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第28話「秘密の場所」
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「……っ、お、おい!! 貴様、いい加減にしろ! ここはどこだ!」
レイの声が足を止める。気がつくとひとけがない繁華街の外れまでレイを連れて来てしまっていた。
「わ、悪い。大丈夫か?」
息を切らしながら背後にいるレイの方へと振り返ると、レイは俺よりもっと息を切らしていた。レイが落ち着くまで背中を摩る。
「いったいなんなんだ……っ」
「ごめん。レイを連れ出さなきゃずっとあのままだと思って……」
「ふざけるな。そんなことあるわけないだろう。話せば分かってくれる」
「でも、誰がレイの命を狙ってるか分からないだろ。そんなことあるかもしれない。レイは危機感が足りねぇ!」
「なんだと!? 貴様、私を誰だと思ってる、ポルニア国の王だぞ」
負けじと言う俺にレイも負けじと言い返す。そんなやり取りが楽しくてついムキになって言い返すレイに対してフッと笑いを吐き出してしまった。
「ッ、ハハハハッ。やべぇ、ツボった」
お腹を抱えて大笑いをする俺にレイは顔を赤くして睨みるける。
「貴様、いったいなにがおかしいんだ。何故そんなに笑っている」
「……いや、レイと言い合えていることが面白くて。レイと出会った当初、俺、動くレイが新鮮で見たことない表情を見せてくれるレイが愛おしくて感動してさ。何も言えなかったから。一緒にいるようになってそんなに時間経ってないけど慣れってすげぇな」
「貴様はいちいち大袈裟だな。愛おしいだの好きだの、まったくもってその心情が理解できん。ほら、さっさと繁華街の方まで戻るぞ」
レイは俺を置いてどんどん先に進んで行ってしまう。レイを追いかけるように俺も後をつけた。街は賑わっており色々なお店が出ている。果物屋さん、野菜屋さん、米屋さん、パン屋さん、衣装屋さん、小物屋さん、本屋さんと、出ているお店も様々だ。
さっそく衣装屋さんに入り、レイを変装させるためにハットが着いている黒色の深い帽子を購入した。念のために黒いサングラスをレイに頂いたお金で購入し、その場で付けさせる。
「……私は何もいらんと言っただろう」
自分の為に買われたのがそんなに嫌だったのか、不満げな声を出すレイ。
「好きなもの買っていいって言っただろ。変装してない状態でウロつかれるとこっちが困るんだよ。いいから変装しとけ!」
帽子を深く被っているレイをいいことに、レイの頭を帽子の上からグリグリと撫でた。
「やめろ、痛いだろ。で、貴様は何を買うんだ」
「普通に飯の材料を買うだけだよ」
離れてしまわないようにレイの手に自分の手を絡める。すると、レイは「やめろ!」と俺の足を踏んだ。だが、そんなことでやっと繋げた手を離すわけがない。レイの手は白くてすべすべしていた。ただ手を繋いだだけなのに俺の手が先に火照っていくのが分かる。
真っ赤なりんごを一つ購入しその場で一口だけかじってみる。うん、美味しい。ちゃんと甘いし水気もあるし良いりんごだ。味覚があるか分からないレイにも「これ、食べてみろよ」と、りんごをかじらせる。シャリッという美味しそうな音を鳴らしながら口の中に頬張るレイ。
「……んぐ、水気があって、う、うまいな……」
味覚が無くなったわけではなく、王父がレイの大切な感情までも奪い去ってしまったんだなと、レイのリアクションから思い知らされる。
美味しそうにりんごを頬張るレイにもっと色々な物を食べさせてあげたくて、その後もパンやおにぎりを含め、目についた食べ物や飲み物を片っ端から購入した。
「う、美味いがもうお腹に入らんぞ……」
御者からもらった水晶のおかげで購入したものは全て水晶内に入れることができた。その間もレイは一切口出しをせず、ただただ俺が購入する姿を眺めているだけだった。
「よし、一通り買い終えた。後は……」
「お香か?」
「そ、そうだ……けど……レイは大丈夫か? 今から行くところは……その……」
「何が言いたい。さっさと行って帰るぞ。貴様、私のために料理をするんだろ?」
「う、うん。よし!!」
自分に気合を入れ御者に教えてもらった繁華街の一本の路地に出た。その奥に、草木で覆われている古びた古民家がある。
「な、なんだここは? 店ではなかろう?」
レイは外観の汚さに顔を歪める。
御者に言われた通り細かく戸を探すが見つからない。視覚だけではなく、戸がないかを触って確かめる。
すると、ずるりと建物の一部をずらすことができた。
「レイ、あった! 早く!!」
離れたそうにしているレイを自分の元へ引き寄せ、よっこいしょと扉となる部分を開ける。
レイの声が足を止める。気がつくとひとけがない繁華街の外れまでレイを連れて来てしまっていた。
「わ、悪い。大丈夫か?」
息を切らしながら背後にいるレイの方へと振り返ると、レイは俺よりもっと息を切らしていた。レイが落ち着くまで背中を摩る。
「いったいなんなんだ……っ」
「ごめん。レイを連れ出さなきゃずっとあのままだと思って……」
「ふざけるな。そんなことあるわけないだろう。話せば分かってくれる」
「でも、誰がレイの命を狙ってるか分からないだろ。そんなことあるかもしれない。レイは危機感が足りねぇ!」
「なんだと!? 貴様、私を誰だと思ってる、ポルニア国の王だぞ」
負けじと言う俺にレイも負けじと言い返す。そんなやり取りが楽しくてついムキになって言い返すレイに対してフッと笑いを吐き出してしまった。
「ッ、ハハハハッ。やべぇ、ツボった」
お腹を抱えて大笑いをする俺にレイは顔を赤くして睨みるける。
「貴様、いったいなにがおかしいんだ。何故そんなに笑っている」
「……いや、レイと言い合えていることが面白くて。レイと出会った当初、俺、動くレイが新鮮で見たことない表情を見せてくれるレイが愛おしくて感動してさ。何も言えなかったから。一緒にいるようになってそんなに時間経ってないけど慣れってすげぇな」
「貴様はいちいち大袈裟だな。愛おしいだの好きだの、まったくもってその心情が理解できん。ほら、さっさと繁華街の方まで戻るぞ」
レイは俺を置いてどんどん先に進んで行ってしまう。レイを追いかけるように俺も後をつけた。街は賑わっており色々なお店が出ている。果物屋さん、野菜屋さん、米屋さん、パン屋さん、衣装屋さん、小物屋さん、本屋さんと、出ているお店も様々だ。
さっそく衣装屋さんに入り、レイを変装させるためにハットが着いている黒色の深い帽子を購入した。念のために黒いサングラスをレイに頂いたお金で購入し、その場で付けさせる。
「……私は何もいらんと言っただろう」
自分の為に買われたのがそんなに嫌だったのか、不満げな声を出すレイ。
「好きなもの買っていいって言っただろ。変装してない状態でウロつかれるとこっちが困るんだよ。いいから変装しとけ!」
帽子を深く被っているレイをいいことに、レイの頭を帽子の上からグリグリと撫でた。
「やめろ、痛いだろ。で、貴様は何を買うんだ」
「普通に飯の材料を買うだけだよ」
離れてしまわないようにレイの手に自分の手を絡める。すると、レイは「やめろ!」と俺の足を踏んだ。だが、そんなことでやっと繋げた手を離すわけがない。レイの手は白くてすべすべしていた。ただ手を繋いだだけなのに俺の手が先に火照っていくのが分かる。
真っ赤なりんごを一つ購入しその場で一口だけかじってみる。うん、美味しい。ちゃんと甘いし水気もあるし良いりんごだ。味覚があるか分からないレイにも「これ、食べてみろよ」と、りんごをかじらせる。シャリッという美味しそうな音を鳴らしながら口の中に頬張るレイ。
「……んぐ、水気があって、う、うまいな……」
味覚が無くなったわけではなく、王父がレイの大切な感情までも奪い去ってしまったんだなと、レイのリアクションから思い知らされる。
美味しそうにりんごを頬張るレイにもっと色々な物を食べさせてあげたくて、その後もパンやおにぎりを含め、目についた食べ物や飲み物を片っ端から購入した。
「う、美味いがもうお腹に入らんぞ……」
御者からもらった水晶のおかげで購入したものは全て水晶内に入れることができた。その間もレイは一切口出しをせず、ただただ俺が購入する姿を眺めているだけだった。
「よし、一通り買い終えた。後は……」
「お香か?」
「そ、そうだ……けど……レイは大丈夫か? 今から行くところは……その……」
「何が言いたい。さっさと行って帰るぞ。貴様、私のために料理をするんだろ?」
「う、うん。よし!!」
自分に気合を入れ御者に教えてもらった繁華街の一本の路地に出た。その奥に、草木で覆われている古びた古民家がある。
「な、なんだここは? 店ではなかろう?」
レイは外観の汚さに顔を歪める。
御者に言われた通り細かく戸を探すが見つからない。視覚だけではなく、戸がないかを触って確かめる。
すると、ずるりと建物の一部をずらすことができた。
「レイ、あった! 早く!!」
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