レスカー帝国物語

海野 入鹿

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フラース攻防戦

激突

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エラシス軍は破竹の勢いでフラースへと進撃を続けていくなか、テテンド帝国兵が隊列を組み始めたのがわかった。
そう、エラシス軍が現在攻撃している軍とは、レスカー帝国侵攻時に約20万もの兵を率いたノシェラン軍であったのだ。ノシェランの指示の元、ノシェラン軍は素早く陣形を展開していた。

「ちっ…!さすがに勢いだけでは突破できんか…だが、まだ想定内だ。陣形を整えよ!」

エラシスは舌打ちしながらも、自らの軍に陣形を整えるように命令を出す。すると、エラシスの隊を先頭にV字型の陣形が自然とできあがった。事前に、混乱状態が消えた場合のテテンド帝国軍との戦の仕方を各将軍はじめ兵らに伝達していたのだ。

ついに、両軍が激突した。

「守りを固めろ!」

ノシェラン軍がエラシス軍の勢いを止めようとする。一方のエラシス軍も

「突き破れええ!」

とエラシス先頭にノシェラン軍の陣形を崩そうとしていた。双方の兵力は互角であったが、勢いがあったエラシス軍がノシェラン軍をわずかに上回り、軍の後方にいるノシェランの本陣に近づいてくる。
しかし、それでもノシェランは全く本陣から動かなかった。副官であるレンズが慌てて、

「ノシェラン様!退却の指示を!」

とノシェランに一時退却を進言するが、

「馬鹿者。
退却なんぞしたらフラースの南側の包囲網が壊滅するだろう。
そう慌てるな、じきに敵の進撃は止まる。」

と、レンズの進言を聞き入れなかった。
ノシェランの顔にはまだ余裕が見えた。

一方のエラシス軍はノシェラン軍の中を突き進んでいき、ついに後衛のノシェラン自らが率いているノシェラン隊がいるところまで来た。しかし、そこでエラシス軍の動きが止まる。ノシェラン隊の防御隊形にエラシス軍が攻めあぐねていたのだ。エラシス軍に隊列を崩されかけると交戦していた列がすぐさま後方に下がり、後方にいた列が前方に出てくる。隊列を組み直したらまた前方に来て、前方で戦っていた列と交代する。その繰り返しでエラシス軍に突破されることをしぶとく防いでいたのだ。他の隊よりもノシェラン隊の動きは無駄がなく、統制がとれていた。

「敵ながら見事だ。これほど洗練された動きをする兵たちは今まで見たことがない。
こやつらの将はなかなかのものとみえる。」

エラシスは一種の感動を覚えた。

「…すごい!レスカー帝国軍の進撃を止めた!」

レンズがそう驚いていると、

「だから言ったであろう。敵の進撃は止まるとな。」

と、ノシェランがニヤリと笑いながら言うのであった。




《現在の戦況》

・兵数

 ノシェラン軍13万8000 
     vs 
 エラシス軍13万600

・指揮官

 ノシェラン他将軍6名 vs 皇帝と将軍4名
             


※エラシス、ノシェラン軍の陣形について

○エラシス軍
  エラシス軍が今回使ったのは、「偃月」と呼ばれる陣形です。大将を先頭として∧型に軍を展開する陣形で、高い士気や攻撃力を誇る一方で、大将が早期に死傷するリスクが高い諸刃の剣の陣形です。小規模の部隊や練度が低い軍を直接指揮するときに使われます。今回のエラシス軍は早急に集められた兵なので軍の練度が低かったのもエラシスが偃月を使った理由の一つです。

○ノシェラン軍
  ノシェラン軍は「方陣」と呼ばれる陣形でエラシス軍に対抗しました。この方陣とは正方形の陣形で、防御に特化した陣形となっています。ノシェラン軍の方陣は従来の陣形と少し違っていて、横に長い長方形となっています。

※副官とは
  副官とは、各将軍に連れ添う将軍見習い的な人たちです。1人の将軍につき副官は0~6人程度います。副官は将軍のそばで経験を積み上げることで将軍として必要な要素を培っていきます。また、将軍に意見を求められたり、兵糧の管理を任せられたりと将軍をサポートする役目もあります。ちなみに、レオは正式な副官ではないですが、エラシスに副官がいないので実質上の副官となっています。












    
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