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第12話「本音と建前」
しおりを挟むミケは「何があったのか全く分かりませんが」と前置きをして事の経緯を話し始めた。
「今日、会ったときにも思ったのですが、何故僕の能力の効果があなたに効いていないのですか? 前は効いていたじゃありませんか。レイ様を殺すことに賛同したことについては下衆と思われても仕方ないことは分かってます。けれど、暗殺はそちらからもちかけてきたお話だったはずです……なのに、あなたはレイ様の部屋の一室で、レイ様といかがわしいことを……どういうことです」
「それはそっくりそのまま聞きてぇな。その理由が本当なら、俺がレイのところに案内しろって言ったときに何で一度拒絶した。さっくり会わせてくれてたらすんなりおまえの願望が叶ったかもしれないだろ」
「それは……私以外にも死角に城の護衛がおりました。聞かれていてもおかしくない故、立場上一度は断っておかないといけないのです」
「じゃあなんで俺をあの空間に閉じ込めた?」
「仕方ないのです。あなたでなくてもレイ様に会いたいと言われる方が訪問されたら、あの部屋に通す決まりなのです」
ここで言えな皆に知られてはいけないような内容を話しているということは、今は死角に他の奴はいないらしい。身構えていたけれど、ミケが話してくれたおかげで少しだけ肩の力を抜くことができた。
「別におまえの能力が今の俺に効いていないわけじゃない。おまえを直視すれば俺も興奮する。けれど、俺はおまえを抱きたいとは思わない。俺はレイを抱きたいんだ」
俺の言っていることに納得がいっていないのだろう、ミケは曇った表情をして見せた。少し前まで自分の意見に賛同してくれていたヤツがいきなり掌を返したんだ。無理もない。
「レイ様は特別そういう能力をお持ちではないはずです。なのに何故あなたはレイ様に発情しているのです?」
俺がレイに対して発情していることがここではあり得ないからか、執拗に問いかけてくる。何度も「レイが好き」と伝えてもまるで伝わっていない。ここの奴らに「好き」の感情はないのか? いや、「嫌い」という感情があるくらいだ。「好き」が分かっていないのなら鈍すぎる。
「『発情』って言い方やめてくれ。俺はレイが好きだから興奮するし抱きたいと思う。子を宿したいとかそんなの関係なく、レイに欲情しているんだ。……まあ、いくら言っても理解してもらえないかもしれないが」
聞きたいことはあらかた聞くことができたような気がする。今の段階でこれ以上ミケと話すことはない。なんなら早く切り上げたくてそれとなく離れようとしてみるけれど、ミケの表情がそうさせてはくれない。なので、
「…………最後に一つ、俺はレイを絶対に死なせない。自分の欲のために死なせない」
「欲とは……どういうことです! あなた、レイ様にまたああいうことを!?」
「…………まあな」
宣戦布告をしてミケの元から立ち去った。戻った場所はレイの部屋なわけだけれど、『少しでも変なことを考えてみろ。見つけ次第、私が殺す』と言っていたのに、当の本人はベッドで気持ちよさそうに寝息を立てて横になっていた。
口だけすぎるレイにフッと笑みが零れた。
レイが眠っているベッドの上で俺も横になり、愛おしい人を見ながら眠りについた。
――翌日、目を覚ますと俺の視界にはハチミツの顔があり、「ハチミツめ、今度は失敗せずにテレポートできました! ソウル様がご無事でなによりです」と嬉しそうな顔をしていた。今度来ると言っていたのに、もう来ることができたらしい。
「さぁ、さぁ、レイ様と一緒のベッドに寝られていたことですし、和解もできた様子ですし目的は果たせたでしょう。さっさと我が国へと帰りましょう!」
急かすハチミツの手を引き「待ってくれ」と止める。
ハチミツには話そう。この子は俺の味方だ。事情を話せば絶対に分かってくれる。
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