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優雅なる貴族社会
太陽と月
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その日、オミレシア城内のホールでは皇帝主催のパーティーが行われようとしていた。
ホールは楕円形で、奥には階段があり、階段の上には皇帝が座る椅子がある。またホールには食事スペースとダンススペースの2つのスペースがあり、優雅な音楽を宮廷音楽家たちが演奏したり、立食式で料理が用意されたりしていた。そして、階段正面側と左側の2つの扉があり、貴族たちは階段正面側から入場していった。
帝都周辺を治める中央貴族から辺境を治める地方の貴族まで、帝国中の貴族たちがぞくぞくとホール内へ足を踏み入れていた。
最後に四大貴族がホール内へ入場すると扉が静かにしまった。
「皇帝陛下、入場!」
すると、左側の扉から煌びやかな衣装を纏った皇帝エラシスが悠々と赤いカーペットの上を歩く。斜め後ろには、皇帝の奴隷であるレオが連れ添っていた。
人々は皆動きを止めて、エラシスに視線を向ける。
「あれがうわさの皇帝陛下の奴隷か…」
などと貴族たちはレオにも視線を向けていた。
エラシスたちは階段をゆっくりと上がっていった。階段の上までたどり着くと、レオは椅子の傍らの地面に跪き、エラシスは椅子の前に立ち、貴族たちへ祝辞を述べる。
「皆の者、此度は我のパーティーに来てくれたこと、感謝する。近頃は様々なことが起きたが、今この瞬間はパーティーを素直に楽しんでいってくれ。」
ホールは拍手に包まれた。
拍手がおさまり、皇帝が椅子へ座ると優雅な音楽がホールから聞こえはじめた。
こうして、皇帝主催のパーティーが始まった。
四大貴族や他の有力貴族と繋がりを持とうと必死に取り入ろうとする当主たちや、優雅な音楽に合わせてワルツを踊る跡継ぎや令嬢たち。
エラシスはそんな貴族たちを上から退屈そうに見ていた。
「ここにいてもつまらんな…よし!」
エラシスは椅子から立ち上がるとレオの方を見て、言い放つ。
「私たちも踊ろう。」
「えっ…ですがエラシス様、俺は奴隷です。奴隷の俺と踊っていたら他の方々に軽蔑されてしまいます。」
「周りなど私の知ったことではない!重要なのは、私が今退屈してるということだ。」
エラシスはレオの足を繋いでいた鎖を素手で断ち切った。一瞬のことにレオが驚いていると、エラシスはレオの手を掴み、階段を下りていく。
「エ、エラシス様…」
「そんなに嫌か?私と踊るのは。」
「いえ、そんなわけでは…」
「ならば、私と踊れ。」
階段を下りきり、2人は若者たちに混じってワルツを踊りはじめた。レオはぎくしゃくと上手く踊れていなかったが、エラシスが上手くフォローする。エラシスは楽しそうにワルツを踊っていた。レオもまた、最初は周りの目を気にしていたが、エラシスの笑顔を見ると周りの目を気にするのがバカらしくなっていった。
「…エラシス様は太陽みたいです。」
レオはそうつぶやくと、
「ならば、お前は月だな。」
とエラシスが笑顔で言うのだった。
エラシスの太陽のごとき輝きにつられて、レオも輝きを放しはじめる。
2人は他の若者たちより圧倒的に踊りが上手いわけでもなかったが、何か他の若者たちにはない輝きを放っていた―
ホールは楕円形で、奥には階段があり、階段の上には皇帝が座る椅子がある。またホールには食事スペースとダンススペースの2つのスペースがあり、優雅な音楽を宮廷音楽家たちが演奏したり、立食式で料理が用意されたりしていた。そして、階段正面側と左側の2つの扉があり、貴族たちは階段正面側から入場していった。
帝都周辺を治める中央貴族から辺境を治める地方の貴族まで、帝国中の貴族たちがぞくぞくとホール内へ足を踏み入れていた。
最後に四大貴族がホール内へ入場すると扉が静かにしまった。
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すると、左側の扉から煌びやかな衣装を纏った皇帝エラシスが悠々と赤いカーペットの上を歩く。斜め後ろには、皇帝の奴隷であるレオが連れ添っていた。
人々は皆動きを止めて、エラシスに視線を向ける。
「あれがうわさの皇帝陛下の奴隷か…」
などと貴族たちはレオにも視線を向けていた。
エラシスたちは階段をゆっくりと上がっていった。階段の上までたどり着くと、レオは椅子の傍らの地面に跪き、エラシスは椅子の前に立ち、貴族たちへ祝辞を述べる。
「皆の者、此度は我のパーティーに来てくれたこと、感謝する。近頃は様々なことが起きたが、今この瞬間はパーティーを素直に楽しんでいってくれ。」
ホールは拍手に包まれた。
拍手がおさまり、皇帝が椅子へ座ると優雅な音楽がホールから聞こえはじめた。
こうして、皇帝主催のパーティーが始まった。
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エラシスはそんな貴族たちを上から退屈そうに見ていた。
「ここにいてもつまらんな…よし!」
エラシスは椅子から立ち上がるとレオの方を見て、言い放つ。
「私たちも踊ろう。」
「えっ…ですがエラシス様、俺は奴隷です。奴隷の俺と踊っていたら他の方々に軽蔑されてしまいます。」
「周りなど私の知ったことではない!重要なのは、私が今退屈してるということだ。」
エラシスはレオの足を繋いでいた鎖を素手で断ち切った。一瞬のことにレオが驚いていると、エラシスはレオの手を掴み、階段を下りていく。
「エ、エラシス様…」
「そんなに嫌か?私と踊るのは。」
「いえ、そんなわけでは…」
「ならば、私と踊れ。」
階段を下りきり、2人は若者たちに混じってワルツを踊りはじめた。レオはぎくしゃくと上手く踊れていなかったが、エラシスが上手くフォローする。エラシスは楽しそうにワルツを踊っていた。レオもまた、最初は周りの目を気にしていたが、エラシスの笑顔を見ると周りの目を気にするのがバカらしくなっていった。
「…エラシス様は太陽みたいです。」
レオはそうつぶやくと、
「ならば、お前は月だな。」
とエラシスが笑顔で言うのだった。
エラシスの太陽のごとき輝きにつられて、レオも輝きを放しはじめる。
2人は他の若者たちより圧倒的に踊りが上手いわけでもなかったが、何か他の若者たちにはない輝きを放っていた―
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