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第13話「俺からのお願い」

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「ハチミツ、お願いがある。レイも一緒に連れて戻りたいんだ」

「…………レイ様を、ですか?」


 ハチミツは目をパチパチと数回瞬きしながら、眠っているレイを見つめて首を傾げた。


「ここにいたらレイはいずれ殺される。俺はレイに死んで欲しくないんだ」

「……殺される、とは、どういうことですか?」

「さっきミケと話したんだ。ミケはレイが死んでくれることを望んでいた。レイの近くで仕えていたのはレイを殺してくれる人を誘導するため。その先にミケの目的はある。ミケの使命は子を残すことだと、ミケ自身が言っていた。でも、ただの子ではない。あくまでもこの国の、ポルニア国の王の子を残すため。ストーリーは……そうなっていた」


「…………ストーリー、ですか?」


「あ、いや、なんでもない。とにかくそういうワケだから、俺がダメならミケは次、レイを殺してくれそうなヤツを見つけるはずだ。ハチミツ、理解してくれるか?」


 ハチミツなら分かってくれる、俺の力になってくれると思っていたけれど、レイを連れ帰ることに納得がいかないのかなかなか「うん」とは言ってくれない。ハチミツは今までになく真剣な顔で俺を見つめた。


「……ハチミツめ、賛同致しかねます。レイ様を連れ帰られたらシャドウ国で何を言われるか……」


 ハチミツは俺の味方だといっても、俺にいつ殺されるか分からない状況でこれまで血反吐を吐きながら自分の地位を守ってきたんだ。


 ハチミツの気持ちを考えると胸が痛いが、

「安心していい。全責任は俺が取る。ハチミツの立場を危うくはしないし、ハチミツは無関係だということもちゃんと伝える」

 ここは俺の我儘を押し通させてもらう。ハチミツに「お願いだ」と頭を下げると、ハチミツは「ソウル様、ハチミツめ相手に何をしていらっしゃいますか! 頭をお上げください!」と、俺に頭を上げるように促した。


「ハチミツめ、自分の立場などどうでもいいでございます! ハチミツめはソウル様のお傍にいられればそれでいいのです。そうではなく、ソウル様が城の者達にどう思われるか考えると……」


 ハチミツはなんていい子なのだろう。自分のことではなく、俺のことを一番に考えてくれている。だからソウルも 何だかんだハチミツを今の今まで殺さずに傍につけてたんだと思う。


「ハチミツ、ありがとう。俺は大丈夫だ。その代わり、これから頼みがある。今からは俺のことではなく、レイのことを一緒になって考えてほしい。俺はレイをなにがなんでも守りたい。俺からの最後のお願いだ。それと、能力は溜めておく必要があるのだろう? むやみやたらに使わなくていい。」


 また頭を深く下げてお願いする俺にハチミツは「分かりました」と頷いた。


「ソウル様がハチミツめにお願いをしてくださったことは未だかつてございませんでした。ハチミツめ、この身に代えてでもレイ様をお守りいたします」


 ハチミツのありがたい言葉に感謝しながら、レイが目を覚ますのを一刻一刻と待つ。


「……ん」


 レイが目を覚まし、俺とハチミツを交互に見た。


「……おまえたち。おい、そこのちっこい少年、貴様の能力はテレポートではなかったか? 何故ソウルを連れて逃げていない」


 ーー助かった。俺とハチミツの会話は聞かれていないらしい。ミケがレイのことを殺したいと思っているなんて知られたら、レイは人間不信に陥るかもしれない。


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