1 / 3
1.顔面国宝級なオレの親友
しおりを挟む二学期の中間テストが迫る中、今までにないほど頭を抱え自分の机に突っ伏しているオレ、水樹陽。
部活にのめりこんでいるわけでもない、彼女ができることもない。ダラダラと、十七年という人生を過ごしてしまったと思う。
ーーオレの青春はもう終わってしまった。
「陽、おはよ」
それもこれも、この国宝級のイケメン、難波優冴の傍に居続けたことが原因だと思う。
黒色のツヤがある髪はサラサラしていて、顔は非の打ち所がないほど整っている。
目は二重でパッチリとしていて、鼻筋はスッと通っており、おまけに、ふと笑った時に見せる笑顔はとてつもなくカッコイイ。
そんなパーフェクト男子の傍に居続け早五年。誰一人、オレに告白してくれる女の子は現れなかった。
よく、『モテ男の傍にい続けたら、かっこよくないヤツでもかっこよく見えてしまう』と言ったりするけれど、オレの場合、全然そんなミラクルが起きることもなかった。
イケメンの傍に居続けたからといって、オレ自身がモテるわけではなかった。
もちろん、そんな不順な動機で今まで一緒にいたわけではないが、今ほんの少しだけその動機を求めてしまった。
未だふて腐れるように机に顔を伏せていると、優冴はオレの頭にポンポンと優しく触れた。
「何か悩んでんの?」
優しいトーンで声を掛けられたため、せめて何かしらの反応はしないといけない、と、ゆっくりと頷く。
『青春を置き去りにしてしまったことに悩んでいる』なんて、オレ以外が理解し難いことはいちいち言わないけど。それでも優冴はオレから何かを察したらしい、
「中間テストなら心配しなくても大丈夫だよ。俺、バイト休みもらえたし。一緒にテスト勉強するから」
オレが毎回赤点ギリギリだからだろうか。テストのことで悩んでいると思われ、励まされてしまった。
「ありがとう。今回も絶望的だからまた勉強教えて」
「うん。だから、いい加減顔上げて」
男のオレに優しくしても良いことなんてなにもないのに。
複雑な気持ちで顔を上げると、オレの視界にドアップで優冴の顔面が映った。
「近ッ!」
「いや、陽がなかなか顔を上げてくれないから」
「だからって……おまえ、近すぎ! 顔ぶつかるかと思っただろ!」
火照る顔を腕で隠しながら、机の端に置いていたスマホに目を落とした。
優冴のオレに対しての距離感が年々近づいていると思う。信頼してくれているからだろうか、最近目に余ることが多い。だからといって「距離感おかしくない?」と聞くのもどうかと思っていたけど、今日という今日は我慢の限界だ。
こんなに距離感がバグられたらどう接したらいいか分からなくなる。
それとなく聞いてみようと、優冴に「あのさ」と口を開く。
「おまえのその距離感なんなの」
「……距離感?」
「近いし、おまえの距離感バグってんだよ」
優冴は「ああ」と頷いては両腕を組み、何かを考え出した。
こんなに真剣な質問をしているときでも、ああ、コイツの顔かっこよすぎると思ってしまうオレも、相当感覚がバグっていると思う。
「陽って犬っぽいからさ。つい、距離感近くなるというか、目が離せないんだよね」
あっけらかんといった感じで口にする優冴に唖然とした。
……犬? え、オレ、今まで犬っぽいって思いながら見られてたの? 確かに、髪の色素は薄いから茶髪だし、くせっ毛だし、目も大きいねって羨ましがられることはあったけど。犬っぽいって。人間ですらないじゃん。
変に意識していた自分が恥ずかしくて、また顔を伏せた。
「そういうとこも犬っぽいんだよ」
ククッと小さく笑い声を出す優冴のその顔が見たくて、ゆっくりと顔を上げる。
オレが犬だとしたら、飼い主は間違いなく優冴だ。
優冴はとにかく女子にモテる。女子達が優冴を見てキャーキャー騒ぐのも頷ける。だってオレが一番身近で優冴がモテるのを見ているから。
オレに彼女ができないのは「残念だね」で済ませられるけど、優冴に彼女がいないのは「残念だね」で済ませられることではない。
オレが優冴だったら彼女の一人や二人すぐに作っちゃうのに。
授業の始まりを告げるチャイムが鳴ると、優冴は「じゃあ、また後で」と、自分の席へ戻って行った。
そんなオレ達を遠くの席から見ている男が一人いる。八尾大志。
金の髪色をしている八尾の耳には大量のピアスが付いている。いわゆる不良だ。顔もカッコイイ。金髪にピアスはカッコイイやつしか許されない特権だと思う。
そんな八尾はよくオレを見ては睨んでいる。
何かしただろうかと、高1の時から思い続けて早1年と半年が過ぎた。優冴にも相談したけれど「考えずぎ、気にしなくていいよ」と言われ気に掛けないようにしていた。けれど、こうして目が合ってしまえばやっぱり気になる。
八尾とは喋ったことがない。これからも喋ることはないのだろうと、八尾から目を離し、机の上に視線を戻す。
今日もいつも通り授業が始まり、いつも通りの一日が過ぎていく。
「英語のノート持って行くんで、教卓の上に置いてくださーい」
今日が日直のオレは、教卓の上に提出されたノートを預かり、教室を出て廊下を真っ直ぐ進む。階段を下っていると背後から妙な気配を感じた。
やっぱり優冴に着いてきてもらえばよかったと反省しつつ、小走りになる。すると、後ろのヤツもオレを追いかけ、走りだした。
階段を下りた瞬間殴られる覚悟を決め、後ろを振り返る。急に止まって後ろに振り返ったせいで、
「おい、なに……ぶわっ!?」
小走りでオレの後ろを歩いて来ていた人とぶつかった。目を見開くと八尾が立っている。
ここには八尾のノートもある。
……オレ、殺されるんだろうか。
3
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
迷える子羊少年と自称王様少年
ユー
BL
「その素晴らしい力オレの側にふさわしい、オレの家来になれ!」
「いや絶対嫌だから!」
的なやり取りから始まる
超能力が存在するSF(すこしふしぎ)な世界で普通になりたいと願う平凡志望の卑屈少年と
自分大好き唯我独尊王様気質の美少年との
出会いから始まるボーイミーツボーイ的な青春BL小説になってればいいなって思って書きました。
この作品は後々そういう関係になっていくのを前提として書いてはいますが、なんというかブロマンス?的な少年達の青春ものみたいなノリで読んで頂けるとありがたいです。

告白ゲームの攻略対象にされたので面倒くさい奴になって嫌われることにした
雨宮里玖
BL
《あらすじ》
昼休みに乃木は、イケメン三人の話に聞き耳を立てていた。そこで「それぞれが最初にぶつかった奴を口説いて告白する。それで一番早く告白オッケーもらえた奴が勝ち」という告白ゲームをする話を聞いた。
その直後、乃木は三人のうちで一番のモテ男・早坂とぶつかってしまった。
その日の放課後から早坂は乃木にぐいぐい近づいてきて——。
早坂(18)モッテモテのイケメン帰国子女。勉強運動なんでもできる。物静か。
乃木(18)普通の高校三年生。
波田野(17)早坂の友人。
蓑島(17)早坂の友人。
石井(18)乃木の友人。

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は無い
・悲しい過去🐜のたまにシリアス
・話の流れが遅い

初恋はおしまい
佐治尚実
BL
高校生の朝好にとって卒業までの二年間は奇跡に満ちていた。クラスで目立たず、一人の時間を大事にする日々。そんな朝好に、クラスの頂点に君臨する修司の視線が絡んでくるのが不思議でならなかった。人気者の彼の一方的で執拗な気配に朝好の気持ちは高ぶり、ついには卒業式の日に修司を呼び止める所までいく。それも修司に無神経な言葉をぶつけられてショックを受ける。彼への思いを知った朝好は成人式で修司との再会を望んだ。
高校時代の初恋をこじらせた二人が、成人式で再会する話です。珍しく攻めがツンツンしています。
※以前投稿した『初恋はおしまい』を大幅に加筆修正して再投稿しました。現在非公開の『初恋はおしまい』にお気に入りや♡をくださりありがとうございました!こちらを読んでいただけると幸いです。
今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。

隠れヤンデレは自制しながら、鈍感幼なじみを溺愛する
知世
BL
大輝は悩んでいた。
完璧な幼なじみ―聖にとって、自分の存在は負担なんじゃないか。
自分に優しい…むしろ甘い聖は、俺のせいで、色んなことを我慢しているのでは?
自分は聖の邪魔なのでは?
ネガティブな思考に陥った大輝は、ある日、決断する。
幼なじみ離れをしよう、と。
一方で、聖もまた、悩んでいた。
彼は狂おしいまでの愛情を抑え込み、大輝の隣にいる。
自制しがたい恋情を、暴走してしまいそうな心身を、理性でひたすら耐えていた。
心から愛する人を、大切にしたい、慈しみたい、その一心で。
大輝が望むなら、ずっと親友でいるよ。頼りになって、甘えられる、そんな幼なじみのままでいい。
だから、せめて、隣にいたい。一生。死ぬまで共にいよう、大輝。
それが叶わないなら、俺は…。俺は、大輝の望む、幼なじみで親友の聖、ではいられなくなるかもしれない。
小説未満、小ネタ以上、な短編です(スランプの時、思い付いたので書きました)
受けと攻め、交互に視点が変わります。
受けは現在、攻めは過去から現在の話です。
拙い文章ですが、少しでも楽しんで頂けたら幸いです。
宜しくお願い致します。

【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます
夏ノ宮萄玄
BL
オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。
――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。
懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。
義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

花屋の息子
きの
BL
ひょんなことから異世界転移してしまった、至って普通の男子高校生、橘伊織。
森の中を一人彷徨っていると運良く優しい夫婦に出会い、ひとまずその世界で過ごしていくことにするが___?
瞳を見て相手の感情がわかる能力を持つ、普段は冷静沈着無愛想だけど受けにだけ甘くて溺愛な攻め×至って普通の男子高校生な受け
の、お話です。
不定期更新。大体一週間間隔のつもりです。
攻めが出てくるまでちょっとかかります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる