レスカー帝国物語

フラース攻防戦

戦地へ

ことの始まりはヌガルの戦いの最終局面までさかのぼる。

帝国軍が反乱軍をあと少しのところまで追い詰めていたとき、テテンド帝国の大将軍ガンブレが約25万、同じくテテンド帝国の将軍ノシェランが約20万、計45万もの大軍がレスカー帝国へ進軍。これを受けてレスカー帝国軍は、大将軍オナドが約18万の兵を率いてホレイ川中流域にてノシェランの軍を、大将軍ラグンが約23万の兵を率いてホレイ川河口域でガンブレの軍を迎え撃った。のちにこの戦いは、ホレイ川の戦いと呼ばれる。

この戦いでレスカー帝国軍は大敗して大将軍オナド他11名の将軍、そして約28万人の兵が戦死した。一方、勝利したテテンド帝国軍も約15万人の死傷者を出した。

大敗したことで大将軍ラグンは、レスカー帝国最北端の城塞都市フラースまで撤退をした。テテンド帝国軍はその軍勢を追いかけ、フラースを包囲。こうしてフラース攻防戦が始まった。

フラースは、対テテンド帝国において重要拠点の一つだ。ゆえに、フラースを見捨てることはできない。レスカー帝国軍はテテンド帝国との戦に集中しなければならなくなり、反乱軍が息を吹き返してきたのもあってヌガルの森から撤退。テテンド帝国討伐軍を編成し、フラースへ向けて約16万の兵を送りだそうとしていた。
戦好きの皇帝エラシスは、総大将としてその軍を自ら率いることとしたのだ―
　
レオがエラシスとヤヌスに忠誠を誓ってまもなく、
エラシスがレオの部屋へ入ってきた。

「レオ、馬には乗れるか？」

「一応乗れる、ます」

レオが慣れない敬語を使おうとすると、

「タメ口でいい。」

とエラシスが言った。

「では、明日さっそく戦地へ向かう。
心の準備をしておけ。」

「まだ、彼を戦場に出すには時期尚早ではありません？まずは士官学校で学ばせてから…」

「私が直々に育てる。士官学校なんぞに入れたら何年かかるかわからん。実戦に勝る修業はない。ちょうどこのタイミングにテテンド帝国の侵攻があったのは、よかったかもしれんな。」

エラシスはそう言うと、レオの部屋から出て行った。

「…さてと、私もそろそろ用事がありますし退散します。ではレオ君、皇帝陛下をどうかよろしくお願いしますよ。」

ヤヌスもそう言って、レオの部屋から出て行った。

翌日、レオはエラシスとエラシスが率いる軍と共に帝都メラトナを出発して、フラースへと向かった。

そしてメラトナから出発してから十日後、俺たちはフラースの近くまで来ていた。
フラースの城壁とフラースを取り囲む軍が見えてきた。テテンド帝国軍はまだフラースの城壁に手こずっているようだ。

「レオ。私のそばから離れるなよ。私の戦をそばで見てろ。……全軍突撃！！」

エラシスが大きな声でそう号令をかけると、テテンド帝国討伐軍は、フラースを包囲するテテンド帝国軍へ突撃を開始した。