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第52話「投げかけた言葉と向き合った結果」
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「リリック、マゼンダもミケが気になるようならここに残れ。ユーデル、貴様はどうするんだ」
個々の意見を尊重するレイ。
レイはポルニア国に残る決断をせずにシャドウ国へと行くことを選んでくれた。レイ自身ががポルニア国の王では無くなることによって王父から掛けられた呪いが説かれるということになるのかは分からないけれど、それでもレイの下した決断は間違っていないと思う。
「私たちはミケさんと一緒にここに残ります」
マゼンダとリリックはレイにそう告げ頭を下げた。ユーデルは、
「レイ様のお側で今後ともお仕えさせてください」
と、レイについていくことに決めた。
俺はミケに対して『使命とかそんなんに捕らわれずに生きろよ。レイがおまえと結ばれる気がないんだから、おまえは自分の使命に駆られなくてもいい』と言葉を投げた。ミケのことを想って言ったつもりだった。ミケも、『しばらく自分の気持ちとやらと向き合ってみます』と言っていた。その、向き合った結果が今のミケの答えなんだとしたらもう俺がミケに対して言うことは何もない。
後日、今ここで話し合ったことは、ポルニア国にいる全国民を集めて再度報告が行われることとなった。ポルニア国の民を集めての最後の集会の日、準備をしている俺たちの前にハチミツはポンと姿を現した。
「ソウル様、早馬でシャドウ国にも伝わりました! ハチミツめ、一気に転生できるよう、この日のために力を蓄えてきました!」
馬車の御者が早馬でシャドウ国に伝えてくれたため、ハチミツをこの日に呼ぶことができた。
「前ハチミツはレイがシャドウ国に行くことに反対していたが、シャドウ国はレイの受け入れは大丈夫なのか?」
そう質問すると、ハチミツは「大丈夫でございます! ハチミツめ、この三ヵ月間国民と必死に向き合いました。シャドウ国にいる半数以上がポルニア国から連れてきた元奴隷民です。シャドウ国の民もポルニア国の民も今は以前よりも良好な関係を気づいております! そして、レイ様がこの国へ越してくると言ったら大喜びされておりました! 『ぜひ、シャドウ国の王として頑張っていただきたい』と言っていたので、何の問題もございません!」
嬉しそうに腕を組み報告するハチミツ。
シャドウ国の王はレイが務めということに皆の期待が高鳴っているようだ。俺に満面の笑みで報告をするハチミツに、「いや、まて」とレイが割って入った。
「私はその国で王を務める気はない。ポルニア国の国民を蔑ろにしていた罪は大きすぎるし、もう王という器ではない」
「で、ですが、ソウル様がいつ以前のようなお姿に戻ってしまわれるかもしれないと考えますと、ハチミツめ、怖くて眠れません。もし、その時がきてしまったら、王がソウル様ですと、またシャドウ国は闇の国へと成り下がってしまいます……ハチミツめ、今のソウル様と以前のソウル様はまったく違う記憶を持ったお人だと考えておりますので、ハチミツめの……シャドウ国のためにも王を引き継がれることを承諾してくださいませ」
シャドウ国の皆の俺への恐怖心は今も尚拭いきれていなかった。それほどまでにソウルが仕出かしたことの罪は大きすぎる。きっと、俺が俺として受け入れてもらえるには相当な年数がかかるだろう。
俺は、俺のことが今も心の底で恐れていると正直な気持ちを持って話してくれたハチミツに、本当の俺のことを伝える決心をした。
「ハチミツ、そうだよ。今まで黙っていたけど、俺はこの世界に転生してきた人間だ。以前は日本という国で暮らしていたんだけど、不意な事故で命を落としてしまって、気づいたらこの世界のソウルとして記憶が入れ替わっていた。だから、以前のソウルの記憶が今はどうなっているのかは分からない。そして、一つ重要なことに気づいたんだけど多分この身体の記憶が元に戻ることはない。俺は今後もソウルでい続けると思う」
「……と、言いますと?」
「俺が元の身体を無くしてこの身体に移ってるから。だから、この身体が無くなるまで、俺はソウルとして生き続けると思う。よくわかんねぇけど、そんな気がする。それになんかこの身体、結構前から熱いんだ。芯の奥が熱いっていうか……モヤモヤするというか……」
「それは、レイ様がお近くにおられるからではなく?」
「いや、そうじゃない。そういう熱いじゃなくって、なんつーか、こう、エネルギー的なものが湧いているっていうか……」
俺の問いにハチミツとレイは顔を見合わせて首を傾げた。そしてレイは何かを思い出したかのように、「それって能力が生成されているんじゃないか?」と、俺に問いかけた。
「能力が遺伝するのはごく稀で、本来なら個々にあった能力が生成されるんだ。恐らく、今のソウルが前のソウルではないと能力も認識しているから、新しく生成されているんだと思うが、もしそうだとしたらこのパターンは初めてだから確証がないし断言はできない」
能力が生成……新しい能力が俺の中で芽生えている。
俺にも……能力……
「俺……レイとずっと一緒にいれる能力が欲しい!」
興奮してガッツポーズをすると、レイから「それは能力ではなく、貴様の願望だろう」とツッコまれてしまった。昨晩「レイの幸せのために距離を置きたい」と考えていたくせに、俺自身本当に都合が良いヤツだと我ながら思う。
個々の意見を尊重するレイ。
レイはポルニア国に残る決断をせずにシャドウ国へと行くことを選んでくれた。レイ自身ががポルニア国の王では無くなることによって王父から掛けられた呪いが説かれるということになるのかは分からないけれど、それでもレイの下した決断は間違っていないと思う。
「私たちはミケさんと一緒にここに残ります」
マゼンダとリリックはレイにそう告げ頭を下げた。ユーデルは、
「レイ様のお側で今後ともお仕えさせてください」
と、レイについていくことに決めた。
俺はミケに対して『使命とかそんなんに捕らわれずに生きろよ。レイがおまえと結ばれる気がないんだから、おまえは自分の使命に駆られなくてもいい』と言葉を投げた。ミケのことを想って言ったつもりだった。ミケも、『しばらく自分の気持ちとやらと向き合ってみます』と言っていた。その、向き合った結果が今のミケの答えなんだとしたらもう俺がミケに対して言うことは何もない。
後日、今ここで話し合ったことは、ポルニア国にいる全国民を集めて再度報告が行われることとなった。ポルニア国の民を集めての最後の集会の日、準備をしている俺たちの前にハチミツはポンと姿を現した。
「ソウル様、早馬でシャドウ国にも伝わりました! ハチミツめ、一気に転生できるよう、この日のために力を蓄えてきました!」
馬車の御者が早馬でシャドウ国に伝えてくれたため、ハチミツをこの日に呼ぶことができた。
「前ハチミツはレイがシャドウ国に行くことに反対していたが、シャドウ国はレイの受け入れは大丈夫なのか?」
そう質問すると、ハチミツは「大丈夫でございます! ハチミツめ、この三ヵ月間国民と必死に向き合いました。シャドウ国にいる半数以上がポルニア国から連れてきた元奴隷民です。シャドウ国の民もポルニア国の民も今は以前よりも良好な関係を気づいております! そして、レイ様がこの国へ越してくると言ったら大喜びされておりました! 『ぜひ、シャドウ国の王として頑張っていただきたい』と言っていたので、何の問題もございません!」
嬉しそうに腕を組み報告するハチミツ。
シャドウ国の王はレイが務めということに皆の期待が高鳴っているようだ。俺に満面の笑みで報告をするハチミツに、「いや、まて」とレイが割って入った。
「私はその国で王を務める気はない。ポルニア国の国民を蔑ろにしていた罪は大きすぎるし、もう王という器ではない」
「で、ですが、ソウル様がいつ以前のようなお姿に戻ってしまわれるかもしれないと考えますと、ハチミツめ、怖くて眠れません。もし、その時がきてしまったら、王がソウル様ですと、またシャドウ国は闇の国へと成り下がってしまいます……ハチミツめ、今のソウル様と以前のソウル様はまったく違う記憶を持ったお人だと考えておりますので、ハチミツめの……シャドウ国のためにも王を引き継がれることを承諾してくださいませ」
シャドウ国の皆の俺への恐怖心は今も尚拭いきれていなかった。それほどまでにソウルが仕出かしたことの罪は大きすぎる。きっと、俺が俺として受け入れてもらえるには相当な年数がかかるだろう。
俺は、俺のことが今も心の底で恐れていると正直な気持ちを持って話してくれたハチミツに、本当の俺のことを伝える決心をした。
「ハチミツ、そうだよ。今まで黙っていたけど、俺はこの世界に転生してきた人間だ。以前は日本という国で暮らしていたんだけど、不意な事故で命を落としてしまって、気づいたらこの世界のソウルとして記憶が入れ替わっていた。だから、以前のソウルの記憶が今はどうなっているのかは分からない。そして、一つ重要なことに気づいたんだけど多分この身体の記憶が元に戻ることはない。俺は今後もソウルでい続けると思う」
「……と、言いますと?」
「俺が元の身体を無くしてこの身体に移ってるから。だから、この身体が無くなるまで、俺はソウルとして生き続けると思う。よくわかんねぇけど、そんな気がする。それになんかこの身体、結構前から熱いんだ。芯の奥が熱いっていうか……モヤモヤするというか……」
「それは、レイ様がお近くにおられるからではなく?」
「いや、そうじゃない。そういう熱いじゃなくって、なんつーか、こう、エネルギー的なものが湧いているっていうか……」
俺の問いにハチミツとレイは顔を見合わせて首を傾げた。そしてレイは何かを思い出したかのように、「それって能力が生成されているんじゃないか?」と、俺に問いかけた。
「能力が遺伝するのはごく稀で、本来なら個々にあった能力が生成されるんだ。恐らく、今のソウルが前のソウルではないと能力も認識しているから、新しく生成されているんだと思うが、もしそうだとしたらこのパターンは初めてだから確証がないし断言はできない」
能力が生成……新しい能力が俺の中で芽生えている。
俺にも……能力……
「俺……レイとずっと一緒にいれる能力が欲しい!」
興奮してガッツポーズをすると、レイから「それは能力ではなく、貴様の願望だろう」とツッコまれてしまった。昨晩「レイの幸せのために距離を置きたい」と考えていたくせに、俺自身本当に都合が良いヤツだと我ながら思う。
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