を挑んだ。しかし、勝負は一瞬でついた。サナンの胸はエラシスの大槍に突き抜かれていた。一瞬の出来事にサナンの副官や周囲にいたサナン隊の兵士たちは唖然としていた。エラシスはそんなサナン隊に目もくれず、反対側へと向きを変えてもう片方の将軍を標的に定める。
まだサナンがエラシスによって葬られたことを知らないエラシス隊の右側を攻めていた将軍は、エラシスが右側に来るのを見ると
「貴様の首を取って、俺は大将軍へとなる!」
とエラシスに立ち向かう。その将軍は、剣でエラシスの首をはねようとした。しかし次の瞬間、将軍の横からエラシスの大槍の一撃が襲いかかる。将軍が避けようとするも時遅く、将軍の上半身が宙を舞った。
「しょ、将軍が死んだ!!」
かくして、エラシス隊の両側面を攻めていたテテンド帝国兵は大混乱に陥った。ある者はエラシス隊に立ち向かったり、ある者は逃げ出したりと、その混乱は少なからずノシェラン隊に動揺を与えた。その隙に、エラシスは再びエラシス隊の先頭に立ち
「突撃!」
と号令をかけると、先ほどまでの苦戦ぶりが嘘のようにノシェラン隊の兵たちを蹴散らした。
「よし、このまま押し切るぞ!」
エラシス軍はさらに勢いづき、ノシェラン隊に反撃の隙を与えない。どんどんとフラースへと進む。
「おそらく、この隊を率いているのはノシェランだろうな。」
「ノシェラン?」
「ああ、今回のテテンド帝国の二つの軍のうちの一つを率いている総大将だ。」
「なんでそんなことがわかるんだ?」
「遠くから見て、南側の軍の兵どもが他と比べて血気盛んで、少し軍の統制がとれていない感じがしたのと、隊の練度が他よりも高いのでだいたいわかった。」
「そういえば、さっきの攻めやすそうってのはどういうことなんだ?エラシス様。」
「ノシェラン軍は、総大将がまだ大将軍ではなく将軍の若造だった。しかも、その若造は先ほどの兵を見るに相当のやり手と見える。そんな若造に遅れをとるまいと手柄を立てることに必死になっていたときに、レスカー帝国の皇帝という餌が来たから、その餌に見事につられて将軍たちは先走ってしまったというわけだ。さすがのノシェランもそんな将軍どもを御しきれなかったようだ。確かにノシェラン隊は強かったが、もう少し周りにも目を向けるべきだったな。」
「エラシス様はこうなると分かって…」
「でなければ、あんなリスクのある攻撃などしないわ。」
俺は、エラシス様が戦の天才と呼ばれる所以を改めて思い知った。
「…見事にしてやられた。」
一方のノシェランは苦い顔をしていた。
途中まで流れは私たちにあったはずだ。だがまさか、軍内の人間関係を利用されるとは思わなかった…
ノシェランは人生で最大の危機をむかえることとなる。
「なあ、レオ。面白いとは思わんか?」
エラシスがテテンド帝国兵をなぎ倒しながら俺に話しかける。
「何が!?」
下手をすると全員死ぬかもしれないというのになにが面白いんだ?
レオはエラシスの考えが理解できなかった。
「前方の敵に手こずり、側面と後方からも敵が襲いかかる。まさに絶対絶命だ。だが!それがいい!このスリルもまた戦でしか味わえん!」
「エラシス様!前!前!」
エラシスにテテンド帝国兵が襲いかかる。エラシスは、これをそくざに薙ぎ払った。
「だがな、この絶対絶命の窮地から脱出し、勝利をおさめるのはさらに気持ちいい!」
エラシスは満面の笑みで敵兵を殺していく。
「なぜ、このフラースの南側の軍に攻撃を仕掛けたと思う?
…それはな、ここが最も攻めやすそうだったからだよ。」
「それはどういう…」
「さて、そろそろ頃合いか。少しだけ私がいない間耐えていてくれ。」
すると、2人の将軍がそれぞれ隊の先頭に立って、エラシス隊の両側面を攻めてきた。
「皇帝エラシス、覚悟!」
そう2人の将軍が挟み撃ちのような感じでエラシス隊を攻撃し始めると、エラシス様はくるりと向きを変え、まず左側にいた敵将を標的に定めた。
「来たな!我の名はサナン!貴様を倒す将軍だ、覚えておけ!」
「ほう、勇敢だな。」
サナンと名乗った将軍は、果敢にもエラシスに真っ向勝負を挑んだ。しかし、勝負は一瞬でついた。サナンの胸はエラシスの大槍に突き抜かれていた。一瞬の出来事にサナンの副官や周囲にいたサナン隊の兵士たちは唖然としていた。エラシスはそんなサナン隊に目もくれず、反対側へと向きを変えてもう片方の将軍を標的に定める。
まだサナンがエラシスによって葬られたことを知らないエラシス隊の右側を攻めていた将軍は、エラシスが右側に来るのを見ると
「貴様の首を取って、俺は大将軍へとなる!」
とエラシスに立ち向かう。その将軍は、剣でエラシスの首をはねようとした。しかし次の瞬間、将軍の横からエラシスの大槍の一撃が襲いかかる。将軍が避けようとするも時遅く、将軍の上半身が宙を舞った。
「しょ、将軍が死んだ!!」
かくして、エラシス隊の両側面を攻めていたテテンド帝国兵は大混乱に陥った。ある者はエラシス隊に立ち向かったり、ある者は逃げ出したりと、その混乱は少なからずノシェラン隊に動揺を与えた。その隙に、エラシスは再びエラシス隊の先頭に立ち
「突撃!」
と号令をかけると、先ほどまでの苦戦ぶりが嘘のようにノシェラン隊の兵たちを蹴散らした。
「よし、このまま押し切るぞ!」
エラシス軍はさらに勢いづき、ノシェラン隊に反撃の隙を与えない。どんどんとフラースへと進む。
「おそらく、この隊を率いているのはノシェランだろうな。」
「ノシェラン?」
「ああ、今回のテテンド帝国の二つの軍のうちの一つを率いている総大将だ。」
「なんでそんなことがわかるんだ?」
「遠くから見て、南側の軍の兵どもが他と比べて血気盛んで、少し軍の統制がとれていない感じがしたのと、隊の練度が他よりも高いのでだいたいわかった。」
「そういえば、さっきの攻めやすそうってのはどういうことなんだ?エラシス様。」
「ノシェラン軍は、総大将がまだ大将軍ではなく将軍の若造だった。しかも、その若造は先ほどの兵を見るに相当のやり手と見える。そんな若造に遅れをとるまいと手柄を立てることに必死になっていたときに、レスカー帝国の皇帝という餌が来たから、その餌に見事につられて将軍たちは先走ってしまったというわけだ。さすがのノシェランもそんな将軍どもを御しきれなかったようだ。確かにノシェラン隊は強かったが、もう少し周りにも目を向けるべきだったな。」
「エラシス様はこうなると分かって…」
「でなければ、あんなリスクのある攻撃などしないわ。」
俺は、エラシス様が戦の天才と呼ばれる所以を改めて思い知った。
「…見事にしてやられた。」
一方のノシェランは苦い顔をしていた。
途中まで流れは私たちにあったはずだ。だがまさか、軍内の人間関係を利用されるとは思わなかった…
ノシェランは人生で最大の危機をむかえることとなる。
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