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第57話「この国の願望」

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 いやいやいや、いくらなんでも無理だろ!


「何言ってんだよ、いったい何年かかると思ってんだよ。それにこういうのは一から設計して職人がもの凄い金と労力と人数と建設年数を投下して作るんだよ!」

 無理なお願いをするハチミツに現実の厳しさを教えると、レイはユーデルを呼んだ。


「レイ様、申し訳ございません。お待たせしました!」


 何も知らされていないユーデルは「なんでしょう?」と首を傾げる。


「貴様、物を生み出す能力だったな。シャドウ国は大きいし土地もある。遊園地を作りたいんだが可能か? 貴様、アクアニア国の出で知識も豊富だろう?」


 レイの無茶ぶりにユーデルは「はい、可能です。もう少し具体的に教えていただければ。ただ、私一人では不安なのでソウル様も一緒に確認をお願いします」と一切の迷いも見せずに答えた。


「え、可能なのか!? じゃあ、俺、わざわざアクアニア国に行かなくても、食材生み出してもらえたじゃん!」

 あの時の大変さをこれでもかとユーデルに愚痴ると、「もちろん、食材も生み出せましたが私が生み出せば味ないですよ。ポルニア国にいた頃は不思議なことに味覚が無くなってましたから」平然と答えた。


 ……そ、そうだった。王父に呪いをかけられていたことを忘れていた。


 「テーマパークができる」ということで大喜びなハチミツ。まあ、ハチミツが喜んでくれているならいいかと思ったが、一番重要なことを忘れていた。そのことを思い出し「違う!!」と、声を荒げる。よって、皆の視線が一気に俺の方に注目する。


「学校だよ、学校! なんでもかんでも能力に頼ってばかりで、この世界の人たちは考えることを放棄してると思う! 世間の厳しさや子たちが今後生き抜いていくために知恵をつけなきゃ! 学べるところ、いわゆる学校を作るのが先! 娯楽は後! 働かざる者食うべからず! まずは勉強! 俺も勘定できないし文字読めない!」


 声を大にして言うと、ハチミツが「勉強……ですか?」と困った顔を見せた。


「ハチミツめ、買い物をするときに幾らと計算するのも苦痛でございますが……」

「甘ったれんな! 因みに俺もこの世界の計算がいまいちわかんねぇから一緒に勉強する!」

「わ、分かりました……それでは、学校……? というものができるということをシャドウ国全体にお伝えしますね」

「いや、この世界全部に伝わるように宣伝してくれ。シャドウ国に関心を持ってもらうようにし、シャドウ国をもっと発展させたら、次は最も裕福な自由民主主義国にする! シャドウ国を住みやすい国にするっつーのは、そういうことだろ!」

 俺一人熱量を爆発させていると、レイが「そうだな」と頷いた。


「人が学べるところは大切だ。だが、まずシャドウ国の城をなんとかせねばならないだろう。ユーデル、虹色にお願いできるか?」

 レイの問いかけでユーデルは「できます!」と、返事一言で前あった黒い城を本当に虹色の城に変えてしまった。それも、とても立派になった。ユーデルは、「内装は元々こうだったらいいのにという、私の願望を詰めさせていただきました」と照れ笑いで「中に入りましょう」と促した。


 中は虹色の外観とは一変、木造の作りに統一されていて、とても和む。
 一階の広場には大きいソファと、壁にはお洒落な花の絵が飾ってある。白いふかふかな絨毯に大きめの丸いテーブルが置かれている。その他はお洒落なインテリアや、棚なんかも置かれていた。リビングとして活用できるとてもくつろげる空間だと思う。その他、キッチンに加え、食卓を取る広場なんかもある。


 二階は会議をする部屋などになっていた。三階~四階が城内に住む住人の部屋がそれぞれ置かれていて、レイと俺の部屋は五階に備えられているようだった。五階は俺達の部屋以外に新たにバスルームやお手洗い、サウナ、プール、ウッドデッキ、広すぎる書庫等も備え付けられていた。


「こちらの五階はレイ様とソウル様専用となっておりまして、こちらのドアの向こう側はそれそれ、レイ様とソウル様のお部屋となっております。存分にご利用ください」


 ユーデルは「では、様と夕食また何かありましたらお呼びください」と、下へ降りて行ってしまった。見返りを求めないユーデルがカッコよく見えた。


 「ソウルroom」と書かれてある部屋のドアを開ける。俺の視界に入ったのは壁や天井が一面真っ黒で、ベッドとテーブルと夜の営みに使うグッズ類とレイと俺の荷物しかない、いわゆるソウルの部屋のまんまだった。


「って、なんでこれをチョイスしたよ! どう考えたっておかしいだろ!」


 一人でツッコんでいると、俺の部屋を見たレイは「フッ」と笑みを浮かべた。


「……ほんとに、バカにしやがってよ。レイの部屋はどんなのだ?」


 覗くと、レイ様の王室はポルニア国にいた時とほとんど一緒の部屋だった。変わったのは部屋の広さがでかすぎるし、ベッドがバカでかく、とてもお高そうということだ。


「なんだよ、この差はよ!! 俺の部屋変えてもらえねぇの?」


 レイに不満をぶつけると、レイは「無理だな」と俺の部屋を見て言った。


「なんで!?」

「面白いからだ」


 ククッと肩を揺らして笑うレイはもはや悪魔にしか見えない。


「じゃあいい! 俺、自分で部屋の模様替えするし!」

「そうか。もういっそのこと、その部屋はエダの趣味部屋として使っていいんじゃないか? 私の部屋で共に生活しよう」


 一緒の部屋で生活することをクールに提案してくるレイ。

 ……確かに、俺達もう夫婦ってことなんだよな。


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